27 / 50
第二章 仲良しのその先へ!
修復するのは難しい?
しおりを挟む
○月○日
さっちゃん先輩に頭なでなでされちゃったぁ……
さっちゃん先輩の手、ちっちゃくて柔らかくて優しかったな……
なんか幸せすぎて怖いくらい。
さっちゃん先輩にとってもっと魅力的な自分でいたいから、自分磨き頑張ろう!
それでもっと好きになってもらうんだ!
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
「うむむ……人間関係って難しいのですね……」
「何か悩み事ですか?」
「うひゃっ!? び、びっくりしたのです……」
登校しようと、玄関の扉を開けながら独り言を呟いた沙友理。
思わぬ声かけにビクッと飛び上がった。
まさかドアを開けた瞬間に彼女がいると思わなかったから。
もしかして、ずっと待ってくれていたのだろうか。
寒さのせいか、華緒の鼻が赤くなっている。
「あ、驚かせてしまってすみません……一緒に登校したいなと思いまして……」
華緒はもじもじと身体を揺らしながら、沙友理の様子を窺う。
彼女だし、向かう場所は一緒だから断る理由はなかった。
「いいのですよ。誰かと一緒にいたい気分でもあるのです」
「よかったぁ……じゃあ行きましょう!」
華緒はうきうきした様子で、ナチュラルに沙友理の手を取った。
距離感が縮まったからか、華緒は前よりもだいぶ積極的になっている気がする。
沙友理はそれに関して驚きはしたものの、嫌だとは思わなかった。
むしろ“恋人”になったのだから、それで当然だと思った。
「いっちゃんはほんとにわたしのこと好きなのですね~」
「えっ!? と、当然じゃないですか! ずっとさっちゃん先輩を目で追いかけてましたから……!」
「ふふふ、嬉しいのです」
好きな人にすごく想われている、これ以上に幸福なことを沙友理は知らない。
だから浮かれて、気分が舞い上がって忘れてしまったのだと思われる。
昨日の理沙とのやり取りを。
「さっちゃん先輩はこうしてほしいとかありますか?」
「え? なんの話なのですか?」
しばらく二人で他愛もない話をしながら歩いていると、華緒が唐突に聞いてきた。
「せっかく恋人になれたので……して欲しいことがあれば出来る限り応えたいなと思っていて……」
「あー、なるほどなのです」
ちらちらと、何か期待するような目つきで沙友理の顔を見る華緒。
華緒は何かして欲しいことでもあるのだろうか。
しかし、沙友理は何も思いつかない。
「うーん……こうやって一緒にいられるだけでわたしは満足なのですよ」
だから、沙友理は思ったことを口にしてみた。
すると華緒は、目を大きく見開いて固まる。
「さっちゃん先輩はほんとすごいですね……尊敬します……」
「そ、そうなのですか……? わたしは両思いってだけでものすごく嬉しいのですけど……」
「そういうところですっ!!」
「え、な、なんで怒られてるのですか??」
華緒に怒られながらも、楽しそうにしている沙友理。
こういう何気ない日常も、華緒といるから楽しいのだと沙友理は思った。
好きな人に想われて、一緒にいられて、こんな風に笑い合う。
それだけで満足だった。
「でも……私はわがままなので……さっちゃん先輩に負担かけないか心配です……」
「そうなのですか? 全然そうは見えないのですけど……」
「あー……普段はそれなりに抑えているんですよ。毎日さっちゃん先輩のこと見れるだけでも嬉しいですし……」
「え? 毎日……?」
しかし、沙友理の戸惑いの声には答えず、華緒は続ける。
「でも、ずっと一緒にいることが当たり前になったら、今度は別の欲求とか願いとか出てきそうで怖いです……」
華緒がかつてないほど身体を震わせている。
本当に、沙友理に嫌われることを恐れているようだ。
それほどまで沙友理のことが好きらしい。
沙友理はにっこりと笑い、背伸びして、華緒の頭を優しく撫でる。
「そんなことないのですよ。わたしはどんないっちゃんでも大好きなのですから」
優しく包み込んでくれるような温かい言葉に、華緒はポロポロと涙を流した。
「えっ! ど、どうしたのですかいっちゃん! わたし、何か変なこと言ったのですか!?」
慌てふためく沙友理に対し、華緒は泣きながら口角を上げている。
その顔はとても美しく、可憐で、聖女のようだった。
「ありがとうございます、さっちゃん先輩」
そんな綺麗で思わず見とれるような笑顔を見ていて、沙友理はふと別の人のことを思い出した。
そういえば、朝から妹と顔を合わせていない。
このまま疎遠になってしまうのだろうか。
それだけは嫌だった。
沙友理は仲がいいと思っていたから、その関係が壊れてしまうのが嫌なのだ。
「なんとかしなくてはならないのですね……」
「え? 何か言いました?」
「んー? なんでもないのですよー」
「わわわ! 髪が乱れるのでそれ以上強くしないでくださいいい!」
華緒と少し激しめのスキンシップを堪能している時、遠くの方から理沙の視線を感じた。
それはすごく冷めていて、身体が凍りつくようだった。
それほどまで溝は深いらしい。
なぜこんなことになってしまったのかまだよく理解できていないが、早いうちになんとかしないと手遅れになってしまう。
「待っていなさいなのです、理沙」
きっと、いや絶対、また仲良し姉妹に戻ってみせる。
沙友理はそう決意しながら学校へ向かった。
さっちゃん先輩に頭なでなでされちゃったぁ……
さっちゃん先輩の手、ちっちゃくて柔らかくて優しかったな……
なんか幸せすぎて怖いくらい。
さっちゃん先輩にとってもっと魅力的な自分でいたいから、自分磨き頑張ろう!
