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蒼天に咲く亡者の散り花
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例えハオランの攻撃が見えていたところで、ロロネーにはその一撃を避けることが出来なかった。目の前のハオランに集中してしまえば、意思の中に入り込んだチン・シーに身体の動きを封じられ、逆にチン・シーに意識を集中させてしまえば、ハオランの攻撃を避けることが出来ないジレンマ。
要するに初めから、ロロネーに勝機などなかったのだ。シンのスキルを介してのコネクトで、本来の力は発揮できなかったものの、ダメージの蓄積により魔力と身体が弱体化し、意思の中にまで集中するだけの余裕がなかったロロネーには十分過ぎる効果だった。
「何故・・・?どうしてあんな力が・・・」
ロロネーが最後に尋ねたのは、ハオランが見せた様々な武器による怒涛のラッシュ攻撃についてだった。本来クラスは、一人につき二つまでというのが基本だ。しかしハオランが用いた武器は、双剣や槍、弓や手裏剣など、二つのクラスで賄えないほど多彩な攻撃手段を披露した。
ハオランは周囲に散らばった鉄線と手裏剣を見渡し、虫の息の男にカラクリを明かした。それはかつて、武術の才能の無かった彼からは想像も出来ないほどの、血の滲むような努力の成果と言えるだろう。
「・・・これか?何、簡単なことだ。俺は凡ゆる武術を学び修練を積んで来た・・・。もう二度と失わないようにな。これはその結果だ。“ウエポンマスター“、それが俺のもう一つのクラスだ」
彼の言う“ウエポンマスター“とは、その名の通り凡ゆる武器の熟練度を上級者レベルにまで引き上げた上で、漸く就くことの出来る特別なクラス。その道のりは険しくとても長いものとなる。
一つのクラスを極めようとすれば、それこそ熟練度だけでなくスキルや必要なステータスを上げなければならない。ハオランはそれを各クラスで繰り返し、剣士のクラスを上達させては次のランサーのクラスへチェンジし、再びゼロから上達させていく。
それを一通り全ての武器種で繰り返し、必要なスキルや熟練度を得ることでウエポンマスターのクラスへの扉が開かれる。故に彼は様々なクラスの武器を使用することができ、それぞれのスキルを保有していたのだ。
「ウエポンマスター・・・。そうか、だからお前のクラスの情報が錯綜していたのか・・・。通りで掴めぬ訳だ・・・」
そう言うと全身の力が抜け、身体がぺったりと床に張り付くロロネー。そこに戦意などは感じない。だがこのままにしておくほど、彼らの世界は甘いものではない。ハオランは倒れるロロネーに近づく。
ロロネーの意思にコネクトし、戦意喪失を察したチン・シーは男へのスキルを解除し、内なるものを解放させる。これでロロネーは自身の身体を、自分の意思だけで動かせるようになり、邪魔されることもなくなる。だが、今更解放されたところでハオランに太刀打ち出来るだけの余力は残っていない。
ハオランの接近に、男は最後の力を振り絞り起き上がるとやっとの思いで立ち上がる。ロロネーも覚悟が出来ているのだろ。死期を悟り、生にしがみつくようなことはせず、潔くこの戦いに幕を下ろすべく、散り花を咲かせようとしているようだった。
「・・・俺は・・・死なねぇぞ・・・。いや、死ねねぇのか・・・。人の道を逸れた俺は、役割を全うするだけの存在に・・・なったんだ・・・」
「ならばその役割とやらからも解放してやろう。散り花の潔さだけは評価してやる。苦しむことなく逝け」
両腕を大きく身体の前でゆっくり回し、爆風から身を守ったような円を描くと、身体をピタリと止め、高出力広範囲の衝撃波を全身の力で放ち、その光はロロネーを飲み込もうとしていた。
その刹那、ロロネーの身体はロロネーの意思に反し、ハオランの放つ衝撃波から逃れようと足を動かし始めたのだ。
「なッ・・・これは・・・ロッシュ・・・ッ!?奴め・・・いつの間に俺の身体にニューロンを・・・」
ロロネーの身体に起きた異変は、その逃れられない運命を変える程には至らなかったが、男の身体を操り何とかして生き延びようと試みているようだった。それはロッシュとの人体実験の間に、隙あらばロロネーすら利用しようとしていたロッシュが、密かにその身体に忍ばせていた、ロッシュのニューロンによる自動操縦だった。
本体が既に死んでいるにも関わらず、ロッシュの執念がロロネーの身体の中で生き続け、その身体を失わぬよう本能で動かそうとしていたのだ。
「・・・こんな時にまで、俺は誰かに利用されようとしているのか・・・。何処まで行こう、俺の運命とはその道にあるのやも知れんな・・・。だが俺は、それすらも利用してやる・・・。いつの日か、俺の・・・俺だけの意思と志を成す為に・・・」
