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隠し事
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「ご安心下さい。 貴方が正しき人であるのならば、これ程素晴らしい都市はありません」
リーベは笑顔でそう語るが、ミアは内心、彼女のその笑顔が怖くなった。
自分も何かちょっとしたことで他人に迷惑になるようなことがあれば、彼女の手によって裁かれるのかと思うと、とても笑顔でそうですねとは、言えなかったのだ。
「聖都に住む方々も、それを承知で暮らしています。だからこそ、みんな聖都での暮らしに満足していただけていると思います。 耐えかねて移住する者を止めることもありません」
ミアは、その言葉にだけは少しだけ納得している。嫌なら移住すればいいだけの話だ。
誰も閉じ込めている訳ではないのだから、危険を冒してまで聖都にい続ける事もない。そこは個々の選択の自由があるのだから。
だが、聖都に暮らすということは、自分の中の“悪”との戦いにもなる。自分の中で上手く消化できるかどうかで、この都市は天国にも地獄にもなる。
そして、この聖都に暮らす人の多さを見れば、外で生きる“不安の中での危険”よりも、約束された“安全の中での危険”にさらされる方が、自分の命が他人に左右されることの無い、自己責任で生きられる場所であることを物語っている。
「お話はこの辺で。 ほら、見えてきましたわ。 あれが聖騎士達の本部で有り都市の中枢を担う城です」
リーベの言葉に、ハッと我に返り、当初の目的のことを思い出す。
「城の中には、各クラスのギルドや研究施設、国立図書館や生産施設などもはいっています」
「なるほど・・・、そりゃぁこれだけ立派な訳だ・・・」
目の前に聳える聖騎士の城は、そこが小さな国家でもあるかのような大きさで、警備も厳重に見える。
敷地内やその上空には、聖騎士と呼ばれる羽付きの騎士が、地上や上空から至る所に配置され巡回している。
「リーベ様、お疲れ様です! ・・・その方は?」
リーベへ敬礼をする聖騎士は、ちらっとミアの方を見る。
「外からの冒険者の方です。 ギルドへの案内で戻りました」
そういうとリーベはそっとミアに耳打ちをする。
「本当は手続きがあるのですが、私がいればその手間もありません」
「そ、そんなことをしていいのか?」
ミアは厳重な警備を見た後に、こんな簡単に入れてしまう事が本当に大丈夫であるのかを、リーベへ確認する。
「えぇ、勿論ですとも。 私達隊長は特別な恩恵を授かっておりますので」
特別な恩恵というものが、スキルであるのかは分からないが、対象者である者、この場合ミアに接触っすることや視認することで、何らかの情報を読み取っているという可能性をミアは少し疑った。
或いは既に何かされているのか・・・。
城内に入りリーベの案内の元、調合士のギルドへと向かう。
敷地の中には聖騎士の他にも、一般の人も多く見受けられる。
こんな国の中枢へ他所の者が入ってきても問題はないのか、ミアはリーベへ尋ねてみた。
「人が多いな・・・、こんなに騎士でない者達が城に入ってき大丈夫なのか?」
「私達、聖都を守る立場である騎士達は、情報の開示を約束しています。隠し事というのは人に不信感を与え、人との繋がりに距離を作ってしまいます。そこから生まれる“悪”を避けるため、騎士達のことや、武器や防具、研究の成果や王の事まで全ての情報が、入城を許された者ならば確認することができるのです」
聖都に暮らす者や、入城許可が下りた者であれば、分け隔てなく情報が解禁されているのには驚きだ。
それだけ騎士と一般の者との隔たりを無くし、寄り添うことが出来るのは、互いの信頼が保証されているからこそだと言える。
「勿論、他国のことは厳禁になっていますけどね。 それでも、話せる内容は他国の確認が取れたものに関しては知ることもできます」
