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鉛の尻尾
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不穏な影に気を取られていたハオランは、目の前に迫ったシンの投擲武器に気付き、首を傾けて間一髪のところで回避する。その後に続くように、幾つかの武器を放るシンだったが、回避に集中するハオランには擦りもしなかった。
「何か妙だ。あの時の彼ならば、もっと精密に狙いを定めてきた筈・・・。それが例え、足場の悪い海上であっても。私を特定の位置へ誘導したいのか。やはり何か企んでいるのでしょうね」
フランソワ・ロロネーデストロイヤー 共に撃退した際には、シンの投擲による攻撃や援護は的確な位置やタイミングで放たれていた。それが今はどうだろう。何かそれ自体に大きな目的がないような、雑とまではいかないが少々狙いに粗が目立つ。
これではハオランのような武術に秀でた者でなくとも、避けるのは容易いだろう。それに彼は、武器を投げる度に体勢を僅かに揺らし、速度を落とすような無駄な動きが発生してしまっている。
これでは追いついて下さいと言っているようなものだ。単純な疲労とも取れるが、先程の海底へと沈んでいった影のこともあり、迂闊に追い抜くのは危険なのではないかと、ハオランの警鐘を打ち鳴らす。
「どうしたのですか?これでは簡単に追い抜かれてしまいますよ?」
彼にしては珍しく、波や水飛沫、ボードから発せられるエンジン音などに負けないくらいの声でシンに問いを投げかける。その返答から何か少しでも情報を得られないものかと、探りを入れたのだ。
「・・・アンタはまだ余裕があるっていうのか?大したもんだよ、全く・・・」
口数は少なく、息遣いは少々荒め。顔色も水飛沫に晒され身体が冷えたせいだろうか、血色もそれほど良くはない。彼が消耗しているのは確かなことだった
そんな様子を見て、背中を押されたように決心がついたハオランは、シンの横に並ぶと最後まで彼を観察して抜き去ろうとしていた。が、ハオランの予想した通り、彼はみすみす追い抜かれるほど甘い男ではなかったのだ。
不穏な気配を残していた海中の影が、シンとハオランが並び立とうとしたところで再び姿を現す。その姿は鋼鉄に覆われ、所々に鋭い刃の棘を纏う。
ハオランを襲った海中に潜む謎の影は、シンがスキルで束ねていたマクシムの糸に繋がれた投擲武器の束だったのだ。彼は無闇に武器を放っていたわけではなかった。
最初はそのつもりなどなかっただろう。しかし、マクシムによって投擲武器を利用されたのを見て、これを閃いたのだ。それからのシンの投擲は、キングやハオランに疑われるような挙動のものへと変わり、着々と準備を進めていた。
シンの思惑通り、マクシムは次から次へと鋼糸を繋ぎ、キングへとそれを差し向けた。避けられたり弾かれたりしたその武器を、シンは黙々と海中に潜ませた僅かな影を利用し、拾い集めていた。
ありったけの武具を使い、マクシムに糸を繋がせることで出来上がったその鉛の塊は、まるでリヴァイアサンの尻尾を彷彿とさせる勢いで、ハオランに差し向けられる。
「何か妙だ。あの時の彼ならば、もっと精密に狙いを定めてきた筈・・・。それが例え、足場の悪い海上であっても。私を特定の位置へ誘導したいのか。やはり何か企んでいるのでしょうね」
フランソワ・ロロネーデストロイヤー 共に撃退した際には、シンの投擲による攻撃や援護は的確な位置やタイミングで放たれていた。それが今はどうだろう。何かそれ自体に大きな目的がないような、雑とまではいかないが少々狙いに粗が目立つ。
これではハオランのような武術に秀でた者でなくとも、避けるのは容易いだろう。それに彼は、武器を投げる度に体勢を僅かに揺らし、速度を落とすような無駄な動きが発生してしまっている。
これでは追いついて下さいと言っているようなものだ。単純な疲労とも取れるが、先程の海底へと沈んでいった影のこともあり、迂闊に追い抜くのは危険なのではないかと、ハオランの警鐘を打ち鳴らす。
「どうしたのですか?これでは簡単に追い抜かれてしまいますよ?」
彼にしては珍しく、波や水飛沫、ボードから発せられるエンジン音などに負けないくらいの声でシンに問いを投げかける。その返答から何か少しでも情報を得られないものかと、探りを入れたのだ。
「・・・アンタはまだ余裕があるっていうのか?大したもんだよ、全く・・・」
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そんな様子を見て、背中を押されたように決心がついたハオランは、シンの横に並ぶと最後まで彼を観察して抜き去ろうとしていた。が、ハオランの予想した通り、彼はみすみす追い抜かれるほど甘い男ではなかったのだ。
不穏な気配を残していた海中の影が、シンとハオランが並び立とうとしたところで再び姿を現す。その姿は鋼鉄に覆われ、所々に鋭い刃の棘を纏う。
ハオランを襲った海中に潜む謎の影は、シンがスキルで束ねていたマクシムの糸に繋がれた投擲武器の束だったのだ。彼は無闇に武器を放っていたわけではなかった。
最初はそのつもりなどなかっただろう。しかし、マクシムによって投擲武器を利用されたのを見て、これを閃いたのだ。それからのシンの投擲は、キングやハオランに疑われるような挙動のものへと変わり、着々と準備を進めていた。
シンの思惑通り、マクシムは次から次へと鋼糸を繋ぎ、キングへとそれを差し向けた。避けられたり弾かれたりしたその武器を、シンは黙々と海中に潜ませた僅かな影を利用し、拾い集めていた。
ありったけの武具を使い、マクシムに糸を繋がせることで出来上がったその鉛の塊は、まるでリヴァイアサンの尻尾を彷彿とさせる勢いで、ハオランに差し向けられる。
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