イケメン女子を攻略せよ!〜女の子に人気のイケ女の弱みを握ったので、イチャイチャしたりしてどうにかして自分のものにしようと思います〜

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第一章 変態とイケ女

イケ女と仲良くなるにはどうしたらいいかを必死で考えまくっています

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「ふふふふふふ、さてどうしましょうねぇ」

 私は自室で今日の出来事を振り返っていた。
 朔良さんから無理と言われてしまったからキスすることは不可能になってしまったけど、軽いものであれば恋人っぽいことをできるということにテンションが上がっている。
 それに、今日は頭なでなでもしてくれた。
 今日は頭洗いたくないな。一日くらいなら洗わなくても問題ないよね。

「あ、でも、私が脅せばキスもそれ以上もしてくれるのでは……?」

 そうだ、私は朔良さんの弱みを握っているんだった。
 だとすると、主導権はこっちにあって向こうに拒否権はないのでは。

「……いや、それはやめておきましょうか」

 ここでさらに脅せば、朔良さんの中で私のイメージがさらに悪くなってしまうだろう。
 ただでさえ、最初に会話をしたのが朔良さんの弱みを握った時だというのに。
 そこで私に対するイメージとか気持ちとかがゼロどころかマイナスになっているだろう。
 これ以上そのイメージを落とすわけにはいかない。

 なんたって私は、ここから朔良さん攻略のために動き出すのだから。
 終わりよければすべてよし。
 最初の出会いが最悪でも、最後に上手くまとまればそれでいいのだ。

 そういうわけで、もう脅しをしない方向で仲良くする方法を模索する。
 仲良くなるには相手のことをよく知ることが大事だと言われているけれど、私はもう大抵のことを知っている。
 ずっとスト……見てきたから。
 だから、私の方はその段階をクリアしていることになる。

「やっぱり朔良さんに私を知ってもらうとこから始めないと、ですかね……」

 手っ取り早く自分を知ってもらうにはどうしたらいいか。
 私は早い段階で素晴らしい結論へ至った。
 自分を知ってもらうには、自分からさらけ出すことが大事。
 そう、つまりは――ありのままの自分をさらけ出すこと!

「ということは朔良さんに私の裸を見てもらえば万事順調に行くのではっ!?」
「なに言ってんだこの変態」
「ぎゃーっ!? 変態ー!」
「てめーがだろ!?」

 いきなり私の部屋に入ってきた野郎がなにか言っている。
 いや、この状況なら通報されて捕まるのは琉璃の方だけど。
 あ、警察のお世話になりたいってことかな。

「ん、これ借りてたやつ。これ返したかっただけなのに意味不明なこと叫んでてビビったわ」

 そう言って琉璃は、机の上に一冊の本を置く。
 それは私がいらないと思って琉璃の部屋の前に置いたやつだった。
 女の子二人の純愛ものかと思ったら女装男子二人の恋愛ものだったマンガ。
 別にBLは苦手というわけではないのだが、表紙で百合だと思って買ったからショックがデカすぎたのだ。
 詐欺はよくない、詐欺は。

「あー、こんなんいいですよ。私そんなマンガ読まないし」
「は? じゃあ本棚いっぱいのこれはどう説明するんだ?」
「百合は別物なのです」
「いや、そんなキメ顔で断言されても……」

 私の本棚に入っているのは、全て百合漫画だ。
 昔から百合漫画が好きだったし、恋愛の対象も女の子だった。
 私の中ではそれが普通だったから、必然的にこうなったのである。

「ま、なんでもいいけど。これからあいつ来るから静かにしててくれよ」
「え、今からですか? いくらなんでも遅くない?」

 琉璃の言葉に驚いて時計を見てみると、もう六時をまわっていた。
 もうすぐ夕飯という時間帯だ。
 ここから来るとすると、夕飯を一緒に食べるということだろうか。それとも、それ以上のことを……?
 今からだと遊ぶ時間も限られているし、つまりはそういうことなのだろう。

「人の恋を応援するのは癪だけど……頑張ってくださいね」
「……頑張れなんて言われたくねぇな。まあ頑張るけどさ」
「防音対策はしっかりしてくださいね」
「恥ずかしいからんなこというな! つか姉貴がいるのにしねぇよ!」

 おや、私はなになら勘違いをしていたらしい。
 そういうことはしないのか。つまらないな。
 まあ人の情事に……いや事情に興味はないから別にかまわないけど。

 今日も両親の帰りは遅いだろうか。
 遅いと踏んでいるから、琉璃は恋人を連れ込もうとしているのだろうが。
 両親は共働きで家にいないことが多い。
 だけど、たまに早く帰ってくることもあるのに……琉璃は勇者にでもなりたいのかな。
 私には関係ないか。

「今日のご飯担当は俺だろ? チャーハン作っておいたから姉貴はこの部屋で静かに食べててくれ」
「え、私をハブるんですか……?」
「だって姉貴いたらお互い気まずいだろ。それとも姉貴はBLの間に挟まりたい特殊性癖でもこじらせてんのか?」
「一緒にご飯食べるだけなのに特殊性癖呼ばわり……」

 私だって琉璃が朔良さんとの仲を邪魔しようとすればキレるけども。
 女の子にしか興味がないから、ただBLカップルを眺める観葉植物にでもなろうと思っていたのに。
 なぜ琉璃はそう曲解してしまうんだろう。
 多分恋人といるところを見られるのが恥ずかしいだけだと思うが、それなら私がいない時に連れ込んでほしかった。

 ――ピンポーン。

「あ、来たみたいだな。いいから姉貴は大人しくしてろよ」

 そう言って、嬉しそうに飛び跳ねながら玄関へ向かう。
 私はその様子になにも言えなくなって、仕方ないから琉璃が作ってくれたチャーハンを部屋に運ぶことにしたのだった。
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