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第一章 変態とイケ女
弱みを握った相手は前から目をつけていたイケ女でした
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「女の子こそ至高! 女の子しか勝たん!」
女の子が女の子を好きでなにが悪いというのか。
同性愛というのがだんだんと理解されてきている今でも、偏見を持つ人はどうしてもいる。
それは差別されてきた歴史があるから仕方のないことだと頭ではわかっているけど、残念だとも思ってしまう。
だけど、そんな理解してくれない人のことを悩んでいてもどうにもならない。
理解してくれる人だけ、いればいいのだ。
そんなふうに考えている私は、もちろん女の子が好きだ。
私が好きになった相手は、女子校の王子様と言っても過言ではないくらいイケメンな女の子だった。
茶色のポニーテールがよく映えて、その姿を見かけるだけでキラキラと輝いている。
背も高い方で、背が低い私からしたらかなり羨ましい。
スタイルもよくて、胸もほどよくある。
まあ、胸は私の方が大きいけど、大きければいいということでもない。
朔良さんの胸は形がよくて弾力がありそうに見える。一度でいいから触ってみたい。
やっぱり素敵だ。
スポーツ万能でなんでもこなしてしまうし。
優しい性格だから、困っている子がいたらすぐに助けに向かう。
人気も人気で、同じクラスの私でさえ声をかけることができないくらいだった。
いつも周りには女の子がたくさんいるから。
「今日も声かけられなかったなぁ……」
声をかけるどころか近づくことすら許されなかった。
仲良くなりたいと思っても、接点がない。
せめて隣の席だったら話しかけたりできたんだろうけど……
放課後の廊下を、私は意味もなく歩く。
別に早く帰ってもいいんだけど、この日はなぜか学校の中を歩き回りたい気分だったのだ。
オレンジ色に光る廊下は、普段では考えられないほど淋しげで幻想的だった。
ふと、私は王子と呼ばれるあの人が隣にいてくれたらと妄想した。
『放課後の学校ってなんかいいよな』
『わかります。切ない気分になるんですけど、そこがいいんですよね』
『さみしくならないように、手繋ぐか?』
『え、い、いいんですか!? ありがとうございます!』
そう言われて、おそるおそる手を出して……優しげに手を取ってもらって……うふふ、最 & 高。
おっといけない、ついヨダレが。
だれにも見られていないことを確認しつつ、私はスカートのポケットに入っているハンカチを取り出す。
あ、このハンカチは王子から盗んだやつだった。
もちろん、このことはだれにも言っていない。
親しい友人にですら、このことは打ち明けられない。
女の子が好きなだけならまだしも、ストーカーまがいな行動をしていることは言えるわけがなかった。
「ふぅ……いい匂い……」
王子から盗んだハンカチからは、女の子ならではのフローラルな香りが広がる。
まあ、ハンカチだから柔軟剤の匂いなのだろうが、肝心なのは想像力だ。
そう……これは好きな人の所有物であり、好きな人が使っていたかもしれないという事実だけで充分なのだ。
充分、おなかいっぱいになる。ごちそうさまでした。
「ん? なんか音が聞こえる……?」
私は音のした方へと足を向けた。
だれかが喋っている声のように感じる。
でも、モヤがかかっているようになにを話しているのかうまく聞き取れない。
どうやら、空き教室から音がするようだった。
移動教室の時しか使わない場所だ。
ドアについている窓から中を覗いてみると、思わぬ光景が広がっていた。
「え……もしかして、朔良さん……?」
朔良……海道朔良。この学校のイケメン女子。
茶色のポニーテールが特徴的で、明るく快活な笑顔が女の子たちを魅了する。
だというのに、その目線はスマホの画面にそそがれていた。
正確には、スマホに映った二次元の映像に。
もしかして、朔良さんはアニメが好きなんだろうか。
いや、私は人の趣味にとやかく言うことはないが、この学校は校内でスマホを触ることは禁じられている。バレたら没収だ。
しかも、朔良さんは周りに自分がアニメが好きだということを打ち明けていなかったはず……
私は、本当に恐ろしいことを思いついてしまった。
これはまたとないチャンスだ。
ニヤリと口角を上げながら、気づけば私は朔良さんのいる教室のドアを開けていた。
「やばっ! あ、えっと……お前は……」
「小田萌花です。同じクラスですよね」
朔良さんは先生が来たと思ったようで、あわててスマホを隠そうとした。
だが、同じ生徒だと知って安心したようでもあった。
おそらく、彼女は先生に見つかった方がマシだと思うことになるだろうが。
「あー、えっと、このことは……」
「はい、だれにも言いません」
「よかっ」
「ですが、朔良さんが私と付き合ってくれたらの話です」
朔良さんは困惑と恐怖がまざったような顔をしていた。
レアな顔を拝められたが、なんでもないように続ける。
意識したら、またヨダレをたらしそうになってしまうから。
「口封じには、それ相応の見返りがありませんと」
「……じゃあ、どこに付き合えば黙っていてもらえるんだ?」
「はい? そういう意味じゃないですよ? 恋人になりたいという意味です」
朔良さんは絶句して言葉も出ないようだった。
「朔良さんが実はアニメオタクで空き教室で動画を見ていたなんてバレたら……どうなるでしょうね?」
要求の重さに気づいたのか、青ざめた顔で私の顔をじっと見つめる。
先生にスマホを触っていたのをバラすくらいだったら、朔良も私の提案なんかスッパリと断っていただろう。
ここは女子校。朔良さんの秘密がバレたら、女の子たちは手のひらを返して最悪いじめに発展するかもしれない。
アニメオタクに対する偏見は、まだ完全にはなくなっていないから。
