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追い求めた真実
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倒れるグレイスの目線に合わせ腰を下ろすロッシュ。睨みつける彼女から目を逸らすことなく睨み返す。そして左手でグレイスの首を締めると、メリメリと力を込めたロッシュの指が、彼女の喉へとめり込んでいく。
「・・・ぁっ・・・ぁ・・・ッ!」
気道を確保するためか、グレイスの喉に力が入りこれ以上閉められまいと筋肉や血管が浮き出ているのが見える。トドメを刺そうと、ロッシュは右手に短剣を握り、彼の手で踊る短剣の小劇を挟み、刃先を彼女に向けて強く握る。
何も言わず、男は短剣をグレイスの喉目掛けて振り抜く。と、その瞬間ロッシュの腕が止まり、刃先は彼女の喉元で動きを止めた。何かに拒まれているかの様に堰き止められ、プルプルと彼の腕が震える。
「おいおいッ・・・諦めが悪いにも程があるぜッ。やめときな、これ以上は生き恥を晒すだけだ・・・。楽になっちまえよッ!」
なんと信じられないことに、あれだけ痛めつけられていたグレイスが、振り抜かれたロッシュの腕を掴んで止めていたのだ。彼女のバフを奪い、強化されているであろうロッシュ。そんな彼の力を、互角の力で止めているなどあり得ない光景だ。
グレイスには、今の彼と渡り合えるほどのステータスなどある筈がなく、バフをかけ直す時間と余裕など何処にもなかった。そして、そんな彼女の異変に気付いたシンと同じように、ロッシュの表情も徐々に曇りだす。
「なッ・・・!おい・・・俺ぁ強化されてんだぞ・・・。なんでお前が俺の攻撃を止められるッ!?」
動揺するロッシュの隙を突き、グレイスは首を締めていた腕の方も掴み、締め付けていた彼の手を剥がしていくと、大きく息をしながら呼吸を整え口角を上げて鼻で笑った。
「アンタ・・・アタシのことを調べたんじゃなかったのかぃ?どこまで調べたかは知らないけど・・・、もっとちゃんと調べるべきだったんじゃぁないのか?それともアタシ如き、調べるに値しないっと“侮った”のかねぇッ・・・!」
ロッシュは彼女に、自分のことを侮っていたのではないかと言っていたが、その実彼自身も、グレイスのことについて全て知り尽くしている程、詳しくはないようだった。
シンも実際、この時まですっかり頭から抜けていたことが一つある。それはグレイスのもう一つのクラスが、特殊なクラスである裁定者であるということ。そのクラスの存在自体はゲームの中でのWoFで、知識として持っていたシンだが、一体どんなことの出来るクラスなのかは知らなかった。
一般的なクラスであればレベルを上げたり、その系統のスキルやステータスを伸ばしていくことで、上位クラスへ上がったり転職することが出来るのだが、一部の特殊なクラスには、必要となる条件が設けられ、それはアイテムであったり時間、生贄などその種類は様々。グレイスの裁定者も、その内の一つだった。
ロッシュの両腕をそれぞれ掴み、押し返すグレイスの懐からは光り輝く、あるアイテムが覗かせる。それを見たロッシュは驚愕した。
それは、かつてロッシュが探し求め、国一つを崩壊させてまでも手にすることが出来なかった至高の財宝。グレイスを特別なクラスへと引き上げた特別なアイテム。
「そ・・・それはッ!アストレアの・・・天秤!何故お前がそれを・・・?消失した筈ではなかったのかッ!?」
目を見開き、わなわなと驚き唖然とするロッシュの反応を見て、グレイスが密かに調べていた大国の崩壊に関する事件が、彼女の脳裏に過ぎる。
「ッ・・・!?なんでアンタがそれを知っている・・・?どこで聞いたッ!?」
それまでのグレイスからは想像も出来ないほど取り乱し、焦燥と驚嘆を混じえた表情でロッシュに迫る。彼女がこの島で果たそうとしていたこと、調べたかったこととロッシュがグレイスの持っていた天秤を知っていることに、何か関係があるのだろうか。
「聞いた・・・?これは俺があの王家から奪おうとした物。コイツの為に俺はッ・・・!」
「・・・王家・・・?まさか・・・」
グレイスは過去の出来事を忘れ去ることが出来ずにいた。自分が犯した過ちで自らの身に不幸が訪れるのなら甘んじて受け入れよう。しかし、自分のせいで他者の人生が崩壊してしまうことが、グレイスは何よりも辛かった。
何故彼らがそんな目に合わなければならなかったのか。一族諸共、皆殺しにされてしまったあの王家の運命。それ悲劇が何故引き起こされたのか、誰の引き金だったのか。
彼女はその思いを、誰に打ち明ける訳でもなく一人で調べていた。何をどうこうするつもりはない。ただ真実が知りたかったのだ。そして耳にしたのがロッシュの名。その昔、彼はその国にいたことがあるのだと言う噂を聞き、何かを知っているのではないかと、チン・シーとの共同作戦を利用し、この戦いを始めた。
そしてこの男は、王家の者が持つ天秤を狙っていた。ロッシュは間違いなく、グレイスの知りたかったことを何か知っている。それどころか、もしかしたらこの男は国の崩壊に関与していた可能性すら出て来たのだ。
