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隠者の影
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二人の前に現れた聖騎士は、やはり何処か動きがぎこちなく、精錬された騎士による動きとは考えづらい。
「お待ちくださいッ! 我々は戦いに来たのでは・・・」
聖騎士に話しかけるツクヨだったが、やはりというべきか返答は得られなかった。
それどころか聖騎士は声のする方へ、ツクヨの方へと兜を向けながら攻撃を仕掛けてくる。
「くっ・・・! すまないッ、ミア! この子を頼むッ! 君はまだ傷が癒えていないだろ?」
「あぁ、すまない・・・そうして貰えると助かるよ。 可能な限りの援護はしよう」
「それはッ・・・、心強いねッ!」
聖騎士の振り回す剣は、騎士達の使う鍛え上げられた剣技とは比べ物にならなかったが、ツクヨは自分の剣でそれを受けると、初めて攻撃の重さに気がついた。
「妙だね・・・。 技自体は大したことないが、攻撃の重みが人のソレではない・・・」
ツクヨは素早い動きで、聖騎士の繰り出す斬撃を避けながら懐に潜り込む。
「・・・御免ッ!」
そして手にした剣で、鋭い突きを聖騎士の首、兜と胴体の鎧の隙間に差し込み、兜を少し持ち上げながら、中身を確認する。
「これはッ・・・!? 」
聖騎士が、剣を持つ手とは反対の腕でツクヨを振り払う。
上体を反らして避けると、そのままバク転をしていき距離を取る。
彼が見た鎧の中身は、二人の話していた通り人が入っておらず、何かの力によって動かされているだけだった。
「ミアッ! やはり・・・鎧の中身は空だ・・・。 どうすれば止まる?」
「理想は術者を叩く・・・だが。 ここにあった鎧と同じように、バラバラにすれば動かなくなるのかもしれないッ!」
「了解ッ・・・!」
彼は簡単にミアの提案を承諾したが、そんなに簡単なことだろうかとミアは思った。
しかし、そんな不安もすぐに晴れ、ツクヨの身体能力に驚かされることになる。
再度、聖騎士に向かっていくツクヨは攻撃を受け止めるのをやめ、全て避けることに専念する。
「手練れの騎士が相手であれば、ここまで避けきることはできなかっただろうね・・・」
聖騎士の側まで来ると、再び突きで首を狙い剣を刺し込む、そしてテコの原理を使い兜をおおきく上空へと跳ね飛ばした。
首を飛ばされても御構い無しに、正確にツクヨのいる位置目掛けて剣を振るってくる。
「見ている訳じゃなさそうだね・・・」
冷静な判断をしながら、今度は横薙ぎの攻撃を身を屈めて避けながら脇に剣を刺し、握りの部分へ掌底を打ち込むと、聖騎士の肩から先の部位が勢いよく弾け飛んだ。
ツクヨは距離を空けて、相手の様子と飛んでいった腕部分の鎧を観察する。
「・・・流石にアレが動くってことは・・・ないか」
剣を握った鎧の腕は、床に転がったまま動く気配はない。
それでも本体の聖騎士の方は、頭と片腕を失った状態のままツクヨへと歩み寄ってくる。
「コアとなる部分は別の箇所にあるようだね・・・」
ツクヨもゆっくりと聖騎士へ歩み寄ると、徐々に加速し始める。
走って向かってくるツクヨを、剣を失った聖騎士はタイミングを見計らい、もう片方の腕で振り払う。
前転で避け、そのまま聖騎士の足元まで来るツクヨだったが、既に聖騎士の片足が上がっており、力任せの蹴り技が彼を襲う。
「うっ・・・!」
しゃがんだまま、横へ転がり何とかこれを避けると、もう片方の脇にも剣を突き刺し、身軽な動きで鎧を駆け上り、レバーを引くように剣を聖騎士の背中方面へと倒す。
