255 / 1,646
最終局面
しおりを挟む
ミラーニューロンによって、自身の動かした方向へ腕や足が動かせず、一方的に攻撃をもらってしまうグレイス。立っているのがやっとだったが、バランスを崩し膝をつくと、ロッシュはそんな彼女の髪を掴み強引に立ち上がらせ、アッパーのように顎へ拳を入れることで、倒れることを許さない。
これでは、シンがロッシュのミラーニューロンを排除したところで、グロッキーな状態のグレイスに現場を打開出来るだけの力が残されているのか分からない。それでも、シンはスキルの使用範囲に入る為、二人の戦う戦場へと這って行く。
「もう少し・・・もう少しなんだッ・・・!耐えてくれ、グレイスッ・・・」
やっとの思いで潜影の届く範囲にまで近づくと、シンは朦朧としているグレイスの反撃に合わせ、彼女の身体からミラーニューロンを影で包み込み排除した。
「グレイスッ・・・!」
シンの声が彼女に届いたのか、拳を握る手に力が入るのが見えた。グレイスの放った拳に、ロッシュは恐れることなく迎え撃つように拳を彼女の顔面に向けて振るう。
本来であればグレイスの拳の方が先にロッシュへ辿り着くであろう速度だが、ロッシュはミラーニューロンによって彼女の拳が空を切ると、確信している。故にこの男には、身を守ろうとする防御の素振りや、いざとなれば避けようとする体勢など見られない。全てを攻撃の為に集約させているようだった。
しかし、グレイスの拳は軌道を変えることなくロッシュ目掛けて進んで行き、彼がその異変に気付いた時には、既に避けられるような攻撃ではなくなっていた。
「なッなにぃぃぃッ!」
二人の放つ拳は互いの顔面を捉え、大きく横へと弾かせる。当たる筈がないと思っていたロッシュはその寸前に動揺し、勢いを僅かに遅らせてしまっていたのだ。散々拳を叩き込まれ、意識がハッキリしているのかも怪しかったグレイスだが、未だその攻撃力はロッシュを上回っており、彼を怯ませるだけの威力を誇っていた。
そしてロッシュに隙が生まれたことに気付いたグレイスは、此処ぞとばかりに次なる拳を彼に放つ。しかし、シンも手負いの身。スキル連続使用できるだけの魔力も体力もなく、このままでは再びロッシュにミラーニューロンを使われ、カウンターを受けてしまう。
「ダメだ、グレイスッ!反撃が来るッ・・・!まだ、次は無いんだッ・・・!」
グレイスには、先程の攻撃がシンのスキルによる援護があったおかげで命中したのだと知る由もない。故に彼女には、反撃の好機に見えていたのだろう。例え相手が手負いであろうと、しっかり見極めれば避けられてしまうようなグレイスの大振りの一撃。
だが、シンのスキルによる妨害であることをロッシュも気付いていなかった。自分の技に絶対の自信があった彼は避けることなど考えず、再びミラーニューロンを放ち、返り討ちにしてやると、グレイスと同じく全身の勢いを使った全力の一撃を彼女に放つ。
如何に己自身の身体能力で優っているとはいえ、今の体力でロッシュの全力の一撃をもらえば、取り返しのつかない事になるかもしれない。ロッシュはまたグレイスの身体を操縦し、攻撃を逸させようとミラーニューロンを彼女身体に放つ。
二人の攻撃はまるでスローモーションの様に見えた。互いの拳がそれぞれの着弾地点へと向かって行く。そしてロッシュの表情が目論み通り事が運んだことを喜ぶ様に、不適な笑みへと変わる。スキルを使ったに違いない。
「グレイスーーーッ!!」
ロッシュの方が一枚上手だった。最期まで奥の手を明かす事なく、不利な状況やダメージさえも利用し相手を騙す。シンがグレイスの敗北から目を背けようとしたその時。
大きな殴打音と共に床に倒れたのは、ロッシュだった。
「あぁッ・・・ぁ・・・何故・・・?」
