26 / 62
第一章 吸血少女は傷つけたい
寂しいなんて言わない
しおりを挟む
二人きりの時間を楽しもうと思っても、なにをしたらいいかわからなくてとりあえず今は一緒にゲームをしている。
家で二人きり……と言っても渚の家族は寝室で寝ているだけだけど、起きているのが二人だけなのになんとも味気ない。
恋人としては、もっと違うことをすべきなんじゃないかと思ってしまう。
「……ねえ」
「ん?」
コントローラーを動かしながら声をかけると、渚がこちらを見て首を傾げた。
その仕草はとても可愛くて思わずドキッとするけど、今の目的はそれじゃない。
今からする質問は、あたしにとっては重大なことだったから。
「渚の机の上にあったの見ちゃったんだけど……もしかして、必死で勉強してるの?」
そう聞くと、渚は一瞬驚いたような顔をしたあと、すぐに困ったように笑みを浮かべた。
「そっか、見たんだ。うん……花恋ちゃんには言わなきゃなって思ってたんだけどね」
渚はなにか重要な秘密でも明かすかのように、重々しく口を開いた。
その表情を見てある程度察しがついたけど、あたしはなにも言わないことにした。
渚の口から聞きたかったから。
「私さ、来年大学受験なんだ。知ってると思うけど。だから今のうちに頑張らないとって思って……看護師になりたいから看護大学に行こうかなーって考えてる」
「…………」
「あ、もちろん受かるかどうかはわからないよ? まだ受験すら始まってないしね。それにこの話はまだ誰にも言ってないから、花恋ちゃんが初めてだよ」
渚が看護師になりたいのは知っていたけど、看護大学に行きたいことは知らなかった。
そりゃそうだよね。自分の夢や進路について他人に打ち明けるのは勇気がいることだもん。
渚はあたしの反応を伺うようにしてこっちを見つめていた。
その瞳は不安げに揺れていて、あたしの言葉を待つようだった。
そんな彼女に、なんて言葉をかけたらいいか躊躇われた。
だって、あたしがここで「応援する!」とか言ったら嘘になる気がしたから。
本当は心の中では反対している。
こんなに可愛くてかっこよくて愛しい彼女が遠くに行ってしまったら寂しい。
ずっとそばにいたいと思っていたけど、彼女の人生だから応援くらいはしたい。
でも、恋人としてはどうしても悲しくなってしまう。
あたしだけが置いて行かれるみたいで……
「……頑張ってるんだね」
「うん! ……あ、ごめんね。なんか暗くさせちゃって。えへへ、やっぱり言うんじゃなかったかなぁ」
なんとか言葉を絞り出すと、渚はすぐに笑顔になった。
もうゲームのことなんてどうでもいい。
ただ、渚との会話に集中したかった。
ちゅどーんという爆発音が聞こえてきた気がしたけど、それはただのBGMと化してした。
「あのね、花恋ちゃん。私は将来のためにも大学は出ておいた方がいいと思ってるんだよ。就職するときに役立つこともあるだろうしさ」
「……そっか」
渚の将来のことを考えるとそうなのかもしれないけど……
でもあたしを置いていくのはちょっと嫌だ。
わがままなのはわかっているけど、それでも一緒にいたい。
「花恋ちゃん?」
「なんでもない……」
黙り込んだあたしを心配してくれたのか、渚が顔を覗き込んできたので咄嵯に目を逸らす。
彼女はそんなあたしの行動に疑問を抱いたようだけど、深く追求してくることはなかった。
きっと優しい彼女なら聞かないでくれると思ったからそうしたんだけど……少し罪悪感を覚えた。
そしてふと、あることが頭を過ぎった。
もし渚が大学に合格したら、離ればなれになってしまう。
あたしの進路はまだ決まってないけど、このままなにもしなければそうなってしまうのは明白だ。
「……いく」
「え?」
「あたしも――渚と同じ大学にいく!」
家で二人きり……と言っても渚の家族は寝室で寝ているだけだけど、起きているのが二人だけなのになんとも味気ない。
恋人としては、もっと違うことをすべきなんじゃないかと思ってしまう。
「……ねえ」
「ん?」
コントローラーを動かしながら声をかけると、渚がこちらを見て首を傾げた。
