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迫り来る光
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シンの周りに現れた光の鎖が、シュトラールの手の動きに合わせて収縮を始める。
「うッ・・・!!」
何か脱出の方法を考えるシンは、光という性質に注視した。
朝孝は、その身体能力を活かし、鎖の包囲網を掻い潜ることができたが、シンはアサシンというクラスにあっても、まだその域には達していない。
そこで彼が思ったのは、自分自身が行動してこの包囲網を抜けることは、今の自分にはできないのだという、選択肢の切り捨てだ。
もしかしたら出来るかもしれない、だが、緊急を要する事態において、可能性にかけるということをシンはしなかった。
否、しなかったのではなく、シンはWoFの中で長くアサシンのクラスについていた為、無茶な賭けは仲間を危険に晒すという教訓が、彼の身体に染み付いている。
それにアサシンというクラスは、無茶が出来るほど耐久力に優れたクラスではない、寧ろ脆い部類に属するクラスの為、ちょっとした判断のミスが、自身の身の崩壊を招き、パーティに人数面においてのデメリットを残すという最悪の展開になりやすい。
故にシンは、朝孝やアーテムのように素早い身のこなしによる回避を諦め、その代わりに、両手に短剣を握ると、彼はシュトラールの生み出した鎖、隣り合わせになる鎖二本の発生源付近に、その短剣を投げつける。
「・・・?」
シュトラールは、彼が単に攻撃を外したのかと思ったが、直ぐにその思惑を悟と、首を横に傾ける。
すると、シュトラールの頭目掛けて光の鎖が二本曲がっていったのだ。
「ッ・・・!? 何だッ・・・?」
驚いたツクヨが、光の鎖が折れ曲がり始めている部分に目をやると、何とシンは短剣の刀身で光を反射させることにより、包囲網に穴を開け、同時にシュトラールへの攻撃も兼ねた反撃をしていたのだ。
「そうかッ! 光の反射を利用して・・・」
檻に空いた穴を通り、朝孝を救出すると、彼を少し離れた位置に寝かせる。
「イデアールが使っていた光のスキルは、相手の視界に異常をきたす補助効果に加え、空中に滞在していたから、反射を利用したところで戦況を変えるほどの効果は得られなかった・・・」
ゆっくりと立ち上がるシンは、シュトラールの方へ振り返る。
「アンタのは光はそれ自体に攻撃としての役割があり、その上、発生源が固定されてるから反射させることが出来た・・・」
「ふん、取り乱さず良く対処したものだ・・・」
そういうとシュトラールは、シンに向けて手をかざす。
「それなら・・・、これはどうだッ!」
シンの足元が僅かに光りだす。
それを見て、シンが咄嗟にその場を離れると、紙一重のタイミングで勢いよく光の鎖が飛び出していくのが見えた。
「ッ・・・!」
その後も次から次へと、シンの足元に光が現れては鎖が飛び出してくるのを、彼は移動し続けることで回避していく。
堪らず飛び上がったシンは、鎖が飛び出す前触れの光に短剣を投げるが、光りの向きが予測出来ず、鎖を曲げることができても、周りへランダムに攻撃を撒き散らす結果となってしまう。
「くそッ・・・! 光の鎖が発生してからじゃないと、狙ったところに向きを変えられないッ・・・」
回避することに手一杯になるシンへ、攻撃を仕掛け続けるシュトラールへ、背後から飛びかかるツクヨの一閃が向けられる。
だが、攻撃してくるのを知っていたかのように、実体化した光の剣で、その一撃を受け止めるシュトラール。
「ッ・・・!」
「気づいていないとでも思ったのか?」
「何故・・・シン君への攻撃が途絶えない・・・? 手はかざしていないだろうッ・・・!」
折れているのか、片腕をダラリとぶら下げたままにしているシュトラールは、片腕で戦うしかない筈。
「手をかざしてたのは、必要な動作だからではないのかッ・・・!?」
そんな疑問を抱えながら、絶え間なく動き続けるシン。
