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放課後、白熊と三人の監視者』
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1
放課後の昇降口。
西日が差し込む靴箱の前で、僕は深い、深い溜息をついた。
今日の授業の内容なんて、何一つ頭に入っていなかった。昼休みのあの出来事――勝手に身体が動いてボールを拾ってしまったこと、そして凛に「逃がさない」と宣言されたことが、脳内で延々とリピートされていたからだ。
「……帰ろう」
とにかく、一度家に帰って頭を冷やしたい。
僕は上履きを脱ぎ、ローファーに履き替えようとした。
「お疲れ様です、先輩」
背後から、絶対零度の声がした。
ビクリと肩が跳ねる。
恐る恐る振り返ると、そこには制服のブレザーを萌え袖気味に着崩し、タブレットを抱えた種子島凛が立っていた。
彼女の背後には、まるでSPのように、あるいは逃亡者を監視する看守のように、鋭い視線が光っている。
「……凛、ちゃん。何の用かな」
「スケジュール通りです。これから『環境整備』と『生活習慣のチェック』を行います」
「え?」
「先輩はまだ正式な入部届を出していませんし、シューズもウェアも持っていない。バレーボールをするための最低限の装備(ハードウェア)が欠落しています」
凛はタブレットを指先で弾き、地図アプリを表示させて僕に見せた。目的地は、フェリー乗り場の向こう側、鹿児島市街地にある繁華街・天文館だ。
「よって、本日は**強制的な買い出し**を行います。付き合ってください」
「ちょ、ちょっと待ってよ。僕は入部するなんて一言も――」
「拒否権は?」
「……なかど、ですか?」
「正解です。学習能力があって助かります」
凛はニヤリと笑い、僕の腕を掴もうとした。
その時だ。
「待ったあぁぁぁっ!!」
校舎の奥から、ドタドタという足音と共にピンク色の突風が吹いてきた。
霧島楓だ。
彼女はものすごい形相で駆け寄ってくると、凛と僕の間に割って入り、僕の右腕をガシッと抱きかかえた。
「なにしてんの!? 悠真をどこに連れて行く気!?」
「……また貴女ですか、霧島先輩。チッ、非効率な」
「舌打ちすんな! 悠真は今日、ウチと一緒に帰る約束しちょっと! 部外者は引っ込んでて!」
楓が威嚇するように吠える。
約束なんてしていない。けれど、彼女の中では「放課後は一緒に帰るもの」という不文律が憲法レベルで制定されているのだ。
「奇遇ですね。私も先輩の管理業務があります。……先輩の今の筋肉量は不十分。適切なサプリメントと、足に合ったシューズを選定する必要があります」
「はあ!? シューズなんか買わせないよ! 悠真にバレーなんかさせないって言ってるでしょ!」
「貴女の許可など求めていません」
バチバチと火花を散らす二人。
右腕には楓の体温と柔らかい感触。左側には凛の冷徹な殺気。
挟まれた僕は、胃がキリキリと痛み始めていた。
「……あの、二人とも。僕は一人で帰りたいんだけど」
「ダメ!」
「却下です」
声がハモる。
どうすればいいんだ。このままでは昇降口で永遠に綱引きが行われてしまう。
「……あら。面白そうなことをしているわね」
その時、ふわりと墨のような、あるいは古書のような香りが漂った。
いつの間にか、下駄箱の影に神宮司雫が佇んでいた。
彼女は黒いレースの日傘を閉じて手に持ち、優雅に微笑んでいる。
「し、雫……?」
「帰ろうとしたら、君たちの騒ぐ声が聞こえたの。……『買い物』に行くのでしょう? 奇遇ね、私も画材を買いに行こうと思っていたの」
絶対嘘だ。
彼女の家の方角は逆だし、手には画材どころか通学カバンすら持っていない。
「日向くん。君が新しい靴を履く瞬間……その『足掻(あが)き』の第一歩、ぜひスケッチさせてもらいたいわ」
「……趣味が悪すぎない?」
「最高の褒め言葉ね」
雫まで参戦してきた。
楓、凛、雫。
三方向からのプレッシャー。
僕は天を仰いだ。逃げ場はない。これはもう、連行されるしかない運命(さだめ)なのだ。
2
桜島フェリー、船上。
