World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
29 / 1,646

平和と秩序の都市

しおりを挟む
どんなに小さな悪でも、見逃さず根絶やしすれば、国は平和になるのだろうか・・・。

その為に必要なものは何か。

何を守って生きていけば、正しい人が正しく生きられる世の中になるのだろうか。





幼い頃、困ってる人や苦しむ人を助ける騎士の姿に憧れた。

自分の国の領土を広げる為に、他の国を責める、所謂戦争というのが盛んに行われている時代。

そんなところに、私の住む村があった。

争いに巻き込まれ、村を失うこともあったが、そんな時、片側の国の騎士が我々の国の領土に移住しないかと声をかけてくれた。

今よりも安全に暮らせるのなら断る理由などどこにもないと、村の人々はその騎士についていった。

騎士が属する国の王も、騎士の願いを聞き入れてくれ、領土の端の方に新しく住まわせてくれて。

村人たちは王に感謝した。

私も、憧れの騎士を側で見ることができるようになり嬉しかった。


ある日、別の国が攻めてきたと、騎士達が大勢戦に駆り立てられた。

私は彼らの勇姿をこの目で見てみたいと、こっそりついていくことにした。

そこには、かつての私たちのように、戦の戦場にされている村があった。

村人達を守りながら戦う騎士の姿は、憧れていた私には輝いて見えた。

そんな時、私を斬り殺そうと剣を振り上げる、敵国の騎士の姿が背後にあった。

それを憧れの騎士が弾き、敵国の騎士を斬り殺した。


私は、目の前で起きたことが急に怖くなった。

憧れの眼差しで見ていたはずの騎士の戦いは、美しいものではなかった。

殺された騎士の仲間が、怒りに顔を歪ませるのを見た。

それを複数の騎士が取り囲み、斬り殺す。

相手の騎士は、死して尚、憎しみの表情を変えず睨み続けていた。

幼い私には、これがトラウマとなったが、村の大人達が教えてくれた。

「彼らも殺したくて殺してるのではない。国のため、誰かのために、戦わなければならない立場にある」


この時私は、騎士は正義などではなく、騎士もまた誰かの駒であるのだと理解した。

ならば、騎士を動かす王こそが正義なのか?

王は私たちを受け入れてくれ、守ってくれている。

だから私達にとっては感謝しても仕切れない、良い王だ。

でもその反面、戦いで他国と争っている。

私はあの時、目の前で殺された憤怒の表情をした騎士の顔が忘れられない。

私たちの平和や幸せは、他の誰かの不幸の上に成り立っている。

私が平和に暮らしている分、別の誰かが不幸になっている。それが私には辛かった。


誰もが幸せではいけないのか?

幸福か、不幸か、その両極端の上にしか人は成り立たないのか。

ならば、何がそうさせる?

どうすれば全ての者が幸福であり続けられる?

正義は悪を滅ぼすものだと思っていた。

でも正義はいくつもあり、正義と正義は反発し合う。

そして負けた方が悪となり、残された者達の心に悪の種を残す。


悪は、何もないところから生まれない。

悪は、正義から生まれてくる。

世界に正義が一つしかなければ、ぶつかり合うことも無く、全ての人が正しく生きられるのではないだろうか。



どんなに小さな悪も・・・

微塵もないほど根絶やしにすれば・・・。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



シン達は、パルディアの街から馬車に乗り、北へ向かう。

パルディア自体が南にある為、ワールドマップで言うところの、中央へ向かおうというのだ。

人が多く、交通の便が多い場所に行けば、シンやミアと同じ境遇のプレイヤーに会うことができるかもしれない。

それに各々のレベルアップや戦力強化の為、各クラスごとのギルドを訪れたいというのが、当面の目的にもなる。

クラスごとのギルドとは、剣士には剣士ギルド、魔道士には魔道士ギルドといったように、各々のクラス専門のギルドが存在し、様々な恩恵や、特別なクエストを受けたりすることができる。