彼が考えたのは、追尾する攻撃やスキルは大抵、何かを探知して追いかけてくる場合が多い。
シュトラールの光の鎖も、自動で追尾してくるのであれば、シンの何かを探知しているに違いない。
「このままではシン君がッ・・・!」
「さぁ、彼は時期に避けきれなくなる。 その間にお前を始末してやる」
彼の始末するという言葉には、それを実現できるかのような重みがあり、そのプレッシャーを感じ取ったツクヨは、彼の光の剣を弾くと、その間合いから飛び退いた。
「お前に・・・私の相手が務まるのか・・・?」
額から流れた一雫の冷や汗が頬を伝い、顎先から地面へと落ちる。
その時、シュトラールが手にしていた光の剣が、瞬時にキラキラとした光の粒子となり消えると、ツクヨの周りに光の剣が複数本現れグルグルと彼を囲むように回りだす。
「これはッ!?」
剣先が全てツクヨの方を指していることから、彼はこれが自分に向かって飛んでくる攻撃なのだとすぐに理解した。
ならば上下に避けようと、後方に飛び上がるが、光の剣はツクヨとの距離を保ったまま追従し、剣先は角度を変え、彼を付け狙う。
シュトラールがその手を握ると、彼を囲う光の剣が彼を貫かんと次々に彼目掛けて発射される。
ツクヨは素早い剣捌きで、飛んでくる光の剣を撃ち落としていく。
そこへ、一気に距離を詰めてきたシュトラールが、彼に蹴りをお見舞いする。
「くッ・・・!!」
咄嗟に腕で防ぐも、とても剣士の蹴り技とは思えぬ威力で外壁へと吹き飛ばされる。
「がはッ・・・!」
激しく打ち付けられたツクヨは、飛びそうになる意識を辛うじて保とうとするが、舞い上がる土煙の中、歩み寄ってきたシュトラールによって、頭を鷲掴みにされる。
「うッ・・・ぁぁぁあああああッ!!」
ミシミシと彼の指が、ツクヨの頭蓋骨を締め付けていく。
「さて・・・、シャルロットが拾ってきた“外”なる者達・・・。 お前達には聞きたいことや調べたいことがある。 ・・・まぁ、肉体の持つ記憶があれば、生きていようがいまいが関係ないがな・・・」
トドメを刺さんとばかりに力を強めるシュトラール。
声にならない絶叫をあげるツクヨ。
そこへ、一発の銃弾が撃ち込まれる。
「うッ・・・!!」
何か脱出の方法を考えるシンは、光という性質に注視した。
朝孝は、その身体能力を活かし、鎖の包囲網を掻い潜ることができたが、シンはアサシンというクラスにあっても、まだその域には達していない。
そこで彼が思ったのは、自分自身が行動してこの包囲網を抜けることは、今の自分にはできないのだという、選択肢の切り捨てだ。
もしかしたら出来るかもしれない、だが、緊急を要する事態において、可能性にかけるということをシンはしなかった。
否、しなかったのではなく、シンはWoFの中で長くアサシンのクラスについていた為、無茶な賭けは仲間を危険に晒すという教訓が、彼の身体に染み付いている。
それにアサシンというクラスは、無茶が出来るほど耐久力に優れたクラスではない、寧ろ脆い部類に属するクラスの為、ちょっとした判断のミスが、自身の身の崩壊を招き、パーティに人数面においてのデメリットを残すという最悪の展開になりやすい。
故にシンは、朝孝やアーテムのように素早い身のこなしによる回避を諦め、その代わりに、両手に短剣を握ると、彼はシュトラールの生み出した鎖、隣り合わせになる鎖二本の発生源付近に、その短剣を投げつける。
「・・・?」
シュトラールは、彼が単に攻撃を外したのかと思ったが、直ぐにその思惑を悟と、首を横に傾ける。
すると、シュトラールの頭目掛けて光の鎖が二本曲がっていったのだ。
「ッ・・・!? 何だッ・・・?」
驚いたツクヨが、光の鎖が折れ曲がり始めている部分に目をやると、何とシンは短剣の刀身で光を反射させることにより、包囲網に穴を開け、同時にシュトラールへの攻撃も兼ねた反撃をしていたのだ。
「そうかッ! 光の反射を利用して・・・」
檻に空いた穴を通り、朝孝を救出すると、彼を少し離れた位置に寝かせる。
