ストーキングは愛の証!【完結済み】

M・A・J・O

文字の大きさ
22 / 50
第二章 仲良しのその先へ!

それが恋じゃなくてもいい?

しおりを挟む
 ○月○日

 やった! ついに、ついに! この日がやって来た!
 理沙ちゃんをどうにかせずとも、こんなに簡単に手に入るなんて……信じられない!
 でも、だからこそ、少し怖い気もする。
 もしさっちゃん先輩が恋心を知って、それを向ける先が自分じゃなかったら……
 もしさっちゃん先輩が他の人を好きになったら、私は――

 ――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。

 ☆ ☆ ☆

「――と、いうことがあったのですよ」
「……え? え??」

 賑やかな食堂の中で、沙友理が昨日起きたことを話す。
 華緒は困惑し、この前のようにスプーンを落としそうになった。
 今日は二人で甘口のカレーを食している。

「だから、自分の気持ちに素直になることにしたのです。多分、わたしがいっちゃんを助けたのも、自分に素直になったからだと思うのです」
「さっちゃん先輩……」
「わたしは、いっちゃんとずっと一緒にいたいのです。それだけははっきり言えるのです」

 沙友理は胸に手を当て、祈るように続ける。

「わたしはふつつか者なのです。それでもよければ……一緒にいてくれませんか?」

 それは、告白に近かった。
 “好き”という言葉を用いてはいないが、だからこそ、沙友理の心からの言葉だった。

 華緒の目には、沙友理が一番眩しく映る。
 手に入れられなくても、決して手に入れることなどできないと思っていたから。
 手に入らぬのなら、力づくでも手に入れようと考えていたのに、これは予想外だ。

「ま、まさかさっちゃん先輩がそう言ってくれるなんて……」
「あはは……まだ確かなことは言えないので正式なお付き合いというわけにはいかないのが心苦しいのですけど、いっちゃんさえよければ……」
「い、いいに決まってるじゃないですか! むしろこっちからお願いしたいぐらいですよ!」
「それはよかったのです。さぁ、冷めないうちに食べるのです」
「はい! ……あ」

 華緒は元気よく返事をするも、何か思いついたような顔と声をさせた。
 沙友理が首を傾げていると、華緒はもじもじと指を絡ませてしきりに目を泳がせている。
 何か言いたいことでもあるのだろうか。

「えっと、その……あの……ですね」

 そう言いながら、沙友理の分のカレーを見つめている。
 まだ自分の分もあるというのに。
 隣の芝生は青く見えるというやつだろうか。
 沙友理がそう思って交換を提案しようとした時、ようやく華緒が内心思っていることを口にした。

「その、せっかく特別な仲になれたので……特別なことをしたいなと思いまして」
「特別……なのですか」
「はい。なので――」

 そこまで言って、一旦言葉を切る。
 そして、意を決したように大声で言う。

「――“あーん”を、して欲しいです!」
「…………はい?」

 華緒の突拍子もない言葉に、沙友理はポカンとした。
 “あーん”とは、食べさせてほしいということだろうか。

 理沙がもっと幼い頃に理沙にそれをしたことがあったため、沙友理はそれほど特別なものとは思っていなかった。
 しかし、華緒がそう言うならと、“ふーふー”をしてカレーを載せたスプーンを華緒に差し出した。

「あーん」
「あ、あーん……」

 沙友理は何も考えておらず、華緒は嬉しそうに口を開けている。
 沙友理のカレーを口に含むと、華緒は丁寧にそれを噛み砕く。
 それは、思い出を一つ一つ噛み締めているのに似ている。
 だから沙友理は、華緒のやっていることを少し大袈裟だと感じてしまった。

「美味しいですか?」

 しかし、その思いを口にせず、笑顔で訊いた。
 別に、その行いが大袈裟に見えようと、そんなものは構わない。
 華緒が幸せならば、他は些細なことだ。

「はい! もちろん!」

 華緒は満面の笑みで返す。
 華緒の花のような笑顔に、沙友理は満足した。
 だが、華緒も沙友理がやったようにスプーンを差し出してくる。

「あ、あの、さっちゃん先輩も……」
「あ、なるほどなのです」

 理沙にした時は向こうから何もないのが当たり前だったため、もう満足してしまっていたが。
 あーんし合えるというところが、特別な仲ということなのだろう。

「あ、あーん……」
「あーん」

 これは、華緒が丁寧に噛み砕くのも頷ける。
 自分で食べるよりも美味しく感じられたから。
 あーんの魅力はここにあるらしい。

「いっちゃんがくれたカレー、すごく美味しいのです」
「え、えへへ……ありがとうございます」

 華緒はそう言い、ノートみたいなものを取り出して何やらメモしている。
 そのノートの表紙には、『さっちゃん先輩の好きなもの』と書かれている。
 見なかったことにした方がいいのか、触れた方がいいのかわからない。

 悩んでいるうちに書き終わったようで、もうノートをしまっていた。
 沙友理は少し残念に思いながらも、それに触れることはなかった。

「あ、私そろそろ行かないと……! 次移動教室なので!」
「そうなのですか。じゃあ、バイバイなのです」
「はい。あ、今日一緒に帰りませんか?」
「え? いつも一緒に帰ってるのですよね? まあ、今日も予定ないので大丈夫なのですよ?」
「わー! よかった……嬉しいです!」

 華緒は本当に嬉しそうに去っていくが、その笑顔が少しだけ怖かった。
 何か裏があるような気がしてならない。

 しかし、それでも。
 そんな華緒のことを愛しいと思うのは、なぜなのだろうか。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて

千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。 そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。 夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。 それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。 ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。 ハッピーエンドになるのでご安心ください。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...