女の子たちの理想の王子様であり続けるためには、私の要求をのむのが賢明な判断と言えるだろう。
「さぁ、あなたはどっちを選びますか?」
この時の私は、今までの人生で一番悪どい顔をしていたに違いない。
女の子が女の子を好きでなにが悪いというのか。
同性愛というのがだんだんと理解されてきている今でも、偏見を持つ人はどうしてもいる。
それは差別されてきた歴史があるから仕方のないことだと頭ではわかっているけど、残念だとも思ってしまう。
だけど、そんな理解してくれない人のことを悩んでいてもどうにもならない。
理解してくれる人だけ、いればいいのだ。
そんなふうに考えている私は、もちろん女の子が好きだ。
私が好きになった相手は、女子校の王子様と言っても過言ではないくらいイケメンな女の子だった。
茶色のポニーテールがよく映えて、その姿を見かけるだけでキラキラと輝いている。
背も高い方で、背が低い私からしたらかなり羨ましい。
スタイルもよくて、胸もほどよくある。
まあ、胸は私の方が大きいけど、大きければいいということでもない。
朔良さんの胸は形がよくて弾力がありそうに見える。一度でいいから触ってみたい。
やっぱり素敵だ。
スポーツ万能でなんでもこなしてしまうし。
優しい性格だから、困っている子がいたらすぐに助けに向かう。
人気も人気で、同じクラスの私でさえ声をかけることができないくらいだった。
いつも周りには女の子がたくさんいるから。
「今日も声かけられなかったなぁ……」
声をかけるどころか近づくことすら許されなかった。
仲良くなりたいと思っても、接点がない。
せめて隣の席だったら話しかけたりできたんだろうけど……
放課後の廊下を、私は意味もなく歩く。
別に早く帰ってもいいんだけど、この日はなぜか学校の中を歩き回りたい気分だったのだ。
オレンジ色に光る廊下は、普段では考えられないほど淋しげで幻想的だった。
ふと、私は王子と呼ばれるあの人が隣にいてくれたらと妄想した。
『放課後の学校ってなんかいいよな』
『わかります。切ない気分になるんですけど、そこがいいんですよね』
『さみしくならないように、手繋ぐか?』
『え、い、いいんですか!? ありがとうございます!』
そう言われて、おそるおそる手を出して……優しげに手を取ってもらって……うふふ、最 & 高。
おっといけない、ついヨダレが。
だれにも見られていないことを確認しつつ、私はスカートのポケットに入っているハンカチを取り出す。
あ、このハンカチは王子から盗んだやつだった。
もちろん、このことはだれにも言っていない。
親しい友人にですら、このことは打ち明けられない。
女の子が好きなだけならまだしも、ストーカーまがいな行動をしていることは言えるわけがなかった。
「ふぅ……いい匂い……」
王子から盗んだハンカチからは、女の子ならではのフローラルな香りが広がる。
まあ、ハンカチだから柔軟剤の匂いなのだろうが、肝心なのは想像力だ。
そう……これは好きな人の所有物であり、好きな人が使っていたかもしれないという事実だけで充分なのだ。
充分、おなかいっぱいになる。ごちそうさまでした。
「ん? なんか音が聞こえる……?」
私は音のした方へと足を向けた。
だれかが喋っている声のように感じる。
でも、モヤがかかっているようになにを話しているのかうまく聞き取れない。
どうやら、空き教室から音がするようだった。
移動教室の時しか使わない場所だ。
ドアについている窓から中を覗いてみると、思わぬ光景が広がっていた。
「え……もしかして、朔良さん……?」
朔良……海道朔良。この学校のイケメン女子。
茶色のポニーテールが特徴的で、明るく快活な笑顔が女の子たちを魅了する。
だというのに、その目線はスマホの画面にそそがれていた。
正確には、スマホに映った二次元の映像に。
もしかして、朔良さんはアニメが好きなんだろうか。
いや、私は人の趣味にとやかく言うことはないが、この学校は校内でスマホを触ることは禁じられている。バレたら没収だ。
しかも、朔良さんは周りに自分がアニメが好きだということを打ち明けていなかったはず……
私は、本当に恐ろしいことを思いついてしまった。
これはまたとないチャンスだ。
ニヤリと口角を上げながら、気づけば私は朔良さんのいる教室のドアを開けていた。
「やばっ! あ、えっと……お前は……」
「小田萌花です。同じクラスですよね」
朔良さんは先生が来たと思ったようで、あわててスマホを隠そうとした。
だが、同じ生徒だと知って安心したようでもあった。
おそらく、彼女は先生に見つかった方がマシだと思うことになるだろうが。
「あー、えっと、このことは……」
「はい、だれにも言いません」
「よかっ」
「ですが、朔良さんが私と付き合ってくれたらの話です」
朔良さんは困惑と恐怖がまざったような顔をしていた。
レアな顔を拝められたが、なんでもないように続ける。
意識したら、またヨダレをたらしそうになってしまうから。
「口封じには、それ相応の見返りがありませんと」
「……じゃあ、どこに付き合えば黙っていてもらえるんだ?」
「はい? そういう意味じゃないですよ? 恋人になりたいという意味です」
朔良さんは絶句して言葉も出ないようだった。
「朔良さんが実はアニメオタクで空き教室で動画を見ていたなんてバレたら……どうなるでしょうね?」
要求の重さに気づいたのか、青ざめた顔で私の顔をじっと見つめる。
先生にスマホを触っていたのをバラすくらいだったら、朔良も私の提案なんかスッパリと断っていただろう。
ここは女子校。朔良さんの秘密がバレたら、女の子たちは手のひらを返して最悪いじめに発展するかもしれない。
アニメオタクに対する偏見は、まだ完全にはなくなっていないから。
女の子たちの理想の王子様であり続けるためには、私の要求をのむのが賢明な判断と言えるだろう。
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