その仕草はとても可愛くて思わずドキッとするけど、今の目的はそれじゃない。
今からする質問は、あたしにとっては重大なことだったから。
「渚の机の上にあったの見ちゃったんだけど……もしかして、必死で勉強してるの?」
そう聞くと、渚は一瞬驚いたような顔をしたあと、すぐに困ったように笑みを浮かべた。
「そっか、見たんだ。うん……花恋ちゃんには言わなきゃなって思ってたんだけどね」
渚はなにか重要な秘密でも明かすかのように、重々しく口を開いた。
その表情を見てある程度察しがついたけど、あたしはなにも言わないことにした。
渚の口から聞きたかったから。
「私さ、来年大学受験なんだ。知ってると思うけど。だから今のうちに頑張らないとって思って……看護師になりたいから看護大学に行こうかなーって考えてる」
「…………」
「あ、もちろん受かるかどうかはわからないよ? まだ受験すら始まってないしね。それにこの話はまだ誰にも言ってないから、花恋ちゃんが初めてだよ」
渚が看護師になりたいのは知っていたけど、看護大学に行きたいことは知らなかった。
そりゃそうだよね。自分の夢や進路について他人に打ち明けるのは勇気がいることだもん。
渚はあたしの反応を伺うようにしてこっちを見つめていた。
その瞳は不安げに揺れていて、あたしの言葉を待つようだった。
そんな彼女に、なんて言葉をかけたらいいか躊躇われた。
だって、あたしがここで「応援する!」とか言ったら嘘になる気がしたから。
本当は心の中では反対している。
こんなに可愛くてかっこよくて愛しい彼女が遠くに行ってしまったら寂しい。
ずっとそばにいたいと思っていたけど、彼女の人生だから応援くらいはしたい。
でも、恋人としてはどうしても悲しくなってしまう。
あたしだけが置いて行かれるみたいで……
「……頑張ってるんだね」
「うん! ……あ、ごめんね。なんか暗くさせちゃって。えへへ、やっぱり言うんじゃなかったかなぁ」
なんとか言葉を絞り出すと、渚はすぐに笑顔になった。
もうゲームのことなんてどうでもいい。
ただ、渚との会話に集中したかった。
ちゅどーんという爆発音が聞こえてきた気がしたけど、それはただのBGMと化してした。
「あのね、花恋ちゃん。私は将来のためにも大学は出ておいた方がいいと思ってるんだよ。就職するときに役立つこともあるだろうしさ」
「……そっか」
渚の将来のことを考えるとそうなのかもしれないけど……
でもあたしを置いていくのはちょっと嫌だ。
わがままなのはわかっているけど、それでも一緒にいたい。
「花恋ちゃん?」
「なんでもない……」
黙り込んだあたしを心配してくれたのか、渚が顔を覗き込んできたので咄嵯に目を逸らす。
彼女はそんなあたしの行動に疑問を抱いたようだけど、深く追求してくることはなかった。
きっと優しい彼女なら聞かないでくれると思ったからそうしたんだけど……少し罪悪感を覚えた。
そしてふと、あることが頭を過ぎった。
もし渚が大学に合格したら、離ればなれになってしまう。
あたしの進路はまだ決まってないけど、このままなにもしなければそうなってしまうのは明白だ。
「……いく」
「え?」
「あたしも――渚と同じ大学にいく!」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
疎遠になった幼馴染の距離感が最近になってとても近い気がする 〜彩る季節を選べたら〜
若椿 柳阿(わかつばき りゅうあ)
ライト文芸
「一緒の高校に行こうね」
恋人である幼馴染と交わした約束。
だが、それを裏切って適当な高校に入学した主人公、高原翔也は科学部に所属し、なんとも言えない高校生活を送る。
孤独を誇示するような科学部部長女の子、屋上で隠し事をする生徒会長、兄に対して頑なに敬語で接する妹、主人公をあきらめない幼馴染。そんな人たちに囲まれた生活の中で、いろいろな後ろめたさに向き合い、行動することに理由を見出すお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる