305 / 1,646
開演を告げる霧笛
しおりを挟む
ロロネー側の船から、次々に乗り込んで来るアンデッドや死霊系のモンスター達。足のある者達は現状、然程脅威ではない。ハオランの乗る船に突き刺さった船首部分から、こちらへ順々と向かって来るだけだからだ。
問題なのは宙に浮く死霊系のモンスター達。地形に関係なく、足場の悪い箇所を飛び越え、一直線にハオランの元へ向かって来る。それは正しく、あの時小舟で見た海賊の亡霊。もし同類だというのならこれらも恐らく、物理的な攻撃が通らないだろう。
だが、思考を持たないモンスターであれば対処はそれ程むずかしいものではない。剣を手にした亡霊がハオランヘ攻撃を仕掛ける。ロロネーや意思を持った生物とは違い、裏表のない直線的な攻撃ばかり。二体三体と斬りかかって来る亡霊の攻撃を、最小の動きで見事に避けるハオラン。
そして彼の、反撃の為に握りしめた拳には光が宿り、攻撃を外して隙の出来た亡霊目掛けて強烈な一撃をお見舞いする。しかし、直接拳を当てる訳ではなく、亡霊に触れる寸前のところで拳に急ブレーキをかけるハオラン。
すると、彼の拳から光だけが勢いそのままに飛び出して行き、亡霊を吹き飛ばす。同じ要領で、両の拳に光を宿すと隙を見つけては次々にその光を、向かって来る亡霊達に打ち込んでいく。
損壊した船の上で、足場を次々に飛び移り亡霊の対処に当たるハオランだったが、そこへ二隻目の船が彼の乗る船に突き刺さる。船が大きく揺れ、バランスを崩すハオランだったが、自ら邪魔な瓦礫を壊し、船の破片を衝撃波で吹き飛ばしながら、目まぐるしく変わる足場に対応している。
その傍ら、船首から乗り込んで来ようとする海賊姿のスケルトン達は、船の衝突による揺れで何体か海へと落ちていく。それでもお構いなしに、目的の彼の元を目指して突き進む。下に落ちた者達も、瓦礫を掻き分け、船内を通り抜け、船体を這い上がって行く。
亡霊の対処に追われるハオランの元へ、遂にスケルトン達が到着し剣を振るう。単騎であれば、彼の実力からして何の問題もない相手なのだが、足場の悪さに加え、別の敵の対処やその人海戦術とでも言わんばかりの、圧倒的兵力がハオランの緊張を高めて行く。
少し気を緩めれば、これまで積み上げて来たものが一気に崩壊する。多少ダメージは食らっても、痛手は貰えない。攻撃や回避、移動の一つ一つに重みが増してくる。すると、船内からやって来たスケルトンが、立て付けの悪くなった床を突き破り、ハオランの足首を掴む。
突然移動を阻害されたハオランが、その足首に視線を送っているうちに亡霊が飛びかかる。彼は咄嗟に上半身を後方へ反らし、亡霊の斬撃を避けるとそのままバク転し、掴まれた足を勢い良く上に跳ね上げると、その足首には千切れたスケルトンの腕だけが残っていた。
「ッ・・・!埒が明かない・・・。奴だけ倒して、とっとと抜けるか・・・」
次々に衝突して来る船と、モンスター達の猛攻を掻い潜り、周囲を探すハオラン。しかし、何処を見渡せどロロネーの姿が見当たらない。そうしている内にも、モンスターの援軍は絶えずやって来ていた。
高い所に乗り、周囲を一望しようと周りにある船の瓦礫の中で一番高いマストへと駆け上がって行くハオラン。だが、そこで驚きの光景を彼は目の当たりにすることになる。
船上の甲板で戦っていた時には気づかなかったが、いつの間にか彼の乗り合わせていた船には、四方八方凡ゆる方向からロロネーの寄越した海賊船が衝突しており、下にはまるでゾンビのように、海賊姿のスケルトン達が群れを成し、亡霊達が縦横無尽に飛び回るという地獄のような光景が広がっていた。
「なッ・・・!いつの間にこれ程・・・。早急に奴を見つけなくてはッ・・・」
全てを相手にしている余裕はない。かと言って高い足場を移動すれば、宙を飛び回れる亡霊達の思う壺。辺りの海面には、未だ絶えることなく海賊船が向かって来ている。増援を用意していたにしては、余りにも数が多過ぎる。
これ程の大軍勢を保有しているのなら、ロロネーについて調べ上げる段階でその数に気付かない筈はない。一体何処にこれだけの数をかくしていたのか。ハオランが先の見えない戦況に焦燥の表情を浮かべていると、何処からともなく、その男の声が聞こえて来た。
「どうだぁ?驚いただろぉうぅ!?見渡す限りの海賊船、一体どうやって用意したのか気になるだろぉ?冥土の土産に教えてやるよ。・・・つまり・・・こういうこったッ!!」
男の合図と共に、海面で足場となっている船の残骸が煙のように水蒸気を上げ、濃霧をより一層濃くしながら、徐々にその形を霧の中へと溶け込ませていったのだ。
「ブルイヤール・コシュマール。霧の悪夢へようこそ・・・」
ロロネーは帽子を片手に、ショーの前座を盛り上げ、クライマックスへの期待を煽る演者のように深々とお辞儀をした。
問題なのは宙に浮く死霊系のモンスター達。地形に関係なく、足場の悪い箇所を飛び越え、一直線にハオランの元へ向かって来る。それは正しく、あの時小舟で見た海賊の亡霊。もし同類だというのならこれらも恐らく、物理的な攻撃が通らないだろう。
だが、思考を持たないモンスターであれば対処はそれ程むずかしいものではない。剣を手にした亡霊がハオランヘ攻撃を仕掛ける。ロロネーや意思を持った生物とは違い、裏表のない直線的な攻撃ばかり。二体三体と斬りかかって来る亡霊の攻撃を、最小の動きで見事に避けるハオラン。
そして彼の、反撃の為に握りしめた拳には光が宿り、攻撃を外して隙の出来た亡霊目掛けて強烈な一撃をお見舞いする。しかし、直接拳を当てる訳ではなく、亡霊に触れる寸前のところで拳に急ブレーキをかけるハオラン。
すると、彼の拳から光だけが勢いそのままに飛び出して行き、亡霊を吹き飛ばす。同じ要領で、両の拳に光を宿すと隙を見つけては次々にその光を、向かって来る亡霊達に打ち込んでいく。
損壊した船の上で、足場を次々に飛び移り亡霊の対処に当たるハオランだったが、そこへ二隻目の船が彼の乗る船に突き刺さる。船が大きく揺れ、バランスを崩すハオランだったが、自ら邪魔な瓦礫を壊し、船の破片を衝撃波で吹き飛ばしながら、目まぐるしく変わる足場に対応している。
その傍ら、船首から乗り込んで来ようとする海賊姿のスケルトン達は、船の衝突による揺れで何体か海へと落ちていく。それでもお構いなしに、目的の彼の元を目指して突き進む。下に落ちた者達も、瓦礫を掻き分け、船内を通り抜け、船体を這い上がって行く。
亡霊の対処に追われるハオランの元へ、遂にスケルトン達が到着し剣を振るう。単騎であれば、彼の実力からして何の問題もない相手なのだが、足場の悪さに加え、別の敵の対処やその人海戦術とでも言わんばかりの、圧倒的兵力がハオランの緊張を高めて行く。
少し気を緩めれば、これまで積み上げて来たものが一気に崩壊する。多少ダメージは食らっても、痛手は貰えない。攻撃や回避、移動の一つ一つに重みが増してくる。すると、船内からやって来たスケルトンが、立て付けの悪くなった床を突き破り、ハオランの足首を掴む。
突然移動を阻害されたハオランが、その足首に視線を送っているうちに亡霊が飛びかかる。彼は咄嗟に上半身を後方へ反らし、亡霊の斬撃を避けるとそのままバク転し、掴まれた足を勢い良く上に跳ね上げると、その足首には千切れたスケルトンの腕だけが残っていた。
「ッ・・・!埒が明かない・・・。奴だけ倒して、とっとと抜けるか・・・」
次々に衝突して来る船と、モンスター達の猛攻を掻い潜り、周囲を探すハオラン。しかし、何処を見渡せどロロネーの姿が見当たらない。そうしている内にも、モンスターの援軍は絶えずやって来ていた。
高い所に乗り、周囲を一望しようと周りにある船の瓦礫の中で一番高いマストへと駆け上がって行くハオラン。だが、そこで驚きの光景を彼は目の当たりにすることになる。
船上の甲板で戦っていた時には気づかなかったが、いつの間にか彼の乗り合わせていた船には、四方八方凡ゆる方向からロロネーの寄越した海賊船が衝突しており、下にはまるでゾンビのように、海賊姿のスケルトン達が群れを成し、亡霊達が縦横無尽に飛び回るという地獄のような光景が広がっていた。
「なッ・・・!いつの間にこれ程・・・。早急に奴を見つけなくてはッ・・・」
全てを相手にしている余裕はない。かと言って高い足場を移動すれば、宙を飛び回れる亡霊達の思う壺。辺りの海面には、未だ絶えることなく海賊船が向かって来ている。増援を用意していたにしては、余りにも数が多過ぎる。
これ程の大軍勢を保有しているのなら、ロロネーについて調べ上げる段階でその数に気付かない筈はない。一体何処にこれだけの数をかくしていたのか。ハオランが先の見えない戦況に焦燥の表情を浮かべていると、何処からともなく、その男の声が聞こえて来た。
「どうだぁ?驚いただろぉうぅ!?見渡す限りの海賊船、一体どうやって用意したのか気になるだろぉ?冥土の土産に教えてやるよ。・・・つまり・・・こういうこったッ!!」
男の合図と共に、海面で足場となっている船の残骸が煙のように水蒸気を上げ、濃霧をより一層濃くしながら、徐々にその形を霧の中へと溶け込ませていったのだ。
「ブルイヤール・コシュマール。霧の悪夢へようこそ・・・」
ロロネーは帽子を片手に、ショーの前座を盛り上げ、クライマックスへの期待を煽る演者のように深々とお辞儀をした。
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる