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対イデアール戦 残像
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城門にてアーテムの聖都入りに成功し、イデアールへ拘束のスキル【繋影】を使い、動きを止めるも、彼の放つ光によって解除されてしまう。
しかし、シンが疑問に思ったのは、城門を守る任を与えられていながら、すんなりとアーテムを通してしまったイデアールの真意とは何なのか。
「こんなに簡単に解除されるとは・・・。 だが意外だな、イデアール。 何故アーテムを簡単に通した? お前の任務は、城門を誰にも潜らせないというものではなかったのか?」
「シュトラール様は、端から全てをお見通しだ。 だから俺に“任せる”と言ったんだ。“命令”ではなく“任せる”・・・と。 俺がここで何を良しとするかも、任せられた俺次第だ。だがきっとこの決断も、シュトラール様の思惑通りなのだろうな・・・」
兜の中で反響し出でくる篭った声が聞こえてくるだけで、最早シンには彼がどんな表情で語っているのかは分からなかった。
「思惑通り・・・? どういうことだ?」
「この話は終わりだ・・・。 シン、俺はお前を通す訳にはいかない。 邪魔は・・・させないッ!」
イデアールは槍を構え、勢いよく地面を蹴ると、突進と言うにはあまりにも速い、野球選手のピッチャーが投げるボールのように、シンへ矛先を向け仕掛けてくる。
これをバク転で回避しながら、足でその矛先の軌道を外らすが、イデアールは慌てる様子もなく体勢を整えると、連続した鋭い突きを繰り出す。
シンは短剣でその突きを捌いていくが、何本か宙に弾かれてしまい、捌き切れなくなったシンをイデアールの狙いをつけたかのように鋭い突きが襲う。
間一髪で防ぐことに成功するも、後ろに大きく後退させられてしまい、体勢を崩す。
イデアールはその隙を見逃さない。
手に持った槍を器用に回しながら、投擲の構えを取ると、大きく捻られた腰の力と腕・手首のしなりを存分に使った、砲撃と言っても過言ではない一撃を放つ。
瞬きするよりも速く、放たれた槍はシンの身体へ到達するが、その槍はシンの身体にかかった影の中へと吸い込まれていく。
弾かれた短剣の、持ち手の部分に巻いてあった布がイデアールの鋭い突きで剥がれ、槍を飲み込むには十分な影を、シンの胴体部分に作っていたのだ。
吸い込まれた槍は、勢いを失うことなく、シンの足元の影からイデアールに向けて放たれる。
一瞬の出来事に、イデアールはまだ整えられていない投擲後の体勢から、咄嗟に腰を曲げ、返ってきた槍を避ける。
槍はイデアールの兜を擦り、甲高い金属音と共に火花が散った。
二人の動きが止まると、宙を舞っていたシンの短剣が数本、地面に落ちる音を奏でる。
「驚いたな・・・。 道場で手合わせした時は、まさかこんなに出来る者だとは思わなかった・・・」
砲撃のような槍が、イデアールの後方にある城門の上部を突き抜けている。
「あの時はお互いに制限がかかった稽古だったからな」
体勢を立て直し、新たに取り出した短剣を持つと、シンは再度戦闘体勢をとる。
「不意打ちも、存分な遮蔽物もないこの状況で、よくぞやれたものだな・・・。 少しお前のクラスを見くびっていたようだ、アサシン」
そもそもアサシンというクラスが、正々堂々の真っ向勝負で前線クラスとやり合う時点で、大きなハンデがある。
イデアールが言うように、アサシンは一撃の元相手を屠る暗殺や、戦闘に入る前の先手、注意を逸らしてからの不意打ちなどを得意としているため、見渡しの良いだだっ広い戦場というのは最悪の条件になる。
「アーテムや朝孝さんは、俺の戦いの幅を広げてくれた・・・。 あの道場で得た経験がなければ、今の一撃で終わってたさ」
イデアールもまた、新しい槍を取り出すと、左右へクルクルと槍を回した後、石突いしづきという、矛先とは逆の先端で地面を一度叩く。
すると、槍の穂の部分が光に覆われ始めた。
「俺は聖都の聖騎士として、お前を止める。 見くびった非礼を詫びよう。 聖騎士隊隊長・イデアールッ! 全力で参るッ!」
間合いを一気に詰める踏み込みと、その勢いを乗せた槍を、今度は突きではなく刃のように振りかざす。