予期せぬ結果に、唖然とするシン。そして誰よりも驚いていたのはロッシュ自身だろう。何故グレイスの攻撃が逸れなかったのか、何故ミラーニューロンが発動しなかったのか。それは、用心深く観察眼の肥えたロッシュが何故気付かなかったのかと疑うほど、至ってシンプルな理由だった。
暫くして漸くその原因に気が付いたロッシュが、ゆっくり首を動かして周囲を眺めながら、苦虫を噛んだ様に歯軋りをさせて睨みつける。そんな彼の視線は、シンの方へも向けられた。
「きッ・・・貴様らぁッ・・・!!」
グレイス海賊団との戦闘の中で、彼は幾度となくミラーニューロンを使った、物や人の操縦をしてきた。砲弾の弾や模型の戦闘機、シンとの二度に渡る戦闘やシルヴィとの戦闘。
戦いの前に補充を済ませたロッシュであれば、十分に足りる筈だった。彼にとっての想定外の出来事は、シンという部外者の参戦。二度に渡る彼との戦闘が、ロッシュの計画と自信を狂わせたのだ。
ロッシュの前に敗れていった者達の健闘は、決して無駄なものではなかった。度重なる戦闘でロッシュは、ミラーニューロンの“弾切れ”を起こしていたのだ。
これでは、シンがロッシュのミラーニューロンを排除したところで、グロッキーな状態のグレイスに現場を打開出来るだけの力が残されているのか分からない。それでも、シンはスキルの使用範囲に入る為、二人の戦う戦場へと這って行く。
「もう少し・・・もう少しなんだッ・・・!耐えてくれ、グレイスッ・・・」
やっとの思いで潜影の届く範囲にまで近づくと、シンは朦朧としているグレイスの反撃に合わせ、彼女の身体からミラーニューロンを影で包み込み排除した。
「グレイスッ・・・!」
シンの声が彼女に届いたのか、拳を握る手に力が入るのが見えた。グレイスの放った拳に、ロッシュは恐れることなく迎え撃つように拳を彼女の顔面に向けて振るう。
本来であればグレイスの拳の方が先にロッシュへ辿り着くであろう速度だが、ロッシュはミラーニューロンによって彼女の拳が空を切ると、確信している。故にこの男には、身を守ろうとする防御の素振りや、いざとなれば避けようとする体勢など見られない。全てを攻撃の為に集約させているようだった。
しかし、グレイスの拳は軌道を変えることなくロッシュ目掛けて進んで行き、彼がその異変に気付いた時には、既に避けられるような攻撃ではなくなっていた。
「なッなにぃぃぃッ!」
二人の放つ拳は互いの顔面を捉え、大きく横へと弾かせる。当たる筈がないと思っていたロッシュはその寸前に動揺し、勢いを僅かに遅らせてしまっていたのだ。散々拳を叩き込まれ、意識がハッキリしているのかも怪しかったグレイスだが、未だその攻撃力はロッシュを上回っており、彼を怯ませるだけの威力を誇っていた。
そしてロッシュに隙が生まれたことに気付いたグレイスは、此処ぞとばかりに次なる拳を彼に放つ。しかし、シンも手負いの身。スキル連続使用できるだけの魔力も体力もなく、このままでは再びロッシュにミラーニューロンを使われ、カウンターを受けてしまう。
「ダメだ、グレイスッ!反撃が来るッ・・・!まだ、次は無いんだッ・・・!」
グレイスには、先程の攻撃がシンのスキルによる援護があったおかげで命中したのだと知る由もない。故に彼女には、反撃の好機に見えていたのだろう。例え相手が手負いであろうと、しっかり見極めれば避けられてしまうようなグレイスの大振りの一撃。
だが、シンのスキルによる妨害であることをロッシュも気付いていなかった。自分の技に絶対の自信があった彼は避けることなど考えず、再びミラーニューロンを放ち、返り討ちにしてやると、グレイスと同じく全身の勢いを使った全力の一撃を彼女に放つ。
如何に己自身の身体能力で優っているとはいえ、今の体力でロッシュの全力の一撃をもらえば、取り返しのつかない事になるかもしれない。ロッシュはまたグレイスの身体を操縦し、攻撃を逸させようとミラーニューロンを彼女身体に放つ。
