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何処にでもあるもの
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別室を探すミアは、そこで別の水塊を見つける。今度は趣向を凝らし、壁にかけられたランタンを錬金術で修復し、再び中に火を灯す。それを加熱し、床を這いずり回る水塊に放る。
物は試し。水の中に火を入れるなど、それこそ火を見るより明らかだろう。無論、ただの火を灯した訳ではない。ミアの錬金術により通常よりも消えづらく、火力を盛って放り投げたのだ。
ランタンが床を這う水溜りのように広がる水塊の上に落ちる。火の灯る内部を風や空気の振動から守るガラスが割れ、水塊の水と内部の火が触れ合う。しかし結果は予想通り、火は器から解き放たれるとその勢いを増し、一度は水塊に覆いかぶさろうとするも、直ぐに鎮火される。
しかし、水塊に反応を示したのはそれだけではなかった。火を灯していたランタンが水に曝させ火花を散らす。すると、床に落とされた衝撃で破損したランタンの内部から電気が走る。
小さな雷となって水塊に触れると、火の時とは違い一瞬にして水溜りを覆い尽くし、通電した。
「電気を通した・・・。氷ではなく雷なら、あるいは・・・」
氷属性を帯びた銃弾では、少年を拘束するに留まるだけ。ダメージが入っているようにはとても思えない。ミアは凍結による攻撃から、雷属性での攻撃に切り替え、船内にある物品を使い、即席の雷撃弾を作る事にした。
属性弾を作り出す空の銃弾には限りがある。ただでさえ凍結弾でその数を減らしてしまっている。限られた弾数で、限りある戦闘を強いられる。
船内に蔓延る水塊は、本物の水溜まりなのか少年が姿を変えたものなのか、見た目だけでは判断がつかない。本体を探し再び移動を開始したミアは、通路で水溜りを目撃し、思わず息を殺し曲がり角へ身を隠す。
静かに顔を出し様子を伺うが、動く気配はない。しかし、用心するに越したことはない。手にした小物をそっと水溜りの中へ放り込むミア。だが、水溜りは滴を宙に舞い上げるだけで、目立った変化はない。
先へ進もうとした時、背後から少年の声がした。いつの間にここまで近づかれてしまったのか。それに背後は彼女が通って来た道。道中に怪しいものや水にまつわる物があれば警戒していない筈がない。
「いろいろと調べてるみたいだけど・・・。攻略法は見つかった?」
「ッ・・・!!」
突然のことに、思わず背後へ飛び退き距離を取るミア。しかしそこには先ほどの水溜りがあり、それは形を変え彼女の足首に巻き付いた。ひんやりと湿る感覚に、嫌な予感が脳裏を駆け巡る。視線を少年から自らの足へと落とす。そこには水の触手に絡め取られた自分の足が見えた。
毒で侵される。皮膚にまだ異常は見られない。彼女は咄嗟に手持の道具から属性弾の元となる弾丸を取り出すと、本来雷属性を付与しようとしていた空の弾丸に火属性を付与し始めた。
水の触手の中が徐々に猛毒によって気泡を立て始める。神経に触るような痛みが僅かに足首に走り出す。
「ぐッ・・・ぅぅッ・・・!!」
即席で火属性の属性弾を作り出した彼女は、それを自分の足首に巻き付く水の触手に全弾撃ち込んだ。当然、一発や二発程度では変化は見られなかったが、次々に撃ち込まれる高温の弾丸が、水の温度を上げ始め次第にブクブクと激しい気泡を上げながら沸騰させる。
「ぅッ!・・・ぁぁあ“あ”あ“ッ!!」
焼けるように熱せられる痛みか、毒による浸食の痛みなのか、最早判断のつけようもない激痛が足首に走る。しかし、それでも足はまだ動かせる。毒による麻痺だけは何としても避けたかったミア。辛うじて動く足を触手から剥がし、床に倒れ転がる。
直ぐに火傷を治すアイテムを使用し、痛みから解放される。それでも兄首にはそれまでの痛みの記憶が残ってしまい、暫くは衝撃に敏感になってしまっていた。視線を再び少年に移すが、彼の姿は同じところにはなかった。
「驚いた・・・。自ら足の水を沸騰させて、熱湯消毒をしたってわけですか。分かっていても、中々出来ることではありません」
少年は彼女の背後から語りかける。ミアの覚悟に感銘したのか、不意打ちを仕掛けることはなかった。だが、彼女にはそんなことを読み解く余裕などなく、まだ思い通りに動かぬ足を庇いながら少年とは逆の方へ転がり、立ち上がって射線を切るように通路を曲がる。
「何処へ行っても無駄ですよ。僕は何処にでもいますから・・・」
近くで声がするかと思えば、少年は直ぐ隣で彼女を見上げて話しかけていた。驚きのあまり、折角射線を切った曲がり角から出て倒れてしまう。先ほど少年が居た位置へ視線を送ると、依然そこには少年がおり、正面にも同じ姿がある。
彼の言う通り、何処へ逃げようと少年の包囲から完全に逃れることは出来ない。見失ったように見えたのも、実は少年に踊らされていただけなのだろうか。
「くそッ・・・!」
ミアの側に割れた窓がある。外の様子は見えないが、少なくとも室内ではないようだ。一か八か、彼女は足を引き摺りながら窓に向かい、転がり込むようにしてそこから飛び降りた。
物は試し。水の中に火を入れるなど、それこそ火を見るより明らかだろう。無論、ただの火を灯した訳ではない。ミアの錬金術により通常よりも消えづらく、火力を盛って放り投げたのだ。
ランタンが床を這う水溜りのように広がる水塊の上に落ちる。火の灯る内部を風や空気の振動から守るガラスが割れ、水塊の水と内部の火が触れ合う。しかし結果は予想通り、火は器から解き放たれるとその勢いを増し、一度は水塊に覆いかぶさろうとするも、直ぐに鎮火される。
しかし、水塊に反応を示したのはそれだけではなかった。火を灯していたランタンが水に曝させ火花を散らす。すると、床に落とされた衝撃で破損したランタンの内部から電気が走る。
小さな雷となって水塊に触れると、火の時とは違い一瞬にして水溜りを覆い尽くし、通電した。
「電気を通した・・・。氷ではなく雷なら、あるいは・・・」
氷属性を帯びた銃弾では、少年を拘束するに留まるだけ。ダメージが入っているようにはとても思えない。ミアは凍結による攻撃から、雷属性での攻撃に切り替え、船内にある物品を使い、即席の雷撃弾を作る事にした。
属性弾を作り出す空の銃弾には限りがある。ただでさえ凍結弾でその数を減らしてしまっている。限られた弾数で、限りある戦闘を強いられる。
船内に蔓延る水塊は、本物の水溜まりなのか少年が姿を変えたものなのか、見た目だけでは判断がつかない。本体を探し再び移動を開始したミアは、通路で水溜りを目撃し、思わず息を殺し曲がり角へ身を隠す。
静かに顔を出し様子を伺うが、動く気配はない。しかし、用心するに越したことはない。手にした小物をそっと水溜りの中へ放り込むミア。だが、水溜りは滴を宙に舞い上げるだけで、目立った変化はない。
先へ進もうとした時、背後から少年の声がした。いつの間にここまで近づかれてしまったのか。それに背後は彼女が通って来た道。道中に怪しいものや水にまつわる物があれば警戒していない筈がない。
「いろいろと調べてるみたいだけど・・・。攻略法は見つかった?」
「ッ・・・!!」
突然のことに、思わず背後へ飛び退き距離を取るミア。しかしそこには先ほどの水溜りがあり、それは形を変え彼女の足首に巻き付いた。ひんやりと湿る感覚に、嫌な予感が脳裏を駆け巡る。視線を少年から自らの足へと落とす。そこには水の触手に絡め取られた自分の足が見えた。
毒で侵される。皮膚にまだ異常は見られない。彼女は咄嗟に手持の道具から属性弾の元となる弾丸を取り出すと、本来雷属性を付与しようとしていた空の弾丸に火属性を付与し始めた。
水の触手の中が徐々に猛毒によって気泡を立て始める。神経に触るような痛みが僅かに足首に走り出す。
「ぐッ・・・ぅぅッ・・・!!」
即席で火属性の属性弾を作り出した彼女は、それを自分の足首に巻き付く水の触手に全弾撃ち込んだ。当然、一発や二発程度では変化は見られなかったが、次々に撃ち込まれる高温の弾丸が、水の温度を上げ始め次第にブクブクと激しい気泡を上げながら沸騰させる。
「ぅッ!・・・ぁぁあ“あ”あ“ッ!!」
焼けるように熱せられる痛みか、毒による浸食の痛みなのか、最早判断のつけようもない激痛が足首に走る。しかし、それでも足はまだ動かせる。毒による麻痺だけは何としても避けたかったミア。辛うじて動く足を触手から剥がし、床に倒れ転がる。
直ぐに火傷を治すアイテムを使用し、痛みから解放される。それでも兄首にはそれまでの痛みの記憶が残ってしまい、暫くは衝撃に敏感になってしまっていた。視線を再び少年に移すが、彼の姿は同じところにはなかった。
「驚いた・・・。自ら足の水を沸騰させて、熱湯消毒をしたってわけですか。分かっていても、中々出来ることではありません」
少年は彼女の背後から語りかける。ミアの覚悟に感銘したのか、不意打ちを仕掛けることはなかった。だが、彼女にはそんなことを読み解く余裕などなく、まだ思い通りに動かぬ足を庇いながら少年とは逆の方へ転がり、立ち上がって射線を切るように通路を曲がる。
「何処へ行っても無駄ですよ。僕は何処にでもいますから・・・」
近くで声がするかと思えば、少年は直ぐ隣で彼女を見上げて話しかけていた。驚きのあまり、折角射線を切った曲がり角から出て倒れてしまう。先ほど少年が居た位置へ視線を送ると、依然そこには少年がおり、正面にも同じ姿がある。
彼の言う通り、何処へ逃げようと少年の包囲から完全に逃れることは出来ない。見失ったように見えたのも、実は少年に踊らされていただけなのだろうか。
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