他所の者の情報に関しては、当然と言えば当然だ。ただそれだけ情報が解禁されてるのであれば、他国のスパイがいくらでも情報を外へ持ち出せそうなものだが。
「漸く着きましたわ。 ここが調合士のギルドになります」
リーベの案内で、だだっ広い聖都、そして城内を迷わず進むことができた他、手続きの省略までしてくれたリーベには、最早感謝しかない。
「何から何までありがとう。何かお返しが出来たらいいのだけれど・・・」
「気にすることはありませんわ。 貴方の気遣いこそ、私への褒美として受け取っておきます」
リーベは笑顔でそう言ってくれた。
なるほど、こういう事かと、ミアは身にしみて分かった気がした。
本来、見知らぬ土地や環境へ行くというものは、緊張や不安から身構えてしまうものがあるが、人への気遣いや感謝がこれ程までに、心を穏やかにし、温かくするものであるのか、こんな気持ちでずっといられるのであれば、成る程確かにここ、聖都は正しき者にとって楽園と呼べるものだろう。
「それじゃぁ、これで・・・」
と、ミアがリーベへ別れを告げようとした時。
「それと・・・、錬金術師のギルドは調合士ギルドの先にあります。 この聖都では、四大元素の属性は得られないかも知れませんね・・・」
ミアは、背筋がゾクッとした。
それはミアとシンが、聖都ユスティーチを訪れてから隠していた事、上位クラスであることを見抜かれていたこと、そしてそれが、先程リーベが言っていた、“隠し事は人との間に距離を作る”ということから、ミアの心の中に”悪“がいるのではないかと、リーベに思われてしまったかと思ったからだ。
「ッ・・・!? 気付いて・・・」
ミアが話し出すよりも先に、リーベは背を向け、その場から離れ始めていた。
「ふふっ、それではご機嫌よう・・・ミアさん」
聖騎士隊の者達には、何も疑われなかった。
これが彼女の言う、授けられた特別な恩恵による力なのだろうか。
離れていく彼女の後ろ姿を、ミアは命懸けの綱渡りをするような気持ちで見送った。
リーベは笑顔でそう語るが、ミアは内心、彼女のその笑顔が怖くなった。
自分も何かちょっとしたことで他人に迷惑になるようなことがあれば、彼女の手によって裁かれるのかと思うと、とても笑顔でそうですねとは、言えなかったのだ。
「聖都に住む方々も、それを承知で暮らしています。だからこそ、みんな聖都での暮らしに満足していただけていると思います。 耐えかねて移住する者を止めることもありません」
ミアは、その言葉にだけは少しだけ納得している。嫌なら移住すればいいだけの話だ。
誰も閉じ込めている訳ではないのだから、危険を冒してまで聖都にい続ける事もない。そこは個々の選択の自由があるのだから。
だが、聖都に暮らすということは、自分の中の“悪”との戦いにもなる。自分の中で上手く消化できるかどうかで、この都市は天国にも地獄にもなる。
そして、この聖都に暮らす人の多さを見れば、外で生きる“不安の中での危険”よりも、約束された“安全の中での危険”にさらされる方が、自分の命が他人に左右されることの無い、自己責任で生きられる場所であることを物語っている。
「お話はこの辺で。 ほら、見えてきましたわ。 あれが聖騎士達の本部で有り都市の中枢を担う城です」
リーベの言葉に、ハッと我に返り、当初の目的のことを思い出す。
「城の中には、各クラスのギルドや研究施設、国立図書館や生産施設などもはいっています」
「なるほど・・・、そりゃぁこれだけ立派な訳だ・・・」
目の前に聳える聖騎士の城は、そこが小さな国家でもあるかのような大きさで、警備も厳重に見える。
敷地内やその上空には、聖騎士と呼ばれる羽付きの騎士が、地上や上空から至る所に配置され巡回している。
「リーベ様、お疲れ様です! ・・・その方は?」
リーベへ敬礼をする聖騎士は、ちらっとミアの方を見る。
