元天才リベロの僕は、激重ヒロインたちに管理されています。

シエリヌス

文字の大きさ
3 / 31

放課後、白熊と三人の監視者』

しおりを挟む
1

 放課後の昇降口。
 西日が差し込む靴箱の前で、僕は深い、深い溜息をついた。
 今日の授業の内容なんて、何一つ頭に入っていなかった。昼休みのあの出来事――勝手に身体が動いてボールを拾ってしまったこと、そして凛に「逃がさない」と宣言されたことが、脳内で延々とリピートされていたからだ。

「……帰ろう」

 とにかく、一度家に帰って頭を冷やしたい。
 僕は上履きを脱ぎ、ローファーに履き替えようとした。

「お疲れ様です、先輩」

 背後から、絶対零度の声がした。
 ビクリと肩が跳ねる。
 恐る恐る振り返ると、そこには制服のブレザーを萌え袖気味に着崩し、タブレットを抱えた種子島凛が立っていた。
 彼女の背後には、まるでSPのように、あるいは逃亡者を監視する看守のように、鋭い視線が光っている。

「……凛、ちゃん。何の用かな」
「スケジュール通りです。これから『環境整備』と『生活習慣のチェック』を行います」
「え?」
「先輩はまだ正式な入部届を出していませんし、シューズもウェアも持っていない。バレーボールをするための最低限の装備(ハードウェア)が欠落しています」

 凛はタブレットを指先で弾き、地図アプリを表示させて僕に見せた。目的地は、フェリー乗り場の向こう側、鹿児島市街地にある繁華街・天文館だ。

「よって、本日は**強制的な買い出し**を行います。付き合ってください」
「ちょ、ちょっと待ってよ。僕は入部するなんて一言も――」
「拒否権は?」
「……なかど、ですか?」
「正解です。学習能力があって助かります」

 凛はニヤリと笑い、僕の腕を掴もうとした。
 その時だ。

「待ったあぁぁぁっ!!」

 校舎の奥から、ドタドタという足音と共にピンク色の突風が吹いてきた。
 霧島楓だ。
 彼女はものすごい形相で駆け寄ってくると、凛と僕の間に割って入り、僕の右腕をガシッと抱きかかえた。

「なにしてんの!? 悠真をどこに連れて行く気!?」
「……また貴女ですか、霧島先輩。チッ、非効率な」
「舌打ちすんな! 悠真は今日、ウチと一緒に帰る約束しちょっと! 部外者は引っ込んでて!」

 楓が威嚇するように吠える。
 約束なんてしていない。けれど、彼女の中では「放課後は一緒に帰るもの」という不文律が憲法レベルで制定されているのだ。

「奇遇ですね。私も先輩の管理業務があります。……先輩の今の筋肉量は不十分。適切なサプリメントと、足に合ったシューズを選定する必要があります」
「はあ!? シューズなんか買わせないよ! 悠真にバレーなんかさせないって言ってるでしょ!」
「貴女の許可など求めていません」

 バチバチと火花を散らす二人。
 右腕には楓の体温と柔らかい感触。左側には凛の冷徹な殺気。
 挟まれた僕は、胃がキリキリと痛み始めていた。

「……あの、二人とも。僕は一人で帰りたいんだけど」
「ダメ!」
「却下です」

 声がハモる。
 どうすればいいんだ。このままでは昇降口で永遠に綱引きが行われてしまう。

「……あら。面白そうなことをしているわね」

 その時、ふわりと墨のような、あるいは古書のような香りが漂った。
 いつの間にか、下駄箱の影に神宮司雫が佇んでいた。
 彼女は黒いレースの日傘を閉じて手に持ち、優雅に微笑んでいる。

「し、雫……?」
「帰ろうとしたら、君たちの騒ぐ声が聞こえたの。……『買い物』に行くのでしょう? 奇遇ね、私も画材を買いに行こうと思っていたの」

 絶対嘘だ。
 彼女の家の方角は逆だし、手には画材どころか通学カバンすら持っていない。

「日向くん。君が新しい靴を履く瞬間……その『足掻(あが)き』の第一歩、ぜひスケッチさせてもらいたいわ」
「……趣味が悪すぎない?」
「最高の褒め言葉ね」

 雫まで参戦してきた。
 楓、凛、雫。
 三方向からのプレッシャー。
 僕は天を仰いだ。逃げ場はない。これはもう、連行されるしかない運命(さだめ)なのだ。

2

 桜島フェリー、船上。
 行きとは比べ物にならないほどの重苦しい空気が、デッキのベンチを支配していた。

 中央に、僕。
 右隣に、腕を組んで不機嫌そうに頬を膨らませている楓。
 左隣に、僕の腕の太さや脈拍を勝手に計測している凛。
 そして、少し離れた手すりで、海風に髪をなびかせながらこちらを観察している雫。

