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レイド開戦
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突き上げられた勢いで、複数の船体がバラバラになる。乗り合わせていた船員もまた宙を舞う。予期せぬ敵の抵抗を受ける中でも、エイヴリー海賊団の幹部達は冷静に対処にあたる。
エイヴリーと共にウィリアムの店を訪れていた幹部の一人、マクシムもまた、上空へ打ち上げられた仲間の救出の為、素早い動きと彼の能力を活かした技で、船を飛石のように次々に渡り、宙を舞う仲間を指から放たれる蜘蛛の糸のようなもので繋げていく。
鋼鉄の糸を指から放ち、時に鋭く斬り刻み、またある時には落下から身を守るクッションのように柔軟に、強度を巧みに調節出来る彼特有の武器を所持していた。その糸を使い、宙に巻き上げられた仲間達を船の残骸ごと空中で受け止めるマクシム。
また別の幹部は、数多のドラゴンを召喚し、仲間達を拾い上げる。流石にドラゴンの身体では船を受け止めることは出来なかったが、人員の救助を務める彼らが溢れ落とした船の残骸は、エイヴリーが直々に手をかざし、先程の砲台の時と同様に船体を組み替え、再び船の形へと戻したのだ。
船をその場で組み替えてしまうなど、容易なことではない。ましてや距離の空いている船へも効果は発揮される。これはグレイスやチン・シー達同様、エイヴリーもまた特別なクラスに就いている証拠だった。
“クラフトマスター“、それがエイヴリーの能力の秘密。マスターの称号を冠しているのは、その道を極めた者である証明であり、それまでの過程で会得するクラスの能力とは、比べ物にならない程の規模や威力を使いこなすことが出来る。
マスターの特権はそれだけではなく、スキルに使われる魔力の量も大幅に軽減され、クールタイムも短くなる。マスターの称号を会得するまでの長い道のりに見合うだけの能力が、一芸を極めし者に与えられる。
エイヴリーの就くクラスである“クラフター“は、そこにある物を使って、別の物に作り変えたり、新たな物を備えたりなど、改造増築に加え、変形分解など、物作りのスペシャリストと呼べるクラスである。
唯一、大きな欠点と言えるのは、未知なる物を作り出すことが出来ないということ。その目で見た物や、レシピなどその人物の見聞が試されるクラスでもあるのだ。その点エイヴリーは海賊として世界中を旅して回っていることもあり、人並み以上の知識や経験を積んで来ている。
それこそ、作れぬ物などないのではないかという程、世界中の凡ゆる武具や兵器などに組み替えることが可能となっている。その能力を使えば、わざわざウィリアムに船を作ってもらう必要など無いように思えるが、見たことも聞いたこともないような未知なる物は作れない。
そこで、エイヴリーは未知なる物をウィリアムに作らせ、その後の修復や増築は自らの能力でカバーするという手段を用いていた。漸く作り上げた船を、一目見ることですぐに同じ物を複製出来てしまうのが、ウィリアムには面白くなかった。
彼のご機嫌を損ねてしまったエイヴリーは、代わりに世界中の珍しい鉱物や魔力を帯びた素材などを持ち帰り、ウィリアムの新たな製造意欲を掻き立てた。そうして、持ちつ持たれつの関係を築く中で、弟子として働くようになったツバキが二人の関係を知り、持ち込まれる素材に興味を持ったことで、今回のようなボードを作り出すことに繋がった。
エイヴリーの能力で、打ち上げられ損壊した船も元通りに作り変えられ、仲間達も幹部らの働きにより誰一人として犠牲を生み出すことなく、蟒蛇の第一波を凌ぎ切ることに成功した。それが果たして、蟒蛇の攻撃なのかと言われると、疑わしいものではある。