行きとは比べ物にならないほどの重苦しい空気が、デッキのベンチを支配していた。
中央に、僕。
右隣に、腕を組んで不機嫌そうに頬を膨らませている楓。
左隣に、僕の腕の太さや脈拍を勝手に計測している凛。
そして、少し離れた手すりで、海風に髪をなびかせながらこちらを観察している雫。
……地獄だ。
錦江湾の美しい夕日も、今の僕には処刑台へのライトアップにしか見えない。対岸の鹿児島市街地が近づいてくるにつれて、僕の心臓は重くなる。
市街地に到着し、僕たちは天文館のアーケード街へと足を踏み入れた。
平日だというのに、多くの人で賑わっている。
楓は「デートの邪魔はさせない」という執念で、僕の腕をより一層強くホールドした。
「……悠真。ここ入ろ」
楓が強引に僕を引っ張り込んだのは、鹿児島名物『白熊(しろくま)』で有名な老舗の喫茶店だった。
レトロなショーケースには、フルーツや寒天で飾られた巨大なかき氷のサンプルが並んでいる。
「え、休憩? まだ着いたばっかりだよ?」
「いーの! 疲れた時は甘いもんなの! 凛ちゃんたちも来るなら来れば?」
楓は挑発的に言い放ち、店に入っていく。
凛は「……糖分の摂取タイミングとしては最悪ですが、カロリー計算のデータ収集にはなるか」とブツブツ言いながらついてくる。雫は無言でついてくる。
四人掛けのテーブル席。
当然のように僕の隣には楓。向かいの席に凛と雫が座るという、謎の合コン配置になった。
「ご注文は?」
「白熊のレギュラーサイズ、二つ!」
楓が元気よく注文する。
「私はブラックコーヒーで」(雫)
「お冷だけで結構です」(凛)
店員さんが去ると、凛が冷ややかな視線を楓に向けた。
「……正気ですか? あの巨大な糖質の塊を、これから運動させる予定の先輩に食べさせるつもりで?」
「うるさいなぁ! 白熊は鹿児島の魂(ソウル)だよ! 悠真はこれが好きなの!」
「非科学的です。血糖値の急上昇(スパイク)はパフォーマンスを低下させます」
「うるさいうるさい! ……あ、来た!」
ドンッ、とテーブルに置かれたのは、赤ちゃんの頭ほどもある巨大なかき氷だった。
練乳がたっぷりかかり、フルーツや寒天がカラフルにトッピングされている。上から見ると、レーズンとチェリーで「白熊の顔」に見えるようになっているのが特徴だ。
「わあ、おいしそう! ……はい、悠真。あーん!」
楓がスプーンで氷をすくい、僕の口元に差し出す。
いつもの儀式だ。
普段なら恥ずかしいけれど、諦めて食べる。でも今日は、目の前に二人の観客がいる。
「……楓、自分で食べるよ。恥ずかしいって」
「ダメ。悠真はこぼすもん。ほら、口開けて?」
楓は引かない。彼女にとって、これは単なる食事ではなく「所有権の主張」なのだ。向かいの席の「泥棒猫」たちに対する、マーキング行為。
僕は観念して口を開ける。
甘い練乳の味が広がり、頭がキーンとする。
「……美味しい?」
「うん」
「よかった! じゃあ次はミカンね!」
イチャイチャ(に見える)光景。
それを正面から見せつけられた凛は、表情一つ変えずにタブレットに何かを打ち込んだ。
『対象者(先輩)は、精神的ストレスを甘味と他者への依存で解消する傾向あり。自立心、欠如。要改善』
「……声に出して読まないでくれる?」
僕が抗議すると、凛はふんと鼻を鳴らした。
「事実ですから。……それにしても、先輩。そんなに甘やかされて、恥ずかしくないんですか? 自分のスプーンくらい自分で持ったらどうです」
「う……」
「凛ちゃん、言い過ぎ」
珍しく、雫が口を挟んだ。
雫はコーヒーカップを優雅に持ち上げ、少し楽しそうに僕を見ている。
「いいじゃない。餌付けされている小動物みたいで、可愛いわよ」
「……褒めてないよね、それ」
「褒めてるわ。無防備で、愚かで、愛らしい」
雫はテーブルの下で、ツンと僕の足を靴先で小突いた。
彼女なりのコミュニケーション(意地悪)だ。
甘やかす楓。
管理する凛。
観察する雫。
巨大なかき氷が溶けていく中、僕は胃の痛みを感じていた。
これから毎日、放課後がこんな感じになるのか?
バレー部の練習の方が、肉体的にはキツくても、精神的には楽なんじゃないか……?