 ……地獄だ。
 錦江湾の美しい夕日も、今の僕には処刑台へのライトアップにしか見えない。対岸の鹿児島市街地が近づいてくるにつれて、僕の心臓は重くなる。

 市街地に到着し、僕たちは天文館のアーケード街へと足を踏み入れた。
 平日だというのに、多くの人で賑わっている。
 楓は「デートの邪魔はさせない」という執念で、僕の腕をより一層強くホールドした。

「……悠真。ここ入ろ」

 楓が強引に僕を引っ張り込んだのは、鹿児島名物『白熊(しろくま)』で有名な老舗の喫茶店だった。
 レトロなショーケースには、フルーツや寒天で飾られた巨大なかき氷のサンプルが並んでいる。

「え、休憩? まだ着いたばっかりだよ?」
「いーの! 疲れた時は甘いもんなの! 凛ちゃんたちも来るなら来れば?」

 楓は挑発的に言い放ち、店に入っていく。
 凛は「……糖分の摂取タイミングとしては最悪ですが、カロリー計算のデータ収集にはなるか」とブツブツ言いながらついてくる。雫は無言でついてくる。

 四人掛けのテーブル席。
 当然のように僕の隣には楓。向かいの席に凛と雫が座るという、謎の合コン配置になった。

「ご注文は?」
「白熊のレギュラーサイズ、二つ!」
 楓が元気よく注文する。
「私はブラックコーヒーで」(雫)
「お冷だけで結構です」(凛)

 店員さんが去ると、凛が冷ややかな視線を楓に向けた。

「……正気ですか? あの巨大な糖質の塊を、これから運動させる予定の先輩に食べさせるつもりで?」
「うるさいなぁ! 白熊は鹿児島の魂(ソウル)だよ! 悠真はこれが好きなの!」
「非科学的です。血糖値の急上昇(スパイク)はパフォーマンスを低下させます」
「うるさいうるさい! ……あ、来た!」

 ドンッ、とテーブルに置かれたのは、赤ちゃんの頭ほどもある巨大なかき氷だった。
 練乳がたっぷりかかり、フルーツや寒天がカラフルにトッピングされている。上から見ると、レーズンとチェリーで「白熊の顔」に見えるようになっているのが特徴だ。

「わあ、おいしそう! ……はい、悠真。あーん!」

 楓がスプーンで氷をすくい、僕の口元に差し出す。
 いつもの儀式だ。
 普段なら恥ずかしいけれど、諦めて食べる。でも今日は、目の前に二人の観客がいる。

「……楓、自分で食べるよ。恥ずかしいって」
「ダメ。悠真はこぼすもん。ほら、口開けて?」

 楓は引かない。彼女にとって、これは単なる食事ではなく「所有権の主張」なのだ。向かいの席の「泥棒猫」たちに対する、マーキング行為。
 僕は観念して口を開ける。
 甘い練乳の味が広がり、頭がキーンとする。

「……美味しい?」
「うん」
「よかった! じゃあ次はミカンね!」

 イチャイチャ(に見える)光景。
 それを正面から見せつけられた凛は、表情一つ変えずにタブレットに何かを打ち込んだ。

『対象者(先輩)は、精神的ストレスを甘味と他者への依存で解消する傾向あり。自立心、欠如。要改善』

「……声に出して読まないでくれる?」
 僕が抗議すると、凛はふんと鼻を鳴らした。

「事実ですから。……それにしても、先輩。そんなに甘やかされて、恥ずかしくないんですか? 自分のスプーンくらい自分で持ったらどうです」
「う……」
「凛ちゃん、言い過ぎ」
 珍しく、雫が口を挟んだ。

 雫はコーヒーカップを優雅に持ち上げ、少し楽しそうに僕を見ている。

「いいじゃない。餌付けされている小動物みたいで、可愛いわよ」
「……褒めてないよね、それ」
「褒めてるわ。無防備で、愚かで、愛らしい」

 雫はテーブルの下で、ツンと僕の足を靴先で小突いた。
 彼女なりのコミュニケーション(意地悪)だ。

 甘やかす楓。
 管理する凛。
 観察する雫。

 巨大なかき氷が溶けていく中、僕は胃の痛みを感じていた。
 これから毎日、放課後がこんな感じになるのか?
 バレー部の練習の方が、肉体的にはキツくても、精神的には楽なんじゃないか……?

