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第一章 吸血少女は傷つけたい
優等生でいたい
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そういえば、渚の妹の名前ってなんだったっけ。
あたしは渚にしか興味がないから、他の子の名前を覚えられない。
表向きは優等生である以上、クラスメイトの名前は覚えなきゃいけないがそれは心配ない。
すぐに顔と名前がわかるものの、一旦クラスが別になったり関わることがなくなると、途端に忘れてしまうだけ。
自分で言うのもなんだけど、ほんとにあたしは渚一筋なんだなと感じる。
昔からずっと渚のことしか考えていない。
「……ん?」
そんなことを考えていると、ふと視界の端でなにか動くものを見つけた。
そちらへ視線を向けると、そこには一人の女子生徒がいた。
いやまあ、女子校だから生徒は女子しかいないんだけど。
彼女は体育館の中を覗いて、それからキョロキョロと辺りを見渡していた。
なにをしているのだろう。
あたしは珍しくその人に興味を持って、話しかけてみることにした。
「あのー、なにされているんですか?」
「あ、あなたって確か一年の黒衣さんよね? よく先生たちが『いい子』だってウワサしてるわ。それがなくても髪が真っ赤で印象に残るけど」
「は、はぁ……そうなんですか」
あたしの問いに対して、その人は答えてくれなかった。
まあ、初対面だから仕方ないだろうけど。
それにしても、先生たちがウワサしているとはいえよくあたしの名前知ってるな。
あたしはこの人の名前知らないのに。
「あ、ごめんなさい。名乗ってなかったわね。私は百木蒼衣よ。星見さんと同じクラスなの。だからあなたの一個先輩ってことね」
「――っ!」
あたしはその人の言葉に凍りついた。
もしかして、あたしと渚の関係を知っているのでは。
さっきの渚の妹とのやり取りがあったから、そういうことに敏感になってしまっていた。
「それでね、星見さんを探しているのだけど……あなたなにか知らない?」
「なぎ……星見先輩、いないんですか?」
「そうなの。次の体育でペアを組むことになったから色々と話がしたかったのだけど、どこにもいなくて困っているのよ」
「なるほど……」
この人……百木先輩の言葉から察するに、まだあたしと渚がどういう関係なのか気づいていないみたいだ。
それならば、いつもの優等生モードで接すれば特に何事も起こらなくて済むだろう。
さすがに先輩相手に悪魔モードを出すのは気が引ける。
「すみません、あたしにもちょっとわからないですね……星見先輩と同室の方ならなにか知ってるかもしれませんが……」
「そう……じゃあ、見かけたら教えてくれるかしら? 一応連絡先交換しましょう」
「えっと、はい。お願いします」
百木先輩はスマホを取り出し、QRコードを表示した。
なので、あたしも自分のものを表示させて読み取ってもらう。
これで連絡先の交換が完了した。
「ありがとう。助かるわ。それじゃあね」
「はい。なにかあったら連絡しますね」
やっぱり百木先輩はなにも知らないみたいだ。
あたしと渚の関係も、あたしが百木先輩との会話の中でウソをついたことも。
悪気はなかったのだが、正直に言ってしまうとあたしにとって都合が悪かった。
あたしは渚の居場所を知っている。
みんなの王子様な渚が姿を消す時は、だいたいあたしのせいなことが多い。
だから百木先輩には申し訳ないけど、ウソをつかせてもらった。
「さて、渚のところに行こう」
それからすぐにあたしは渚の元へと向かおうとした。
だが、体育館を出てすぐのこと。
ちょうど校舎裏の方へと歩いていく渚の姿を見つけてしまったのだ。
「あれ? ……あー、そういうことか」
いつもなら空き教室で人知れずうずくまっているから、外で見かけて一瞬驚いた。
だけど、心優しい渚のことだ。
自分を探している百木先輩のことを聞いて、その人のためにと出てきたのだろう。
あたしはそんな渚のためにいそいで駆け寄る。
「渚。ここにいたんだ」
