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夜明け
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フィアーズなる組織が構える、元の世界へ戻るための研究を進める施設内。
シンとスペクター、及び各地へ散らばっていた兵隊達は、東京の各地で秘密裏に行われていた大規模なモンスター、並びにWoFのユーザーの確保と処理を終え、施設へ戻りつつあった。
「我々が断った電力は、もう時期復旧される。この辺りが潮時だ」
帰還した者達で溢れる広場で、スーツ姿の見知らぬ男が話している。すると、茶々を入れるようにスペクターが群衆の中から姿を現し、話を遮る。
「戻ってきてねぇ連中もいるようだが?ほったらかしでいいのかよ」
「問題はない。召集をかければ最優先で集まるよう言ってある。万が一彼らを失うようなことがあれば、それはそれだ。その程度の者だったということで切り捨てる」
スペクターと対等に話していることから、この男もフィアーズの幹部と見て間違いないだろう。彼らの会話から、この組織には仲間意識というものが微塵も感じられない。
あくまで目的の為に互いを利用しているに過ぎない。そしてシンは、指揮を取ろうとしているその男が、フィアーズのリーダーなのかと思ったが、どうやらそういう訳でもないようだった。
彼ら曰く、フィアーズには幹部や兵隊といった位はあるものの、リーダーは存在せず幹部の者達がそれぞれに動き、兵士や捕らえたWoFのユーザー達を使って研究や調査、実験を行なっているのだという。
「今回の作戦の一部に、対抗組織の炙り出しがあったが・・・。どうやら争う明確な意志を向けてくる者達はいなかった。一つ妙な組織を見つけたが、逃げ出す際にデータを全て消去していっている・・・」
見つけ出された組織というのは、恐らく東京にアジトを構えていたアサシンギルドのことだ。その時は語られなかったが、ノイズによって襲撃された際、白獅らはアジトに残されたアサシンギルドやそれに属する者達の情報を抹消していたのだ。
当然、持ち出し可能なものに関しては、現在避難しているアジトへ移行させているが、幾つかはやむを得ず消去するという苦渋の決断を下した。
そのおかげか、ここまでフィアーズ内にてアサシンギルドの情報が漏洩しているといった情報は、耳にしていない。
「それがあの新入りが見つけたっていうアジトか」
「そうだ。だがそれ以降、我々の邪魔をする様子もなければ、嗅ぎ回る素振りもない。それか、こちらの罠に気づき慎重になっているか、だが・・・」
「まぁその程度の奴らだってことだろ?つまりそいつらには、俺らを叩くほどの戦力がねぇってことだわな」
スペクターの考察は当たっていた。白獅も認めている通り、現状真っ向勝負でアサシンギルドがフィアーズを潰せる実力が整っていないのは事実。
戦力を増強するという意味でも、イヅツらのようなフィアーズ内にいる謀反チームとアサシンギルドの間をとり持てれば、かなり状況は変わるのではないだろうか。
シンの役割には、そういった意味合いも込められている。成り行きでそんな重役を担うことになってしまったシンには、今後どうやってその役割を果たせばいいのか、作戦や手順など先のことは全く見えない。
だが、組織を抜け出すということに関しては、イヅツらの方が策を練ってきた時間も、考える機会も多かった分、組織の弱点や弱みについての情報もつかんでいることだろう。
「それで?どうするんだ、これから。またちまちま雑魚狩りなんて、つまんねぇこと言うなよな?」
「相手が尻尾を見せない以上、目立った行動をとっても結果は得られないだろう。要は目標をどちらに絞るかだ。彼らWoFという世界を作り上げている連中に喧嘩を売るか、敵対組織を殲滅、或いは取り込むか」
シンは男の発言に驚きを隠せなかった。WoFの運営制作を行なっている会社に手を出そうとしているかと。だが、彼らにとっての手掛かりもやはりWoFというゲームの中にあると考えてのことだろう。
異世界へのアクセスをどのように行なっているのか。何故WoFのユーザーだけ二つの世界を行き来できるのか。答えは必ずそこにある筈と信じている。
仮に理由が分からなかったとしても、別世界へ転移できる仕組みさえ分かれば、この世界の他にも調査の手を広げていくことができ、行動範囲も広がる。
無知なままでは何も前へ進めることは出来ない。強引なやり方ではあるが、フィアーズのこの姿勢はアサシンギルドの活動にも役立てることが出来ると思ったシンは、技術や環境で勝る組織を利用して、彼自身にも関係する世界の“異変“について知りたいという意欲が湧いてきた。
「イヅツは、このあり得ない現状が何故起こっているのか、興味はないのか?」
「興味?まぁ・・・全くないってこたぁないが、それよりも身の安全が第一かな。このままじゃいずれ俺達は使い捨てにされる。そうなる前になんとかしねぇと・・・今はそれで精一杯だ」
彼の言葉は、ここにいるWoFユーザー全員の意見かのように感じた。側にいたハルやにぃなの表情が、イヅツの真剣な表情を見て少し強張るのを感じた。
彼らにも先のことを考えるほどの余裕がない。タイミングを間違えば、死期を早めるだけとなってしまう。最悪の場合、楽に逝くことも出来ないかもしれない。
恐怖と戦いながらも、この暗い状況の中に活路を見出すため、今は従順な犬を演じなければ。
スーツの男とスペクターの話し合いの末、組織は研究の進展を見つつ、WoFの運営周りの調査、並びに敵対組織の捜索と交渉を行うという意向になった。
シン達WoFのユーザーへ当たられる任務は、東京での停電時に行われていたことと然程変わるものではなかった。
実験に使うものの調達と、WoFの世界に起きている異変についての調査だった。
シンとスペクター、及び各地へ散らばっていた兵隊達は、東京の各地で秘密裏に行われていた大規模なモンスター、並びにWoFのユーザーの確保と処理を終え、施設へ戻りつつあった。
「我々が断った電力は、もう時期復旧される。この辺りが潮時だ」
帰還した者達で溢れる広場で、スーツ姿の見知らぬ男が話している。すると、茶々を入れるようにスペクターが群衆の中から姿を現し、話を遮る。
「戻ってきてねぇ連中もいるようだが?ほったらかしでいいのかよ」
「問題はない。召集をかければ最優先で集まるよう言ってある。万が一彼らを失うようなことがあれば、それはそれだ。その程度の者だったということで切り捨てる」
スペクターと対等に話していることから、この男もフィアーズの幹部と見て間違いないだろう。彼らの会話から、この組織には仲間意識というものが微塵も感じられない。
あくまで目的の為に互いを利用しているに過ぎない。そしてシンは、指揮を取ろうとしているその男が、フィアーズのリーダーなのかと思ったが、どうやらそういう訳でもないようだった。
彼ら曰く、フィアーズには幹部や兵隊といった位はあるものの、リーダーは存在せず幹部の者達がそれぞれに動き、兵士や捕らえたWoFのユーザー達を使って研究や調査、実験を行なっているのだという。
「今回の作戦の一部に、対抗組織の炙り出しがあったが・・・。どうやら争う明確な意志を向けてくる者達はいなかった。一つ妙な組織を見つけたが、逃げ出す際にデータを全て消去していっている・・・」
見つけ出された組織というのは、恐らく東京にアジトを構えていたアサシンギルドのことだ。その時は語られなかったが、ノイズによって襲撃された際、白獅らはアジトに残されたアサシンギルドやそれに属する者達の情報を抹消していたのだ。
当然、持ち出し可能なものに関しては、現在避難しているアジトへ移行させているが、幾つかはやむを得ず消去するという苦渋の決断を下した。
そのおかげか、ここまでフィアーズ内にてアサシンギルドの情報が漏洩しているといった情報は、耳にしていない。
「それがあの新入りが見つけたっていうアジトか」
「そうだ。だがそれ以降、我々の邪魔をする様子もなければ、嗅ぎ回る素振りもない。それか、こちらの罠に気づき慎重になっているか、だが・・・」
「まぁその程度の奴らだってことだろ?つまりそいつらには、俺らを叩くほどの戦力がねぇってことだわな」
スペクターの考察は当たっていた。白獅も認めている通り、現状真っ向勝負でアサシンギルドがフィアーズを潰せる実力が整っていないのは事実。
戦力を増強するという意味でも、イヅツらのようなフィアーズ内にいる謀反チームとアサシンギルドの間をとり持てれば、かなり状況は変わるのではないだろうか。
シンの役割には、そういった意味合いも込められている。成り行きでそんな重役を担うことになってしまったシンには、今後どうやってその役割を果たせばいいのか、作戦や手順など先のことは全く見えない。
だが、組織を抜け出すということに関しては、イヅツらの方が策を練ってきた時間も、考える機会も多かった分、組織の弱点や弱みについての情報もつかんでいることだろう。
「それで?どうするんだ、これから。またちまちま雑魚狩りなんて、つまんねぇこと言うなよな?」
「相手が尻尾を見せない以上、目立った行動をとっても結果は得られないだろう。要は目標をどちらに絞るかだ。彼らWoFという世界を作り上げている連中に喧嘩を売るか、敵対組織を殲滅、或いは取り込むか」
シンは男の発言に驚きを隠せなかった。WoFの運営制作を行なっている会社に手を出そうとしているかと。だが、彼らにとっての手掛かりもやはりWoFというゲームの中にあると考えてのことだろう。
異世界へのアクセスをどのように行なっているのか。何故WoFのユーザーだけ二つの世界を行き来できるのか。答えは必ずそこにある筈と信じている。
仮に理由が分からなかったとしても、別世界へ転移できる仕組みさえ分かれば、この世界の他にも調査の手を広げていくことができ、行動範囲も広がる。
無知なままでは何も前へ進めることは出来ない。強引なやり方ではあるが、フィアーズのこの姿勢はアサシンギルドの活動にも役立てることが出来ると思ったシンは、技術や環境で勝る組織を利用して、彼自身にも関係する世界の“異変“について知りたいという意欲が湧いてきた。
「イヅツは、このあり得ない現状が何故起こっているのか、興味はないのか?」
「興味?まぁ・・・全くないってこたぁないが、それよりも身の安全が第一かな。このままじゃいずれ俺達は使い捨てにされる。そうなる前になんとかしねぇと・・・今はそれで精一杯だ」
彼の言葉は、ここにいるWoFユーザー全員の意見かのように感じた。側にいたハルやにぃなの表情が、イヅツの真剣な表情を見て少し強張るのを感じた。
彼らにも先のことを考えるほどの余裕がない。タイミングを間違えば、死期を早めるだけとなってしまう。最悪の場合、楽に逝くことも出来ないかもしれない。
恐怖と戦いながらも、この暗い状況の中に活路を見出すため、今は従順な犬を演じなければ。
スーツの男とスペクターの話し合いの末、組織は研究の進展を見つつ、WoFの運営周りの調査、並びに敵対組織の捜索と交渉を行うという意向になった。
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