突きの攻撃の時とは違い、今度は穂の部分による斬撃と、槍自体の柄部分の攻撃、そして石突部分の打撃が加わり、更に攻撃の手段を増やしてシンを襲う。
時折輝く槍の穂が気になりはしたが、シンは最初と同様、複数の短剣で捌きながら、相手の下からの攻撃に合わせ、短剣を上空に打ち上げさせながら、道場で見て体験したアーテムの舞のような動きをしてみせる。
背後で落ちてきた短剣を受け取ったり、地面に落ちた短剣を足で宙に浮かせて取ったりと、回避と防御、そして攻撃を同時にこなす流れるような動きで、イデアールの隙を伺う。
だが、シンは徐々にイデアールの攻撃を避けきれず、槍は身体の至る所を擦り始める。
「くッ・・・!」
異変を感じ、このままではカバーしきれないダメージを追うかも知れないと思ったシンは、一度イデアールとの距離を空ける。
シンが小さなダメージを追い始めたのは、決して疲労や消耗からくるものではなかった。
それ故、シンは異変を感じたのだ。
後ろへ飛び退いたシンを、イデアールは追わずにいる。
シンは自分の手を見つめると、彼自身に起きている、ある異変に気がついた。
「・・・? 何だ・・・これはッ!?」
「シン、お前がさっき手の内を見せてくれたのなら、俺も一つ手の内を見せよう。 お前が今感じている異変は、俺の槍がした攻撃の一つ。 この光る槍の穂は、お前の目に【残像】を残していき、お前の視野を阻害していたんだ」
強い光を見続けていると、光が目に焼き付き、暫くの間、目を閉じても光の跡が視界に残り続けるという現象をいたことはないだろうか。
最も簡単で分かり易いのが、太陽を見ると、視界に大きな光の跡が残る。
これは網膜の機能であって、そういった現象を【残像】と呼ぶ。
シンの目には、この【残像】が次々に積み重ねられていき、避けられる筈の攻撃も避けられなくなっていたのだ。
「謂わば状態異常のようなもんで、それは暫くお前の目に残り、徐々に視野を奪っていく。 光は明るく照らすものだが、見続けると見えなくなっていく・・・。まるで何処ぞの神話のような話だな」
そういうとイデアールは再び槍を構え始める。
「さぁ! サービスはここまでだ。 ・・・いくぞ」
シンも武器を構えるが、視界に映るイデアールの姿は【残像】によりハッキリと捉えることが出来ないようになってしまった。
しかし、シンが疑問に思ったのは、城門を守る任を与えられていながら、すんなりとアーテムを通してしまったイデアールの真意とは何なのか。
「こんなに簡単に解除されるとは・・・。 だが意外だな、イデアール。 何故アーテムを簡単に通した? お前の任務は、城門を誰にも潜らせないというものではなかったのか?」
「シュトラール様は、端から全てをお見通しだ。 だから俺に“任せる”と言ったんだ。“命令”ではなく“任せる”・・・と。 俺がここで何を良しとするかも、任せられた俺次第だ。だがきっとこの決断も、シュトラール様の思惑通りなのだろうな・・・」
兜の中で反響し出でくる篭った声が聞こえてくるだけで、最早シンには彼がどんな表情で語っているのかは分からなかった。
「思惑通り・・・? どういうことだ?」
「この話は終わりだ・・・。 シン、俺はお前を通す訳にはいかない。 邪魔は・・・させないッ!」
イデアールは槍を構え、勢いよく地面を蹴ると、突進と言うにはあまりにも速い、野球選手のピッチャーが投げるボールのように、シンへ矛先を向け仕掛けてくる。
これをバク転で回避しながら、足でその矛先の軌道を外らすが、イデアールは慌てる様子もなく体勢を整えると、連続した鋭い突きを繰り出す。
シンは短剣でその突きを捌いていくが、何本か宙に弾かれてしまい、捌き切れなくなったシンをイデアールの狙いをつけたかのように鋭い突きが襲う。
間一髪で防ぐことに成功するも、後ろに大きく後退させられてしまい、体勢を崩す。
イデアールはその隙を見逃さない。
手に持った槍を器用に回しながら、投擲の構えを取ると、大きく捻られた腰の力と腕・手首のしなりを存分に使った、砲撃と言っても過言ではない一撃を放つ。
瞬きするよりも速く、放たれた槍はシンの身体へ到達するが、その槍はシンの身体にかかった影の中へと吸い込まれていく。