「外からの冒険者の方です。 ギルドへの案内で戻りました」
そういうとリーベはそっとミアに耳打ちをする。
「本当は手続きがあるのですが、私がいればその手間もありません」
「そ、そんなことをしていいのか?」
ミアは厳重な警備を見た後に、こんな簡単に入れてしまう事が本当に大丈夫であるのかを、リーベへ確認する。
「えぇ、勿論ですとも。 私達隊長は特別な恩恵を授かっておりますので」
特別な恩恵というものが、スキルであるのかは分からないが、対象者である者、この場合ミアに接触っすることや視認することで、何らかの情報を読み取っているという可能性をミアは少し疑った。
或いは既に何かされているのか・・・。
城内に入りリーベの案内の元、調合士のギルドへと向かう。
敷地の中には聖騎士の他にも、一般の人も多く見受けられる。
こんな国の中枢へ他所の者が入ってきても問題はないのか、ミアはリーベへ尋ねてみた。
「人が多いな・・・、こんなに騎士でない者達が城に入ってき大丈夫なのか?」
「私達、聖都を守る立場である騎士達は、情報の開示を約束しています。隠し事というのは人に不信感を与え、人との繋がりに距離を作ってしまいます。そこから生まれる“悪”を避けるため、騎士達のことや、武器や防具、研究の成果や王の事まで全ての情報が、入城を許された者ならば確認することができるのです」
聖都に暮らす者や、入城許可が下りた者であれば、分け隔てなく情報が解禁されているのには驚きだ。
それだけ騎士と一般の者との隔たりを無くし、寄り添うことが出来るのは、互いの信頼が保証されているからこそだと言える。
「勿論、他国のことは厳禁になっていますけどね。 それでも、話せる内容は他国の確認が取れたものに関しては知ることもできます」
他所の者の情報に関しては、当然と言えば当然だ。ただそれだけ情報が解禁されてるのであれば、他国のスパイがいくらでも情報を外へ持ち出せそうなものだが。
「漸く着きましたわ。 ここが調合士のギルドになります」
リーベの案内で、だだっ広い聖都、そして城内を迷わず進むことができた他、手続きの省略までしてくれたリーベには、最早感謝しかない。
「何から何までありがとう。何かお返しが出来たらいいのだけれど・・・」
「気にすることはありませんわ。 貴方の気遣いこそ、私への褒美として受け取っておきます」
リーベは笑顔でそう言ってくれた。
なるほど、こういう事かと、ミアは身にしみて分かった気がした。
本来、見知らぬ土地や環境へ行くというものは、緊張や不安から身構えてしまうものがあるが、人への気遣いや感謝がこれ程までに、心を穏やかにし、温かくするものであるのか、こんな気持ちでずっといられるのであれば、成る程確かにここ、聖都は正しき者にとって楽園と呼べるものだろう。
「それじゃぁ、これで・・・」
と、ミアがリーベへ別れを告げようとした時。
「それと・・・、錬金術師のギルドは調合士ギルドの先にあります。 この聖都では、四大元素の属性は得られないかも知れませんね・・・」
ミアは、背筋がゾクッとした。
それはミアとシンが、聖都ユスティーチを訪れてから隠していた事、上位クラスであることを見抜かれていたこと、そしてそれが、先程リーベが言っていた、“隠し事は人との間に距離を作る”ということから、ミアの心の中に”悪“がいるのではないかと、リーベに思われてしまったかと思ったからだ。
「ッ・・・!? 気付いて・・・」
ミアが話し出すよりも先に、リーベは背を向け、その場から離れ始めていた。
「ふふっ、それではご機嫌よう・・・ミアさん」
聖騎士隊の者達には、何も疑われなかった。
これが彼女の言う、授けられた特別な恩恵による力なのだろうか。
離れていく彼女の後ろ姿を、ミアは命懸けの綱渡りをするような気持ちで見送った。
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