そんな逃げの思考が頭をよぎった時、凛が唐突に切り出した。
「さて。糖分補給が終わったら、次は**スポーツ用品店**に行きますよ」
「……へ?」
「まさか、弘法筆を選ばずなんて言うつもりないですよね? 明日の練習から参加してもらうために、シューズとサポーターが必要です。……ああ、サイズは測らなくていいです。さっきの接触で、足のサイズも甲の高さも計測済みですから」
凛はニヤリと笑う。
逃さない。その目は本気だ。
「ちょ、ちょっと! まだ白熊残ってるし! ていうか、悠真は入部しないって!」
「食べ終わるまで待ちます。……あと3分で」
「早っ!」
僕の日常(デート)が、侵食されていく。
天文館の賑わいの中で、僕は悟った。
もう、あの「選ばなくていい平和な日々」は帰ってこないのだと。
3
天文館のアーケードを抜け、大通り沿いにある大型スポーツ用品店『ゼビオ』へ。
自動ドアをくぐると、新しいゴムと布の匂いが鼻をついた。それは、僕が一年間、意識して避けてきた「競技者」の世界の匂いだ。
「……うっ」
僕は反射的に足を止めそうになる。
だが、背後から凛が容赦なく背中を押した。
「止まらないでください。バレーコーナーは二階です」
「凛ちゃん、やっぱり今日は帰らない? ほら、楓も怒ってるし」
チラリと隣を見ると、楓は頬を膨らませて無言の抗議を続けている。彼女にとって、この店は「悠真を傷つける凶器」が売っている場所に他ならない。
しかし、凛は無視してエスカレーターへ進んだ。
二階、球技コーナー。
色とりどりのシューズが並ぶ棚の前で、凛は迷うことなく一つの箱を手に取った。
「はい。これを」
「え、選ぶの早くない?」
「先輩のプレースタイル、足のアーチ形状、過去の使用モデルからの移行しやすさ。すべて計算済みです。……アシックスのローテジャパン、サイズ27.5cm。色は白」
渡された箱を見て、僕は息を呑んだ。
それは、僕が中学時代に履いていたモデルの後継機だった。一番足に馴染み、そして――あの最後の試合で履いていた靴と同じシリーズ。
「……試着してください。紐の締め具合も見ますから」
凛に促され、僕はベンチに座る。
楓が心配そうに覗き込んできた。
「悠真……履くだけだよ? 買わなくていいからね? 無理しないで」
「……分かってる」
震える手で箱を開ける。
真新しいシューズ。まだ誰も足を入れていない、純白の翼。
僕はローファーを脱ぎ、足を入れる。
かかとをトントンと床に打ち付け、紐を締め上げる。指先が、足首が、覚えている。この締め付けられる感覚。戦闘服を身に纏うような緊張感。
僕はゆっくりと立ち上がった。
――キュッ。
床にゴムが擦れる、甲高い摩擦音(スキール音)。
その瞬間、僕の背筋に電気が走った。
(……ああ、この音だ)
体育館の床を蹴る音。ボールを追って飛び込む音。
黒岩監督の怒号と、チームメイトの冷たい視線。
恐怖の記憶が一気に蘇る。胃が縮み上がるような感覚。脱ぎたい。今すぐ脱いで、逃げ出したい。
けれど。
それと同時に、足の裏が熱くなるのを感じた。
グリップが効いている。これなら、どんなボールにも反応できる。
右へ、左へ。重心を少しずらすだけで、身体がバネのように反応しようとする。
怖いのに、身体が「動きたがって」いる。
「……どうですか?」
凛の声が、どこか遠くから聞こえた。
見ると、彼女は僕の足元を熱っぽい瞳で見つめていた。
「重心が安定しましたね。……やっぱり先輩の足には、革靴なんかよりそっちの方が似合います」
「……重いよ、これ」
僕は強がって言う。「色んなものが染み付いてて、重い」
「慣れますよ。私が背中を蹴飛ばしてでも走らせますから」
凛は不敵に笑う。
「悠真!」
たまらず、楓が僕の腕を引いた。
「脱いで! そんなの履かなくていい! 悠真が辛そうな顔してるの見たくない!」
「楓……」
「行こう、悠真。映画の時間始まっちゃうよ。ね? こんなの脱いで、帰ろう?」
楓の必死な声。彼女は本気で僕を守ろうとしてくれている。この靴は、僕を地獄へ連れ戻す拘束具に見えているのだろう。
僕は靴紐に手をかけた。脱ごう。楓の言う通りだ。こんなものを履いていたら、また壊れてしまう。
「……あら」
その時、少し離れた場所から見ていた雫が、ポツリと呟いた。
「随分と、『いい音』がするのね」
雫は興味深そうに、僕の足元を見ている。
「美術室での君は、静かで、死んでいて、美しかったわ。……でも、今のその靴を履いた君の立ち姿も、悪くない」
「え……」
「なんていうか、そうね。……『生贄(いけにえ)』が祭壇に上がる前の覚悟、みたいな。悲壮感があってゾクゾクするわ」
雫なりの独特な感性。でも、彼女は「脱げ」とは言わなかった。
脱げと叫ぶ楓。
履けと命じる凛。
面白がる雫。
僕は深呼吸をする。
足元の感触を確かめる。キュッ、キュッ。
……嫌な音だ。でも、不思議と落ち着く音でもある。
この音がなければ、僕はまた「選べないまま」の一日を過ごすことになる。
「……これ、ください」
僕は小さく、店員さんに告げた。
「悠真!?」
楓が目を見開く。
「……入部は、まだ決めてない。でも、とりあえず靴くらいは、持っててもいいかなって。……運動不足解消とか、そういうのだから」
それは僕なりの、精一杯の言い訳だった。
凛が「よし」と小さくガッツポーズをしたのが見えた。
4
店を出ると、空はすっかり茜色に染まっていた。
手にはスポーツ用品店の大きな紙袋。その重みが、ずっしりと腕にかかる。
三人と別れ、僕は自宅へ戻った。
玄関ドアを開けた瞬間、僕は空気が「重い」ことを察知した。
「……ただいま」
「お帰り、お兄ちゃん」
リビングへ続く廊下に、妹の小春が腕組みをして立っていた。
その目は、獲物を狙うスナイパーのように鋭い。視線は、僕が背中に隠そうとした紙袋に釘付けだ。
「……何持ってるの?」
「え、いや、これは……」
「『ゼビオ』の袋だね。天文館の。あそこで買うものなんて、アレしかないじゃん」
小春はズカズカと歩み寄ると、僕の手から紙袋をひったくった。
ガサゴソと中身を確認する。
「……やっぱり。バレーシューズ」
「小春、返せよ」
「へえ。お兄ちゃん、バレーやるんだ」
小春の声は平坦だったが、そこには微かな驚きと、何かを探るような色が混じっていた。
その時、リビングの奥から母さんが飛び出してきた。
「悠真! あんた、バレー部に入るって本当ね!?」
母さんはエプロン姿のまま、蒼白な顔で僕に詰め寄った。
「え、なんで母さんが知ってるの?」
「さっき、楓ちゃんからLINEが来たのよ! 『悠真が靴を買ってしまった。止められなかった、ごめんなさい』って!」
……楓。
あの過保護な幼馴染は、僕が家に帰るまでの数分の間に、すでに実家への通報を完了していたらしい。恐るべき情報網だ。
「大丈夫なの? またあんな……ご飯も喉を通らないくらい、辛い思いするんじゃないの? 無理しなくていいのよ? 先生に言って辞めさせてもらう?」
母さんの声が震えている。
中学時代の僕――毎日げっそりと痩せていき、家でも怯えたように過ごしていた時期――を知っているからこその、純粋な心配だ。
それが痛いほど分かるから、僕は言葉に詰まる。
「……違うよ、母さん。まだ入部するって決めたわけじゃない」
「でも、靴……!」
「形から入っただけだよ。……大丈夫だから」
苦しい言い訳だ。
母さんは不安そうに僕を見つめ、それから助けを求めるように小春を見た。
「小春からも何か言ってあげてよ。お兄ちゃん、また無理しようとしてる」
小春は紙袋から新しいシューズを取り出し、しげしげと眺めていた。
そして、鼻を鳴らした。
「……いいんじゃない? 別に」
「え?」
「だってさ。お兄ちゃん、ここ一年くらいずっと『死んだ魚』みたいな顔して生きてたじゃん。楓さんの金魚のフンみたいにへらへらしてさ」
小春の毒舌が炸裂する。グサグサと刺さる。
「でも、今日はなんか違うよ」
「違う?」
「うん。……『マシな顔』してる。魚で言えば、活け造り直前くらいの鮮度はある」
どんな例えだ。
小春はシューズを乱暴に紙袋に戻し、僕の胸に押し付けた。
「母さんも心配しすぎ。お兄ちゃんも高校生なんだから、自分で決めたならやらせてみれば? ……まあ、また泣いて帰ってきたら私が笑ってやるけど」
小春はそう言い捨てて、自分の部屋へと戻っていった。
去り際、ボソッと「頑張れば」と聞こえた気がしたが、空耳かもしれない。
「悠真……」
母さんはまだ不安そうだ。
僕はシューズの入った袋を強く握りしめた。
「大丈夫だよ、母さん。……昔みたいに、言われるがままにはならない。今回は、自分で……」
言いかけて、僕は言葉を濁した。
自分で選んだ、と言えるほどの自信はまだない。凛に選ばされたようなものだ。
でも。
「……とりあえず、持っていくだけ持っていくよ」
僕は逃げるように自室へ上がり、ベッドに倒れ込んだ。
枕元のスマホが鳴る。楓からのLINEだ。
『明日、やっぱり靴は置いていこう? 重いし。私が預かろうか?』
続けて、知らないID(たぶん凛)からの通知。
『明日の朝練メニューを送ります。起床時間は5時30分です』
通知画面を見つめながら、僕は天井を仰いだ。
前門の母&楓。後門の妹&凛。
僕の家にも、安息の地は残されていなかった。
(……やるしかないのか)
新品のゴムの匂いが、部屋の中に微かに漂っていた。
それは、嵐の予感の匂いだった。
放課後の昇降口。
西日が差し込む靴箱の前で、僕は深い、深い溜息をついた。
今日の授業の内容なんて、何一つ頭に入っていなかった。昼休みのあの出来事――勝手に身体が動いてボールを拾ってしまったこと、そして凛に「逃がさない」と宣言されたことが、脳内で延々とリピートされていたからだ。
「……帰ろう」
とにかく、一度家に帰って頭を冷やしたい。
僕は上履きを脱ぎ、ローファーに履き替えようとした。
「お疲れ様です、先輩」
背後から、絶対零度の声がした。
ビクリと肩が跳ねる。
恐る恐る振り返ると、そこには制服のブレザーを萌え袖気味に着崩し、タブレットを抱えた種子島凛が立っていた。
彼女の背後には、まるでSPのように、あるいは逃亡者を監視する看守のように、鋭い視線が光っている。
「……凛、ちゃん。何の用かな」
「スケジュール通りです。これから『環境整備』と『生活習慣のチェック』を行います」
「え?」
「先輩はまだ正式な入部届を出していませんし、シューズもウェアも持っていない。バレーボールをするための最低限の装備(ハードウェア)が欠落しています」
凛はタブレットを指先で弾き、地図アプリを表示させて僕に見せた。目的地は、フェリー乗り場の向こう側、鹿児島市街地にある繁華街・天文館だ。
「よって、本日は**強制的な買い出し**を行います。付き合ってください」
「ちょ、ちょっと待ってよ。僕は入部するなんて一言も――」
「拒否権は?」
「……なかど、ですか?」
「正解です。学習能力があって助かります」
凛はニヤリと笑い、僕の腕を掴もうとした。
その時だ。
「待ったあぁぁぁっ!!」
校舎の奥から、ドタドタという足音と共にピンク色の突風が吹いてきた。
霧島楓だ。
彼女はものすごい形相で駆け寄ってくると、凛と僕の間に割って入り、僕の右腕をガシッと抱きかかえた。
「なにしてんの!? 悠真をどこに連れて行く気!?」
「……また貴女ですか、霧島先輩。チッ、非効率な」
「舌打ちすんな! 悠真は今日、ウチと一緒に帰る約束しちょっと! 部外者は引っ込んでて!」
楓が威嚇するように吠える。
約束なんてしていない。けれど、彼女の中では「放課後は一緒に帰るもの」という不文律が憲法レベルで制定されているのだ。
「奇遇ですね。私も先輩の管理業務があります。……先輩の今の筋肉量は不十分。適切なサプリメントと、足に合ったシューズを選定する必要があります」
「はあ!? シューズなんか買わせないよ! 悠真にバレーなんかさせないって言ってるでしょ!」
「貴女の許可など求めていません」
バチバチと火花を散らす二人。
右腕には楓の体温と柔らかい感触。左側には凛の冷徹な殺気。
挟まれた僕は、胃がキリキリと痛み始めていた。
「……あの、二人とも。僕は一人で帰りたいんだけど」
「ダメ!」
「却下です」
声がハモる。
どうすればいいんだ。このままでは昇降口で永遠に綱引きが行われてしまう。
「……あら。面白そうなことをしているわね」
その時、ふわりと墨のような、あるいは古書のような香りが漂った。
いつの間にか、下駄箱の影に神宮司雫が佇んでいた。
彼女は黒いレースの日傘を閉じて手に持ち、優雅に微笑んでいる。
「し、雫……?」
「帰ろうとしたら、君たちの騒ぐ声が聞こえたの。……『買い物』に行くのでしょう? 奇遇ね、私も画材を買いに行こうと思っていたの」
絶対嘘だ。
彼女の家の方角は逆だし、手には画材どころか通学カバンすら持っていない。
「日向くん。君が新しい靴を履く瞬間……その『足掻(あが)き』の第一歩、ぜひスケッチさせてもらいたいわ」
「……趣味が悪すぎない?」
「最高の褒め言葉ね」
雫まで参戦してきた。
楓、凛、雫。
三方向からのプレッシャー。
僕は天を仰いだ。逃げ場はない。これはもう、連行されるしかない運命(さだめ)なのだ。
2
桜島フェリー、船上。
行きとは比べ物にならないほどの重苦しい空気が、デッキのベンチを支配していた。
中央に、僕。
右隣に、腕を組んで不機嫌そうに頬を膨らませている楓。
左隣に、僕の腕の太さや脈拍を勝手に計測している凛。
そして、少し離れた手すりで、海風に髪をなびかせながらこちらを観察している雫。
……地獄だ。
錦江湾の美しい夕日も、今の僕には処刑台へのライトアップにしか見えない。対岸の鹿児島市街地が近づいてくるにつれて、僕の心臓は重くなる。
市街地に到着し、僕たちは天文館のアーケード街へと足を踏み入れた。
平日だというのに、多くの人で賑わっている。
楓は「デートの邪魔はさせない」という執念で、僕の腕をより一層強くホールドした。
「……悠真。ここ入ろ」
楓が強引に僕を引っ張り込んだのは、鹿児島名物『白熊(しろくま)』で有名な老舗の喫茶店だった。
レトロなショーケースには、フルーツや寒天で飾られた巨大なかき氷のサンプルが並んでいる。
「え、休憩? まだ着いたばっかりだよ?」
「いーの! 疲れた時は甘いもんなの! 凛ちゃんたちも来るなら来れば?」
楓は挑発的に言い放ち、店に入っていく。
凛は「……糖分の摂取タイミングとしては最悪ですが、カロリー計算のデータ収集にはなるか」とブツブツ言いながらついてくる。雫は無言でついてくる。
四人掛けのテーブル席。
当然のように僕の隣には楓。向かいの席に凛と雫が座るという、謎の合コン配置になった。
「ご注文は?」
「白熊のレギュラーサイズ、二つ!」
楓が元気よく注文する。
「私はブラックコーヒーで」(雫)
「お冷だけで結構です」(凛)
店員さんが去ると、凛が冷ややかな視線を楓に向けた。
「……正気ですか? あの巨大な糖質の塊を、これから運動させる予定の先輩に食べさせるつもりで?」
「うるさいなぁ! 白熊は鹿児島の魂(ソウル)だよ! 悠真はこれが好きなの!」
「非科学的です。血糖値の急上昇(スパイク)はパフォーマンスを低下させます」
「うるさいうるさい! ……あ、来た!」
ドンッ、とテーブルに置かれたのは、赤ちゃんの頭ほどもある巨大なかき氷だった。
練乳がたっぷりかかり、フルーツや寒天がカラフルにトッピングされている。上から見ると、レーズンとチェリーで「白熊の顔」に見えるようになっているのが特徴だ。
「わあ、おいしそう! ……はい、悠真。あーん!」
楓がスプーンで氷をすくい、僕の口元に差し出す。
いつもの儀式だ。
普段なら恥ずかしいけれど、諦めて食べる。でも今日は、目の前に二人の観客がいる。
「……楓、自分で食べるよ。恥ずかしいって」
「ダメ。悠真はこぼすもん。ほら、口開けて?」
楓は引かない。彼女にとって、これは単なる食事ではなく「所有権の主張」なのだ。向かいの席の「泥棒猫」たちに対する、マーキング行為。
僕は観念して口を開ける。
甘い練乳の味が広がり、頭がキーンとする。
「……美味しい?」
「うん」
「よかった! じゃあ次はミカンね!」
イチャイチャ(に見える)光景。
それを正面から見せつけられた凛は、表情一つ変えずにタブレットに何かを打ち込んだ。
『対象者(先輩)は、精神的ストレスを甘味と他者への依存で解消する傾向あり。自立心、欠如。要改善』
「……声に出して読まないでくれる?」
僕が抗議すると、凛はふんと鼻を鳴らした。
「事実ですから。……それにしても、先輩。そんなに甘やかされて、恥ずかしくないんですか? 自分のスプーンくらい自分で持ったらどうです」
「う……」
「凛ちゃん、言い過ぎ」
珍しく、雫が口を挟んだ。
雫はコーヒーカップを優雅に持ち上げ、少し楽しそうに僕を見ている。
「いいじゃない。餌付けされている小動物みたいで、可愛いわよ」
「……褒めてないよね、それ」
「褒めてるわ。無防備で、愚かで、愛らしい」
雫はテーブルの下で、ツンと僕の足を靴先で小突いた。
彼女なりのコミュニケーション(意地悪)だ。
甘やかす楓。
管理する凛。
観察する雫。
巨大なかき氷が溶けていく中、僕は胃の痛みを感じていた。
これから毎日、放課後がこんな感じになるのか?
バレー部の練習の方が、肉体的にはキツくても、精神的には楽なんじゃないか……?