二人の攻撃はまるでスローモーションの様に見えた。互いの拳がそれぞれの着弾地点へと向かって行く。そしてロッシュの表情が目論み通り事が運んだことを喜ぶ様に、不適な笑みへと変わる。スキルを使ったに違いない。
「グレイスーーーッ!!」
ロッシュの方が一枚上手だった。最期まで奥の手を明かす事なく、不利な状況やダメージさえも利用し相手を騙す。シンがグレイスの敗北から目を背けようとしたその時。
大きな殴打音と共に床に倒れたのは、ロッシュだった。
「あぁッ・・・ぁ・・・何故・・・?」
予期せぬ結果に、唖然とするシン。そして誰よりも驚いていたのはロッシュ自身だろう。何故グレイスの攻撃が逸れなかったのか、何故ミラーニューロンが発動しなかったのか。それは、用心深く観察眼の肥えたロッシュが何故気付かなかったのかと疑うほど、至ってシンプルな理由だった。
暫くして漸くその原因に気が付いたロッシュが、ゆっくり首を動かして周囲を眺めながら、苦虫を噛んだ様に歯軋りをさせて睨みつける。そんな彼の視線は、シンの方へも向けられた。
「きッ・・・貴様らぁッ・・・!!」
グレイス海賊団との戦闘の中で、彼は幾度となくミラーニューロンを使った、物や人の操縦をしてきた。砲弾の弾や模型の戦闘機、シンとの二度に渡る戦闘やシルヴィとの戦闘。
戦いの前に補充を済ませたロッシュであれば、十分に足りる筈だった。彼にとっての想定外の出来事は、シンという部外者の参戦。二度に渡る彼との戦闘が、ロッシュの計画と自信を狂わせたのだ。
ロッシュの前に敗れていった者達の健闘は、決して無駄なものではなかった。度重なる戦闘でロッシュは、ミラーニューロンの“弾切れ”を起こしていたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
異世界に流されて…!?
藤城満定
ファンタジー
東京発沖縄着の船で修学旅行に出港した都立東品川高等学校2年4組の生徒35人は出港して2時間が過ぎた頃に突然の嵐に巻き込まれてしまい、船が転覆してしまって海に投げ出されてしまった。男子生徒の宮間景太郎が目を覚ますと、そこはどこかの森の中だった。海に投げ出されたのに、何で森の中にいるんだ?不思議に思って呆然としていたら、森の奥から聞き覚えのある女子生徒達の悲鳴が聞こえてきた。考えるより先に体が動いた。足元にあった折れて先端が尖った木の枝と石コロを取って森の奥へと駆け出した。そこには3人の女子生徒が5匹の身長160cmくらいの緑色の肌色のバケモノに襲われていた。そのバケモノは異世界アニメやコミックでお馴染みのゴブリン?だった。距離は10mはある。短剣を持ったのと木製の棍棒を持ったゴブリンの内、棍棒を持ったのがソレを振り下ろすのを防ぐのは無理な距離。ならばと、拾っておいた石コロを全力投球投。全くの無警戒だった場所からかならの威力で投げられた石コロが頭に命中して、そのまま倒れてしまったので他のゴブリン共も動揺した。その隙に女子生徒達とゴブリン共の間に立ち塞がり、拾った木の枝(棒?)を振り回して距離を置き、斃したゴブリンから棍棒を拾ってそこからはタコ殴りに殴りまくった。棍棒や短剣を弾くと、頭、首、肩、腕、足と、それはもうフルボッコのボッコボコにして斃してから暫くして女子生徒達に「大丈夫か?」と声をかけると、3人ともポカーンと口を開けて呆然としていた。まあ、無理もない。何故なら景太郎はクラスでは寡黙で、いつも1人で行動しているそれは、ぶっちゃけて言うと、完全な『ボッチくん』だったからだ。そんな景太郎が自分達の命を助けてくれた。それも今まで誰も見た事のない熱く必死な戦い方でだ。これは謂わゆる『吊り橋効果』ではあるが、こうまで男らしい姿を見せられては惚れるなというほうが無理だろう。その瞬間から女子達による景太郎の取り合い合戦が始まった。
【毎週火曜日に投稿します】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる