741 / 1,646
夜明け
しおりを挟む
フィアーズなる組織が構える、元の世界へ戻るための研究を進める施設内。
シンとスペクター、及び各地へ散らばっていた兵隊達は、東京の各地で秘密裏に行われていた大規模なモンスター、並びにWoFのユーザーの確保と処理を終え、施設へ戻りつつあった。
「我々が断った電力は、もう時期復旧される。この辺りが潮時だ」
帰還した者達で溢れる広場で、スーツ姿の見知らぬ男が話している。すると、茶々を入れるようにスペクターが群衆の中から姿を現し、話を遮る。
「戻ってきてねぇ連中もいるようだが?ほったらかしでいいのかよ」
「問題はない。召集をかければ最優先で集まるよう言ってある。万が一彼らを失うようなことがあれば、それはそれだ。その程度の者だったということで切り捨てる」
スペクターと対等に話していることから、この男もフィアーズの幹部と見て間違いないだろう。彼らの会話から、この組織には仲間意識というものが微塵も感じられない。
あくまで目的の為に互いを利用しているに過ぎない。そしてシンは、指揮を取ろうとしているその男が、フィアーズのリーダーなのかと思ったが、どうやらそういう訳でもないようだった。
彼ら曰く、フィアーズには幹部や兵隊といった位はあるものの、リーダーは存在せず幹部の者達がそれぞれに動き、兵士や捕らえたWoFのユーザー達を使って研究や調査、実験を行なっているのだという。
「今回の作戦の一部に、対抗組織の炙り出しがあったが・・・。どうやら争う明確な意志を向けてくる者達はいなかった。一つ妙な組織を見つけたが、逃げ出す際にデータを全て消去していっている・・・」
見つけ出された組織というのは、恐らく東京にアジトを構えていたアサシンギルドのことだ。その時は語られなかったが、ノイズによって襲撃された際、白獅らはアジトに残されたアサシンギルドやそれに属する者達の情報を抹消していたのだ。
当然、持ち出し可能なものに関しては、現在避難しているアジトへ移行させているが、幾つかはやむを得ず消去するという苦渋の決断を下した。
そのおかげか、ここまでフィアーズ内にてアサシンギルドの情報が漏洩しているといった情報は、耳にしていない。
「それがあの新入りが見つけたっていうアジトか」
「そうだ。だがそれ以降、我々の邪魔をする様子もなければ、嗅ぎ回る素振りもない。それか、こちらの罠に気づき慎重になっているか、だが・・・」
「まぁその程度の奴らだってことだろ?つまりそいつらには、俺らを叩くほどの戦力がねぇってことだわな」
スペクターの考察は当たっていた。白獅も認めている通り、現状真っ向勝負でアサシンギルドがフィアーズを潰せる実力が整っていないのは事実。
戦力を増強するという意味でも、イヅツらのようなフィアーズ内にいる謀反チームとアサシンギルドの間をとり持てれば、かなり状況は変わるのではないだろうか。
シンの役割には、そういった意味合いも込められている。成り行きでそんな重役を担うことになってしまったシンには、今後どうやってその役割を果たせばいいのか、作戦や手順など先のことは全く見えない。
だが、組織を抜け出すということに関しては、イヅツらの方が策を練ってきた時間も、考える機会も多かった分、組織の弱点や弱みについての情報もつかんでいることだろう。
「それで?どうするんだ、これから。またちまちま雑魚狩りなんて、つまんねぇこと言うなよな?」
「相手が尻尾を見せない以上、目立った行動をとっても結果は得られないだろう。要は目標をどちらに絞るかだ。彼らWoFという世界を作り上げている連中に喧嘩を売るか、敵対組織を殲滅、或いは取り込むか」
シンは男の発言に驚きを隠せなかった。WoFの運営制作を行なっている会社に手を出そうとしているかと。だが、彼らにとっての手掛かりもやはりWoFというゲームの中にあると考えてのことだろう。
異世界へのアクセスをどのように行なっているのか。何故WoFのユーザーだけ二つの世界を行き来できるのか。答えは必ずそこにある筈と信じている。
仮に理由が分からなかったとしても、別世界へ転移できる仕組みさえ分かれば、この世界の他にも調査の手を広げていくことができ、行動範囲も広がる。
