姉妹百合なんて興味ない!……はず?

M・A・J・O

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こちらの世界

私がお姉ちゃんだ!

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 胃袋を満たされ、充実した朝を迎えた私はあることに悩んでいた。
 このままめいにやられっぱなしでいいのかと。
 自分の方が年上なのに、何一つ年上らしいところを見せられていない。
 このまま行くと……

『わたしがお姉ちゃんになります!』

 とか言い出しかねない。かもしれない。
 それはなんとしても避けなければ!
 私にだって多少なりともプライドというものはある。
 このまま負けっぱなしでたまるか!

「め、めい……っ!」
「ん? なんですか、お姉ちゃん?」

 私たちが食べたあとの食器を洗ってくれているめいに、今がチャンスだと思って声をかけた。
 今なら反撃し放題だと思ったからだ。
 しかし、どう反撃しようかというのは全く何も思いついていない。

「な、なんでもない……」
「そうですか……」

 私が俯きながらそう言うと、めいは不思議そうに首を傾げていたが、すぐに作業を再開した。
 どうしよう。困った。何も思いつかない。これじゃあ変なやつじゃんか。

 しかし、私がめいの背後を取れるのは好都合かもしれない。
 今、めいの両手は塞がっている。その場所を動くことはない。よし、行ける!
 私は少しずつめいに近づいていき、すぐ背後まで来た。
 なるべく音を立てないように、めいの腰あたりに手を伸ばす。

「ひゃっ!?」

 そしてその手は、めいの腰を撫でることに成功した。
 ……できた。やっていることは到底姉っぽさとはかけ離れているが、年上の意地を見せる時だ。
 私は後ろから両腕でめいを抱き寄せ、ぎゅうっとお腹全体を包み込む。
 どこにも行ってしまわないように。どこかへ行っても、また自分の元に戻ってきてくれるように。

「お、お姉ちゃ……っ!」
「ふふ、後ろから抱きつかれるの落ち着かない?」
「そ、そりゃ落ち着かないですよ。どうしたんですか? そんなことしなくてもわたしはどこにも行きませんよ?」
「……そんなのわかってる。私がしたいだけ」

 ついわがままを言ってしまった。
 これだから年上っぽさも姉っぽさもないと言われるのだ。

 だけど、そんなことはどうだっていい。
 私は当初の目的を忘れ、今自分がしたいことに専念した。
 めいの声もだんだん困惑から高揚に変わっていき、身体に力が入らなくなったようだった。

 ――その時。
 ――パリィン!

 高い音が聞こえ、私とめいは一瞬硬直する。
 そして、一拍遅れてそのことに気づく。
 皿が割れた。

「どうしよう……」

 めいが持っていた皿から手を離したのがいけなかったとはいえ、皿から手を離す原因を作ったのは私だ。
 とりあえず、めいが怪我していないか見ておかないと。

「だ、大丈夫……?」
「ふぇっ? あ、はい。わたしは全然……お姉ちゃんこそ、大丈夫ですか?」
「え、何が?」
「だってこれ、お姉ちゃんのお皿ですよね……」
「あー……そういうことか……」

 確かによく見てみると、私の皿だ。
 でも、それならよかった。
 妹の皿を割ってしまった方が厄介だから。
 それに、皿なんてまた違うものを買えばいい。
 皿にこだわりがあるわけじゃないし。

 でも、めいはすごく申し訳なさそうだ。
 そんなに気にしなくていいのに。

「と、とりあえず、わたしが割れちゃったお皿を片付けますので……!」
「え、一緒にやった方がはやくない?」
「一人でやれますから!」

 私は、そう言われると相手の言ったことを尊重してしまうタイプだ。
 真意はどうであれ、その言葉を振り切って「いいから一緒にやるよ!」なんて言って破片をゴミ袋に入れていくなんてことは、私にはできない。
 だから仕方なく、割れた皿はめいに任せることにした。

「……ふぅ、終わりました」
「ん……お疲れ」

 めいは手際がいい。
 むしろ私が手伝う方が、めいの邪魔になっていたような気がする。
 だから、むしろこれでよかったのだ。

「あの、ほんとすみません……お姉ちゃんのお皿を割ってしまって……」
「いや、謝るのはこっちの方だよ。私があんなことしなければこんなことには……」
「で、でも……わたしは嬉しかったですよ……!」
「それ言ったら、めいも皿割ったことそんな気にしなくていいよ? 皿なんてまた買えばいいんだから」

 私はそう言って、めいの頭を優しく撫でる。
 触れた瞬間は身体がビクッと震えていたけど、だんだん気恥しそうな表情になる。
 めちゃくちゃ可愛い。
 普段は私より断然姉っぽいのに、こういう時に妹っぽくなるのは、なんというか……ずるい。
 こうされるから、姉妹をやめられないでいる。いや、やめるつもりはないけど。

「お姉ちゃんは優しいですね」
「いや、そんなことないと思うけど……原因は私だし……」
「そんなことなくないです! お姉ちゃんはとっても優しいわたしだけのお姉ちゃんです!」

 なぜめいはそんなに嬉しいことを言ってくれるのか。
 私はこんなに可愛くていい子に優しくされるような人間ではないはずだ。
 まるでどこかの主人公みたいな待遇に、現実味が薄くてこれは夢なんじゃないかと思えてくる。
 だけど……

「お姉ちゃん?」

 私の手を握ってくれるめいの手は、とても暖かかった。
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