 そんな逃げの思考が頭をよぎった時、凛が唐突に切り出した。

「さて。糖分補給が終わったら、次は**スポーツ用品店**に行きますよ」

「……へ?」

「まさか、弘法筆を選ばずなんて言うつもりないですよね? 明日の練習から参加してもらうために、シューズとサポーターが必要です。……ああ、サイズは測らなくていいです。さっきの接触で、足のサイズも甲の高さも計測済みですから」

 凛はニヤリと笑う。
 逃さない。その目は本気だ。

「ちょ、ちょっと! まだ白熊残ってるし! ていうか、悠真は入部しないって!」
「食べ終わるまで待ちます。……あと3分で」
「早っ!」

 僕の日常(デート)が、侵食されていく。
 天文館の賑わいの中で、僕は悟った。
 もう、あの「選ばなくていい平和な日々」は帰ってこないのだと。

3

 天文館のアーケードを抜け、大通り沿いにある大型スポーツ用品店『ゼビオ』へ。
 自動ドアをくぐると、新しいゴムと布の匂いが鼻をついた。それは、僕が一年間、意識して避けてきた「競技者」の世界の匂いだ。

「……うっ」
 僕は反射的に足を止めそうになる。
 だが、背後から凛が容赦なく背中を押した。

「止まらないでください。バレーコーナーは二階です」
「凛ちゃん、やっぱり今日は帰らない? ほら、楓も怒ってるし」

 チラリと隣を見ると、楓は頬を膨らませて無言の抗議を続けている。彼女にとって、この店は「悠真を傷つける凶器」が売っている場所に他ならない。
 しかし、凛は無視してエスカレーターへ進んだ。

 二階、球技コーナー。
 色とりどりのシューズが並ぶ棚の前で、凛は迷うことなく一つの箱を手に取った。

「はい。これを」
「え、選ぶの早くない?」
「先輩のプレースタイル、足のアーチ形状、過去の使用モデルからの移行しやすさ。すべて計算済みです。……アシックスのローテジャパン、サイズ27.5cm。色は白」

 渡された箱を見て、僕は息を呑んだ。
 それは、僕が中学時代に履いていたモデルの後継機だった。一番足に馴染み、そして――あの最後の試合で履いていた靴と同じシリーズ。

「……試着してください。紐の締め具合も見ますから」

 凛に促され、僕はベンチに座る。
 楓が心配そうに覗き込んできた。

「悠真……履くだけだよ? 買わなくていいからね? 無理しないで」
「……分かってる」

 震える手で箱を開ける。
 真新しいシューズ。まだ誰も足を入れていない、純白の翼。
 僕はローファーを脱ぎ、足を入れる。
 かかとをトントンと床に打ち付け、紐を締め上げる。指先が、足首が、覚えている。この締め付けられる感覚。戦闘服を身に纏うような緊張感。

 僕はゆっくりと立ち上がった。

 ――キュッ。

 床にゴムが擦れる、甲高い摩擦音(スキール音)。
 その瞬間、僕の背筋に電気が走った。

(……ああ、この音だ)

 体育館の床を蹴る音。ボールを追って飛び込む音。
 黒岩監督の怒号と、チームメイトの冷たい視線。
 恐怖の記憶が一気に蘇る。胃が縮み上がるような感覚。脱ぎたい。今すぐ脱いで、逃げ出したい。

 けれど。
 それと同時に、足の裏が熱くなるのを感じた。
 グリップが効いている。これなら、どんなボールにも反応できる。
 右へ、左へ。重心を少しずらすだけで、身体がバネのように反応しようとする。
 怖いのに、身体が「動きたがって」いる。

