姉妹百合なんて興味ない!……はず?

M・A・J・O

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こちらの世界

あけおめの日

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「新年明けましておめでとうございまーす! ということでお姉ちゃん、さっそくイチャイチャしましょう!」
「年の初めからいきなりなんなの!? ということでってなに!?」

 新しい年の幕開け。
 めいは当然のようにうちにいた。
 もうすっかり我が家の一員だ。

 おせち料理が並ぶテーブルに、礼儀正しくちょこんと座っている。
 それなのに、その口から出てきた言葉は礼儀正しさからかけ離れた、ただの恋人厨と化した。
 その本人は座ったまま私に近寄って手を伸ばす。小柄なはずなのに、その手が異様に長く見えた。

「ちょ、ま、力強い……っ!」

 私の必死の抵抗はなんの役にも立たず、飛びついてきためいに引っ張られるがままになる。
 そして、めいとの距離が完全にゼロになろうとした時。

「おはよーでーす……」

 なんだか気だるそうな声が聞こえる。
 寝ぼけているのか、フラフラと足取りがおぼつかない。
 その様子は酔ったおっさんとなんら変わらなかった。

「お、おはよ、うみ」
「うみちゃん、めちゃくちゃフラフラしてるけど大丈夫ですか?」

 私はめいの手をばっと振り払い、うみに気づかれないようにする。
 まあ、うみはまだ半分寝ているようなものだからそこまで意識しなくてもよかったのかもしれないが。

 それにしても、今回は簡単に振りほどけたな。
 さっきはビクともしなかったのに。
 うみの方に意識を持っていかれたということだろうか。
 ならばうみに感謝しなくては。
 しつこいとウザがられるだろうけど。

「んんん、んーん? あ、あけおめことよろー」

 棒読み気味の「あけおめ」をいただいた。
 まだ完全には目が覚めていないようだ。

「あけおめことよろ」
「え? あ、じゃあわたしも……あけおめことよろです」
「うふふー、よろしい」

 私たちの返事に満足したのか、なにもせず自室に帰っていく。
 ……なにをしに来たのだろう。
 おせち料理にも手をつけずにまた寝にいった。

 新年の挨拶をしたかっただけなのだろうか。
 それはそれとして、めいがすごく目を輝かせている。
 とても眩しくて目を合わせられなかった。

「また二人きりですね、お姉ちゃん」

 声を可愛くさせながら擦り寄ってくる。
 私はもうそれだけで落ちそうだった。
 でも、今は……

「おせち料理食べて少し休憩してからならいいよ」
「それからならいいんですね!?」
「うわ、びっくりした……」

 私の言葉に過剰に反応するめい。
 顔をずいっと近づけて声も大きかったため、思わず耳を塞いでしまった。

「あ、ご、ごめんなさい……つい……」

 めいはなんだかすごく申し訳なさそうにしている。
 その様子は「待て」と命令された犬のようで、こっちも申し訳なくなる。

「う……別にいいけど……」
「ほんとですか……?」

 うるうると涙目で見つめてくるめいに、ぐっときている自分がいた。
 もう本当に、めいに影響されまくっている。
 めいなしではいられなくなるのではないかと思うほどに。
 割と手遅れな気がするが。

「じゃ、さっさと食べちゃお」
「お、お姉ちゃん乗り気ですね」
「ちがっ……! めいの料理を早く食べたいから……!」
「えっ……」
「……あ」

 しまった。変なことを口走ってしまった。
 思わず本音がポロリと……
 めいの作ってくれたおせち料理がすごく美味しそうで食欲をそそる。
 さすがはめい。私の好みをよくわかっている。……じゃなくてっ!

「お、お姉ちゃ……嬉しすぎます……」
「あ、いや、その……なんというか、すごく美味しそうだからね」

 めいに「早くイチャイチャしたがっている」と誤解されないように言った言葉で、まさかこうなってしまうとは。
 口は災いの元というのは本当のようだ。
 ……いや、この場合は災いなのかどうか怪しいが。

「お、お姉ちゃんが……わたしのことを褒めて……えへへ……」

 めいのにやけ顔が止まらない。
 私はもうどう反応したらいいかわからない。

「と、とりあえず食べよっか」
「は、はい!」

 なんとか話題を逸らすことに成功。
 めいの料理が冷めてしまってはもったいないから。
 私はおせち料理に手を伸ばし、めいもそれに続いた。

「ん! お、美味しい……!」

 おせち料理を口に入れた瞬間に思わず声が出てしまった。
 それほど美味しかった。
 さすがはめいだ。

「えへへ……ありがとうございます」

 めいもおせち料理に手をつけると、とても幸せそうな顔をする。
 その笑顔は見ているこっちまで幸せにさせるような、そんな笑顔だった。

「お姉ちゃん、あーんしてください」
「……へ?」

 おせち料理を食べていると突然そんなことを言われる。
 私は思わず間抜けな声が出てしまった。

「だからあーんですよ! あーん!」
「え、いや……イチャイチャは食べた後にって」
「お姉ちゃんに! あーんしたいんです!」

 いや、わからない。全く以て理解ができない。
 なぜ私がそんなことをされなければならないのかが謎だ。
 というかその前にまだ心の準備ができてないのだけど……っ!

「お願いです……お姉ちゃん……!」

 そんなうるうるとした瞳で見つめられたら断れないじゃんか……!
 もう、どうにでもなれ!
 私は覚悟を決める。

 それに今のめいにはなにを言っても無駄だ。
 わがまま妹モードになったら止められない。
 私はめいの箸につままれたおせち料理を口に入れる。

「どうですか?」
「……美味しいよ」

 おせち料理は美味しかった。
 しかし、それ以上に……

「お姉ちゃんがわたしの手料理を食べてくれて……すごく嬉しいです……」

 幸せそうな顔をするめいを見て、私の心は満たされていったのだった。
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