そんな逃げの思考が頭をよぎった時、凛が唐突に切り出した。
「さて。糖分補給が終わったら、次は**スポーツ用品店**に行きますよ」
「……へ?」
「まさか、弘法筆を選ばずなんて言うつもりないですよね? 明日の練習から参加してもらうために、シューズとサポーターが必要です。……ああ、サイズは測らなくていいです。さっきの接触で、足のサイズも甲の高さも計測済みですから」
凛はニヤリと笑う。
逃さない。その目は本気だ。
「ちょ、ちょっと! まだ白熊残ってるし! ていうか、悠真は入部しないって!」
「食べ終わるまで待ちます。……あと3分で」
「早っ!」
僕の日常(デート)が、侵食されていく。
天文館の賑わいの中で、僕は悟った。
もう、あの「選ばなくていい平和な日々」は帰ってこないのだと。
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天文館のアーケードを抜け、大通り沿いにある大型スポーツ用品店『ゼビオ』へ。
自動ドアをくぐると、新しいゴムと布の匂いが鼻をついた。それは、僕が一年間、意識して避けてきた「競技者」の世界の匂いだ。
「……うっ」
僕は反射的に足を止めそうになる。
だが、背後から凛が容赦なく背中を押した。
「止まらないでください。バレーコーナーは二階です」
「凛ちゃん、やっぱり今日は帰らない? ほら、楓も怒ってるし」
チラリと隣を見ると、楓は頬を膨らませて無言の抗議を続けている。彼女にとって、この店は「悠真を傷つける凶器」が売っている場所に他ならない。
しかし、凛は無視してエスカレーターへ進んだ。
二階、球技コーナー。
色とりどりのシューズが並ぶ棚の前で、凛は迷うことなく一つの箱を手に取った。
「はい。これを」
「え、選ぶの早くない?」
「先輩のプレースタイル、足のアーチ形状、過去の使用モデルからの移行しやすさ。すべて計算済みです。……アシックスのローテジャパン、サイズ27.5cm。色は白」
渡された箱を見て、僕は息を呑んだ。
それは、僕が中学時代に履いていたモデルの後継機だった。一番足に馴染み、そして――あの最後の試合で履いていた靴と同じシリーズ。
「……試着してください。紐の締め具合も見ますから」
凛に促され、僕はベンチに座る。
楓が心配そうに覗き込んできた。
「悠真……履くだけだよ? 買わなくていいからね? 無理しないで」
「……分かってる」
震える手で箱を開ける。
真新しいシューズ。まだ誰も足を入れていない、純白の翼。
僕はローファーを脱ぎ、足を入れる。
かかとをトントンと床に打ち付け、紐を締め上げる。指先が、足首が、覚えている。この締め付けられる感覚。戦闘服を身に纏うような緊張感。
僕はゆっくりと立ち上がった。
――キュッ。
床にゴムが擦れる、甲高い摩擦音(スキール音)。
その瞬間、僕の背筋に電気が走った。
(……ああ、この音だ)
体育館の床を蹴る音。ボールを追って飛び込む音。
黒岩監督の怒号と、チームメイトの冷たい視線。
恐怖の記憶が一気に蘇る。胃が縮み上がるような感覚。脱ぎたい。今すぐ脱いで、逃げ出したい。
けれど。
それと同時に、足の裏が熱くなるのを感じた。
グリップが効いている。これなら、どんなボールにも反応できる。
右へ、左へ。重心を少しずらすだけで、身体がバネのように反応しようとする。
怖いのに、身体が「動きたがって」いる。
「……どうですか?」
凛の声が、どこか遠くから聞こえた。
見ると、彼女は僕の足元を熱っぽい瞳で見つめていた。
「重心が安定しましたね。……やっぱり先輩の足には、革靴なんかよりそっちの方が似合います」
「……重いよ、これ」
僕は強がって言う。「色んなものが染み付いてて、重い」
「慣れますよ。私が背中を蹴飛ばしてでも走らせますから」
凛は不敵に笑う。
「悠真!」
たまらず、楓が僕の腕を引いた。
「脱いで! そんなの履かなくていい! 悠真が辛そうな顔してるの見たくない!」
「楓……」
「行こう、悠真。映画の時間始まっちゃうよ。ね? こんなの脱いで、帰ろう?」
楓の必死な声。彼女は本気で僕を守ろうとしてくれている。この靴は、僕を地獄へ連れ戻す拘束具に見えているのだろう。
僕は靴紐に手をかけた。脱ごう。楓の言う通りだ。こんなものを履いていたら、また壊れてしまう。
「……あら」
その時、少し離れた場所から見ていた雫が、ポツリと呟いた。
「随分と、『いい音』がするのね」
雫は興味深そうに、僕の足元を見ている。
「美術室での君は、静かで、死んでいて、美しかったわ。……でも、今のその靴を履いた君の立ち姿も、悪くない」
「え……」
「なんていうか、そうね。……『生贄(いけにえ)』が祭壇に上がる前の覚悟、みたいな。悲壮感があってゾクゾクするわ」
雫なりの独特な感性。でも、彼女は「脱げ」とは言わなかった。