「……どうですか?」

 凛の声が、どこか遠くから聞こえた。
 見ると、彼女は僕の足元を熱っぽい瞳で見つめていた。

「重心が安定しましたね。……やっぱり先輩の足には、革靴なんかよりそっちの方が似合います」
「……重いよ、これ」
 僕は強がって言う。「色んなものが染み付いてて、重い」

「慣れますよ。私が背中を蹴飛ばしてでも走らせますから」
 凛は不敵に笑う。

「悠真!」
 たまらず、楓が僕の腕を引いた。

「脱いで! そんなの履かなくていい! 悠真が辛そうな顔してるの見たくない!」
「楓……」
「行こう、悠真。映画の時間始まっちゃうよ。ね? こんなの脱いで、帰ろう?」

 楓の必死な声。彼女は本気で僕を守ろうとしてくれている。この靴は、僕を地獄へ連れ戻す拘束具に見えているのだろう。
 僕は靴紐に手をかけた。脱ごう。楓の言う通りだ。こんなものを履いていたら、また壊れてしまう。

「……あら」

 その時、少し離れた場所から見ていた雫が、ポツリと呟いた。

「随分と、『いい音』がするのね」

 雫は興味深そうに、僕の足元を見ている。

「美術室での君は、静かで、死んでいて、美しかったわ。……でも、今のその靴を履いた君の立ち姿も、悪くない」
「え……」
「なんていうか、そうね。……『生贄(いけにえ)』が祭壇に上がる前の覚悟、みたいな。悲壮感があってゾクゾクするわ」

 雫なりの独特な感性。でも、彼女は「脱げ」とは言わなかった。

 脱げと叫ぶ楓。
 履けと命じる凛。
 面白がる雫。

 僕は深呼吸をする。
 足元の感触を確かめる。キュッ、キュッ。
 ……嫌な音だ。でも、不思議と落ち着く音でもある。
 この音がなければ、僕はまた「選べないまま」の一日を過ごすことになる。

「……これ、ください」

 僕は小さく、店員さんに告げた。

「悠真!?」
 楓が目を見開く。
「……入部は、まだ決めてない。でも、とりあえず靴くらいは、持っててもいいかなって。……運動不足解消とか、そういうのだから」

 それは僕なりの、精一杯の言い訳だった。
 凛が「よし」と小さくガッツポーズをしたのが見えた。

4

 店を出ると、空はすっかり茜色に染まっていた。
 手にはスポーツ用品店の大きな紙袋。その重みが、ずっしりと腕にかかる。

 三人と別れ、僕は自宅へ戻った。
 玄関ドアを開けた瞬間、僕は空気が「重い」ことを察知した。

「……ただいま」
「お帰り、お兄ちゃん」

 リビングへ続く廊下に、妹の小春が腕組みをして立っていた。
 その目は、獲物を狙うスナイパーのように鋭い。視線は、僕が背中に隠そうとした紙袋に釘付けだ。

「……何持ってるの?」
「え、いや、これは……」
「『ゼビオ』の袋だね。天文館の。あそこで買うものなんて、アレしかないじゃん」

 小春はズカズカと歩み寄ると、僕の手から紙袋をひったくった。
 ガサゴソと中身を確認する。

「……やっぱり。バレーシューズ」
「小春、返せよ」
「へえ。お兄ちゃん、バレーやるんだ」

 小春の声は平坦だったが、そこには微かな驚きと、何かを探るような色が混じっていた。
 その時、リビングの奥から母さんが飛び出してきた。

「悠真! あんた、バレー部に入るって本当ね!?」

 母さんはエプロン姿のまま、蒼白な顔で僕に詰め寄った。

「え、なんで母さんが知ってるの?」
「さっき、楓ちゃんからLINEが来たのよ! 『悠真が靴を買ってしまった。止められなかった、ごめんなさい』って!」

 ……楓。
 あの過保護な幼馴染は、僕が家に帰るまでの数分の間に、すでに実家への通報を完了していたらしい。恐るべき情報網だ。

「大丈夫なの? またあんな……ご飯も喉を通らないくらい、辛い思いするんじゃないの? 無理しなくていいのよ? 先生に言って辞めさせてもらう?」

 母さんの声が震えている。
 中学時代の僕――毎日げっそりと痩せていき、家でも怯えたように過ごしていた時期――を知っているからこその、純粋な心配だ。
 それが痛いほど分かるから、僕は言葉に詰まる。

「……違うよ、母さん。まだ入部するって決めたわけじゃない」
「でも、靴……!」
「形から入っただけだよ。……大丈夫だから」

 苦しい言い訳だ。
 母さんは不安そうに僕を見つめ、それから助けを求めるように小春を見た。

「小春からも何か言ってあげてよ。お兄ちゃん、また無理しようとしてる」

 小春は紙袋から新しいシューズを取り出し、しげしげと眺めていた。
 そして、鼻を鳴らした。

「……いいんじゃない? 別に」
「え?」
「だってさ。お兄ちゃん、ここ一年くらいずっと『死んだ魚』みたいな顔して生きてたじゃん。楓さんの金魚のフンみたいにへらへらしてさ」

 小春の毒舌が炸裂する。グサグサと刺さる。

「でも、今日はなんか違うよ」
「違う?」
「うん。……『マシな顔』してる。魚で言えば、活け造り直前くらいの鮮度はある」

 どんな例えだ。
 小春はシューズを乱暴に紙袋に戻し、僕の胸に押し付けた。

「母さんも心配しすぎ。お兄ちゃんも高校生なんだから、自分で決めたならやらせてみれば? ……まあ、また泣いて帰ってきたら私が笑ってやるけど」

 小春はそう言い捨てて、自分の部屋へと戻っていった。
 去り際、ボソッと「頑張れば」と聞こえた気がしたが、空耳かもしれない。

「悠真……」
 母さんはまだ不安そうだ。
 僕はシューズの入った袋を強く握りしめた。

「大丈夫だよ、母さん。……昔みたいに、言われるがままにはならない。今回は、自分で……」

 言いかけて、僕は言葉を濁した。
 自分で選んだ、と言えるほどの自信はまだない。凛に選ばされたようなものだ。
 でも。

「……とりあえず、持っていくだけ持っていくよ」

 僕は逃げるように自室へ上がり、ベッドに倒れ込んだ。
 枕元のスマホが鳴る。楓からのLINEだ。
 『明日、やっぱり靴は置いていこう? 重いし。私が預かろうか?』
 続けて、知らないID(たぶん凛)からの通知。
 『明日の朝練メニューを送ります。起床時間は5時30分です』

 通知画面を見つめながら、僕は天井を仰いだ。
 前門の母&楓。後門の妹&凛。
 僕の家にも、安息の地は残されていなかった。

(……やるしかないのか)

 新品のゴムの匂いが、部屋の中に微かに漂っていた。
 それは、嵐の予感の匂いだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

SSS級の絶世の超絶美少女達がやたらと俺にだけ見え見えな好意を寄せてくる件について。〜絶対に俺を攻略したいSSS級の美少女たちの攻防戦〜

沢田美
恋愛
「ごめんね、八杉くん」 中学三年の夏祭り。一途な初恋は、花火と共に儚く散った。 それ以来、八杉裕一(やすぎ・ゆういち)は誓った。「高校では恋愛なんて面倒なものとは無縁の、平穏なオタク生活を送る」と。  だが、入学した紫水高校には《楽園の世代》と呼ばれる四人のSSS級美少女――通称《四皇》が君臨していた。  • 距離感バグり気味の金髪幼馴染・神行胱。  • 圧倒的カリスマで「恋の沼」に突き落とす銀髪美少女・銀咲明日香。  • 無自覚に男たちの初恋を奪う、おっとりした「女神」・足立模。  • オタクにも優しい一万年に一人の最高ギャル・川瀬優里。  恋愛から距離を置きたい裕一の願いも虚しく、彼女たちはなぜか彼にだけ、見え見えな好意を寄せ始める。 教室での「あーん」に、放課後のアニメイトでの遭遇、さらには女神からの「一緒にホラー漫画を買いに行かない?」というお誘いまで。  「俺の身にもなれ! 荷が重すぎるんだよ!」  鋼の意志でスルーしようとする裕一だが、彼女たちの純粋で猛烈なアプローチは止まらない。 恋愛拒否気味な少年と、彼を絶対に攻略したい最強美少女たちの、ちょっと面倒で、でも最高に心地よい「激推し」ラブコメ、開幕!

俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました

ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。 意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。 しかし返ってきたのは―― 「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。 完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。 その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

処理中です...