ロロネーの身体はハオランの放つ衝撃波に飲まれ、塵のようにその身体を消滅させた。男の姿が消えたことにより、チン・シー海賊団とロロネーによる死霊の海賊団の戦いに終止符が打たれ、亡霊達やゴーストシップは霧の中に溶け込むように姿を消し、海域を覆い込んでいた濃い霧も静かに晴れ渡り、迷い込んでいた彼らを元の世界へと解放した。
要するに初めから、ロロネーに勝機などなかったのだ。シンのスキルを介してのコネクトで、本来の力は発揮できなかったものの、ダメージの蓄積により魔力と身体が弱体化し、意思の中にまで集中するだけの余裕がなかったロロネーには十分過ぎる効果だった。
「何故・・・?どうしてあんな力が・・・」
ロロネーが最後に尋ねたのは、ハオランが見せた様々な武器による怒涛のラッシュ攻撃についてだった。本来クラスは、一人につき二つまでというのが基本だ。しかしハオランが用いた武器は、双剣や槍、弓や手裏剣など、二つのクラスで賄えないほど多彩な攻撃手段を披露した。
ハオランは周囲に散らばった鉄線と手裏剣を見渡し、虫の息の男にカラクリを明かした。それはかつて、武術の才能の無かった彼からは想像も出来ないほどの、血の滲むような努力の成果と言えるだろう。
「・・・これか?何、簡単なことだ。俺は凡ゆる武術を学び修練を積んで来た・・・。もう二度と失わないようにな。これはその結果だ。“ウエポンマスター“、それが俺のもう一つのクラスだ」
彼の言う“ウエポンマスター“とは、その名の通り凡ゆる武器の熟練度を上級者レベルにまで引き上げた上で、漸く就くことの出来る特別なクラス。その道のりは険しくとても長いものとなる。
一つのクラスを極めようとすれば、それこそ熟練度だけでなくスキルや必要なステータスを上げなければならない。ハオランはそれを各クラスで繰り返し、剣士のクラスを上達させては次のランサーのクラスへチェンジし、再びゼロから上達させていく。
それを一通り全ての武器種で繰り返し、必要なスキルや熟練度を得ることでウエポンマスターのクラスへの扉が開かれる。故に彼は様々なクラスの武器を使用することができ、それぞれのスキルを保有していたのだ。
「ウエポンマスター・・・。そうか、だからお前のクラスの情報が錯綜していたのか・・・。通りで掴めぬ訳だ・・・」
そう言うと全身の力が抜け、身体がぺったりと床に張り付くロロネー。そこに戦意などは感じない。だがこのままにしておくほど、彼らの世界は甘いものではない。ハオランは倒れるロロネーに近づく。
ロロネーの意思にコネクトし、戦意喪失を察したチン・シーは男へのスキルを解除し、内なるものを解放させる。これでロロネーは自身の身体を、自分の意思だけで動かせるようになり、邪魔されることもなくなる。だが、今更解放されたところでハオランに太刀打ち出来るだけの余力は残っていない。
ハオランの接近に、男は最後の力を振り絞り起き上がるとやっとの思いで立ち上がる。ロロネーも覚悟が出来ているのだろ。死期を悟り、生にしがみつくようなことはせず、潔くこの戦いに幕を下ろすべく、散り花を咲かせようとしているようだった。
「・・・俺は・・・死なねぇぞ・・・。いや、死ねねぇのか・・・。人の道を逸れた俺は、役割を全うするだけの存在に・・・なったんだ・・・」
「ならばその役割とやらからも解放してやろう。散り花の潔さだけは評価してやる。苦しむことなく逝け」
両腕を大きく身体の前でゆっくり回し、爆風から身を守ったような円を描くと、身体をピタリと止め、高出力広範囲の衝撃波を全身の力で放ち、その光はロロネーを飲み込もうとしていた。
その刹那、ロロネーの身体はロロネーの意思に反し、ハオランの放つ衝撃波から逃れようと足を動かし始めたのだ。
「なッ・・・これは・・・ロッシュ・・・ッ!?奴め・・・いつの間に俺の身体にニューロンを・・・」
ロロネーの身体に起きた異変は、その逃れられない運命を変える程には至らなかったが、男の身体を操り何とかして生き延びようと試みているようだった。それはロッシュとの人体実験の間に、隙あらばロロネーすら利用しようとしていたロッシュが、密かにその身体に忍ばせていた、ロッシュのニューロンによる自動操縦だった。
本体が既に死んでいるにも関わらず、ロッシュの執念がロロネーの身体の中で生き続け、その身体を失わぬよう本能で動かそうとしていたのだ。
「・・・こんな時にまで、俺は誰かに利用されようとしているのか・・・。何処まで行こう、俺の運命とはその道にあるのやも知れんな・・・。だが俺は、それすらも利用してやる・・・。いつの日か、俺の・・・俺だけの意思と志を成す為に・・・」
ロロネーの身体はハオランの放つ衝撃波に飲まれ、塵のようにその身体を消滅させた。男の姿が消えたことにより、チン・シー海賊団とロロネーによる死霊の海賊団の戦いに終止符が打たれ、亡霊達やゴーストシップは霧の中に溶け込むように姿を消し、海域を覆い込んでいた濃い霧も静かに晴れ渡り、迷い込んでいた彼らを元の世界へと解放した。
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