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反骨の狼達
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聖都ユスティーチを上から見た全体図による、シンとミアの現在の位置について。
南から北上し、聖都の外周に位置する市街地の南部から街に入り、そこでルーフェン・ヴォルグと名乗る組織の男達に出会い、彼らのアジトへと案内されている。
「アンタ達は一体何者なんだ?」
「あぁ、紹介がまだだったな。 俺はアーテム。 ルーフェン・ヴォルフのリーダーをしてる」
先頭を歩く、口調の荒い、やや背の低い銀髪の男で、狼の体毛を彷彿とさせるファーの付いた上着が印象的だった。
「ルーフェン・ヴォルフってのは、まぁ・・・騎士の奴らと基本は同じだ。この市街地を守ってる組織なんだが、あいつらとはやり方が違うって感じだな」
アーテムの説明に補足を入れるように隣の大男が口を開く。
「市街地といっても、南部の一部だけだ」
アーテムは口を開いたまま、大男の方を向いて少し固まる。
「・・・・・、あぁ・・・まぁ、このデカブツはファウストっつって、組織の幹部の一人だ。 仏頂面でよく恐がられてるが、仲間思いのいい奴だから、仲良くしてやってくれ」
金獅子のような髪をオールバックに固め、アーテムの言う通り、高身長で筋肉質な体格で、やや近寄りがたい雰囲気を醸し出している。
ファウストはじっとシンの方を睨んでいる。いや、見ているだけなのだろうが、どことない威圧感を感じる視線だった。
「ど・・・どうも・・・」
シンは軽く会釈するが、一度瞬きをすると直ぐに前に向き直ってしまった。
「あ~ぁ・・・、そんなんだから恐がられちゃうんスよ、 ファウストさん」
身軽な小さい少年がファウストの身体を、まるでリスのように登り上がると、肩にとまる。
「最後はこのちっこいのだな!」
「僕は今、成長途上にあるんス! いずれファウストさんみたく大きい男になるっス!」
ルーフェン・ヴォルフの男達最後の一人は、さっき紹介されたファウストとは逆に、小柄な少年だった。
「こいつはナーゲル。ガキではあるが、これでも立派なルーフェン・ヴォルフの幹部だ。その見た目から潜入なんかも得意だったりする」
「ガキは余計っスよ、ガキは!」
三人の様子から仲の良さが分かる。一体どんな繋がりで集まったメンバーなのか、とても興味をそそられる。
「それじゃぁ、次はアンタらの事を教えてもらおうか? 冒険者様よぅ」
シンとミアは、自分達のことと、これまでの旅について簡単に話した。
しかし、プレイヤーであること、そして上位クラスであることは伏せて話した。そしてメアとの一件についても、ただのクエストであったかのように話した。
黒いコートの男達についてや、異常な出来事についてはなるべく口外しない方が、今後のためにもいいかと思ってのことだった。
各々の自己紹介がすんだ頃、どうやら目的地のアジトについたようだった。
が、とてもアジトと呼ぶにはふさわしくない、ただの民家のように見える。
「ここ・・・なのか? 民家にしか見えないんだが・・・?」
シンは率直に思った事を話した。
しかし、予想通りと言わんばかりに得意げな表情を浮かべるアーテムとナーゲル。そしてナーゲルはその笑みを抑えきれずにいた。
「ククク・・・、きたきた! 来たっスよ!?この反応。 みんな初めて来る時は同じリアクションを取るんスねぇ」
「ナーゲル。 お前の時も同じだった」
「客人の前でそれは言わないで欲しいっス・・・。そう言うところっスよ?ファウストさん・・・」
シンの緊張は少し和らいだ。
先程あった物騒なこともあるようだが、街の人々はそれなりに明るく、活気のある生活を送れているいるようで、パルディアであったような異変がないことに安堵していた。
「俺らの活動は、一応聖都の連中に黙認されてはいるが、ギルドみてぇに表立っての活動はできねぇんだ・・・」
先程までの明るい会話からは、感じられなかった暗さが少し垣間見えた。きっとそこに、この街のあり方についての話が、絡んでくるのだろう。
「まぁ取り敢えず中に入んな」
そう言うと、入り口を開けてとても大きいとは言えない民家にゾロゾロと入っていく。
アーテムは全員が入るまでドアノブを握り開けておいてくれた。彼は見た目によらず心遣いの出来るちゃんとしたところがあるようだ。
最後尾にいたミアが入ると、アーテムは扉を閉めた。家の中は特に印象に残るようなものもなく、どこにでもあるような内装をしていた。
「ファウスト・・・」
アーテムが声をかけると、ファウストが床に敷かれた絨毯をめくり上げる。
そこには床下に入るための戸があった。
ファウストがその戸を開けると、そこには階段が現れた。
その階段は薄暗く、どこまで降りていくのか先が見えない。
「地下か・・・」
