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勇気のきっかけ
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シンとミアが現実世界で抱える悩みは、もしかしたら似ているのかも知れない。シンは今まで以上に、彼女との親近感が増したような気がした。同じ境遇の中にある彼ら。WoFの世界とよく似た、痛みも疲労も空腹すらある世界。
そこに現実との違いはなく、人が生活しそして生きている。この世界の住人達の死にも直面して来た。それでも、現実の世界で過ごす生きている価値すら見出せない空虚な時間を生きるより、よっぽど居心地が良かったのだ。
「俺も同じだよ、ミア。過去に俺を迎え入れてくれるようなところなんて何処にもないんだ・・・。そしてそれは今も、この先もきっと・・・。何の為の時間を過ごしているのか分からなかったから、俺はこの異変に巻き込まれて良かったのかもしれない。そう思うようになって来たんだ。怖い思いもたくさんしたけど、ミアやツクヨ、それにメアやアーテム、ツバキ達に会えて充実した時間を過ごせている・・・」
いろんな生活、いろんなモノに恵まれた環境の中では決して見つけることの出来ないもの。行動を起こし、様々なものに触れる事で、生きていく上で大事なものを学んでいく。自分の世界に閉じこもってしまった彼らに起きた異変。それは再び彼らを立ち上がらせ、新たな世界へ歩ませるきっかけとなったのかもしれない。
「これが変わるきっかけになるなんて皮肉だな・・・」
「こんなきっかけでもないと、変われなかっただろうけどね・・・」
惨めで苦しく、先の見えない時の中でも、同じ境遇の中にある者は必ずいる。それが言葉だけでなく、心や身体で理解できただけでも、行動を起こせる勇気が湧いて来る。それが例え、死の縁を渡る険しい道であっても、彼らはこの世界でなら光に向かって歩みを進められる。
「少し辛気臭くなってしまったな・・・。そろそろ中に戻らないと、また邪魔者が来るぞ?」
「そうだな・・・。それじゃぁ先に戻ってるよ、ミア。また時間になったら交代しに来るから」
船内へ戻ろうとするシンへ、振り向く事なく手を振るミア。いろんな事が立て続けに起こり、身近な仲間の事も聞く暇すらなかった。今度からは、余裕がある時にでももう少し身の上話でもしてみようか。そう思いながらシンは、船内へと戻って行った。
「おいシンッ!見てみろよコレ!水中でも地上のように腕を動かせるガントレットだ!」
腕に装着した鉄製のガントレットで、指を広げたり握ったりして、嬉しそうに見せびらかすツバキ。どうやら船の改造改築で余った部品を使い、戦闘用の装備を拵えてくれたようだった。
「コイツは天才かもな。ちょっと見て触れただけで、余り物を使ってこんな物まで作っちまうとはな・・・。流石、ウィリアム・ダンピアのお弟子様だな」
「馬鹿言ってんじゃねぇ!俺はじじぃを超えるエンジニアになるんだ。ただの造船技師で終わる気はねぇんだよ」
「どれ・・・。早速俺が試して来てやろう」
正直なところ、ボードの時点では彼の才能をそこまで評価していた訳ではなかった。だが、洗礼を受けていた時の操縦といい、船の改造改築や今まさに作り上げた特殊ギミックの装備品を目の前にして、彼の才能を認めざるを得なかった。
ツバキの腕からガントレットを引き抜き、代わりに装着したアシュトンが甲板の方へと向かう。一緒になって後を追うデイヴィスと、試作品の動作確認をしにいくツバキ。ついて来いと言わんばかりに自分の方へと腕を掻き込む。
すっかり傷の様子も良くなり、久しぶりに楽しそうな表情を浮かべるツバキと共に、シンは再び甲板へと向かい、アシュトンの入水をみんなで見送る。騒がしく船内から出て来た彼らを、見張りをしていたミアが見つける。
