World of Fantasia

神代 コウ

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リゾート地のアクティビティ

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 二人を乗せた車両は、問題なく予定通り相模湖近くにあるリゾート地、プレジャーフォレストへと到着する。すっかり陽は上り多くの客が集っていた。

 目立たぬ様近づくために、少し離れたところで車両を降りると、二人はそこから徒歩で向かう事にした。キャラクターデータを投影した脚力であれば、それ程疲労を感じることなく辿り着くことのできる距離だ。

 「これだけ人が居ても、俺達の姿は・・・」

 「不思議だよね。こんなに近くに居るのに、私達のことは見えてないし声も聞こえないんだもん。まるで幽霊みたいだね」

 屈託のない笑顔を向けるも、そんなに明るく話せることでもないだろう。だがきっと彼女も、その不確かな自身の存在をなるべく意識しないようにしているのかもしれない。

 「あ、でも気をつけてね!ホログラムを使ったアクティビティ施設の中だと、私達の姿が別のキャラクターデータとして反映されちゃうことがあるから」

 にぃなの口から、突然衝撃の事実が告げられる。もし彼らの今の姿が一般の人達の目に触れられるのなら、この異常事態を誰かに伝えられるかもしれない。

 「それ本当か!?なら、この非現実的な事態を調べてもらえるかも・・・」

 「あぁ・・・期待持たせちゃったみたいで申し訳ないんだけど・・・。例え反映されたところで、どんなに頑張ってアピールしても私達のこの姿や声、存在は誰にも認識してもらえないの」

 「どういう事・・・?反映されれば他の人にもこの姿が・・・」

 「言ったでしょ?別のデータとして反映されるって。だから希望は持たないでね、ちょっとだけ現実に干渉できるっていう、ただそれだけなの」

 彼女が言っているのは、要するにシンが朱影達と高速道路で行っていた戦闘が現実の光景に反映されるのと同じこと。

 高速道路では、朱影によってバイクを降ろされた弥上は、現実ではハンドル操作の誤りにより振り落とされた事になっている。

 逆に瑜那と宵命が東京の街中で襲われる複数人の男達を助けようとした時は、モンスターによって対象の人間以外には結果が反映されない様にする結界の様なものが発生していた。

 どうやってモンスターがその様なものを発生させているのかは分からないが、単純に考えればモンスター相手であれば現実の物や人に影響することなく、派手に暴れても壊れたり死者を出したりしないで済むということだ。

 一部、フィアーズの中にも同じ様なものを扱える者がいるが、それはまた後々知ることになる。

 「あまり干渉するなってその時言われたけど、他の人達の反応が面白いんだよね!悪戯心ってやつ?」

 「大丈夫なのか?そんな事して・・・」

 「大丈夫大丈夫。それに変化に対して敏感になってる人を見つけやすいでしょ?」

 彼女の言うことも一理ある。一般の人達にはそれがアトラクションの一部のように見え、シン達のように異変に巻き込まれた者や、フィアーズやアサシンギルドの者達の様に異世界の存在には、その変化が“同類“によるものだと分かる。

 観光気分で楽しもうとしているように見えたが、彼女は彼女なりに考えていたようだ。

 「さぁて!何して驚かせてみようかな。今回は“頼れる仲間“も一緒だし、ね?」

 彼女への考えを改めたことを少し後悔したシン。前回が誰と来たのかは知らないが、やはり彼女は楽しみたいだけなのかもしれない。

 しかし、それによって誘われてくるのは、敵かもしれないしモンスターかもしれない。無闇に目立つような行動をとっては後手に回る可能性も十分にある。

 何かあった時には、年上である自分が何とかしなくては。ただ前衛クラスである戦士やモンクなどと違い、彼女の身代わりになってやることも相手のヘイトを集めることも出来ない。

 行き当たりばったりでは、にぃなを危険な目に合わせてしまいかねないと肝に銘じ、いつでも動けるような準備だけは整えておくシン。

 そして、お目当てのエリアが見えたのか、にぃなは目を輝かせながら足早にプレジャーフォレストへと向かう。

 WoFのキャラクターを投影している分、一般女性の駆け足よりも数段早い。一気に距離を広げられたシンは、急ぎ彼女の後を追う。

 見えてきたのは、巨大なドーム状の建造物。中からは楽しそうな人の声と、外には大勢の人が立ち並ぶ大行列がなされていた。意気揚々と駆け寄るにぃなは、その大行列の中へ突っ込んでいった。

 「私達はこの人達に見えてないしぶつからないから、並ぶ必要な~しッ!お先に失礼ぃ~」

 人や整備用の柵を透過して直進する彼女の姿を見ると、如何に自分達が異常な体験をしているのかが身に染みて分かる様だった。

 シンも彼女に習い、少しぶつかるのではないかと警戒しつつも、思い切って直進するとにぃなが楽しそうに駆け抜けていく気持ちが、少しだけ分かった様な気がした。
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