こちら側の先制攻撃に驚いた蟒蛇が移動を早めただけ。ただそれだけで攻撃かと見まごう程の被害を受けることになった。もし、本格的に攻撃を仕掛けて来るようになったら、一体どれ程の威力になってしまうのだろうか。
深海へと潜ったのか、蟒蛇の影が海面から覗けなくなる。雨風に揺られ、荒立たしい波の音に蟒蛇の声も聞こえない。敵対する相手やモンスターの位置を特定する、索敵能力に長けた者達の力を持ってしても、漠然とした位置こそは捉えられても、蟒蛇の頭部や尻尾の位置までは細かく分からない。
次なる攻撃に備え、いつでも反撃に出られるように準備を整えるエイヴリー海賊団。そこへ遂に、蟒蛇が攻撃を仕掛けて来る。蟒蛇の動きを探ろうと、海を覗き込んでいた船員の眼前に、徐々に真っ黒な影が近づいて来た。
「いたぞッ!こっちに・・・」
周囲の者達に、モンスターの接近を伝えようとするも、影は瞬く間に彼らの船を飲み込んでしまいそうな程大きく広がっていった。そして次の瞬間には、海面に付近に大口を開けた蟒蛇の姿があった。
「・・・えっ・・・?」
突然鳴り響く爆音と共に、今まで姿を隠していた蟒蛇の頭部が海面から飛び出した。心臓を打ち付けられたかのような衝撃が走り、一斉に音の下方を振り向くエイヴリー海賊団。するとそこには、それまで居たはずの者達と数隻の船が一瞬にして姿を消し、代わりにこちらを見下ろす巨大な蟒蛇の頭部がそこにあった。
海中へ戻ることなく、蟒蛇はこちらを見て、自分の存在を知らしめているかのように睨みを利かせていた。エイヴリーは直様周囲の船の砲台を作り変え、蟒蛇の方に向ける。
「漸く姿を現したか・・・。俺の部下を何人喰らった?すぐに見返りを与えてやる・・・!」
睨み合う一人の海賊と、巨大な海の主。小さな人間達を一蹴するように、大きな口を開け、威嚇の大咆哮をあげる。大気が歪む程の大声で轟き、海は蟒蛇を中心に大きな波を立てる。咆哮に士気を下げられながらも、エイヴリーは部下に迎撃の号令を出す。
エイヴリーと共にウィリアムの店を訪れていた幹部の一人、マクシムもまた、上空へ打ち上げられた仲間の救出の為、素早い動きと彼の能力を活かした技で、船を飛石のように次々に渡り、宙を舞う仲間を指から放たれる蜘蛛の糸のようなもので繋げていく。
鋼鉄の糸を指から放ち、時に鋭く斬り刻み、またある時には落下から身を守るクッションのように柔軟に、強度を巧みに調節出来る彼特有の武器を所持していた。その糸を使い、宙に巻き上げられた仲間達を船の残骸ごと空中で受け止めるマクシム。
また別の幹部は、数多のドラゴンを召喚し、仲間達を拾い上げる。流石にドラゴンの身体では船を受け止めることは出来なかったが、人員の救助を務める彼らが溢れ落とした船の残骸は、エイヴリーが直々に手をかざし、先程の砲台の時と同様に船体を組み替え、再び船の形へと戻したのだ。
船をその場で組み替えてしまうなど、容易なことではない。ましてや距離の空いている船へも効果は発揮される。これはグレイスやチン・シー達同様、エイヴリーもまた特別なクラスに就いている証拠だった。
“クラフトマスター“、それがエイヴリーの能力の秘密。マスターの称号を冠しているのは、その道を極めた者である証明であり、それまでの過程で会得するクラスの能力とは、比べ物にならない程の規模や威力を使いこなすことが出来る。
マスターの特権はそれだけではなく、スキルに使われる魔力の量も大幅に軽減され、クールタイムも短くなる。マスターの称号を会得するまでの長い道のりに見合うだけの能力が、一芸を極めし者に与えられる。
エイヴリーの就くクラスである“クラフター“は、そこにある物を使って、別の物に作り変えたり、新たな物を備えたりなど、改造増築に加え、変形分解など、物作りのスペシャリストと呼べるクラスである。