仲良くやっている様子を見て微笑むミアは、一行に加わることなくそのまま周囲の警戒を続けた。波を割いて進む船から飛び降りても、再び船へ戻る術を持つのだというアシュトンは、ガントレットの装着を確認すると海へと飛び込んで行った。
ツバキの指示の元、海中で様々な動作確認を行うアシュトン。何も問題なくこなして行く様子を見て、自らの腕前を誇らしげに踏ん反り返る。そんな彼をその気にさせるような言葉で持ち上げるデイヴィスは、あわよくばそのガントレットも頂こうとしているに違いない。
暫くして、身体に巻き付いたワイヤーを巧みに使い、甲板へと戻って来るアシュトン。何事もなく平然と降り立つアシュトン。近くで見ると、どうやら身体に巻き付いていると思われたワイヤーは、肩や腰の辺りから飛び出したリールに巻かれていたようだ。そしてワイヤーを巻き終えると、そのリールは邪魔にならぬようスーツの中へと収納されていった。コレも魔法の一種なのだろうか。
「成果は上々だな。コレで水中で剣を振ったり、物を投げても水の抵抗を受けなくなる。地上と変わらず攻撃出来るって訳だ!」
「なぁおい。コレ、俺にも作ってくれねぇか?部品ならさっきの島でくすねて来たのが沢山あるんだ。なんなら新しい装備を作ってくれても構わねぇ」
「本当かぁ!?よっしゃぁ!任せておけ!」
そういうと、アシュトンと合流した島で漁った物品をジャラジャラと展開し、宝の山を見るような目で勢いづくデイヴィスとツバキ。アシュトンはすっかり目的を忘れたようにはしゃぐデイヴィスの代わりに、船を操縦するツクヨの元へ案内するようシンに伝える。
操縦室へやって来る二人。事前にデイヴィスから指示をもらっていたツクヨは、忠実にそのルートを辿り目的地を目指す。
「予定通り進んでいる。この調子で行けば、まもなくアンスティスの居るであろう島に着く頃合いだろう」
「その・・・、あんす・・・アンス・・・ティス?っていう人はどんな人なんです?」
操縦するツクヨが、次の島で合流する手筈になっているアンスティスについて尋ねる。だがどうやら、アシュトンはその人物をあまり信用していないようだった。デイヴィスの知らない、デイヴィス海賊団のその後、そこでは彼らの中でも様々な心の変化があったのだという。
そこに現実との違いはなく、人が生活しそして生きている。この世界の住人達の死にも直面して来た。それでも、現実の世界で過ごす生きている価値すら見出せない空虚な時間を生きるより、よっぽど居心地が良かったのだ。
「俺も同じだよ、ミア。過去に俺を迎え入れてくれるようなところなんて何処にもないんだ・・・。そしてそれは今も、この先もきっと・・・。何の為の時間を過ごしているのか分からなかったから、俺はこの異変に巻き込まれて良かったのかもしれない。そう思うようになって来たんだ。怖い思いもたくさんしたけど、ミアやツクヨ、それにメアやアーテム、ツバキ達に会えて充実した時間を過ごせている・・・」
いろんな生活、いろんなモノに恵まれた環境の中では決して見つけることの出来ないもの。行動を起こし、様々なものに触れる事で、生きていく上で大事なものを学んでいく。自分の世界に閉じこもってしまった彼らに起きた異変。それは再び彼らを立ち上がらせ、新たな世界へ歩ませるきっかけとなったのかもしれない。
「これが変わるきっかけになるなんて皮肉だな・・・」
「こんなきっかけでもないと、変われなかっただろうけどね・・・」
惨めで苦しく、先の見えない時の中でも、同じ境遇の中にある者は必ずいる。それが言葉だけでなく、心や身体で理解できただけでも、行動を起こせる勇気が湧いて来る。それが例え、死の縁を渡る険しい道であっても、彼らはこの世界でなら光に向かって歩みを進められる。
「少し辛気臭くなってしまったな・・・。そろそろ中に戻らないと、また邪魔者が来るぞ?」
「そうだな・・・。それじゃぁ先に戻ってるよ、ミア。また時間になったら交代しに来るから」
