真っ赤な吸血少女は好きな人を傷つけたくてたまらない【完結済み】

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第一章 吸血少女は傷つけたい

仲が良くない

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「あのさ、花恋ちゃん。星見先輩とどういう関係なの?」
「どういう……って?」

 高等部の一年三組。
 ここがあたしの教室で、渚とお泊まりできてルンルンなあたしに話しかけてきたのがクラスメイトの朝倉あさくら夏樹なつきちゃんだった。

「とぼけないで! 私の目はごまかせないんだから!」
「だからなんの話を……」
「だ、だって、その、星見先輩とすれ違った時に花恋ちゃんと同じ匂いしたし、この前星見先輩と目合った時に二人ともすごく嬉しそうだったし……そ、そういうこと……なんでしょ?」

 夏樹ちゃんの言葉を反芻して、「あぁ」と合点がいった。
 つまり夏樹ちゃんは、あたしと渚の関係が恋仲だとにらんでいるらしい。
 恋愛系の話は苦手なはずなのに、そういうところは目ざといなと思う。

「夏樹ちゃんって恋バナ苦手でしょ? 無理して詮索しなくても……」
「えっ! あ、いや、そうなんだけど……だからこそ興味あるっていうか……人の恋愛話なら聞いていられるというか……」

 なるほど、自分にそういう話を振られるのが苦手というわけだ。
 自分には恋愛というものがわからないから、人から聞いて知っておきたい……みたいな?
 別に話してもいいけれど、そうするとつい口がすべってあたしの性癖さえも暴露しかねない。
 それはなんとしても阻止しなければ。

「うーん、話してもいいけど……あたしおしゃべりだからさ。うっかり過激なことも言っちゃうかも?」
「え、え、じゃあ、その、やっぱいいや……」

 終始挙動不審で去っていく夏樹ちゃん。
 いつもはこんな子じゃないんだけどな。
 やっぱり慣れないことはするものじゃないということか。

 それにしても、なぜ夏樹ちゃんはあたしと渚が恋仲だということに気づいたのだろう。
 渚が目立つのは嫌だからって付き合ってることは内緒にしてるんだけど……
 まあ、同じシャンプー使ってる時点でバレるか。
 でもまさかそんなことで嗅ぎつけられるとは思わなかった。

 よく同じ匂いしてると付き合ってるとか言われることがあるけど、そんなわけないだろうと思って油断していた。
 もしかしたら夏樹ちゃん以外に、察しがいい人はもう気づいているのかもしれない。
 学年も部活動も違って接点がないのに、女の勘というものは意外と侮れないのかも。

「花恋先輩、ちょっといいですか?」
「ん?」

 休み時間になると、不機嫌そうな顔をしている中等部の子に声をかけられた。
 誰だっけ? と一瞬悩んだけど、その後輩の顔を見てすぐに思い出した。
 ――そうだ。この子、渚の妹だ。

「ここじゃちょっとあれなので……来てもらえませんか?」
「あー……そういうことね。わかった」

 なんとなく用件を察したあたしは、彼女の後について行った。
 連れてこられた場所は体育館裏。
 あまり日が当たらないじめじめとしたこの場所は、〝秘密の話〟をするには最適だ。
 だからこそ、彼女はここにあたしを連れてきたのだろう。

「昨日お姉ちゃんとお泊まりしたんですって?」
「まあね。というか、二人なんだから昔みたいにタメ口でいいんだよ?」
「そうするとうっかり人前でもタメ口で話してしまいそうなので……ほんとはタメ口で罵倒したいですけどガマンします」
「うわー、あたし完全に嫌われてるね」
「当然でしょう? 私の大事なお姉ちゃんに手を出したんですから。今すぐ私の手で殺してやりたいくらいですよ」

 昔からそうだが、この子のシスコン具合は半端ない。
 あたしが告白しようと思った時も、何度邪魔されたことか。
 それでも渚があたしのことを好きだという想いを踏みにじりたくないのか、付き合ってからはあたしたちの仲を邪魔することはなくなったけど。

「それで、わざわざ呼び出した理由はなにかな?」
「花恋先輩……あなたまたお姉ちゃんの身体にキズをつけましたね?」
「あー、そっかそっか。その話をしたかったのね」

 おそらく、渚から直接あるいはメッセージアプリでそのことを知ったんだろう。
 このお姉ちゃん大好きな妹からしたら、大切なお姉ちゃんの身体にキズをつけられるなんてたまったもんじゃないのかもね。

「花恋先輩、これ以上お姉ちゃんを傷つけるなら――花恋先輩の異常性癖をみんなにバラしてやりますからね」
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