イケメン女子を攻略せよ!〜女の子に人気のイケ女の弱みを握ったので、イチャイチャしたりしてどうにかして自分のものにしようと思います〜

M・A・J・O

文字の大きさ
11 / 33
第一章 変態とイケ女

萌花とイケ女の仲は縮まりつつあるかもしれません

しおりを挟む
「あたしさ、『たたかうお姫様』って作品は知らないんだけど童話で記憶に残ってんのは『狐とおじいさんはお友だち』ってやつだな」
「あー! それ私も知ってます! とても優しいお話ですよね」

 時計の針が12をさし、各々好きな時を過ごす。
 まあ言ってしまえばお昼ご飯の時間だった。
 いつもは席の近い子たちのグループにまぜてもらっていたのだが、今日は好きな人と二人で向かい合っている。
 その事実だけで天に召されてしまいそうな心地だった。

 しかも、朝のこともあってずっと童話について語っている。
 子どもの頃に見た夢を今語っているなんて、なんだか感慨深い。
 大人になってからも読み返すというのは、きっとこういう気持ちに近いんだろうな。

「ちょっと今持ち歩いてんだけどさ」
「持ち歩……!? えっ!?」

 なんだか朔良さんがおかしなことを言ったような気が……気のせいかな?
 だけど、現実は無情にも現実を突きつけてくる。

「じゃじゃーん」

 オーソドックスな効果音とともに飛び出したのは、雑誌ほどの大きさのある本だった。
 厚さも雑誌と同じくらいで薄め。
 典型的な絵本みたいだ。
 私は教科書の中にあったのを読んだことがある程度だったから、実物を見るのは初めてだ。

 ☆ ☆ ☆

 とある狐の親子が、仲良く人間の街に出かけていました。
 それを街の人たちは驚くでもなく、追い払うでもなく、ただ普通にある光景だと捉えています。
 そして、狐の親子は、見慣れた帽子屋にたどり着くと、その中に入っていきました。

「おじいさん。こんにちは!」
「おや、坊や。今日はどうしたんだい?」

 優しそうな顔をしたおじいさんが、狐の親子を出迎えます。
 狐の親子はじっとおじいさんを見つめて言いました。

「ねぇ、おじいさん。あそぼ!」
「うちの子をどうかよろしくお願いします」

 おじいさんは目をぱちくりさせると、すぐに笑顔を作って「ああ、もちろんだとも」と言いました。
 三人は帽子屋から出て、近くの広場にやってきました。
 春の日差しはポカポカで、三人を明るく照らしだしています。
 まるでお日様が三人を歓迎しているようです。

「そーれ」

 おじいさんがそう言うと、ポケットから小さなボールを取り出し、芝生に転ばしました。
 すると、子狐が目をキラキラと輝かせながらボールを追いかけます。
 その様子を母狐が微笑ましそうに見ています。
 母狐の笑顔を見たおじいさんは、母狐にこう言いました。

「坊やは遊びたい盛りなんだねぇ。こんなに大きくなって……」

 おじいさんがそう言うと、母狐はどこか遠くを見るような目付きになりました。

「ええ、おかげさまで。あなたが助けてくれなかったら今頃……」

 そこで言葉を切り、母狐は再びボールにじゃれている子狐に目を向けました。
 母狐は笑顔を浮かべたまま、あの頃の……おじいさんと出会った時のことを思い出していました。

 ☆ ☆ ☆

 私が中身を見ようとすると、朔良さんが物語の最初の方を朗読してくれた。
 少し低くて落ち着いた声。
 聞いているとリラックスできて、ほのぼのとした気持ちになる。

「朔良さん、朗読上手いですね」
「そうか? そんなことないと思うけどな」
「上手いですよ! ASMRかと思いましたもん!」
「それは……お前が言うといかがわしい意味に聞こえるからあまり嬉しくないな……」

 朔良さんは私の言葉に顔を引きつらせながら笑う。
 なんでそう思ったんだろう。心外だ。
 私は健全な意味でのASMRを思い浮かべていたのに。
 まあ、朔良さんの声似のASMRがあったら、えっちなのだろうが健全なのだろうが即聞きにいくけど。

「あ、てか、話ズレたな。内容思い出せたか?」
「はい。でも朔良さんの声に集中していたのでほとんど内容入ってないですけど」
「入ってねーのかよ」

 朔良さんは今度は普通にちゃんと笑ってくれた。
 やっぱりいい笑顔だなぁ……
 この笑顔をずっと見ていたいと思うのは、私だけだろうか。

 でも、朔良さんは私の笑顔を見ていたいなんて思わないだろうな。
 一人の人にこだわらないだろうし、なんならみんなの笑顔を見ていたいとか言い出しかねない。
 朔良さんの中で特別な人はいない。

「おーい、萌花? どうしたんだ?」
「あ、い、いえ。なんでもないですよ?」

 なんだかしんみりしてしまった。
 いけないいけない。
 私はこの考えを振り切るように、首をブンブン勢いのまま振った。

「うおっ!? ははっ、勢いよすぎだろ」
「これが私の特技ですから。どうです? 恐れ入りましたか?」
「なに言ってんのかわかんねぇ」

 我ながらなに言ってるのかわからないけど、やっぱり朔良さんと笑い合うのは楽しい。
 10年後も20年後もこうして二人で笑い合いたいと思うのは、私のわがままなのだろうか。
 そう思っているうちにお昼終わりのチャイムが鳴ったから、あわてて自分の机に戻った。
 この気持ちのまま授業を受けるのは嫌だったけど、優等生という立場があるから仕方なく午後の授業に臨むのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...