「この街は昔、外国からの進行を受けていたことがあったらしくてな。 まぁ位置的にも丁度、いろんな国へ攻め込むのに便利な要所でもある」
聖都ユスティーチは、様々な国との流通も盛んに行われているようだが、そんなことが出来るのも攻め落とせない程の何かがあったおかげだろう。
「この地下は、攻め込まれた際の奇襲に使われえていた通路らしいんだ。地下通路は血管のように聖都の地下に張り巡らされ、街になだれ込んできた敵を、無数の地下から奇襲してたって話だ。つまり、街全体が敵を誘い込む罠・・・まぁ、蟻地獄みてぇなもんだな」
一行は松明に火をつけ、ゆっくりと階段を降りていく。
「それをアンタ達の組織が使ってるって訳か・・・?」
「ふふ~ん! 凄いのはそれだけじゃ無いんスよ? 実はっスねぇ・・・」
ナーゲルの説明したそうな空気をファウストが、気を利かせて止める。
「ナーゲル。 説明はアーテムに任せろ」
アーテムは慣れた様子で、二人の会話への介入をやり過ごすと、ナーゲルの言っていた地下の秘密について話してくれた。
「地下を見つけた俺達は、ここをアジトとして使い始めたんだがな? 何と騎士達や聖都の連中は何も言ってこないし、地下についても触れようともしてこねぇんだ!」
アーテムはそう話すが、シンとミアは疑問に思わざるを得なかった。
果たしてそんなに都合のいい話があるのだろうか?国を収める聖都の騎士達が、昔使われていた地下のことを知らないなんてことが、ありえるのだろうか。
「それはつまり、騎士達が地下について知らないとでも?」
「どうだろうな・・・。 だが今の聖都の条約が出来たのは、新しく他所から来た聖騎士の王が成り代わってからだ。 それ以前の王政が、新しい余所者の王政を疎ましく思っていて、地下のことを隠しているとしてもおかしくねぇ・・・」
以前の王と今の王で政策が大きく変わったのだろうか。そのせいであの親子が裁かれるなどという、異常な行動を騎士がとっている。
そしてその政策に反発しているのが、ルーフェン・ヴォルフといったところだろうか。
「新しい王になってから、あんな出来事が増えたのか?」
その質問に、アーテムは難しい表情をする。
「前の王政は、それはそれで騎士の名の上にあぐらをかいた体たらくなもんだったさ・・・。 真面目に生きてる人間が馬鹿を見るようなユスティーチだった。だから俺だって騎士を目指して、内側から騎士のあり方ってモンを変えてやろうって思ってたんだ・・・」
今まで騒がしかったナーゲルも、気づけば静かになっていた。
新しく来た王が変えたのは、国だけではなく、彼らの生活、或いは生き方をも変えるものだったのかもしれない。
南から北上し、聖都の外周に位置する市街地の南部から街に入り、そこでルーフェン・ヴォルグと名乗る組織の男達に出会い、彼らのアジトへと案内されている。
「アンタ達は一体何者なんだ?」
「あぁ、紹介がまだだったな。 俺はアーテム。 ルーフェン・ヴォルフのリーダーをしてる」
先頭を歩く、口調の荒い、やや背の低い銀髪の男で、狼の体毛を彷彿とさせるファーの付いた上着が印象的だった。
「ルーフェン・ヴォルフってのは、まぁ・・・騎士の奴らと基本は同じだ。この市街地を守ってる組織なんだが、あいつらとはやり方が違うって感じだな」
アーテムの説明に補足を入れるように隣の大男が口を開く。
「市街地といっても、南部の一部だけだ」
アーテムは口を開いたまま、大男の方を向いて少し固まる。
「・・・・・、あぁ・・・まぁ、このデカブツはファウストっつって、組織の幹部の一人だ。 仏頂面でよく恐がられてるが、仲間思いのいい奴だから、仲良くしてやってくれ」
金獅子のような髪をオールバックに固め、アーテムの言う通り、高身長で筋肉質な体格で、やや近寄りがたい雰囲気を醸し出している。
ファウストはじっとシンの方を睨んでいる。いや、見ているだけなのだろうが、どことない威圧感を感じる視線だった。
「ど・・・どうも・・・」
シンは軽く会釈するが、一度瞬きをすると直ぐに前に向き直ってしまった。
「あ~ぁ・・・、そんなんだから恐がられちゃうんスよ、 ファウストさん」
身軽な小さい少年がファウストの身体を、まるでリスのように登り上がると、肩にとまる。
「最後はこのちっこいのだな!」
「僕は今、成長途上にあるんス! いずれファウストさんみたく大きい男になるっス!」
ルーフェン・ヴォルフの男達最後の一人は、さっき紹介されたファウストとは逆に、小柄な少年だった。
「こいつはナーゲル。ガキではあるが、これでも立派なルーフェン・ヴォルフの幹部だ。その見た目から潜入なんかも得意だったりする」
「ガキは余計っスよ、ガキは!」
三人の様子から仲の良さが分かる。一体どんな繋がりで集まったメンバーなのか、とても興味をそそられる。
「それじゃぁ、次はアンタらの事を教えてもらおうか? 冒険者様よぅ」