「ぅうッ・・・ ぉぉぉおおおおッ!!」
そして、金属が弾ける甲高い音と共に、残る腕も吹き飛んでいった。
聖騎士の背中から飛び退くとツクヨ。
頭を失い、両腕を肩から弾き飛ばしても、それでも聖騎士の鎧は前へと進んできていた。
「・・・もう終わりだよ。 次で決着がつく」
これが最後の一撃と言わんばかりに、鎧へ向かって走っていくツクヨは、鎧の最後の蹴り技を避けながら、股の付け根あたりから剣を差し込み、関節部分の金具に剣をねじ入れて固定して、手を離す。
戻せない足を、フラフラさせながらバランスを取る鎧の後ろに立つと、背中を向き合わせたままツクヨは、全身の回転力と、腰や足のしなりを使った回し蹴りで、固定された剣の握りを蹴ると、鎧の全身を支えていた足が付け根から外れ、飛んでいく。
遂に胴体と腰当て、そして片足となった聖騎士は床に倒れ、それでも尚戦おうともがいている。
そんな鎧にゆっくりと歩み寄るツクヨ。
「・・・、呆れた闘争心だ・・・。 まだ戦おうというのか?」
鎧の側で立ち尽くすツクヨへ、ミアが声をかける。
「ツクヨ・・・、その鎧を調べてみよう。 どの部位が全身を動かしていたコアの部分か、分かるかも知れない・・・」
「そうだね・・・、残すは三箇所だ。 ・・・それに・・・コイツが一体だけとは考えづらいしね・・・。 コアが分かれば対策にもなる」
倒れる鎧に近づき、頭の方から中を覗くツクヨ。
しかし、これといって何かがあるようにも見えなかった。
「どうだ・・・? 何か分かるか?」
「・・・それが・・・、特に変わった様子が無いんだ・・・」
「何だって?」
それはおかしいとミアは思った。
魔力の類で動かしていたのなら、それを伝える動力が必ず何処かに必要となるからだ。
傀儡師であれば、糸やワイヤーといったものが、他の術師クラスであれば印や札、或いは専用の設備が何処かにあったりするもの。
「ちゃんと探したのか? もっとよく見てみるんだ」
ナーゲルを床に寝かせ、ミアも鎧の方へと向かって歩いていく。
「そう言われてもだね・・・。 第一、私は西洋の鎧の内部なんて見たことないんだけど・・・?」
文句を垂れながらも、隅々まで鎧の内部を見るツクヨの前に突然、閃光のような光が放たれる。
「何だッ!?」
「離れろッ! ツクヨッ! 鎧が激しく震えだしたぞ!」
ガタガタと物音を立て震えだす鎧に危険を感じると、二人は近ず離れずの距離で様子を伺う。
すると、鎧の内部で何かが燃えているような揺らめきが見えた。
「ッ!? アレはッ・・・!」
急ぎ鎧へ駆け寄ったミアが、鎧の内部を確認してみると、何か紙のようなものが燃え尽きる寸前だった。
「紙だッ・・・、 紙が燃えたぞッ! ツクヨ、内部に紙のようなものは無かったか!?」
「わっ分からない・・・。 ただ、ハッキリ紙だと言えるようなものは見当たらなかった・・・」
つまり、魔力の供給が途絶え切った時に、証拠が残らないよう消える仕組みだったのだ。
「魔力の供給が途絶えると同時に、視認出来るようになるものなのかも知れないな・・・。 でも、これでこの鎧が術系統のクラスによって動かされていたことが分かった」
「目に見えないんじゃ、他の鎧が出てきた時に対処できないな・・・」
「それは大丈夫だろ。 私らよりも先にコイツらと戦った奴が答えを出してくれてる」
二人は、最初に見たバラバラの鎧の方を見る。
「つまり、動けなくなるように解体しろってこと・・・かな?」
「そうなる・・・」
「・・・簡単に言ってくれるねぇ、ミア・・・」