それぞれの街や村にギルドは存在し、そこでしか手に入らないような、特別なスキルなどもあるため、まず新しい街などに着いたら、ギルドを訪れるのが良いとされている。

ただシン達には少し困難なことがあり、彼らがWoFの世界に入って始めに訪れたパルディアの街は、始まりの街の一つなどと呼ばれるような場所である。

彼らの有するクラスは、上位クラスであり、勿論序盤のエリアなどにアサシンギルドやガンスリンガーギルドなどはないため、長旅になってしまうという点だ。


そんな南にある始まりの地より、北上するシンとミアは、いくつかの村や小さな街を経由し、何日かかけて交易などが盛んな大きな国や都市を目指す。

道中、訪れた街や村で情報を集め、次の目的地を、聖都ユスティーチに決めた。

パルディアの時と似ており、二人は聖都ユスティーチという名に心当たりがなく、恐らく彼らの知っているWoFの世界とは違っているのだろと、心構えはしておくことにした。

情報を教えてくれた人々が言うには、聖都ユスティーチとは、騎士達が治め、何処よりも平和で秩序のある都市であるとされているのだとか。

東西南北至る所からの交易を盛んにしており、他国との交流も多いとされている。

それだけ大きな都市であれば、プレイヤーの一人や二人居てもおかしくはない。

二人は心構えをしつつも、足早に聖都ユスティーチを目指すことにした。



最後に出た村から数日後、長かった山道も頂上付近に差し掛かり、大きな都市が見え始めた。

「あれが・・・、聖都ユスティーチ・・・」

その絶景に思わず声が出る。

パルディアの街とは比べ物にならない程大きな都市がそこにはあった。

これから自分たちが足を踏み入れる、大きく栄えた都市に、不安よりも好奇心や安心感といった感情の方が優っていた。

人が多いというだけで、シンは安心する。

知らない世界に足を踏み入れ、自分達以外に、境遇を共にできないという心境が彼を心細くしていたが、例えこの世界にいる住人達がAIだとしても、自分と似た姿形をした者がいれば、不安が振り払われる。

これが集団心理というものなのだろうか・・・。

山頂からみたユスティーチは、中央が所謂都心部であり、その周りを囲むように市街地があるように見えた。



騎士達が治める、世界でも有数の、平和と秩序の都市が、一体どんなものであるのか、二人の気持ちは少しだけ高揚していた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【めっさ】天使拾った【可愛ぃなう】

一樹
ファンタジー
酔っ払いが聖女を拾って送迎する話です。

異世界に流されて…!?

藤城満定
ファンタジー
東京発沖縄着の船で修学旅行に出港した都立東品川高等学校2年4組の生徒35人は出港して2時間が過ぎた頃に突然の嵐に巻き込まれてしまい、船が転覆してしまって海に投げ出されてしまった。男子生徒の宮間景太郎が目を覚ますと、そこはどこかの森の中だった。海に投げ出されたのに、何で森の中にいるんだ?不思議に思って呆然としていたら、森の奥から聞き覚えのある女子生徒達の悲鳴が聞こえてきた。考えるより先に体が動いた。足元にあった折れて先端が尖った木の枝と石コロを取って森の奥へと駆け出した。そこには3人の女子生徒が5匹の身長160cmくらいの緑色の肌色のバケモノに襲われていた。そのバケモノは異世界アニメやコミックでお馴染みのゴブリン?だった。距離は10mはある。短剣を持ったのと木製の棍棒を持ったゴブリンの内、棍棒を持ったのがソレを振り下ろすのを防ぐのは無理な距離。ならばと、拾っておいた石コロを全力投球投。全くの無警戒だった場所からかならの威力で投げられた石コロが頭に命中して、そのまま倒れてしまったので他のゴブリン共も動揺した。その隙に女子生徒達とゴブリン共の間に立ち塞がり、拾った木の枝(棒?)を振り回して距離を置き、斃したゴブリンから棍棒を拾ってそこからはタコ殴りに殴りまくった。棍棒や短剣を弾くと、頭、首、肩、腕、足と、それはもうフルボッコのボッコボコにして斃してから暫くして女子生徒達に「大丈夫か?」と声をかけると、3人ともポカーンと口を開けて呆然としていた。まあ、無理もない。何故なら景太郎はクラスでは寡黙で、いつも1人で行動しているそれは、ぶっちゃけて言うと、完全な『ボッチくん』だったからだ。そんな景太郎が自分達の命を助けてくれた。それも今まで誰も見た事のない熱く必死な戦い方でだ。これは謂わゆる『吊り橋効果』ではあるが、こうまで男らしい姿を見せられては惚れるなというほうが無理だろう。その瞬間から女子達による景太郎の取り合い合戦が始まった。 【毎週火曜日に投稿します】

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

ドラゴネット興隆記

椎井瑛弥
ファンタジー
ある世界、ある時代、ある国で、一人の若者が領地を取り上げられ、誰も人が住まない僻地に新しい領地を与えられた。その領地をいかに発展させるか。周囲を巻き込みつつ、周囲に巻き込まれつつ、それなりに領地を大きくしていく。 ざまぁっぽく見えて、意外とほのぼのです。『新米エルフとぶらり旅』と世界観は共通していますが、違う時代、違う場所でのお話です。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収

ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。 彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。 だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。 自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。 「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」 契約解除。返還されたレベルは9999。 一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。 対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。 静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。 「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」 これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。 (本作品はAIを活用して構成・執筆しています)

処理中です...