真っ赤な吸血少女は好きな人を傷つけたくてたまらない【完結済み】

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第一章 吸血少女は傷つけたい

○してしまうかもしれない

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「黒衣さん、連絡くれてありがとう。それで……なにしてるのかしら?」
「あ、百木先輩。星見先輩が逃げ出さないように縛っておきました」
「ありがたいけれど……ちょっとやりすぎじゃないかしら……」

 渚はあたしと抱き合っているうちに傷の痛みがやんだらしく、「そろそろ百木さんのところへ行かないと」とつぶやいた。
 そんな渚を制止して、ここに百木先輩を呼ぶことにした。
 渚の手首をロープで縛ったのは軽いジョークのつもりだったのだが、百木先輩には効果がないらしい。
 ロープをつけようと思った時も渚に「それやったら花恋ちゃんの性癖バレちゃわない?」って言われたし。

「ところでそのロープ、どこにあったの?」
「あー、その辺に落ちてました」
「……星花女子学園の治安が心配ね」
「そんなことより、星見先輩のことよろしくお願いしますね」

 百木先輩はあたしの言葉を聞いて目を見開いたあと、ふっと微笑んでうなずいてくれた。
 なんだか少し照れくさくて、頬が熱くなる。
 あたしは渚一筋だからどうしても渚よりは劣ると言わざるを得ないけど、この人にも渚と似た魅力を感じる。

 優しそうな雰囲気で、渚に負けず劣らずの高身長。
 面倒みがよさそうでしっかりしてそうなイメージもある。
 髪が長くてふわふわしてそうな感じもあるから、渚とはタイプが違うだろうけど、百木先輩も渚と同じように女の子にモテそうだ。
 「お姉様」と呼ばれてそうという例えがしっくりくる。

「ま、まあ、なにはともあれほんとにありがとう。助かったわ。今度お礼させてもらえないかしら?」
「え、いいですよ。お気持ちだけで充分です」

 渚のロープを器用に解きながら、あたしに話しかける。
 この人もだれかを縛ったことがあるんだろうか。
 ロープが解けていく速度が尋常じゃない。
 いや、単に手先が器用というだけかもしれないけど。

「そう? じゃあ、あなたもなにかあったら私を頼ってほしいわ。してもらいっぱなしなのってどうにも落ち着かなくてね」
「そういうことなら……わかりました。ありがとうございます」
「いいえ、どういたしまして。それじゃあね」

 百木先輩はひらりと手を振って優雅に去っていった。
 ロープが解けたばかりの渚を連れていきながら。

 二人を見送った後、あたしは一人になった校舎裏でため息をつく。
 今日はどっと疲れた。
 色々と濃い一日だった気がする。

「あぁ……もうすぐ午後の授業始まるなぁ……」

 あたしはまたため息をつくと、教室に戻るべく足を動かした。
 こうしてまたいつも通りの日常に戻っていくのだろう。
 優等生として、授業をサボるわけにはいかない。

 それにあの二人なら放っておいてもいいだろう。
 きっと二人はもし仮にいい雰囲気になっても、どっちかのファンが放っておかないはずだ。
 だからあたしは渚を渡しても平常でいられる。

 ……でもやっぱりちょっと寂しいかも。
 あたしは一人、唇を噛んだ。
 どうしてもあたしの頭の中は渚一色に染まってしまう。
 それぐらい渚のことが好きだということなのだろうが、渚が浮気をすることがないと信じているが、どうにも不安になる。

 こんなあたしだから、きっとすぐに嫌になってしまうに違いない。
 ずっとずっとずっと、そんな考えを抱きながら生きてきた。

 だけどたとえ渚があたしのことを嫌いになって別れを切り出したとしても、あたしは絶対に渚を諦められない自信がある。
 だってあたしは渚が好きで好きで仕方がないのだから。
 もし渚が別れを切り出したその時は――

「……もう今日は早退しようかな」

 あたしはぽつりと、いつになく弱い声でつぶやく。
 一日くらいなら……きっと大丈夫だよね。
 そうと決めて、体調不良の演技を職員室で披露して親に迎えに来てもらったのだった。
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