196 / 1,646
World of Fantasia
しおりを挟む
砲撃が飛び交う中、敵船の援軍ににより劣勢に立たされている紅蓮の海賊船から猛々しい女性の声で、船員に指示を飛ばす声が聞こえてくる。彼女の戦況に応じた素早い指示のおかげで船体は大きな痛手を受ける事なく、何とか持ち堪えているような状態だ。
「姉さんが帰って来るまで、何としても持ち堪えるんだッ!今は物資の貯蔵を気にしてる余裕はない・・・。ぶっ潰されちまうくらいなら、全部使っちまう勢いでぶっ放しなッ!」
彼女の号令に船員達も声を張り上げ、猛々しく咆哮する。砲撃音に負けじと気合いを込めた雄叫びや掛け声を出し、劣勢の中でも船団の士気は高く保たれている。そこへ、彼らの船目掛けて砲弾が飛んで来る。
「シルヴィさんッ!一発撃ち漏らした砲弾が飛んで来ます!」
「おいおい・・・あの胡散臭せぇ奴は何やってやがるッ・・・!誰か砲撃の準備を・・・」
シルヴィと呼ばれる女性が甲板を走り、発砲の準備が整っている大砲があるか急ぎ聞いて回る中、船内から黒いスーツのような姿をした年配の男が、カクテルなどを作る器具であるシェイカーを振りながら現れる。
「シルヴィさん、ここは私が・・・」
そういうと男は、先程まで振り続けていたシェイカーをデッキの手摺りにそっと置く。するとシェイカーの後方から中のものが吹き出し、飛んで来る砲弾目掛けて物凄い勢いで飛んで行く。ジェット噴射の動力を得たシェイカーが砲弾に命中すると、まるで砲弾同士のぶつかり合いを思わせる激しい爆発が起こった。
「アンタ、まだ中にいたのか?こんなクソ忙しい時によぉ」
「申し訳ありません。私の戦闘に用いる道具の貯蓄はそれ程ないもので・・・。有り合わせで作るのに少々時間を取られてしまいました・・・」
派手な爆音を響かせ、空を火花による茜色と爆煙の黒煙で染め上げながら困った顔で余裕そうな笑みを見せる男。一先ずの一難が去って安堵する女が大きく息を吐き、腰を折る。少しの間を開け起き上がりながらスーツの男に近づき肩を叩く。
「準備が整ったんなら、これから反撃と行くぜぇッ!船底のアイツは起きてんだろうなぁ!?撃ち漏らすなんてらしくねぇじゃねぇの・・・」
「どうやら相手方に手練れがいるようですよ?彼の弾幕や策を潜り抜けて来る砲撃がたまにあるそうです。そちらは私が何とかします。貴方が攻撃に専念出来る様に・・・ね?」
拳を突き出した二人は、互いの拳を軽く小突きそれぞれの役割を果たしに向かう。その頃、二人の話に出ていた船底にて敵襲を妨害しているという人物は、船内部に設置された大砲を船員達に操作させるための細かい指示を出していた。方角や斜度、風向きを船員に伝え、飛んで来る砲撃を撃ち落としたり、彼自身のクラスを使い妨害工作を行なっていたのだ。
「クソッ!クソッ!クソがッ!!何で俺のスキルを掻い潜れるッ!また俺がサボってるって言われんじゃぁねぇかッ!・・・どんな砲弾使ってんだ!?どんな魔法使ってんだ!?どんなチート使ってんだッ!?あぁぁああッ!?」
「あ・・・あの、エリクさん・・・?次はどう撃てば・・・?」
「あぁ・・・すいません、次はですね・・・」
先程まで沸騰したヤカンのように憤怒していた男は、次弾装填を終えた船員に話かけられ我に帰る。事細かに大砲の角度を調整し、何秒後に発射するかまで綿密な準備をし、男の合図で砲撃すると見事敵船に命中させて見せた。
「お見事お見事。ん~想定通りに事が運ぶと気持ちが良いですねぇ。流石でございます」
「い・・・いえ、これはエリクさんのおかげですよ・・・」
実力はあるのだが、情緒不安定で扱いづらいグレイス軍の砲撃手を一手に担うエリクと呼ばれる男。その後彼は小窓から外の様子を伺うと、床に広げた風水の羅盤を読み何やらスキルを使い出した。
甲板ではシルヴィとスーツの男が、船内ではエリクが敵船の砲撃を防ぎつつ攻撃を仕掛ける事で時間を稼いだおかげで、漸く彼らにとって大望の吉報が届く。
「おーいッ!船長の船が戻って来たぞッ!」
マストを登り望遠鏡でグレイスの姿を捉えた船員が、声を張り上げて仲間達に伝える。それを聞いたシルヴィが鼓舞するように船員の士気を高める。
「野郎どもッ!もう少しの辛抱だッ!姉さんが戻ったら敵さんに今までぶち込まれた分、キッチリ払って貰おうじゃねぇかッ!!」
「ぅぉぉぉおおおおおッ!!」
ビリビリと空気を振動させるような雄叫びで、グレイス軍のボルテージはマックスに達する。その紅蓮の船体に相応しい燃え上がるような闘志に当てられ、ロッシュの船団は優勢である筈なのに息を呑んで尻込みをするのだった。
「姉さんが帰って来るまで、何としても持ち堪えるんだッ!今は物資の貯蔵を気にしてる余裕はない・・・。ぶっ潰されちまうくらいなら、全部使っちまう勢いでぶっ放しなッ!」
彼女の号令に船員達も声を張り上げ、猛々しく咆哮する。砲撃音に負けじと気合いを込めた雄叫びや掛け声を出し、劣勢の中でも船団の士気は高く保たれている。そこへ、彼らの船目掛けて砲弾が飛んで来る。
「シルヴィさんッ!一発撃ち漏らした砲弾が飛んで来ます!」
「おいおい・・・あの胡散臭せぇ奴は何やってやがるッ・・・!誰か砲撃の準備を・・・」
シルヴィと呼ばれる女性が甲板を走り、発砲の準備が整っている大砲があるか急ぎ聞いて回る中、船内から黒いスーツのような姿をした年配の男が、カクテルなどを作る器具であるシェイカーを振りながら現れる。
「シルヴィさん、ここは私が・・・」
そういうと男は、先程まで振り続けていたシェイカーをデッキの手摺りにそっと置く。するとシェイカーの後方から中のものが吹き出し、飛んで来る砲弾目掛けて物凄い勢いで飛んで行く。ジェット噴射の動力を得たシェイカーが砲弾に命中すると、まるで砲弾同士のぶつかり合いを思わせる激しい爆発が起こった。
「アンタ、まだ中にいたのか?こんなクソ忙しい時によぉ」
「申し訳ありません。私の戦闘に用いる道具の貯蓄はそれ程ないもので・・・。有り合わせで作るのに少々時間を取られてしまいました・・・」
派手な爆音を響かせ、空を火花による茜色と爆煙の黒煙で染め上げながら困った顔で余裕そうな笑みを見せる男。一先ずの一難が去って安堵する女が大きく息を吐き、腰を折る。少しの間を開け起き上がりながらスーツの男に近づき肩を叩く。
「準備が整ったんなら、これから反撃と行くぜぇッ!船底のアイツは起きてんだろうなぁ!?撃ち漏らすなんてらしくねぇじゃねぇの・・・」
「どうやら相手方に手練れがいるようですよ?彼の弾幕や策を潜り抜けて来る砲撃がたまにあるそうです。そちらは私が何とかします。貴方が攻撃に専念出来る様に・・・ね?」
拳を突き出した二人は、互いの拳を軽く小突きそれぞれの役割を果たしに向かう。その頃、二人の話に出ていた船底にて敵襲を妨害しているという人物は、船内部に設置された大砲を船員達に操作させるための細かい指示を出していた。方角や斜度、風向きを船員に伝え、飛んで来る砲撃を撃ち落としたり、彼自身のクラスを使い妨害工作を行なっていたのだ。
「クソッ!クソッ!クソがッ!!何で俺のスキルを掻い潜れるッ!また俺がサボってるって言われんじゃぁねぇかッ!・・・どんな砲弾使ってんだ!?どんな魔法使ってんだ!?どんなチート使ってんだッ!?あぁぁああッ!?」
「あ・・・あの、エリクさん・・・?次はどう撃てば・・・?」
「あぁ・・・すいません、次はですね・・・」
先程まで沸騰したヤカンのように憤怒していた男は、次弾装填を終えた船員に話かけられ我に帰る。事細かに大砲の角度を調整し、何秒後に発射するかまで綿密な準備をし、男の合図で砲撃すると見事敵船に命中させて見せた。
「お見事お見事。ん~想定通りに事が運ぶと気持ちが良いですねぇ。流石でございます」
「い・・・いえ、これはエリクさんのおかげですよ・・・」
実力はあるのだが、情緒不安定で扱いづらいグレイス軍の砲撃手を一手に担うエリクと呼ばれる男。その後彼は小窓から外の様子を伺うと、床に広げた風水の羅盤を読み何やらスキルを使い出した。
甲板ではシルヴィとスーツの男が、船内ではエリクが敵船の砲撃を防ぎつつ攻撃を仕掛ける事で時間を稼いだおかげで、漸く彼らにとって大望の吉報が届く。
「おーいッ!船長の船が戻って来たぞッ!」
マストを登り望遠鏡でグレイスの姿を捉えた船員が、声を張り上げて仲間達に伝える。それを聞いたシルヴィが鼓舞するように船員の士気を高める。
「野郎どもッ!もう少しの辛抱だッ!姉さんが戻ったら敵さんに今までぶち込まれた分、キッチリ払って貰おうじゃねぇかッ!!」
「ぅぉぉぉおおおおおッ!!」
ビリビリと空気を振動させるような雄叫びで、グレイス軍のボルテージはマックスに達する。その紅蓮の船体に相応しい燃え上がるような闘志に当てられ、ロッシュの船団は優勢である筈なのに息を呑んで尻込みをするのだった。
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる