World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
813 / 1,646

対サイクロプス

しおりを挟む
 巨人は三叉の槍を手にし、友紀の歌うステージ目掛けてそれを投げはなった。アサシンの投擲スキルのように、大きな槍が空を切り会場に迫る。

 すると、会場を守るように大きな盾が出現する。そう、会場には彼らの仲間である親衛隊の一人、ケイルが守りを固めていたのだ。

 「ケイルだ!よかった、無事だったんだな!?」

 「アイツの守りは強力だ。相手が如何に大かろうが、そう簡単には崩されない・・・」

 「それ故に、彼はステージ付近から動けない。あくまで戦闘を行うのは僕らになるね」

 避難していた蒼空達が、赤レンガ倉庫の二号館の方へ到着し、手持ちのアイテムを用いて傷の治療と、消費した魔力の補充を始める。

 その間にも、一号館の方では巨獣達による攻撃がなされていた。

 弾かれた槍は宙を舞い、上空へ回転しながら打ち上がる。巨人はそれを手にしようと飛び上がる姿勢に入る。

 しかし、巨人は突如バランスを崩し地面に膝をついた。整備された地表が砕け、まるで大岩が落ちてきたかのような穴が開く。

 巨人の足には、周囲から伸びている黒い影が縄のように巻き付いていた。

 「上空のモンスターは蒼空達に任せよう。俺達にアレを引き摺り落とす手段はない。ならば・・・」

 「私達が相手にするのは巨人の方だね!」

 「でもこんな巨体に、俺達の攻撃が通用するんですかねぇ!?」

 地上には、蒼空達が一号館の外壁を駆け上がって行った際に、別ルートで移動を始めていたシン達がいた。彼らは赤レンガ倉庫内から外に出ると、地上から巨人の動きを止めていた。

 だが、シンの影による拘束は、巨人の動きを邪魔することは出来ても縛り付けておくことは出来なかった。

 まるで、足に絡まった蔓を引き千切るように影を振り解くと、巨人は地上組の方を振り向き標的を彼らへと移した。

 「よし、狙い通りだ。あんなもの二体も同時に相手には出来ないからな」

 彼らは巨人にちょっかいを出すことでヘイトを稼ぎ、上空の龍との分断を図っていたのだった。そして狙い通り、巨人は目的の邪魔をするシン達を先に排除せんと、彼らの方へ動き出す。

 「どどどッどうするんですか!?あんなでかいの!?本当に俺達だけで何とか出来ますかねぇ!?」

 「大丈夫、大型のモンスターとの戦闘はWoFの中で何度か経験してる」

 「でもそれって、WoFでの話だよね!?私ないよ?レイドとかの経験!」

 「直接攻撃をするのは俺がやるから、二人は援護を頼むよ」

 そう言ってシンは、向かってくる巨人へ、一人立ち向かっていった。

 にぃなとマキナには、事前に幾つかの指示を出していた。細かな内容やタイミングはメッセージ機能を使い連絡を取り合うこととなる。大型のモンスターとの戦闘では、声による合図はかき消されてしまう場合が多い。

 その点、メッセージ機能ならば任意のタイミングで内容を確認できる他、もし相手に知性があった場合、作戦の内容や合図のタイミングを気取られることなく遂行できる。

 ただそれにより、シンとにぃなが組織の外部の人間とやり取りをしたというログが残ってしまうことになる。彼を危険に晒してしまう可能性もあったが、今は四の五の言っていられる状況ではない。

 今、何も出来ずに死ぬより遥かにマシだと、マキナもそれを承諾。それに彼も、この一件が済んだらこれで終わりというの、不安だったのだろう。同じ境遇の仲間達がいるのなら、そこに身を寄せたいと思うのは自然なことだった。

 巨人は素早い足で向かってくるシンに狙いを定め、拳を地面へ向けて振り抜く。シンはそれを身軽な動きで避け、巨人の腕に飛び乗ると一気に顔の方へと駆け上がっていく。

 腕に感じる気配に、巨人は反対の手で宛ら身体に登ってきた虫を払うかのように、シンの道を断とうとする。

 だがそこで、彼らの目論みが動き出した。シンに気を取られている内に、巨人との距離を縮めていたにぃなは、魔法の射程距離内に入ると、巨人の眼前に強烈な光を放つ魔法を撃つ。

 その魔法に攻撃の効果はない。所謂一種の目眩しのようなものだった。しかし、自身の腕を駆け上る小さなものに焦点を合わせていたせいか、突如目の前で起こった強烈なフラッシュに、思わず攻撃を中断し、目を覆うように手で光との間に遮蔽物を作る。

 巨人は気づいていなかったが、この間にシンは巨人のまさに目の前にまで近づいていた。

 彼は巨人の払い除けようとする反対の手へ素早く移動すると、にぃなの放った光に乗じ巨人自らシンを眼球の元へと運んでいたのだ。

 光の裏側にいるシンの元には、巨人の手によって出来た濃厚な影が作り出されている。

 一方、地上にいたマキナは巨人の後方へ回り込み、にぃなの魔法による光で伸びる巨人の影に向かって銃を構える。

 「この“影“を撃ちゃぁいいんですよね・・・!」

 巨人の影の中に、一際色濃く地面すら伺えないほどに黒い、底なしの穴のような部分が現れる。マキナが事前にシンから知らされていたこと。それは巨人の背後に回り込み、攻撃せずに中距離くらいの距離感をキープすること。

 そして、にぃなの光を合図に生み出される影の澱みの中へ、対象に弱点を付与する“ウィーク弾“を撃ち込むということだったのだ。

 彼はシンに言われた通り、影の中にある澱みの中へ銃弾を撃ち込む。すると、影は銃弾を飲み込み、シンのいる巨人の手の影へと移動し、僅かに開いた巨人の眼球に命中する。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界に流されて…!?

藤城満定
ファンタジー
東京発沖縄着の船で修学旅行に出港した都立東品川高等学校2年4組の生徒35人は出港して2時間が過ぎた頃に突然の嵐に巻き込まれてしまい、船が転覆してしまって海に投げ出されてしまった。男子生徒の宮間景太郎が目を覚ますと、そこはどこかの森の中だった。海に投げ出されたのに、何で森の中にいるんだ?不思議に思って呆然としていたら、森の奥から聞き覚えのある女子生徒達の悲鳴が聞こえてきた。考えるより先に体が動いた。足元にあった折れて先端が尖った木の枝と石コロを取って森の奥へと駆け出した。そこには3人の女子生徒が5匹の身長160cmくらいの緑色の肌色のバケモノに襲われていた。そのバケモノは異世界アニメやコミックでお馴染みのゴブリン?だった。距離は10mはある。短剣を持ったのと木製の棍棒を持ったゴブリンの内、棍棒を持ったのがソレを振り下ろすのを防ぐのは無理な距離。ならばと、拾っておいた石コロを全力投球投。全くの無警戒だった場所からかならの威力で投げられた石コロが頭に命中して、そのまま倒れてしまったので他のゴブリン共も動揺した。その隙に女子生徒達とゴブリン共の間に立ち塞がり、拾った木の枝(棒?)を振り回して距離を置き、斃したゴブリンから棍棒を拾ってそこからはタコ殴りに殴りまくった。棍棒や短剣を弾くと、頭、首、肩、腕、足と、それはもうフルボッコのボッコボコにして斃してから暫くして女子生徒達に「大丈夫か?」と声をかけると、3人ともポカーンと口を開けて呆然としていた。まあ、無理もない。何故なら景太郎はクラスでは寡黙で、いつも1人で行動しているそれは、ぶっちゃけて言うと、完全な『ボッチくん』だったからだ。そんな景太郎が自分達の命を助けてくれた。それも今まで誰も見た事のない熱く必死な戦い方でだ。これは謂わゆる『吊り橋効果』ではあるが、こうまで男らしい姿を見せられては惚れるなというほうが無理だろう。その瞬間から女子達による景太郎の取り合い合戦が始まった。 【毎週火曜日に投稿します】

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収

ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。 彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。 だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。 自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。 「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」 契約解除。返還されたレベルは9999。 一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。 対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。 静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。 「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」 これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。 (本作品はAIを活用して構成・執筆しています)

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

処理中です...