頭に手を当て、首を横に振るツクヨの口からは、大きなため息が溢れる。
「アンタなら出来ると思ったから言ったんだけど?」
口角の上がった悪そうな表情でミアはツクヨに言った。
「お待ちくださいッ! 我々は戦いに来たのでは・・・」
聖騎士に話しかけるツクヨだったが、やはりというべきか返答は得られなかった。
それどころか聖騎士は声のする方へ、ツクヨの方へと兜を向けながら攻撃を仕掛けてくる。
「くっ・・・! すまないッ、ミア! この子を頼むッ! 君はまだ傷が癒えていないだろ?」
「あぁ、すまない・・・そうして貰えると助かるよ。 可能な限りの援護はしよう」
「それはッ・・・、心強いねッ!」
聖騎士の振り回す剣は、騎士達の使う鍛え上げられた剣技とは比べ物にならなかったが、ツクヨは自分の剣でそれを受けると、初めて攻撃の重さに気がついた。
「妙だね・・・。 技自体は大したことないが、攻撃の重みが人のソレではない・・・」
ツクヨは素早い動きで、聖騎士の繰り出す斬撃を避けながら懐に潜り込む。
「・・・御免ッ!」
そして手にした剣で、鋭い突きを聖騎士の首、兜と胴体の鎧の隙間に差し込み、兜を少し持ち上げながら、中身を確認する。
「これはッ・・・!? 」
聖騎士が、剣を持つ手とは反対の腕でツクヨを振り払う。
上体を反らして避けると、そのままバク転をしていき距離を取る。
彼が見た鎧の中身は、二人の話していた通り人が入っておらず、何かの力によって動かされているだけだった。
「ミアッ! やはり・・・鎧の中身は空だ・・・。 どうすれば止まる?」
「理想は術者を叩く・・・だが。 ここにあった鎧と同じように、バラバラにすれば動かなくなるのかもしれないッ!」
「了解ッ・・・!」
彼は簡単にミアの提案を承諾したが、そんなに簡単なことだろうかとミアは思った。
しかし、そんな不安もすぐに晴れ、ツクヨの身体能力に驚かされることになる。
再度、聖騎士に向かっていくツクヨは攻撃を受け止めるのをやめ、全て避けることに専念する。
「手練れの騎士が相手であれば、ここまで避けきることはできなかっただろうね・・・」
聖騎士の側まで来ると、再び突きで首を狙い剣を刺し込む、そしてテコの原理を使い兜をおおきく上空へと跳ね飛ばした。
首を飛ばされても御構い無しに、正確にツクヨのいる位置目掛けて剣を振るってくる。
「見ている訳じゃなさそうだね・・・」
冷静な判断をしながら、今度は横薙ぎの攻撃を身を屈めて避けながら脇に剣を刺し、握りの部分へ掌底を打ち込むと、聖騎士の肩から先の部位が勢いよく弾け飛んだ。
ツクヨは距離を空けて、相手の様子と飛んでいった腕部分の鎧を観察する。
「・・・流石にアレが動くってことは・・・ないか」
剣を握った鎧の腕は、床に転がったまま動く気配はない。
それでも本体の聖騎士の方は、頭と片腕を失った状態のままツクヨへと歩み寄ってくる。
「コアとなる部分は別の箇所にあるようだね・・・」
ツクヨもゆっくりと聖騎士へ歩み寄ると、徐々に加速し始める。
走って向かってくるツクヨを、剣を失った聖騎士はタイミングを見計らい、もう片方の腕で振り払う。
前転で避け、そのまま聖騎士の足元まで来るツクヨだったが、既に聖騎士の片足が上がっており、力任せの蹴り技が彼を襲う。
「うっ・・・!」
しゃがんだまま、横へ転がり何とかこれを避けると、もう片方の脇にも剣を突き刺し、身軽な動きで鎧を駆け上り、レバーを引くように剣を聖騎士の背中方面へと倒す。
「ぅうッ・・・ ぉぉぉおおおおッ!!」
