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最終章 全ての元凶

未来に進むために

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「……どうして……こんなこと……」
「魔央様には、生きていて欲しいです」

 魔央が目を見開いて驚くと、ガーネットはとても満足そうに微笑んだ。
 そして、今度はガーネットの身体が消えかかる。

「ガーネット!?」

 結衣には、何が起こっているのかわからない。
 なぜ、こんなことになってしまっている!?
 なんでガーネットが――

「結衣様。私……結衣様に出会えて、本当によかったです」
「な、なにを……」
「私のわがままを聞いてくださり、ありがとうございます」
「が、ガーネット……」
「結衣様の願い、叶えることが出来て……私も嬉しいです」
「やだ……やだよ!」

 ガーネットは結衣に気持ちを伝える。
 それがひどく悲しく聞こえて、結衣はたまらず叫んだ。
 結衣の叫び声は濡れていて、みんなも涙が出てしまう。

「皆様にも……出会えてよかったです。私は、今とても幸せです」

 今にも消えそうなのに。
 もう会えないかもしれないのに。
 ガーネットは、とてもいい顔で笑っている。
 脚はもう完全に消え去っていて、上半身しか残っていない。

「私は世界を救うために生まれたのです。だからもう……それが果たされたのなら、悔いはありません」

 とても満足そうに笑うガーネット。
 とうとう、終わりの時が来たのだ。

「結衣様たちには散々ご迷惑をおかけしました。望んでもいないループをさせてしまい……」
「――そんなことないわよ。あたしは結構楽しかったわよ? あたしをからかうあなたに仕返しできてた時もあったし?」

 ガーネットが申し訳なさそうに言うと、せーちゃんが得意げに笑う。
 それに続くように、みんなも言った。

「とても……愉快、だった……ね」
「神の光の真の力を発揮できてた時もあったようですし!」
「夏音ちゃんともっと親しかった時もあったようだしね?」
「……そ、それは言わないでくださいですにゃ……」

 真菜、緋依、美波、夏音が順番にそう言って笑う。
 明葉やカスミも、ガーネットを見て静かに笑っている。
 そんなみんなを見て、ガーネットはやっと涙を流した。

「……ありがとうございます、皆様。本当に……」

 もうガーネットの身体も消えかけ、顔も朧げになる。
 ――もう時間がない。
 結衣は覚悟を決め、ガーネットに想いを伝える。

「ガーネット、ありがとね。――大好きだよ」
「結衣様……こちらこそ、ありがとうございます。――大好きです、結衣様」

 ガーネットはそう言うと、結衣のおでこにキスをした。
 そうして、ガーネットの姿は完全に見えなくなってしまった。
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