「え、花恋ちゃん? どうして……」
駆け寄って見た渚の姿は、とても弱々しいものだった。
あたしは渚にしか興味がないから、他の子の名前を覚えられない。
表向きは優等生である以上、クラスメイトの名前は覚えなきゃいけないがそれは心配ない。
すぐに顔と名前がわかるものの、一旦クラスが別になったり関わることがなくなると、途端に忘れてしまうだけ。
自分で言うのもなんだけど、ほんとにあたしは渚一筋なんだなと感じる。
昔からずっと渚のことしか考えていない。
「……ん?」
そんなことを考えていると、ふと視界の端でなにか動くものを見つけた。
そちらへ視線を向けると、そこには一人の女子生徒がいた。
いやまあ、女子校だから生徒は女子しかいないんだけど。
彼女は体育館の中を覗いて、それからキョロキョロと辺りを見渡していた。
なにをしているのだろう。
あたしは珍しくその人に興味を持って、話しかけてみることにした。
「あのー、なにされているんですか?」
「あ、あなたって確か一年の黒衣さんよね? よく先生たちが『いい子』だってウワサしてるわ。それがなくても髪が真っ赤で印象に残るけど」
「は、はぁ……そうなんですか」
あたしの問いに対して、その人は答えてくれなかった。
まあ、初対面だから仕方ないだろうけど。
それにしても、先生たちがウワサしているとはいえよくあたしの名前知ってるな。
あたしはこの人の名前知らないのに。
「あ、ごめんなさい。名乗ってなかったわね。私は百木蒼衣よ。星見さんと同じクラスなの。だからあなたの一個先輩ってことね」
「――っ!」
あたしはその人の言葉に凍りついた。
もしかして、あたしと渚の関係を知っているのでは。
さっきの渚の妹とのやり取りがあったから、そういうことに敏感になってしまっていた。
「それでね、星見さんを探しているのだけど……あなたなにか知らない?」
「なぎ……星見先輩、いないんですか?」
「そうなの。次の体育でペアを組むことになったから色々と話がしたかったのだけど、どこにもいなくて困っているのよ」
「なるほど……」
この人……百木先輩の言葉から察するに、まだあたしと渚がどういう関係なのか気づいていないみたいだ。
それならば、いつもの優等生モードで接すれば特に何事も起こらなくて済むだろう。
さすがに先輩相手に悪魔モードを出すのは気が引ける。
「すみません、あたしにもちょっとわからないですね……星見先輩と同室の方ならなにか知ってるかもしれませんが……」
「そう……じゃあ、見かけたら教えてくれるかしら? 一応連絡先交換しましょう」
「えっと、はい。お願いします」
百木先輩はスマホを取り出し、QRコードを表示した。
なので、あたしも自分のものを表示させて読み取ってもらう。
これで連絡先の交換が完了した。
「ありがとう。助かるわ。それじゃあね」
「はい。なにかあったら連絡しますね」
やっぱり百木先輩はなにも知らないみたいだ。
あたしと渚の関係も、あたしが百木先輩との会話の中でウソをついたことも。
悪気はなかったのだが、正直に言ってしまうとあたしにとって都合が悪かった。
あたしは渚の居場所を知っている。
みんなの王子様な渚が姿を消す時は、だいたいあたしのせいなことが多い。
だから百木先輩には申し訳ないけど、ウソをつかせてもらった。
「さて、渚のところに行こう」
それからすぐにあたしは渚の元へと向かおうとした。
だが、体育館を出てすぐのこと。
ちょうど校舎裏の方へと歩いていく渚の姿を見つけてしまったのだ。
「あれ? ……あー、そういうことか」
いつもなら空き教室で人知れずうずくまっているから、外で見かけて一瞬驚いた。
だけど、心優しい渚のことだ。
自分を探している百木先輩のことを聞いて、その人のためにと出てきたのだろう。
あたしはそんな渚のためにいそいで駆け寄る。
「渚。ここにいたんだ」
「え、花恋ちゃん? どうして……」
駆け寄って見た渚の姿は、とても弱々しいものだった。
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