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策と演技
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負傷をした精鋭は離れた位置から援護を、残りの者達はシュユーのエンチャント武器を片手に、ミアの雷撃で苦しむメデューズ目掛けて畳み掛ける。少年は頭を押さえながら、執拗な攻撃を仕掛ける彼らを払い除け、依然変わりない鋭さで触手を操る。
ダメージによる怯みはあったものの、動きに変わりはない。それどころか、精鋭の持つ武器への警戒心が強まり、より繊細な守りの行動もする様になってしまった。
戦況自体は変わりを見せないが、その代わりここを訪れたメデューズが分身体であるという情報を得た。その一部始終を見ていたチン・シーも、恐らくは勘付いただろう。
彼女がそれを踏まえて、次にどんな指示を出すのか。他の箇所で戦いを繰り広げている中から、本体を見つけ出すのか、そもそもメデューズの本体はこの船に乗り込んで来ているのだろうか。
そんなミアの不安を一蹴する様にチン・シーは立ち上がり、その場にいる船員達に号令を出す。しかし、彼女のその号令でミアは更なる不安と疑問を抱えることになってしまう。
「皆の者、奴はやはり雷の属性に弱いようだ。それを客人が証明して見せた。これは好機ぞッ!妾の守りはもうよい。直ぐに汝等も戦闘に参加し、一気に畳み掛けるのだ!」
チン・シーの号令で、彼女の側につき護衛していた船員達も、メデューズとの戦闘に加わり、精鋭の持つエンチャント武器による攻撃を命中させるための足掛かりを作ろうと奮起する。
数が増えたことで、更に触手の数を増やし、じっくり腰を据えて迎え撃つ姿勢をとるメデューズ。何度か追い詰める場面もあったが、中々次なる一撃を与えられず苦戦する船員達。
だが違うのだ。これではメデューズの思う壺。何処に潜んでいるかも分からない本体やその分身体に、船自体を潰されてしまえばメデューズの勝利となる。これは時間稼ぎなのだ。
それなのにも関わらず、チン・シーは自らの護衛を外してまで攻勢に出てしまうという暴挙に出た。これが海賊界に名を馳せる強者の采配なのかと、ミアはすぐさま別の策に出るよう彼女に促す為、指示にはなかったが一時後退する。
しかし、そこで更なるアクシデントに見舞われることになる。チン・シーのいる後方へ振り向いたミアの目に、天井からゆっくり滴る水が彼女の椅子に落ちようとしていたのだ。
これは今、船員達が戦っているメデューズのものではない。つまり、何処かの戦闘を終えたのか、別個体のメデューズが総大将の首を狙って忍び込んでいたのだ。
「後ろだッ!別の奴が来てるぞッ!!」
だが、彼女を守る護衛はこの部屋にいたメデューズの元で戦闘に加わっている。完全に無防備となった総大将のチン・シー。ミアは銃を構え、天井から落ちる別個体のメデューズ目掛けて属性弾を撃ち込もうとしたが、床に入り浸っている水から現れた触手によって銃を弾かれてしまう。
船員達の猛攻に、防戦一方だった筈のメデューズが、何故攻撃を阻害できたのかと後ろを振り返るミア。戦う者達の合間から見えた少年が、こちらを見て笑っているように見える。
「・・・ッ!?」
やられた。ミアはその瞬間、メデューズという少年の賢さに一杯食わされたと、溢れ出る焦燥の感情に呑み込まれる。あの一連の隙は、彼らに雷属性がかなりの有効打であると思わせる為の演技だったのだ。
無論、メデューズの弱点が雷属性である事は変わりないが、大ダメージを受けたかのように大袈裟なリアクションをとって見せていた。わざと弱みを見せ、敵に畳み掛けさせる為の、メデューズの策。
もっと怪異の少年を警戒すべきだった。分身体を生み出すタイプの相手が、別個体の分身体との意思疎通が取れるかもしれないと。この部屋にやって来た分身体の役割は、注意を集めチン・シーの守りを緩めることだった。
そして、潜んでいた別個体が静かに忍び寄り暗殺する。これがこの二体のメデューズ達のシナリオだったのだ。
別の銃を取り出して撃ち込むじかんはない。こんな罠に掛かり、チン・シーを失おうとしていたその時、忍び寄る影に気付いたのか、突如彼女が口を開いた。
「貴様が本体であろうがなかろうが、妾には関係のないこと・・・。近づいた時点で勝敗は期したも同然。いくらか策を巡らせていたようだが、妾の方が上手であったな」
天井から忍び寄っていた水が少年の姿に変わり、宙吊りの状態で身動きを取れずにいた。一体何が起きているのか、頭が追いつかないミアとメデューズ。全ては攻め込まれる前から準備をしていた、チン・シーの思惑通りだった。
ダメージによる怯みはあったものの、動きに変わりはない。それどころか、精鋭の持つ武器への警戒心が強まり、より繊細な守りの行動もする様になってしまった。
戦況自体は変わりを見せないが、その代わりここを訪れたメデューズが分身体であるという情報を得た。その一部始終を見ていたチン・シーも、恐らくは勘付いただろう。
彼女がそれを踏まえて、次にどんな指示を出すのか。他の箇所で戦いを繰り広げている中から、本体を見つけ出すのか、そもそもメデューズの本体はこの船に乗り込んで来ているのだろうか。
そんなミアの不安を一蹴する様にチン・シーは立ち上がり、その場にいる船員達に号令を出す。しかし、彼女のその号令でミアは更なる不安と疑問を抱えることになってしまう。
「皆の者、奴はやはり雷の属性に弱いようだ。それを客人が証明して見せた。これは好機ぞッ!妾の守りはもうよい。直ぐに汝等も戦闘に参加し、一気に畳み掛けるのだ!」
チン・シーの号令で、彼女の側につき護衛していた船員達も、メデューズとの戦闘に加わり、精鋭の持つエンチャント武器による攻撃を命中させるための足掛かりを作ろうと奮起する。
数が増えたことで、更に触手の数を増やし、じっくり腰を据えて迎え撃つ姿勢をとるメデューズ。何度か追い詰める場面もあったが、中々次なる一撃を与えられず苦戦する船員達。
だが違うのだ。これではメデューズの思う壺。何処に潜んでいるかも分からない本体やその分身体に、船自体を潰されてしまえばメデューズの勝利となる。これは時間稼ぎなのだ。
それなのにも関わらず、チン・シーは自らの護衛を外してまで攻勢に出てしまうという暴挙に出た。これが海賊界に名を馳せる強者の采配なのかと、ミアはすぐさま別の策に出るよう彼女に促す為、指示にはなかったが一時後退する。
しかし、そこで更なるアクシデントに見舞われることになる。チン・シーのいる後方へ振り向いたミアの目に、天井からゆっくり滴る水が彼女の椅子に落ちようとしていたのだ。
これは今、船員達が戦っているメデューズのものではない。つまり、何処かの戦闘を終えたのか、別個体のメデューズが総大将の首を狙って忍び込んでいたのだ。
「後ろだッ!別の奴が来てるぞッ!!」
だが、彼女を守る護衛はこの部屋にいたメデューズの元で戦闘に加わっている。完全に無防備となった総大将のチン・シー。ミアは銃を構え、天井から落ちる別個体のメデューズ目掛けて属性弾を撃ち込もうとしたが、床に入り浸っている水から現れた触手によって銃を弾かれてしまう。
船員達の猛攻に、防戦一方だった筈のメデューズが、何故攻撃を阻害できたのかと後ろを振り返るミア。戦う者達の合間から見えた少年が、こちらを見て笑っているように見える。
「・・・ッ!?」
やられた。ミアはその瞬間、メデューズという少年の賢さに一杯食わされたと、溢れ出る焦燥の感情に呑み込まれる。あの一連の隙は、彼らに雷属性がかなりの有効打であると思わせる為の演技だったのだ。
無論、メデューズの弱点が雷属性である事は変わりないが、大ダメージを受けたかのように大袈裟なリアクションをとって見せていた。わざと弱みを見せ、敵に畳み掛けさせる為の、メデューズの策。
もっと怪異の少年を警戒すべきだった。分身体を生み出すタイプの相手が、別個体の分身体との意思疎通が取れるかもしれないと。この部屋にやって来た分身体の役割は、注意を集めチン・シーの守りを緩めることだった。
そして、潜んでいた別個体が静かに忍び寄り暗殺する。これがこの二体のメデューズ達のシナリオだったのだ。
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「貴様が本体であろうがなかろうが、妾には関係のないこと・・・。近づいた時点で勝敗は期したも同然。いくらか策を巡らせていたようだが、妾の方が上手であったな」
天井から忍び寄っていた水が少年の姿に変わり、宙吊りの状態で身動きを取れずにいた。一体何が起きているのか、頭が追いつかないミアとメデューズ。全ては攻め込まれる前から準備をしていた、チン・シーの思惑通りだった。
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