愛の記憶 / Tip of Love

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第6章 ロボットの手-3

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「あの、少しお話があるのですが」

「なんだ、私は今、忙しいんだよ。わかっているだろう
明日、館長が中国からお帰りになられるんだよ

きっとまたややこしい中国医学のデータと書類を山ほど持って帰られるだろう
あの方は4000年の歴史によわいからな」


「はい、存じています。でも、少しだけお時間を頂いて良いでしょうか?
 私は常にこう考えています、全ての物質には意志があると。

例えば、この目の前の美しいペン立てにも意志があります。
もし、ぞんざいに扱うと寿命が短くなります。

そして、例えば、R・C・シモンズ博士の著書“解剖の眼球”と言う本があります。
それは、毎年医学部の学生の試験に出る為に多くの学生が使用します。

そして、学生達はその本を乱暴に扱うのでたった2年か3年でもうボロボロになります。
それに反してJ・D・デーン博士の“眼球探査”は同じ頻度で大学の研究者達に借りられていますが、
5年以上はもっています。

という事は、借りられる頻度では無く使い方の誠意によると、私は常々と、、」


「トニー、私はさっき言ったように、今忙しいのだよ
君の理論は今度ゆっくり聞いてあげるから、要点だけを言い給え」

「はい、申し訳ございません。では、簡単に言います。
僕は3年の間にお世話になった机、ペン、掃除機から配達用の車まで、その全てに感謝を込めてお礼の儀式をしたいのです

もし、認められないのでしたらこのお話は残念ながらご辞退致さなければなりません
物質の精霊感謝の儀式をしなければ、僕は滅します」

「それはまずいな、折角の私の推薦が台無しになるじゃないか。
そういえば、君はなにやらアジアの古い部族の出身だったね。
その儀式はどれくらいかかるのだね」

「はい、正規の儀式は3日間です」

「わかった、それを2日間にしたまえ。今日、明日中に終わるように。いいね」

「はい、有り難うございます、副館長様。そう致します」

僕は安堵した。

これで何とか最後の受け渡しの仕事もできそうだ。
この件については早速仕事が終わり次第に族長へ報告をしなければならない。
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