脱げと叫ぶ楓。
履けと命じる凛。
面白がる雫。
僕は深呼吸をする。
足元の感触を確かめる。キュッ、キュッ。
……嫌な音だ。でも、不思議と落ち着く音でもある。
この音がなければ、僕はまた「選べないまま」の一日を過ごすことになる。
「……これ、ください」
僕は小さく、店員さんに告げた。
「悠真!?」
楓が目を見開く。
「……入部は、まだ決めてない。でも、とりあえず靴くらいは、持っててもいいかなって。……運動不足解消とか、そういうのだから」
それは僕なりの、精一杯の言い訳だった。
凛が「よし」と小さくガッツポーズをしたのが見えた。
4
店を出ると、空はすっかり茜色に染まっていた。
手にはスポーツ用品店の大きな紙袋。その重みが、ずっしりと腕にかかる。
三人と別れ、僕は自宅へ戻った。
玄関ドアを開けた瞬間、僕は空気が「重い」ことを察知した。
「……ただいま」
「お帰り、お兄ちゃん」
リビングへ続く廊下に、妹の小春が腕組みをして立っていた。
その目は、獲物を狙うスナイパーのように鋭い。視線は、僕が背中に隠そうとした紙袋に釘付けだ。
「……何持ってるの?」
「え、いや、これは……」
「『ゼビオ』の袋だね。天文館の。あそこで買うものなんて、アレしかないじゃん」
小春はズカズカと歩み寄ると、僕の手から紙袋をひったくった。
ガサゴソと中身を確認する。
「……やっぱり。バレーシューズ」
「小春、返せよ」
「へえ。お兄ちゃん、バレーやるんだ」
小春の声は平坦だったが、そこには微かな驚きと、何かを探るような色が混じっていた。
その時、リビングの奥から母さんが飛び出してきた。
「悠真! あんた、バレー部に入るって本当ね!?」
母さんはエプロン姿のまま、蒼白な顔で僕に詰め寄った。
「え、なんで母さんが知ってるの?」
「さっき、楓ちゃんからLINEが来たのよ! 『悠真が靴を買ってしまった。止められなかった、ごめんなさい』って!」
……楓。
あの過保護な幼馴染は、僕が家に帰るまでの数分の間に、すでに実家への通報を完了していたらしい。恐るべき情報網だ。
「大丈夫なの? またあんな……ご飯も喉を通らないくらい、辛い思いするんじゃないの? 無理しなくていいのよ? 先生に言って辞めさせてもらう?」
母さんの声が震えている。
中学時代の僕――毎日げっそりと痩せていき、家でも怯えたように過ごしていた時期――を知っているからこその、純粋な心配だ。
それが痛いほど分かるから、僕は言葉に詰まる。
「……違うよ、母さん。まだ入部するって決めたわけじゃない」
「でも、靴……!」
「形から入っただけだよ。……大丈夫だから」
苦しい言い訳だ。
母さんは不安そうに僕を見つめ、それから助けを求めるように小春を見た。
「小春からも何か言ってあげてよ。お兄ちゃん、また無理しようとしてる」
小春は紙袋から新しいシューズを取り出し、しげしげと眺めていた。
そして、鼻を鳴らした。
「……いいんじゃない? 別に」
「え?」
「だってさ。お兄ちゃん、ここ一年くらいずっと『死んだ魚』みたいな顔して生きてたじゃん。楓さんの金魚のフンみたいにへらへらしてさ」
小春の毒舌が炸裂する。グサグサと刺さる。
「でも、今日はなんか違うよ」
「違う?」
「うん。……『マシな顔』してる。魚で言えば、活け造り直前くらいの鮮度はある」
どんな例えだ。
小春はシューズを乱暴に紙袋に戻し、僕の胸に押し付けた。
「母さんも心配しすぎ。お兄ちゃんも高校生なんだから、自分で決めたならやらせてみれば? ……まあ、また泣いて帰ってきたら私が笑ってやるけど」
小春はそう言い捨てて、自分の部屋へと戻っていった。
去り際、ボソッと「頑張れば」と聞こえた気がしたが、空耳かもしれない。
「悠真……」
母さんはまだ不安そうだ。
僕はシューズの入った袋を強く握りしめた。
「大丈夫だよ、母さん。……昔みたいに、言われるがままにはならない。今回は、自分で……」
言いかけて、僕は言葉を濁した。
自分で選んだ、と言えるほどの自信はまだない。凛に選ばされたようなものだ。
でも。
「……とりあえず、持っていくだけ持っていくよ」
僕は逃げるように自室へ上がり、ベッドに倒れ込んだ。
枕元のスマホが鳴る。楓からのLINEだ。
『明日、やっぱり靴は置いていこう? 重いし。私が預かろうか?』
続けて、知らないID(たぶん凛)からの通知。
『明日の朝練メニューを送ります。起床時間は5時30分です』
通知画面を見つめながら、僕は天井を仰いだ。
前門の母&楓。後門の妹&凛。
僕の家にも、安息の地は残されていなかった。
(……やるしかないのか)
新品のゴムの匂いが、部屋の中に微かに漂っていた。
それは、嵐の予感の匂いだった。
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