グレイスは長年探し求めて来た真相を前に、冷静で落ち着いてなどいられなかった。
「・・・ぁっ・・・ぁ・・・ッ!」
気道を確保するためか、グレイスの喉に力が入りこれ以上閉められまいと筋肉や血管が浮き出ているのが見える。トドメを刺そうと、ロッシュは右手に短剣を握り、彼の手で踊る短剣の小劇を挟み、刃先を彼女に向けて強く握る。
何も言わず、男は短剣をグレイスの喉目掛けて振り抜く。と、その瞬間ロッシュの腕が止まり、刃先は彼女の喉元で動きを止めた。何かに拒まれているかの様に堰き止められ、プルプルと彼の腕が震える。
「おいおいッ・・・諦めが悪いにも程があるぜッ。やめときな、これ以上は生き恥を晒すだけだ・・・。楽になっちまえよッ!」
なんと信じられないことに、あれだけ痛めつけられていたグレイスが、振り抜かれたロッシュの腕を掴んで止めていたのだ。彼女のバフを奪い、強化されているであろうロッシュ。そんな彼の力を、互角の力で止めているなどあり得ない光景だ。
グレイスには、今の彼と渡り合えるほどのステータスなどある筈がなく、バフをかけ直す時間と余裕など何処にもなかった。そして、そんな彼女の異変に気付いたシンと同じように、ロッシュの表情も徐々に曇りだす。
「なッ・・・!おい・・・俺ぁ強化されてんだぞ・・・。なんでお前が俺の攻撃を止められるッ!?」
動揺するロッシュの隙を突き、グレイスは首を締めていた腕の方も掴み、締め付けていた彼の手を剥がしていくと、大きく息をしながら呼吸を整え口角を上げて鼻で笑った。
「アンタ・・・アタシのことを調べたんじゃなかったのかぃ?どこまで調べたかは知らないけど・・・、もっとちゃんと調べるべきだったんじゃぁないのか?それともアタシ如き、調べるに値しないっと“侮った”のかねぇッ・・・!」
ロッシュは彼女に、自分のことを侮っていたのではないかと言っていたが、その実彼自身も、グレイスのことについて全て知り尽くしている程、詳しくはないようだった。
シンも実際、この時まですっかり頭から抜けていたことが一つある。それはグレイスのもう一つのクラスが、特殊なクラスである裁定者であるということ。そのクラスの存在自体はゲームの中でのWoFで、知識として持っていたシンだが、一体どんなことの出来るクラスなのかは知らなかった。
一般的なクラスであればレベルを上げたり、その系統のスキルやステータスを伸ばしていくことで、上位クラスへ上がったり転職することが出来るのだが、一部の特殊なクラスには、必要となる条件が設けられ、それはアイテムであったり時間、生贄などその種類は様々。グレイスの裁定者も、その内の一つだった。
ロッシュの両腕をそれぞれ掴み、押し返すグレイスの懐からは光り輝く、あるアイテムが覗かせる。それを見たロッシュは驚愕した。
それは、かつてロッシュが探し求め、国一つを崩壊させてまでも手にすることが出来なかった至高の財宝。グレイスを特別なクラスへと引き上げた特別なアイテム。
「そ・・・それはッ!アストレアの・・・天秤!何故お前がそれを・・・?消失した筈ではなかったのかッ!?」
目を見開き、わなわなと驚き唖然とするロッシュの反応を見て、グレイスが密かに調べていた大国の崩壊に関する事件が、彼女の脳裏に過ぎる。
「ッ・・・!?なんでアンタがそれを知っている・・・?どこで聞いたッ!?」
それまでのグレイスからは想像も出来ないほど取り乱し、焦燥と驚嘆を混じえた表情でロッシュに迫る。彼女がこの島で果たそうとしていたこと、調べたかったこととロッシュがグレイスの持っていた天秤を知っていることに、何か関係があるのだろうか。
「聞いた・・・?これは俺があの王家から奪おうとした物。コイツの為に俺はッ・・・!」
「・・・王家・・・?まさか・・・」
グレイスは過去の出来事を忘れ去ることが出来ずにいた。自分が犯した過ちで自らの身に不幸が訪れるのなら甘んじて受け入れよう。しかし、自分のせいで他者の人生が崩壊してしまうことが、グレイスは何よりも辛かった。
何故彼らがそんな目に合わなければならなかったのか。一族諸共、皆殺しにされてしまったあの王家の運命。それ悲劇が何故引き起こされたのか、誰の引き金だったのか。
彼女はその思いを、誰に打ち明ける訳でもなく一人で調べていた。何をどうこうするつもりはない。ただ真実が知りたかったのだ。そして耳にしたのがロッシュの名。その昔、彼はその国にいたことがあるのだと言う噂を聞き、何かを知っているのではないかと、チン・シーとの共同作戦を利用し、この戦いを始めた。
そしてこの男は、王家の者が持つ天秤を狙っていた。ロッシュは間違いなく、グレイスの知りたかったことを何か知っている。それどころか、もしかしたらこの男は国の崩壊に関与していた可能性すら出て来たのだ。
グレイスは長年探し求めて来た真相を前に、冷静で落ち着いてなどいられなかった。
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