シンとミアは、自分達のことと、これまでの旅について簡単に話した。
しかし、プレイヤーであること、そして上位クラスであることは伏せて話した。そしてメアとの一件についても、ただのクエストであったかのように話した。
黒いコートの男達についてや、異常な出来事についてはなるべく口外しない方が、今後のためにもいいかと思ってのことだった。
各々の自己紹介がすんだ頃、どうやら目的地のアジトについたようだった。
が、とてもアジトと呼ぶにはふさわしくない、ただの民家のように見える。
「ここ・・・なのか? 民家にしか見えないんだが・・・?」
シンは率直に思った事を話した。
しかし、予想通りと言わんばかりに得意げな表情を浮かべるアーテムとナーゲル。そしてナーゲルはその笑みを抑えきれずにいた。
「ククク・・・、きたきた! 来たっスよ!?この反応。 みんな初めて来る時は同じリアクションを取るんスねぇ」
「ナーゲル。 お前の時も同じだった」
「客人の前でそれは言わないで欲しいっス・・・。そう言うところっスよ?ファウストさん・・・」
シンの緊張は少し和らいだ。
先程あった物騒なこともあるようだが、街の人々はそれなりに明るく、活気のある生活を送れているいるようで、パルディアであったような異変がないことに安堵していた。
「俺らの活動は、一応聖都の連中に黙認されてはいるが、ギルドみてぇに表立っての活動はできねぇんだ・・・」
先程までの明るい会話からは、感じられなかった暗さが少し垣間見えた。きっとそこに、この街のあり方についての話が、絡んでくるのだろう。
「まぁ取り敢えず中に入んな」
そう言うと、入り口を開けてとても大きいとは言えない民家にゾロゾロと入っていく。
アーテムは全員が入るまでドアノブを握り開けておいてくれた。彼は見た目によらず心遣いの出来るちゃんとしたところがあるようだ。
最後尾にいたミアが入ると、アーテムは扉を閉めた。家の中は特に印象に残るようなものもなく、どこにでもあるような内装をしていた。
「ファウスト・・・」
アーテムが声をかけると、ファウストが床に敷かれた絨毯をめくり上げる。
そこには床下に入るための戸があった。
ファウストがその戸を開けると、そこには階段が現れた。
その階段は薄暗く、どこまで降りていくのか先が見えない。
「地下か・・・」
「この街は昔、外国からの進行を受けていたことがあったらしくてな。 まぁ位置的にも丁度、いろんな国へ攻め込むのに便利な要所でもある」
聖都ユスティーチは、様々な国との流通も盛んに行われているようだが、そんなことが出来るのも攻め落とせない程の何かがあったおかげだろう。
「この地下は、攻め込まれた際の奇襲に使われえていた通路らしいんだ。地下通路は血管のように聖都の地下に張り巡らされ、街になだれ込んできた敵を、無数の地下から奇襲してたって話だ。つまり、街全体が敵を誘い込む罠・・・まぁ、蟻地獄みてぇなもんだな」
一行は松明に火をつけ、ゆっくりと階段を降りていく。
「それをアンタ達の組織が使ってるって訳か・・・?」
「ふふ~ん! 凄いのはそれだけじゃ無いんスよ? 実はっスねぇ・・・」
ナーゲルの説明したそうな空気をファウストが、気を利かせて止める。
「ナーゲル。 説明はアーテムに任せろ」
アーテムは慣れた様子で、二人の会話への介入をやり過ごすと、ナーゲルの言っていた地下の秘密について話してくれた。
「地下を見つけた俺達は、ここをアジトとして使い始めたんだがな? 何と騎士達や聖都の連中は何も言ってこないし、地下についても触れようともしてこねぇんだ!」
アーテムはそう話すが、シンとミアは疑問に思わざるを得なかった。
果たしてそんなに都合のいい話があるのだろうか?国を収める聖都の騎士達が、昔使われていた地下のことを知らないなんてことが、ありえるのだろうか。
「それはつまり、騎士達が地下について知らないとでも?」
「どうだろうな・・・。 だが今の聖都の条約が出来たのは、新しく他所から来た聖騎士の王が成り代わってからだ。 それ以前の王政が、新しい余所者の王政を疎ましく思っていて、地下のことを隠しているとしてもおかしくねぇ・・・」
以前の王と今の王で政策が大きく変わったのだろうか。そのせいであの親子が裁かれるなどという、異常な行動を騎士がとっている。
そしてその政策に反発しているのが、ルーフェン・ヴォルフといったところだろうか。
「新しい王になってから、あんな出来事が増えたのか?」
その質問に、アーテムは難しい表情をする。
「前の王政は、それはそれで騎士の名の上にあぐらをかいた体たらくなもんだったさ・・・。 真面目に生きてる人間が馬鹿を見るようなユスティーチだった。だから俺だって騎士を目指して、内側から騎士のあり方ってモンを変えてやろうって思ってたんだ・・・」
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