「イデアールが使っていた光のスキルは、相手の視界に異常をきたす補助効果に加え、空中に滞在していたから、反射を利用したところで戦況を変えるほどの効果は得られなかった・・・」
ゆっくりと立ち上がるシンは、シュトラールの方へ振り返る。
「アンタのは光はそれ自体に攻撃としての役割があり、その上、発生源が固定されてるから反射させることが出来た・・・」
「ふん、取り乱さず良く対処したものだ・・・」
そういうとシュトラールは、シンに向けて手をかざす。
「それなら・・・、これはどうだッ!」
シンの足元が僅かに光りだす。
それを見て、シンが咄嗟にその場を離れると、紙一重のタイミングで勢いよく光の鎖が飛び出していくのが見えた。
「ッ・・・!」
その後も次から次へと、シンの足元に光が現れては鎖が飛び出してくるのを、彼は移動し続けることで回避していく。
堪らず飛び上がったシンは、鎖が飛び出す前触れの光に短剣を投げるが、光りの向きが予測出来ず、鎖を曲げることができても、周りへランダムに攻撃を撒き散らす結果となってしまう。
「くそッ・・・! 光の鎖が発生してからじゃないと、狙ったところに向きを変えられないッ・・・」
回避することに手一杯になるシンへ、攻撃を仕掛け続けるシュトラールへ、背後から飛びかかるツクヨの一閃が向けられる。
だが、攻撃してくるのを知っていたかのように、実体化した光の剣で、その一撃を受け止めるシュトラール。
「ッ・・・!」
「気づいていないとでも思ったのか?」
「何故・・・シン君への攻撃が途絶えない・・・? 手はかざしていないだろうッ・・・!」
折れているのか、片腕をダラリとぶら下げたままにしているシュトラールは、片腕で戦うしかない筈。
「手をかざしてたのは、必要な動作だからではないのかッ・・・!?」
そんな疑問を抱えながら、絶え間なく動き続けるシン。
彼が考えたのは、追尾する攻撃やスキルは大抵、何かを探知して追いかけてくる場合が多い。
シュトラールの光の鎖も、自動で追尾してくるのであれば、シンの何かを探知しているに違いない。
「このままではシン君がッ・・・!」
「さぁ、彼は時期に避けきれなくなる。 その間にお前を始末してやる」
彼の始末するという言葉には、それを実現できるかのような重みがあり、そのプレッシャーを感じ取ったツクヨは、彼の光の剣を弾くと、その間合いから飛び退いた。
「お前に・・・私の相手が務まるのか・・・?」
額から流れた一雫の冷や汗が頬を伝い、顎先から地面へと落ちる。
その時、シュトラールが手にしていた光の剣が、瞬時にキラキラとした光の粒子となり消えると、ツクヨの周りに光の剣が複数本現れグルグルと彼を囲むように回りだす。
「これはッ!?」
剣先が全てツクヨの方を指していることから、彼はこれが自分に向かって飛んでくる攻撃なのだとすぐに理解した。
ならば上下に避けようと、後方に飛び上がるが、光の剣はツクヨとの距離を保ったまま追従し、剣先は角度を変え、彼を付け狙う。
シュトラールがその手を握ると、彼を囲う光の剣が彼を貫かんと次々に彼目掛けて発射される。
ツクヨは素早い剣捌きで、飛んでくる光の剣を撃ち落としていく。
そこへ、一気に距離を詰めてきたシュトラールが、彼に蹴りをお見舞いする。
「くッ・・・!!」
咄嗟に腕で防ぐも、とても剣士の蹴り技とは思えぬ威力で外壁へと吹き飛ばされる。
「がはッ・・・!」
激しく打ち付けられたツクヨは、飛びそうになる意識を辛うじて保とうとするが、舞い上がる土煙の中、歩み寄ってきたシュトラールによって、頭を鷲掴みにされる。
「うッ・・・ぁぁぁあああああッ!!」
ミシミシと彼の指が、ツクヨの頭蓋骨を締め付けていく。
「さて・・・、シャルロットが拾ってきた“外”なる者達・・・。 お前達には聞きたいことや調べたいことがある。 ・・・まぁ、肉体の持つ記憶があれば、生きていようがいまいが関係ないがな・・・」
トドメを刺さんとばかりに力を強めるシュトラール。
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