そして、金属が弾ける甲高い音と共に、残る腕も吹き飛んでいった。
聖騎士の背中から飛び退くとツクヨ。
頭を失い、両腕を肩から弾き飛ばしても、それでも聖騎士の鎧は前へと進んできていた。
「・・・もう終わりだよ。 次で決着がつく」
これが最後の一撃と言わんばかりに、鎧へ向かって走っていくツクヨは、鎧の最後の蹴り技を避けながら、股の付け根あたりから剣を差し込み、関節部分の金具に剣をねじ入れて固定して、手を離す。
戻せない足を、フラフラさせながらバランスを取る鎧の後ろに立つと、背中を向き合わせたままツクヨは、全身の回転力と、腰や足のしなりを使った回し蹴りで、固定された剣の握りを蹴ると、鎧の全身を支えていた足が付け根から外れ、飛んでいく。
遂に胴体と腰当て、そして片足となった聖騎士は床に倒れ、それでも尚戦おうともがいている。
そんな鎧にゆっくりと歩み寄るツクヨ。
「・・・、呆れた闘争心だ・・・。 まだ戦おうというのか?」
鎧の側で立ち尽くすツクヨへ、ミアが声をかける。
「ツクヨ・・・、その鎧を調べてみよう。 どの部位が全身を動かしていたコアの部分か、分かるかも知れない・・・」
「そうだね・・・、残すは三箇所だ。 ・・・それに・・・コイツが一体だけとは考えづらいしね・・・。 コアが分かれば対策にもなる」
倒れる鎧に近づき、頭の方から中を覗くツクヨ。
しかし、これといって何かがあるようにも見えなかった。
「どうだ・・・? 何か分かるか?」
「・・・それが・・・、特に変わった様子が無いんだ・・・」
「何だって?」
それはおかしいとミアは思った。
魔力の類で動かしていたのなら、それを伝える動力が必ず何処かに必要となるからだ。
傀儡師であれば、糸やワイヤーといったものが、他の術師クラスであれば印や札、或いは専用の設備が何処かにあったりするもの。
「ちゃんと探したのか? もっとよく見てみるんだ」
ナーゲルを床に寝かせ、ミアも鎧の方へと向かって歩いていく。
「そう言われてもだね・・・。 第一、私は西洋の鎧の内部なんて見たことないんだけど・・・?」
文句を垂れながらも、隅々まで鎧の内部を見るツクヨの前に突然、閃光のような光が放たれる。
「何だッ!?」
「離れろッ! ツクヨッ! 鎧が激しく震えだしたぞ!」
ガタガタと物音を立て震えだす鎧に危険を感じると、二人は近ず離れずの距離で様子を伺う。
すると、鎧の内部で何かが燃えているような揺らめきが見えた。
「ッ!? アレはッ・・・!」
急ぎ鎧へ駆け寄ったミアが、鎧の内部を確認してみると、何か紙のようなものが燃え尽きる寸前だった。
「紙だッ・・・、 紙が燃えたぞッ! ツクヨ、内部に紙のようなものは無かったか!?」
「わっ分からない・・・。 ただ、ハッキリ紙だと言えるようなものは見当たらなかった・・・」
つまり、魔力の供給が途絶え切った時に、証拠が残らないよう消える仕組みだったのだ。
「魔力の供給が途絶えると同時に、視認出来るようになるものなのかも知れないな・・・。 でも、これでこの鎧が術系統のクラスによって動かされていたことが分かった」
「目に見えないんじゃ、他の鎧が出てきた時に対処できないな・・・」
「それは大丈夫だろ。 私らよりも先にコイツらと戦った奴が答えを出してくれてる」
二人は、最初に見たバラバラの鎧の方を見る。
「つまり、動けなくなるように解体しろってこと・・・かな?」
「そうなる・・・」
「・・・簡単に言ってくれるねぇ、ミア・・・」
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