無知なままでは何も前へ進めることは出来ない。強引なやり方ではあるが、フィアーズのこの姿勢はアサシンギルドの活動にも役立てることが出来ると思ったシンは、技術や環境で勝る組織を利用して、彼自身にも関係する世界の“異変“について知りたいという意欲が湧いてきた。
「イヅツは、このあり得ない現状が何故起こっているのか、興味はないのか?」
「興味?まぁ・・・全くないってこたぁないが、それよりも身の安全が第一かな。このままじゃいずれ俺達は使い捨てにされる。そうなる前になんとかしねぇと・・・今はそれで精一杯だ」
彼の言葉は、ここにいるWoFユーザー全員の意見かのように感じた。側にいたハルやにぃなの表情が、イヅツの真剣な表情を見て少し強張るのを感じた。
彼らにも先のことを考えるほどの余裕がない。タイミングを間違えば、死期を早めるだけとなってしまう。最悪の場合、楽に逝くことも出来ないかもしれない。
恐怖と戦いながらも、この暗い状況の中に活路を見出すため、今は従順な犬を演じなければ。
スーツの男とスペクターの話し合いの末、組織は研究の進展を見つつ、WoFの運営周りの調査、並びに敵対組織の捜索と交渉を行うという意向になった。
シン達WoFのユーザーへ当たられる任務は、東京での停電時に行われていたことと然程変わるものではなかった。
実験に使うものの調達と、WoFの世界に起きている異変についての調査だった。
シンとスペクター、及び各地へ散らばっていた兵隊達は、東京の各地で秘密裏に行われていた大規模なモンスター、並びにWoFのユーザーの確保と処理を終え、施設へ戻りつつあった。
「我々が断った電力は、もう時期復旧される。この辺りが潮時だ」
帰還した者達で溢れる広場で、スーツ姿の見知らぬ男が話している。すると、茶々を入れるようにスペクターが群衆の中から姿を現し、話を遮る。
「戻ってきてねぇ連中もいるようだが?ほったらかしでいいのかよ」
「問題はない。召集をかければ最優先で集まるよう言ってある。万が一彼らを失うようなことがあれば、それはそれだ。その程度の者だったということで切り捨てる」
スペクターと対等に話していることから、この男もフィアーズの幹部と見て間違いないだろう。彼らの会話から、この組織には仲間意識というものが微塵も感じられない。
あくまで目的の為に互いを利用しているに過ぎない。そしてシンは、指揮を取ろうとしているその男が、フィアーズのリーダーなのかと思ったが、どうやらそういう訳でもないようだった。
彼ら曰く、フィアーズには幹部や兵隊といった位はあるものの、リーダーは存在せず幹部の者達がそれぞれに動き、兵士や捕らえたWoFのユーザー達を使って研究や調査、実験を行なっているのだという。
「今回の作戦の一部に、対抗組織の炙り出しがあったが・・・。どうやら争う明確な意志を向けてくる者達はいなかった。一つ妙な組織を見つけたが、逃げ出す際にデータを全て消去していっている・・・」
見つけ出された組織というのは、恐らく東京にアジトを構えていたアサシンギルドのことだ。その時は語られなかったが、ノイズによって襲撃された際、白獅らはアジトに残されたアサシンギルドやそれに属する者達の情報を抹消していたのだ。
当然、持ち出し可能なものに関しては、現在避難しているアジトへ移行させているが、幾つかはやむを得ず消去するという苦渋の決断を下した。
そのおかげか、ここまでフィアーズ内にてアサシンギルドの情報が漏洩しているといった情報は、耳にしていない。
「それがあの新入りが見つけたっていうアジトか」
「そうだ。だがそれ以降、我々の邪魔をする様子もなければ、嗅ぎ回る素振りもない。それか、こちらの罠に気づき慎重になっているか、だが・・・」
「まぁその程度の奴らだってことだろ?つまりそいつらには、俺らを叩くほどの戦力がねぇってことだわな」
スペクターの考察は当たっていた。白獅も認めている通り、現状真っ向勝負でアサシンギルドがフィアーズを潰せる実力が整っていないのは事実。
戦力を増強するという意味でも、イヅツらのようなフィアーズ内にいる謀反チームとアサシンギルドの間をとり持てれば、かなり状況は変わるのではないだろうか。
シンの役割には、そういった意味合いも込められている。成り行きでそんな重役を担うことになってしまったシンには、今後どうやってその役割を果たせばいいのか、作戦や手順など先のことは全く見えない。
だが、組織を抜け出すということに関しては、イヅツらの方が策を練ってきた時間も、考える機会も多かった分、組織の弱点や弱みについての情報もつかんでいることだろう。
「それで?どうするんだ、これから。またちまちま雑魚狩りなんて、つまんねぇこと言うなよな?」
「相手が尻尾を見せない以上、目立った行動をとっても結果は得られないだろう。要は目標をどちらに絞るかだ。彼らWoFという世界を作り上げている連中に喧嘩を売るか、敵対組織を殲滅、或いは取り込むか」
シンは男の発言に驚きを隠せなかった。WoFの運営制作を行なっている会社に手を出そうとしているかと。だが、彼らにとっての手掛かりもやはりWoFというゲームの中にあると考えてのことだろう。
異世界へのアクセスをどのように行なっているのか。何故WoFのユーザーだけ二つの世界を行き来できるのか。答えは必ずそこにある筈と信じている。
仮に理由が分からなかったとしても、別世界へ転移できる仕組みさえ分かれば、この世界の他にも調査の手を広げていくことができ、行動範囲も広がる。
無知なままでは何も前へ進めることは出来ない。強引なやり方ではあるが、フィアーズのこの姿勢はアサシンギルドの活動にも役立てることが出来ると思ったシンは、技術や環境で勝る組織を利用して、彼自身にも関係する世界の“異変“について知りたいという意欲が湧いてきた。
「イヅツは、このあり得ない現状が何故起こっているのか、興味はないのか?」
「興味?まぁ・・・全くないってこたぁないが、それよりも身の安全が第一かな。このままじゃいずれ俺達は使い捨てにされる。そうなる前になんとかしねぇと・・・今はそれで精一杯だ」
彼の言葉は、ここにいるWoFユーザー全員の意見かのように感じた。側にいたハルやにぃなの表情が、イヅツの真剣な表情を見て少し強張るのを感じた。
彼らにも先のことを考えるほどの余裕がない。タイミングを間違えば、死期を早めるだけとなってしまう。最悪の場合、楽に逝くことも出来ないかもしれない。
恐怖と戦いながらも、この暗い状況の中に活路を見出すため、今は従順な犬を演じなければ。
スーツの男とスペクターの話し合いの末、組織は研究の進展を見つつ、WoFの運営周りの調査、並びに敵対組織の捜索と交渉を行うという意向になった。
シン達WoFのユーザーへ当たられる任務は、東京での停電時に行われていたことと然程変わるものではなかった。
実験に使うものの調達と、WoFの世界に起きている異変についての調査だった。
0
あなたにおすすめの小説
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
ドラゴネット興隆記
椎井瑛弥
ファンタジー
ある世界、ある時代、ある国で、一人の若者が領地を取り上げられ、誰も人が住まない僻地に新しい領地を与えられた。その領地をいかに発展させるか。周囲を巻き込みつつ、周囲に巻き込まれつつ、それなりに領地を大きくしていく。
ざまぁっぽく見えて、意外とほのぼのです。『新米エルフとぶらり旅』と世界観は共通していますが、違う時代、違う場所でのお話です。
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~
めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。
しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。
そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。
その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。
(スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる