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薬の効能と限界
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ログハウスの中には、ダミアンと同じような症状で踏み止まっている者が多く、まだ動きにはそれ程不自由はしていなかった。早急に病への対策をとっていたからだろうか。寝込んでいるのは、運悪く間接部位や足を中心に、銀色の症状が現れた者達だけのようだ。
「話というのは他でもない、この町に起きている病についてだ。アンタ達は一体何処まで知っている?」
「俺達は病が流行り始めてからは、漁を辞めた。そもそもそんな状態じゃ仕事の邪魔だからな。だがハンクの奴らは納得せず、町の主な食料ともなっている漁を続けるよう言ってきた。テメェらは安全なところに篭ってるっつぅのによ・・・」
確かにそれは納得のいく話ではない。物流が止まり、いくら大事な食料源だとはいえ、何の対策も無しに漁を続けさせるなど、死にに行けと言っているようなものだ。それが、仲の悪い漁師達へ向けたハンクらの皮肉なのか、それともそんなことを本気で言っていたのかは定かではない。
「勿論そんな要求を飲んだ訳じゃないんだろ?何故町長連中はそんなことを・・・」
「病が噂になり始めて、患者が診療所に行き始めていた頃、ウチの連中もスミスんとこに診てもらいに行ってたんだ。でも、初めはスミスも治療法はなんてのは勿論、予防策なんかもわかっちゃいなかった。出来るだけ他者との接触を避けるように、家にいてじっとしてろってのが、奴の診断だった」
どうやらスミスは、早期から病の感染経路を警戒し、外出を控え他者との接触を控えるよう患者達に言っていたようだ。しかし、恐らく病の進行はそれだけでは止まらなかったのだろう。
「それがどう言った訳でこんなところに集まってるんだ?」
「意味がなかったからだ。家でじっとしてようと、病の侵食は止まらねぇ・・・。町長連中は近隣諸国に書簡を送るだけで何もしねぇ。スミスからは意味があるのかも分からねぇ薬だけ出されて、病のことが分かるまで来ないでくれと言われる始末。町の奴らはもう限界だったって訳だ」
一向に病の対策が進展しないまま、住人達は頼るものもなく、ただじっとしていることに疲労していった。
そんな時にできたのが、スミスの開発した病に予防剤だった。だがそれでも、病は治る訳ではなく、感染していない者にしか配られないことに対し、住民達の怒りは爆発した。
「だが、スミスは病にかからない為の薬を作り上げたじゃないか」
「遅かったのさ。不安の中で人が我慢できる時間など、限られている。奴への感謝を抱いている人間など、最早いないだろうな・・・。だが、偶然にも俺や数人の漁師達はまだ、その時病にかかっていなかった。だから俺達はスミスの薬をありがたく貰いに行った」
ダミアンや漁師達が、スミスの薬を貰っていたのなら、病の脅威から逃れられている筈。しかし今のダミアンは、その身体を病に侵されている。ということはつまり、デイヴィスが持っているこの薬は効果がないということなのだろうか。
思わず取り出した薬を見つめるデイヴィス。ダミアンはそれが、自分達が服用していた薬と同じ物であると悟り、使用するに当たっての注意点を教えてくれた。
「あまり過信しねえことだ。スミスも言ってたかもしれねぇが、それさえ飲んでれば病にかからねぇ訳じゃない。薬の効果には、持続時間と活動できる限界の運動量があったさ。それを超えると・・・この通り」
そう言うとダミアンは、袖や裾を捲り、病の症状を見せてくれた。
「アンタらそうまでして、何故外へと出て行ったんだ?町長連中と同じようにじっとしていれば、病にかかることもなかっただろうに・・・」
「性分じゃなかった。それに町長の奴らのやり方じゃ、いつまで経っても事態は好転しねぇよ。奴らは俺らがスミスの薬を受け取っているのを良く思っていなかったようだしな。だから俺達は、漁業で築いた独自の物流ラインや、近づいて来る海賊共から食料を奪いながら、何とかここまでやってきたが・・・。見ての通り、それも限界が近づいてる」
自分の表情を映し出す病に侵された自分の腕を見ながら、ダミアンは暗い表情を浮かべる。何故動けているのか不思議だったが、彼女もまた他の漁師達の為、身体に鞭を打って無理をしていたのだ。
「なるほど。アンタ達の病との奮闘と現在の状況は分かった。次にこの港町のことについて知りたい。何処かに怪しいところや、今はもう使われていない道なんかがあれば教えて欲しい」
「何だってそんなこと・・・ッ!?この病が何者かによる陰謀だとでも言うのかッ!?」
「分からない・・・。それを確かめる為にも、自由に動ける俺がアンタらそれぞれの話を聞いて回ってんだ」
ダミアンは自分の活動限界が近づいていることに焦っていた。だが、この港町に偶然にも迷い込んだデイヴィス達が最後の望みかもしれないと、協力は厭わない姿勢を見せた。非協力的だった町長サイドとは大違いだ。
「話というのは他でもない、この町に起きている病についてだ。アンタ達は一体何処まで知っている?」
「俺達は病が流行り始めてからは、漁を辞めた。そもそもそんな状態じゃ仕事の邪魔だからな。だがハンクの奴らは納得せず、町の主な食料ともなっている漁を続けるよう言ってきた。テメェらは安全なところに篭ってるっつぅのによ・・・」
確かにそれは納得のいく話ではない。物流が止まり、いくら大事な食料源だとはいえ、何の対策も無しに漁を続けさせるなど、死にに行けと言っているようなものだ。それが、仲の悪い漁師達へ向けたハンクらの皮肉なのか、それともそんなことを本気で言っていたのかは定かではない。
「勿論そんな要求を飲んだ訳じゃないんだろ?何故町長連中はそんなことを・・・」
「病が噂になり始めて、患者が診療所に行き始めていた頃、ウチの連中もスミスんとこに診てもらいに行ってたんだ。でも、初めはスミスも治療法はなんてのは勿論、予防策なんかもわかっちゃいなかった。出来るだけ他者との接触を避けるように、家にいてじっとしてろってのが、奴の診断だった」
どうやらスミスは、早期から病の感染経路を警戒し、外出を控え他者との接触を控えるよう患者達に言っていたようだ。しかし、恐らく病の進行はそれだけでは止まらなかったのだろう。
「それがどう言った訳でこんなところに集まってるんだ?」
「意味がなかったからだ。家でじっとしてようと、病の侵食は止まらねぇ・・・。町長連中は近隣諸国に書簡を送るだけで何もしねぇ。スミスからは意味があるのかも分からねぇ薬だけ出されて、病のことが分かるまで来ないでくれと言われる始末。町の奴らはもう限界だったって訳だ」
一向に病の対策が進展しないまま、住人達は頼るものもなく、ただじっとしていることに疲労していった。
そんな時にできたのが、スミスの開発した病に予防剤だった。だがそれでも、病は治る訳ではなく、感染していない者にしか配られないことに対し、住民達の怒りは爆発した。
「だが、スミスは病にかからない為の薬を作り上げたじゃないか」
「遅かったのさ。不安の中で人が我慢できる時間など、限られている。奴への感謝を抱いている人間など、最早いないだろうな・・・。だが、偶然にも俺や数人の漁師達はまだ、その時病にかかっていなかった。だから俺達はスミスの薬をありがたく貰いに行った」
ダミアンや漁師達が、スミスの薬を貰っていたのなら、病の脅威から逃れられている筈。しかし今のダミアンは、その身体を病に侵されている。ということはつまり、デイヴィスが持っているこの薬は効果がないということなのだろうか。
思わず取り出した薬を見つめるデイヴィス。ダミアンはそれが、自分達が服用していた薬と同じ物であると悟り、使用するに当たっての注意点を教えてくれた。
「あまり過信しねえことだ。スミスも言ってたかもしれねぇが、それさえ飲んでれば病にかからねぇ訳じゃない。薬の効果には、持続時間と活動できる限界の運動量があったさ。それを超えると・・・この通り」
そう言うとダミアンは、袖や裾を捲り、病の症状を見せてくれた。
「アンタらそうまでして、何故外へと出て行ったんだ?町長連中と同じようにじっとしていれば、病にかかることもなかっただろうに・・・」
「性分じゃなかった。それに町長の奴らのやり方じゃ、いつまで経っても事態は好転しねぇよ。奴らは俺らがスミスの薬を受け取っているのを良く思っていなかったようだしな。だから俺達は、漁業で築いた独自の物流ラインや、近づいて来る海賊共から食料を奪いながら、何とかここまでやってきたが・・・。見ての通り、それも限界が近づいてる」
自分の表情を映し出す病に侵された自分の腕を見ながら、ダミアンは暗い表情を浮かべる。何故動けているのか不思議だったが、彼女もまた他の漁師達の為、身体に鞭を打って無理をしていたのだ。
「なるほど。アンタ達の病との奮闘と現在の状況は分かった。次にこの港町のことについて知りたい。何処かに怪しいところや、今はもう使われていない道なんかがあれば教えて欲しい」
「何だってそんなこと・・・ッ!?この病が何者かによる陰謀だとでも言うのかッ!?」
「分からない・・・。それを確かめる為にも、自由に動ける俺がアンタらそれぞれの話を聞いて回ってんだ」
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