弾かれた短剣の、持ち手の部分に巻いてあった布がイデアールの鋭い突きで剥がれ、槍を飲み込むには十分な影を、シンの胴体部分に作っていたのだ。
吸い込まれた槍は、勢いを失うことなく、シンの足元の影からイデアールに向けて放たれる。
一瞬の出来事に、イデアールはまだ整えられていない投擲後の体勢から、咄嗟に腰を曲げ、返ってきた槍を避ける。
槍はイデアールの兜を擦り、甲高い金属音と共に火花が散った。
二人の動きが止まると、宙を舞っていたシンの短剣が数本、地面に落ちる音を奏でる。
「驚いたな・・・。 道場で手合わせした時は、まさかこんなに出来る者だとは思わなかった・・・」
砲撃のような槍が、イデアールの後方にある城門の上部を突き抜けている。
「あの時はお互いに制限がかかった稽古だったからな」
体勢を立て直し、新たに取り出した短剣を持つと、シンは再度戦闘体勢をとる。
「不意打ちも、存分な遮蔽物もないこの状況で、よくぞやれたものだな・・・。 少しお前のクラスを見くびっていたようだ、アサシン」
そもそもアサシンというクラスが、正々堂々の真っ向勝負で前線クラスとやり合う時点で、大きなハンデがある。
イデアールが言うように、アサシンは一撃の元相手を屠る暗殺や、戦闘に入る前の先手、注意を逸らしてからの不意打ちなどを得意としているため、見渡しの良いだだっ広い戦場というのは最悪の条件になる。
「アーテムや朝孝さんは、俺の戦いの幅を広げてくれた・・・。 あの道場で得た経験がなければ、今の一撃で終わってたさ」
イデアールもまた、新しい槍を取り出すと、左右へクルクルと槍を回した後、石突いしづきという、矛先とは逆の先端で地面を一度叩く。
すると、槍の穂の部分が光に覆われ始めた。
「俺は聖都の聖騎士として、お前を止める。 見くびった非礼を詫びよう。 聖騎士隊隊長・イデアールッ! 全力で参るッ!」
間合いを一気に詰める踏み込みと、その勢いを乗せた槍を、今度は突きではなく刃のように振りかざす。
突きの攻撃の時とは違い、今度は穂の部分による斬撃と、槍自体の柄部分の攻撃、そして石突部分の打撃が加わり、更に攻撃の手段を増やしてシンを襲う。
時折輝く槍の穂が気になりはしたが、シンは最初と同様、複数の短剣で捌きながら、相手の下からの攻撃に合わせ、短剣を上空に打ち上げさせながら、道場で見て体験したアーテムの舞のような動きをしてみせる。
背後で落ちてきた短剣を受け取ったり、地面に落ちた短剣を足で宙に浮かせて取ったりと、回避と防御、そして攻撃を同時にこなす流れるような動きで、イデアールの隙を伺う。
だが、シンは徐々にイデアールの攻撃を避けきれず、槍は身体の至る所を擦り始める。
「くッ・・・!」
異変を感じ、このままではカバーしきれないダメージを追うかも知れないと思ったシンは、一度イデアールとの距離を空ける。
シンが小さなダメージを追い始めたのは、決して疲労や消耗からくるものではなかった。
それ故、シンは異変を感じたのだ。
後ろへ飛び退いたシンを、イデアールは追わずにいる。
シンは自分の手を見つめると、彼自身に起きている、ある異変に気がついた。
「・・・? 何だ・・・これはッ!?」
「シン、お前がさっき手の内を見せてくれたのなら、俺も一つ手の内を見せよう。 お前が今感じている異変は、俺の槍がした攻撃の一つ。 この光る槍の穂は、お前の目に【残像】を残していき、お前の視野を阻害していたんだ」
強い光を見続けていると、光が目に焼き付き、暫くの間、目を閉じても光の跡が視界に残り続けるという現象をいたことはないだろうか。
最も簡単で分かり易いのが、太陽を見ると、視界に大きな光の跡が残る。
これは網膜の機能であって、そういった現象を【残像】と呼ぶ。
シンの目には、この【残像】が次々に積み重ねられていき、避けられる筈の攻撃も避けられなくなっていたのだ。
「謂わば状態異常のようなもんで、それは暫くお前の目に残り、徐々に視野を奪っていく。 光は明るく照らすものだが、見続けると見えなくなっていく・・・。まるで何処ぞの神話のような話だな」
そういうとイデアールは再び槍を構え始める。
「さぁ! サービスはここまでだ。 ・・・いくぞ」
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