船内へ戻ろうとするシンへ、振り向く事なく手を振るミア。いろんな事が立て続けに起こり、身近な仲間の事も聞く暇すらなかった。今度からは、余裕がある時にでももう少し身の上話でもしてみようか。そう思いながらシンは、船内へと戻って行った。
「おいシンッ!見てみろよコレ!水中でも地上のように腕を動かせるガントレットだ!」
腕に装着した鉄製のガントレットで、指を広げたり握ったりして、嬉しそうに見せびらかすツバキ。どうやら船の改造改築で余った部品を使い、戦闘用の装備を拵えてくれたようだった。
「コイツは天才かもな。ちょっと見て触れただけで、余り物を使ってこんな物まで作っちまうとはな・・・。流石、ウィリアム・ダンピアのお弟子様だな」
「馬鹿言ってんじゃねぇ!俺はじじぃを超えるエンジニアになるんだ。ただの造船技師で終わる気はねぇんだよ」
「どれ・・・。早速俺が試して来てやろう」
正直なところ、ボードの時点では彼の才能をそこまで評価していた訳ではなかった。だが、洗礼を受けていた時の操縦といい、船の改造改築や今まさに作り上げた特殊ギミックの装備品を目の前にして、彼の才能を認めざるを得なかった。
ツバキの腕からガントレットを引き抜き、代わりに装着したアシュトンが甲板の方へと向かう。一緒になって後を追うデイヴィスと、試作品の動作確認をしにいくツバキ。ついて来いと言わんばかりに自分の方へと腕を掻き込む。
すっかり傷の様子も良くなり、久しぶりに楽しそうな表情を浮かべるツバキと共に、シンは再び甲板へと向かい、アシュトンの入水をみんなで見送る。騒がしく船内から出て来た彼らを、見張りをしていたミアが見つける。
仲良くやっている様子を見て微笑むミアは、一行に加わることなくそのまま周囲の警戒を続けた。波を割いて進む船から飛び降りても、再び船へ戻る術を持つのだというアシュトンは、ガントレットの装着を確認すると海へと飛び込んで行った。
ツバキの指示の元、海中で様々な動作確認を行うアシュトン。何も問題なくこなして行く様子を見て、自らの腕前を誇らしげに踏ん反り返る。そんな彼をその気にさせるような言葉で持ち上げるデイヴィスは、あわよくばそのガントレットも頂こうとしているに違いない。
暫くして、身体に巻き付いたワイヤーを巧みに使い、甲板へと戻って来るアシュトン。何事もなく平然と降り立つアシュトン。近くで見ると、どうやら身体に巻き付いていると思われたワイヤーは、肩や腰の辺りから飛び出したリールに巻かれていたようだ。そしてワイヤーを巻き終えると、そのリールは邪魔にならぬようスーツの中へと収納されていった。コレも魔法の一種なのだろうか。
「成果は上々だな。コレで水中で剣を振ったり、物を投げても水の抵抗を受けなくなる。地上と変わらず攻撃出来るって訳だ!」
「なぁおい。コレ、俺にも作ってくれねぇか?部品ならさっきの島でくすねて来たのが沢山あるんだ。なんなら新しい装備を作ってくれても構わねぇ」
「本当かぁ!?よっしゃぁ!任せておけ!」
そういうと、アシュトンと合流した島で漁った物品をジャラジャラと展開し、宝の山を見るような目で勢いづくデイヴィスとツバキ。アシュトンはすっかり目的を忘れたようにはしゃぐデイヴィスの代わりに、船を操縦するツクヨの元へ案内するようシンに伝える。
操縦室へやって来る二人。事前にデイヴィスから指示をもらっていたツクヨは、忠実にそのルートを辿り目的地を目指す。
「予定通り進んでいる。この調子で行けば、まもなくアンスティスの居るであろう島に着く頃合いだろう」
「その・・・、あんす・・・アンス・・・ティス?っていう人はどんな人なんです?」
操縦するツクヨが、次の島で合流する手筈になっているアンスティスについて尋ねる。だがどうやら、アシュトンはその人物をあまり信用していないようだった。デイヴィスの知らない、デイヴィス海賊団のその後、そこでは彼らの中でも様々な心の変化があったのだという。
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