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第二章 似すぎている敵

綺麗な自然と綺麗な少女

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「おー、こんなに綺麗な自然って初めて見たかも……」
「京都でもこういう景色見てたけど……こっちもええどすなぁ~……」

 結衣と明葉は、自然の美しさを身体で感じていた。
 結衣は太い木の幹を撫でるように触り、明葉は小さなピンク色の花を愛でている。
 そんな時、砂利を踏みしめながら二人に近寄る者がいた。

「結衣……っ! 明葉……っ!」
「あ、真菜ちゃん! やっほー」
「真菜さん……! お久しゅう」

 それは、太陽に負けないぐらいの眩しさを引き連れた真菜。
 真菜は結衣たちとはクラスが違うため、グループも別なのである。

「あれ? そう言えばグループ抜け出してもいいの? バレたら怒られるんじゃ……」

 野外学習に行く前。
 教室で水谷先生にしつこく、『グループ行動をしろ』と言われた気がする。
 だが、真菜はいい笑顔でこう言った。

「だい……じょう、ぶ。私の……グループ、の子たちに……『他のところに行ってもいいよ』って、言われた、し……!」
「いや、そうじゃなくて! 先生にバレたら大変だよ!?」

 結衣の言葉を受けて我に返ったのか、真菜はとぼとぼと来た道を戻ろうとしている。
 その光景になぜだか罪悪感が芽生えた結衣は、真菜の腕を掴んだ。

「あ……あのさ、夜の自由時間なら大丈夫だろうし……こっちの部屋来る?」

 自由時間なら誰がどの部屋に行っても、先生たちは何も咎めないだろう。
 ……と、結衣は踏んでいたが。

 辺りはシーンと静まり返ってしまった。
 その静寂の中で――何か変なことを言ってしまったのかと――結衣は不安に駆られた。
 だが、次の瞬間。

「え……いい、の……?」

 目の中に宝石があるのではと錯覚させるように、真菜は眼を光らせる。
 その様子に、結衣は一瞬戸惑いながら「う、うん……」と零す。
 すると、真菜は誰もが見惚れるような笑顔を浮かべた。

「やっ……たぁ! 約束、だよ……!」

 そう言って、スキップしながら自分のグループに戻っていく。
 そんな上機嫌な真菜を見ながら、結衣はポカーンと間の抜けた顔をする。
 しばらくの間、静寂が訪れ……そして。

 ――ボンッ!

 と、何かが弾けるような音がした。
 結衣は顔を赤らめて、頭からは蒸気を噴き出させる。

「えっ……! ちょっ……結衣さん??」

 明葉はそんな結衣の様子に、どうしたらいいのか分からず狼狽えた。
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