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第一章 高校一年生(二学期)

うみ(朔良)

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 これは、朔良が小学生だった頃のお話。

「わー! いい景色だにゃー!」
「すごいよな~……めっちゃ綺麗!」

 鮮やかな青と灼熱の太陽。
 そして、様々な水着が煌めくそこは――海だった。
 少女たちは、海に遊びに来ているのだ!
 洋服のような水着を纏い、海を眺めている。

「じゃあ、海を楽しむか!」
「うん! まずは海で泳ごーにゃー!」

 少女たちは無邪気に砂浜を駆け回り、煌びやかな海へダイブする。
 その際、黒色の髪と茶色の髪が輝く。
 そして水を浴びると、温度差にびっくりしたのか――二人はビクッと身体を震わせた。

「ひゃー! 冷たいにゃ、さくにゃん!」
「あはは! そうだな、瑠衣!  なんだか笑えてきちゃうぜ……!」

 妙に甲高い声をあげ、語尾に“にゃん”を付ける少女――瑠衣。
 なぜか笑い声をあげ、心底楽しそうな少女――朔良。

 瑠衣も普通の小学生なのだが、どうしてか瑠衣は語尾に“にゃん”を使っている。
 だが、そんな些細なことは二人の笑顔の前ではどうでもよくなってくる。

「海って……こんなに綺麗なんだにゃあ……」

 そうやって、遠くの地平線を見やる瑠衣。
 そんな瑠衣に何かを感じたのか、朔良も揃って同じ場所を眺める。

「ああ……ほんと、綺麗だな……」

 ――地平線の彼方には、一体何があるのだろう。
 二人の少女はそれを考える。
 だが、多分きっと……ここよりもっと綺麗な景色が待っているに違いない。

「さー、そろそろ帰るかぁ。母さんも心配してるだろうし」
「さくにゃんのお母さんは結構放任主義な感じだけどにゃ?」
「まあな。けど、心配してないってことじゃねーだろ」
「はー、なるほどにゃあ」

 朔良と瑠衣は名残惜しそうに海を一瞥した後、手を繋ぎながら浜辺を歩いた。
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