それでもっと好きになってもらうんだ!
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
「うむむ……人間関係って難しいのですね……」
「何か悩み事ですか?」
「うひゃっ!? び、びっくりしたのです……」
登校しようと、玄関の扉を開けながら独り言を呟いた沙友理。
思わぬ声かけにビクッと飛び上がった。
まさかドアを開けた瞬間に彼女がいると思わなかったから。
もしかして、ずっと待ってくれていたのだろうか。
寒さのせいか、華緒の鼻が赤くなっている。
「あ、驚かせてしまってすみません……一緒に登校したいなと思いまして……」
華緒はもじもじと身体を揺らしながら、沙友理の様子を窺う。
彼女だし、向かう場所は一緒だから断る理由はなかった。
「いいのですよ。誰かと一緒にいたい気分でもあるのです」
「よかったぁ……じゃあ行きましょう!」
華緒はうきうきした様子で、ナチュラルに沙友理の手を取った。
距離感が縮まったからか、華緒は前よりもだいぶ積極的になっている気がする。
沙友理はそれに関して驚きはしたものの、嫌だとは思わなかった。
むしろ“恋人”になったのだから、それで当然だと思った。
「いっちゃんはほんとにわたしのこと好きなのですね~」
「えっ!? と、当然じゃないですか! ずっとさっちゃん先輩を目で追いかけてましたから……!」
「ふふふ、嬉しいのです」
好きな人にすごく想われている、これ以上に幸福なことを沙友理は知らない。
だから浮かれて、気分が舞い上がって忘れてしまったのだと思われる。
昨日の理沙とのやり取りを。
「さっちゃん先輩はこうしてほしいとかありますか?」
「え? なんの話なのですか?」
しばらく二人で他愛もない話をしながら歩いていると、華緒が唐突に聞いてきた。
「せっかく恋人になれたので……して欲しいことがあれば出来る限り応えたいなと思っていて……」
「あー、なるほどなのです」
ちらちらと、何か期待するような目つきで沙友理の顔を見る華緒。
華緒は何かして欲しいことでもあるのだろうか。
しかし、沙友理は何も思いつかない。
「うーん……こうやって一緒にいられるだけでわたしは満足なのですよ」
だから、沙友理は思ったことを口にしてみた。
すると華緒は、目を大きく見開いて固まる。
「さっちゃん先輩はほんとすごいですね……尊敬します……」
「そ、そうなのですか……? わたしは両思いってだけでものすごく嬉しいのですけど……」
「そういうところですっ!!」
「え、な、なんで怒られてるのですか??」
華緒に怒られながらも、楽しそうにしている沙友理。
こういう何気ない日常も、華緒といるから楽しいのだと沙友理は思った。
好きな人に想われて、一緒にいられて、こんな風に笑い合う。
それだけで満足だった。
「でも……私はわがままなので……さっちゃん先輩に負担かけないか心配です……」
「そうなのですか? 全然そうは見えないのですけど……」
「あー……普段はそれなりに抑えているんですよ。毎日さっちゃん先輩のこと見れるだけでも嬉しいですし……」
「え? 毎日……?」
しかし、沙友理の戸惑いの声には答えず、華緒は続ける。
「でも、ずっと一緒にいることが当たり前になったら、今度は別の欲求とか願いとか出てきそうで怖いです……」
華緒がかつてないほど身体を震わせている。
本当に、沙友理に嫌われることを恐れているようだ。
それほどまで沙友理のことが好きらしい。
沙友理はにっこりと笑い、背伸びして、華緒の頭を優しく撫でる。
「そんなことないのですよ。わたしはどんないっちゃんでも大好きなのですから」
優しく包み込んでくれるような温かい言葉に、華緒はポロポロと涙を流した。
「えっ! ど、どうしたのですかいっちゃん! わたし、何か変なこと言ったのですか!?」
慌てふためく沙友理に対し、華緒は泣きながら口角を上げている。
その顔はとても美しく、可憐で、聖女のようだった。
「ありがとうございます、さっちゃん先輩」
そんな綺麗で思わず見とれるような笑顔を見ていて、沙友理はふと別の人のことを思い出した。
そういえば、朝から妹と顔を合わせていない。
このまま疎遠になってしまうのだろうか。
それだけは嫌だった。
沙友理は仲がいいと思っていたから、その関係が壊れてしまうのが嫌なのだ。
「なんとかしなくてはならないのですね……」
「え? 何か言いました?」
「んー? なんでもないのですよー」
「わわわ! 髪が乱れるのでそれ以上強くしないでくださいいい!」
華緒と少し激しめのスキンシップを堪能している時、遠くの方から理沙の視線を感じた。
それはすごく冷めていて、身体が凍りつくようだった。
それほどまで溝は深いらしい。
なぜこんなことになってしまったのかまだよく理解できていないが、早いうちになんとかしないと手遅れになってしまう。
「待っていなさいなのです、理沙」
きっと、いや絶対、また仲良し姉妹に戻ってみせる。
沙友理はそう決意しながら学校へ向かった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。
そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。
夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。
それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになるのでご安心ください。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる