姉妹百合なんて興味ない!……はず?

M・A・J・O

文字の大きさ
41 / 47
あちらの世界

大切にしたい

しおりを挟む
「美味しかったね……!」
「え、えぇ、そうね!」

 あれから結局、ドキドキしすぎて話題が見つかることはなく、気まずいままクレープ屋に立ち寄った。
 しかし、そんな中でもちゃんと味を感じられたのはよかったのかもしれない。
 私としてはクレープ屋に行くのは初めてだったから新鮮でなかなかに楽しかった。
 また今度一緒に来れたらいいな……

「さて、次はどうする? 行きたいところクレープ屋だけ?」
「えーっと……」

 もうすぐ日も暮れる時間だ。
 そろそろ帰らないと、今日の夕食当番は私だった気がする。
 だけど、めるともう少しだけ一緒にいたい。

 今日一日を振り返ってみると気まずさしか残ってないかもしれないけど、めるとこうしてデートしている事実だけで胸がいっぱいになりそうだった。
 ――本当に幸せだ。

「うい? どうしたの?」

 ボーッとしていたらめるに声をかけられた。
 いけない、今はデート中なのだから余計なことを考えるべきではない。
 私は慌てて返事をする。

「えっ!? あ、いや! なんでもない!」
「そ、そう……じゃあ」

 すると突然手を握られ、心臓が大きく跳ね上がる。
 そしてそのままグイッと引っ張られて体勢が崩れた。

「わっ!?」

 私の手を引いているのはもちろんめるしかいないわけで。
 いきなりこんなことをされて動揺しない方がおかしいだろう。
 しかも、私が顔を上げるとちょうど前を向いているめるの横顔が見えてしまい、さらに鼓動が激しくなる。

「これなら少しは寂しくないわよね?」
「……はい」

 めるの言葉に小さく答えることしかできない自分が悔しかった。
 きっと今の自分の顔を見られたくなかったからだ。

 だって、こんなの……反則じゃないか。
 いつもより優しく微笑む横顔にときめいてしまったなんて言えるはずがない。
 だから私は俯いて歩くしかなかったのだ。
 次に行く場所が決まらなくて適当に歩いているだけでも、私はそれでいい気がした。
 可愛くて大好きなめると手を繋いで……いや、手を引かれて歩いていることそのものに意味があると思ったから。

 それに、もし目的地があったとしても、そんなことはどうでもよくなっただろう。
 なぜなら――

「める、大好きだよ」

 自然と言葉が溢れ出てしまうくらいには幸せな気分に浸っていたのだから。

「うい、あなたは……」
「ん?」
「……いえ、なんでも」
「えー! なにそれー!」

 めるの言いかけたことが気になったけど、教えてくれなかったので諦めることにした。
 でも、めるの顔を見てみるとなんだか頬を染めているような……まさかね。
 そんなはずはない。
 だって、私がめるのことを勝手に好きになっているだけなのだから。

 めるが本気で振り向いてくれることはない。
 付き合っているのも、私がグイグイ行っただけだから。
 きっと、ただそれだけの関係に過ぎない。
 だから勘違いしてはいけない。

「……ん? どうしたの?」

 ふと見ると、いつの間にか立ち止まっているめるがいた。
 その表情はとても真剣なもので、思わず見惚れてしまうほど美しかった。
 やっぱり好きなんだよな……

 改めて思い知らされる気持ち。
 この感情をうっかり吐き出さないためにはどうすればいいのかわからない。
 いっそこのまま言ってしまおうかとも思ったが、ここで言ったところで困らせるだけだという結論に至り、口を閉ざすことにした。

「……なんでもないよ」
「そうなの? なんかつらそうな顔してたわよ?」
「え……ほんと?」
「えぇ、もしかして体調悪いとか……」
「違う! 元気だよ!」
「そう。それならいいわ」

 ホッとしたように息をつく朔良さんを見ると、胸の奥がきゅっと締め付けられた。
 私は心配されるほどの顔をしていたらしい。
 そんなにわかりやすいだろうか……

 だとしたら嫌だな。
 バレないようにしないと。
 でも、いつか本当の意味でちゃんと告白できたらいいなと思う。

「……よしっ! じゃあ行くわよ!」
「はい!」

 今度は手を繋いだまま歩き出す。
 めるの手は温かくて、とても心地よかった。
 私は今日一日を振り返ってみて思う。
 今日は今までの人生で一番幸せな日だったと。

 そして同時に、もう二度と来ることのない思い出なのだろうと。
 今日をずっと忘れずに心に刻み込んでおこう。
 そう誓った一日だった。

「だって、多分……気まぐれだろうから」

 私は自嘲気味に呟く。
 あの時の行動は本当に理解できなかったから。
 どうして自分なんかをデートに誘ったのか。

 その理由を知る由もない。
 でも、それでいいと思った。
 理由なんて知ってしまったら、きっと期待してしまうから。

 それに、たとえ自分に都合の良い解釈をしたって何も変わらない。
 だから、私は自分の想いを心の中に押しとどめておくことに決めたのだ。
 ただ、一つだけ言えることがあるとするならば――

「やっぱり私は……めるのことが大好きだ」

 この恋だけは絶対大切にしたいということだけだった。
 だけどその言葉はめるに届くことはなく、風に乗ってどこかへ飛んでいった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ハーレムが大好きです!〜全ルート攻略開始〜

M・A・J・O
大衆娯楽
【大衆娯楽小説ランキング、最高第7位達成!】 黒髪赤目の、女の子に囲まれたい願望を持つ朱美。 そんな彼女には、美少女の妹、美少女の幼なじみ、美少女の先輩、美少女のクラスメイトがいた。 そんな美少女な彼女たちは、朱美のことが好きらしく――? 「私は“百合ハーレム”が好きなのぉぉぉぉぉぉ!!」 誰か一人に絞りこめなかった朱美は、彼女たちから逃げ出した。 …… ここから朱美の全ルート攻略が始まる! ・表紙絵はTwitterのフォロワー様より。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...