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神代 コウ

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道の崩落

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 よく見ると、朱影は視線というよりも耳を傾けているようだった。何かの音を拾うかのように、左右に顔を振りながら機敏な動きを見せていたバイクは、安定した走りへと変わった。

 「どうかしたんスか?旦那ぁ!」

 「何か聞こえたんだ。俺達が最初に仕掛けてあるんじゃねぇかって、疑ってたアレだよ!」

 最初に聞いた時にはピンと来なかったが、少し記憶を遡らせればすぐに朱影が何を伝えようとしているのかが分かった。

 それは高速道路に入り、敵がこちらを攻撃するとしたらどんなタイミングで、どんな手段を取るか考えていた時の話。

 高度の最も高い位置で道路を爆破し、車ごと慎達を始末しにかかるのではないかと話していた。しかし、その時は何事もなく、代わりとして数台の車が現れ獣の姿へと変形し襲ってきたのだ。

 その時に探していた、爆弾の音や匂い。そういった類のものを探す時と同じ仕草だったのだ。

 そして彼は何かの音を拾った。爆発までの残り時間を刻む秒針の音のようなもの。朱影はこの騒々しい戦いの中で、僅かなその音を聞き分けた。

 「それってもしかして、爆弾のことですか・・・?」

 「ばッ・・・爆弾!?無かったんじゃないのか!?」

 「仕掛けられてる場所が違ったんだ!高度の高い位置じゃねぇ・・・。下り坂に仕掛けてやがったッ!そのまま地の底に突っ込んでいくようになッ」

 言われて初めて気がついた事実。確かに地上から離れた高い位置で爆破すれば、落下の勢いも加わり到底生きては帰れないだろう。

 しかし、相手側は彼らの想像する以上に、恐ろしいことを考えついていた。それこそが、最も高い位置から降り始め、速度をつけ始めたところでの爆破だ。

 落下する勢いだけに留まらず、下りで加速度を増したところで爆破することで、より確実に慎達を仕留めようとしていた。まんまとその策にハマり、高度の高いところで爆弾の反応がなかったことにぬか喜びしていた彼らを、一網打尽にするという、考えられたものだった。

 「どうするんだ!?アイツの話が本当なら、ここでみんな終わりだぞ!?」

 「んなこたぁ分かってんスよ!アンタは運転に集中しててくれよ!」
 「けど、僕らにはその場所を探す手段なんて・・・!」

 瑜那が言葉の途中で何かを思いつく。警備ドローンを使い、道路の下を調べるのはどうかと提案するが、それでは機械獣達の動いを抑えることが出来ず、どの道危険な状況に陥るのは避けられないことを悟る。

 「朱影さんの腕前と慎さんの技術向上に頼り、警備ドローンを爆弾の捜索にあてるしか・・・」
 「おいおい、マジで言ってんのかよ!?確かに数は減りはしたが、それでも切羽詰まってることには変わりねぇんだぜぇ?」
 「だから賭けだって言っただろ?おおよその場所を想定し、一気に見つけるしか・・・」

 賭けに出るか爆発後に対応するか、選択を迫られる彼らだったが、無常にも時はそれを待ってはくれなかった。

 後方で爆弾の音を探していた朱影だったが、遂に音の聞こえてくる変化に気づくも、移動する速度のせいで気づいた時には既に遅かった。

 「しまッ・・・!おい!衝撃に備えろッ!!」

 朱影の声に身体を強張らせ、咄嗟に力がこもる。そして間も無くして、高速道路の下の方で大きな爆発が数回に渡り起こる。道を支えていた柱部分を中心に爆発が起こり、上がってくる爆発音は道路の裏側へと続き、慎達の車の進路を炎と黒煙で包んだ。

 「何も見えないッ・・・!?」

 「慎さん!ダメです!ブレーキを踏まないで!」

 「なッ!?」

 何を思ってか、瑜那はそのまま道の無い黒煙の中へ突っ込んで行くことを提案した。しかし、今の爆発で道路が崩れ落ちたことは必至。何か考えがなければ、このまま落ちて全滅する未来しか待っていない。

 「立ち止まっても、生身であの追手の数を相手にするのは不可能でしょう。それならこの困難をチャンスに変えるしかありません!宵命、行くよ!力を貸して!」
 「分かんねぇけど・・・了解ッ!」

 すると二人は窓から身を乗り出し、車から飛び出そうとした。

 「ちょッちょっと待ってくれ!」

 一人車に取り残されそうになる慎。彼らが何をしようとしているのかも分からぬまま取り残されそうになり困惑していると、飛び降りる前に瑜那が、不安になる慎に言葉をかける。

 「大丈夫・・・貴方はただ、アクセルを全開にして突っ込んでください。僕達が何とか、向こう側に辿り着かせて見せますから・・・」

 こんな状況下の中でも、優しい微笑みを浮かべた彼の表情は特に印象的だった。そこからは強い決意のようなものも感じ取れれば、どこか無謀なことへ挑まざるを得ない諦めのようなものを感じた。
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