イケメン女子を攻略せよ!〜女の子に人気のイケ女の弱みを握ったので、イチャイチャしたりしてどうにかして自分のものにしようと思います〜

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第二章 凸凹コンビ

やっと勇気が出てきた

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「なぁみんな! 話があるんだけど!」

 次の日、俺は全てを打ち明けることにした。
 正直かなり怖くて足取りも重いけど、昨日のねーちゃんの言葉を思い出すと自然に勇気が出てくる。
 だから思い切って教室に入るなり、大きく息を吸ってそのまま空気を押し出すように言った。

「今噂になってる、俺がホモって話……ほんとのことだ!」

 それまでわいわいと人の話し声で満ちていたのに、俺が言い終わるとしんとした静寂が場を支配する。
 それから少しして、クラスメイト達がざわつき始めた。

「え? まじで?」
「うそ、だって……」
「でも言われてみれば確かに」
「男同士ってキモくない?」

 そんな声がちらほらと聞こえてくる。
 俺は拳を強く握りしめて、それでも必死に笑顔を作り続けた。
 だって、俺はなにも悪いことをしていないのだから。
 ただ堂々と前を向いて、この場に立っていればそれでいい。

 だれにもわかってもらえなくてもいい。
 軽蔑されてもいいし、嫌悪の表情を向けられたって構わない。
 きっと心ない言葉がこれからいくつも浴びせられるだろう。

 だけどもう迷わない。もう逃げない。
 俺は自分の気持ちを貫き通すだけだ。

「俺は絶対逃げねぇ! この気持ちに蓋をしねぇ! けどみんなに押し付ける気もねぇ!」

 しんと静まり返ったまま、誰一人として口を開かない。
 俺はゆっくりと深呼吸をして、みんなの顔を見回した。

「もし……もしもさ、お前らが俺のこと嫌いならそれでいいよ。仕方ないことだと思うから」

 本当は嫌だ。嫌われたくない。
 友達は一人でも多い方がいい。
 でもそれ以上に俺は……

「でもせめて俺だけは絶対に嘘吐きにはならない! この気持ちとちゃんと向き合いたいんだ!」

 そう言って頭を下げる。
 だれにもわかってもらえないと思っていた。
 だけど、誰かが小さく呟いた。

「かっこいい……」

 その瞬間、まるで波紋が広がるかのように次々と言葉が生まれていく。

「そうだよね。好きになったものはしょうがないもんね」
「おれも応援するよ! がんばれ!」

 口々に告げられる温かい言葉の数々。
 俺は思わず泣き出しそうになったけれど、ぐっと堪えた。

 そしてもう一度深く頭を下げてから、自分の席へ向かう。
 これでよかったのかはまだわからない。
 もしかしたらとんでもない間違いを犯しているかもしれない。
 それでも、今の自分にできる精一杯のことをやったと思う。

「これでいいんだよな、ねーちゃん」

 小さく微笑みながら窓の外を見ると、そこには清々しいほどに青々とした空が広がっていた。
 あの後すぐに先生が現れてホームルームが始まったため、ねーちゃんに一歩踏み出せたと伝えられなかった。
 まぁそれは放課後に伝えればいいかと思いつつ授業を受ける。

 昼休みになると、いつものように給食を食べ終えて図書室へ足を運ぶ。
 すると案の定、カウンターには本を読んでいるねーちゃんの姿があった。
 ねーちゃんは図書委員だから、昼休みは必ずここに居るのだ。
 俺はずっと読み込んできた『男の娘だって魔法少女になりたい』シリーズの最新刊を手に取ろうかと思ったけど、今日はやめておくことにした。
 なんとなくだけど、今読んじゃうと続きが気になりすぎて夜眠れなくなりそうな気がしたからだ。

「おや、珍しいですね。琉璃がその本を取らないなんて」
「あ、いや、たまには別の本をと思ってさ」

 咄嵯についた嘘だけど、別に間違ったことは言っていない。
 今日はねーちゃんが好きそうな『中田姉妹の愉快な日常』とやらを読んでみよう。

 表紙を見る限りギャグマンガっぽい感じだし、多分大丈夫だろう。
 それからしばらく待っても誰も来なかったので、俺は近くの椅子に座って読み始める。
 最初はちょっと変な名前だなって思ったけど、読んでみると意外といい話だった。
 特に主人公の女の子が姉のことが大好きで、毎日姉の為に料理を作るシーンとかすごくぐっときた。
 それに何より面白いのが、主人公だけじゃなくてヒロイン達もみんないい子ばかりだということだ。
 特に妹キャラの子が可愛くて、こんな子が近くに居てくれたらと何度も思ってしまう。

「あれ? それ〝なかしま〟じゃないですか! いいですよねぇ! というか琉璃がこういう系の本読むなんてほんと珍しいですね?」

 いつの間にかねーちゃんが隣に来ていて話しかけてきた。
 正直びっくりして心臓が飛び出るかと思った。

「え、あ、あぁ……たまにはいつも読むのとは違う感じのも面白いかなって」
「わかります! 新しいジャンルの開拓って楽しいですよね!」
「なかなかいいもんだな」
「はい! それで琉璃が好きな男の子ってどんな人なんですか?」

 一瞬思考が停止した。
 俺の聞き間違いでなければ、彼女は今『好きな男の子』と言ったはずだ。
 椅子に腰掛けながら、キラキラとなにかを期待していそうな目で見つめてくる。
 俺としてもここまで背中を押してくれたねーちゃんに「変なこと聞くなよ!」と突っぱねることはどうしてもできない。

「あ、なんか用事思い出したわ」
「え、琉璃?」

 俺はちゃんと読んだ本を元の場所に戻して、全速力で図書室を後にした。
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