唯一、大きな欠点と言えるのは、未知なる物を作り出すことが出来ないということ。その目で見た物や、レシピなどその人物の見聞が試されるクラスでもあるのだ。その点エイヴリーは海賊として世界中を旅して回っていることもあり、人並み以上の知識や経験を積んで来ている。
それこそ、作れぬ物などないのではないかという程、世界中の凡ゆる武具や兵器などに組み替えることが可能となっている。その能力を使えば、わざわざウィリアムに船を作ってもらう必要など無いように思えるが、見たことも聞いたこともないような未知なる物は作れない。
そこで、エイヴリーは未知なる物をウィリアムに作らせ、その後の修復や増築は自らの能力でカバーするという手段を用いていた。漸く作り上げた船を、一目見ることですぐに同じ物を複製出来てしまうのが、ウィリアムには面白くなかった。
彼のご機嫌を損ねてしまったエイヴリーは、代わりに世界中の珍しい鉱物や魔力を帯びた素材などを持ち帰り、ウィリアムの新たな製造意欲を掻き立てた。そうして、持ちつ持たれつの関係を築く中で、弟子として働くようになったツバキが二人の関係を知り、持ち込まれる素材に興味を持ったことで、今回のようなボードを作り出すことに繋がった。
エイヴリーの能力で、打ち上げられ損壊した船も元通りに作り変えられ、仲間達も幹部らの働きにより誰一人として犠牲を生み出すことなく、蟒蛇の第一波を凌ぎ切ることに成功した。それが果たして、蟒蛇の攻撃なのかと言われると、疑わしいものではある。
こちら側の先制攻撃に驚いた蟒蛇が移動を早めただけ。ただそれだけで攻撃かと見まごう程の被害を受けることになった。もし、本格的に攻撃を仕掛けて来るようになったら、一体どれ程の威力になってしまうのだろうか。
深海へと潜ったのか、蟒蛇の影が海面から覗けなくなる。雨風に揺られ、荒立たしい波の音に蟒蛇の声も聞こえない。敵対する相手やモンスターの位置を特定する、索敵能力に長けた者達の力を持ってしても、漠然とした位置こそは捉えられても、蟒蛇の頭部や尻尾の位置までは細かく分からない。
次なる攻撃に備え、いつでも反撃に出られるように準備を整えるエイヴリー海賊団。そこへ遂に、蟒蛇が攻撃を仕掛けて来る。蟒蛇の動きを探ろうと、海を覗き込んでいた船員の眼前に、徐々に真っ黒な影が近づいて来た。
「いたぞッ!こっちに・・・」
周囲の者達に、モンスターの接近を伝えようとするも、影は瞬く間に彼らの船を飲み込んでしまいそうな程大きく広がっていった。そして次の瞬間には、海面に付近に大口を開けた蟒蛇の姿があった。
「・・・えっ・・・?」
突然鳴り響く爆音と共に、今まで姿を隠していた蟒蛇の頭部が海面から飛び出した。心臓を打ち付けられたかのような衝撃が走り、一斉に音の下方を振り向くエイヴリー海賊団。するとそこには、それまで居たはずの者達と数隻の船が一瞬にして姿を消し、代わりにこちらを見下ろす巨大な蟒蛇の頭部がそこにあった。
海中へ戻ることなく、蟒蛇はこちらを見て、自分の存在を知らしめているかのように睨みを利かせていた。エイヴリーは直様周囲の船の砲台を作り変え、蟒蛇の方に向ける。
「漸く姿を現したか・・・。俺の部下を何人喰らった?すぐに見返りを与えてやる・・・!」
睨み合う一人の海賊と、巨大な海の主。小さな人間達を一蹴するように、大きな口を開け、威嚇の大咆哮をあげる。大気が歪む程の大声で轟き、海は蟒蛇を中心に大きな波を立てる。咆哮に士気を下げられながらも、エイヴリーは部下に迎撃の号令を出す。
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