姉妹百合なんて興味ない!……はず?

M・A・J・O

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あちらの世界

めい:味方

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「にしてもびっくりしたなー。まさかめいもそうだったなんて」
「いや、それはこっちのセリフなんですが……」

 次から次へと色々なことが押し寄せて、頭がパンクしそうだった。
 変な人に絡まれて女好きだと噂を流され、さらにそれを聞きつけたお姉ちゃんがまさかのわたしと同じ女好き。
 これにはさすが姉妹、というべきなのか。

 心なしか登校時より軽くなったランドセルを背負いながら、お姉ちゃんと一緒に下校する。
 この悩みを打ち明けられる人なんていないと思ってたから、素直に嬉しかった。
 だけど、現実はそう甘くない。
 いずれにせよわたしが同性愛者だという噂は広まったままなわけで、それに対する解決策は見つからないままだ。

「そうだ! いいこと思いついたよ!」

 隣を歩くお姉ちゃんが、突然大きな声を上げた。

「なにを思いついたんですか?」
「みんなに堂々と自分は女の子が好きなんだと主張すればいいんだよ!」
「……はい?」

 予想外すぎる言葉に、思わず立ち止まってしまった。
 お姉ちゃんはそんなわたしにはお構いなしに話を続ける。

「だってほら、別に隠す必要もないし? そういうのを隠さないといけない世の中の方が間違ってるんだよ」
「いや……でも、わたしは普通じゃないわけですし」
「私だって女の子が好きなんだよ? 普通とか普通じゃないとかって、だれが決めたの?」
「そ、それは……」

 確かに誰が決めたのか分からないけど、世間的には少数派であることは間違いなかった。
 だからそれを公にするという勇気はない。
 黙り込むわたしに対して、お姉ちゃんはさらに畳みかけるように言う。
 その表情はとても楽しげだった。

「それにね、もしそれでいじめられたとしても、私は味方になるから安心してよ」
「お姉ちゃん……」

 きっと、それは本心。
 同情心からでも、嘘やその場限りの安い言葉でもない。
 同じ境遇にいるからこそ、純粋に手を伸ばしてくれる。
 そんな存在がいることが何よりも嬉しく感じてしまった。

 気がつけば目元からは涙が流れ落ちていて、慌てて拭う。
 その様子を見たお姉ちゃんは慌てふためき始めた。
 どうしたらいいかわからずにあたふたしているその姿は少し滑稽だったが、それでも笑い飛ばす気にはならない。
 というより、わたしにそれほどまでの余裕がなかった。

「どっ、どどどどうした!? 最近泣き虫おさまってきてたのにっ!」
「……うるさいですよ」

 わたしは涙を必死に拭いながらどうにか言葉を絞り出す。
 お姉ちゃんは戸惑いながらも優しく背中をさすってくれていた。
 それが余計に感情を刺激してきて、さらに涙が流れる。

 結局、それからしばらくわたしは泣き続けた。
 その間ずっとお姉ちゃんはそばを離れず、「大丈夫だよ」と言ってくれた。
 ようやく落ち着いてきたところで、わたしは顔を上げる。
 そこには心配そうな顔をしながらも微笑むお姉ちゃんがいた。

「ごめんなさい、ありがとうございます」
「いえいえ、困った時はお互い様だからね。あー、もう目が真っ赤になってるじゃないか。帰ったら冷やさないとダメだね」

 そう言ってハンカチを取り出したお姉ちゃんは、そのままわたしの目元を拭き始める。
 まるで子供扱いされてるようで恥ずかしかったけど、不思議とその手を払い除けようとは思わなかった。
 しばらくして落ち着いた頃合いを見計らって、お姉ちゃんが口を開く。

「まぁとにかく、元気出してね。私じゃ力不足かもしれないけど、いつでも相談に乗るから」
「お姉ちゃんが力不足とか……あるわけないですよ」
「ふふん、もっと褒めてくれてもいいんだよ?」

 胸を張って得意げにする姿はいつも通りのお姉ちゃんで、わたしは思わず笑ってしまう。
 それを見たお姉ちゃんも釣られて笑顔になった。
 やっぱりお姉ちゃんはすごいと思う。
 こんなにも簡単にわたしのことを立ち直らせてくれたんだから。

 この人の妹として生まれてこれたことを誇りに思う。
 わたしのためにここまでしてくれる人を、失望させるようなことは絶対にできない。
 そう決意すると、自然と気持ちも前向きになる。

「よし! 決めました!」
「なにを?」

 突然大声を出したわたしに驚いている様子だが、そんなのお構いなし。

「わたし、堂々と女の子が好きなんだって言いますよ! わたしはなにも間違ったことをしていない! ただ同性に惹かれることのなにが悪いんですか!」
「おお! その意気だよ! めいなら絶対できる!」

 お姉ちゃんは目を輝かせて嬉しそうに応援してくれた。
 それを見てさらにやる気が出てくる。
 ……よし、頑張ろう!
 わたしはこの先どんな困難があっても乗り越えられる気がしていた。

 たとえどんなことが起きても、きっとお姉ちゃんは味方でいてくれるだろうから。
 その安心感で、わたしはどこへでも進める気がした。
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