真っ赤な吸血少女は好きな人を傷つけたくてたまらない【完結済み】

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第二章 吸血少女は愛されたい

心臓が持たない

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 夢のような放課後を過ごした翌日。
 あたしの中で新たな変化が生まれていた。

「あれ、なんだか渚の血を欲しなくなったかも……?」

 そう、愛する渚の血が欲しいという欲求が薄れたのだ。
 今までなら週に一回は必ず吸血していたのに、最近はほとんどしていない。
 もちろん吸血したい気持ちは今も残っているけど、それでも以前ほどじゃない。

 それに加えて、自制ができるようになった気がする。
 渚のことを傷つけたいという感情が、おさまっていくのを感じている。

「昨日馬に乗ったから、感情がリセットされてるのかな……」

 そんなことを呟きながら、いつものように学校に向かう。
 そして校門をくぐり抜けようとしたとき、見覚えのある後ろ姿が視界に入った。

「あ、あの人は確か昨日の……」

 昨日あたしに乗馬を教えてくれた高宮さんだ。
 昨日会った時と服装が違ったけど、あたしにはわかる。
 この人こそが高宮さんだと確信した。

「あの、おはようございます」
「ふぇ? あ、あなたは昨日の……えへへ、おはようございます」

 挨拶をしてみると、彼女は笑顔で返してくれる。
 やっぱりそうだ。間違いない。

「昨日はありがとうございました。おかげですごく楽しかったです!」
「いえいえ、私も楽しかったですよ!」

 そう言って、高宮さんは再び笑う。
 その笑顔を見て、やっぱり高宮さんって綺麗な顔立ちしてるよなと改めて思った。
 あたしは渚一筋だからなびくことはないけど、きっと隠れファンとか多いんだろうな。

 なんてことを考えていると、彼女は急に真剣な表情になった。
 一体どうしたんだろうと思っていると、彼女が口を開く。
 そして出てきた言葉は、意外なものだった。
 それは――

「あの、私に声をかけてくれたってことは、馬の魅力に気がついたんですか!?」
「……はい?」

 一瞬なにを言われたのか理解できなかった。
 だってまさか、そんなことを言われるとは思わなかったから。
 だけど、すぐに理解できた。
 つまり彼女はこう言いたいのだ。
 あたしも馬術部の高宮さんみたいに馬のことが好きになっているんじゃないか、と。

「え、いえ……そこまでは……馬のことよく知りませんし」
「あっ! そ、そうですよね……すみません、私ったら……」

 あたしの言葉を聞いて、高宮さんは顔を赤くしながら俯いた。
 ……なんかかわいいな、この人。

「でもまぁ、馬のこと好きになれたらいいなとは思ってます。なので、これからいろいろ教えてください」
「……っ、はいっ! 任せてくださいっ!」

 元気よく返事をする彼女を見て、思わず笑みがこぼれてしまう。
 なんというか、この人は本当に馬が好きなんだということが感じられる。
 そして彼女とわかれてからトイレに寄ると、ちょうど渚とばったり対面した。
 すると彼女はあたしの顔を見るや否や、なぜか少しだけ驚いたような反応を見せた。

「……花恋ちゃん、なんだか楽しそうだね」
「そう? って、ほんとだ」

 すぐそばにあった鏡を見てみると、確かに頬が緩んでいた。
 これは完全に無意識だった。

「今日なにかあったの?」
「あー、うん。ちょっとね」
「ふーん……ねぇ、今度その話聞かせてくれない?」
「え? 別に構わないけど……どうして?」

 不思議に思いながらも聞き返すと、渚は微笑む。
 ――また放課後迎えに行くから、寮までになるけど一緒に帰ろっか。
 耳元で囁かれた声にドキッとした。
 不意打ちすぎて心臓が跳ね上がって、思わず心停止するところだった。

「花恋ちゃんの話、色々聞かせてよ」
「う、うん……」

 いつも色々話してるんだけどなと思いながら、放課後になるのを楽しみに待つのだった。
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