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不屈のアイドル
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幼少期にテレビで見たアイドルに憧れ、彼女もその道を目指す。しかし、当然ながら彼女の目指したその道は容易なものではなく、様々な壁や苦難が彼女を待っていた。
それでも諦めずに挑み続けられたのは、単に共に同じ道を目指すライバルであり友人の存在が大きかった。その友人もまた、彼女と同じ壁にぶつかり苦難を体験した同志であるが故、理解し合い高め合うことのできる良き存在となった。
先に転機を迎えたのは友人の方だった。互いに応募したオーディション内にて、二人とも残念ながら落とされてしまうのだが、会場に来ていた各事務所のスカウトの目に留まり、個人の活動から事務所での活動へと入っていく。
そこで二人の人生は大きく変わっていく事となる。
学生であった友人は、事務所でのオーディションへ向けた取り組みを経ていくことで、夢の為学校を辞める決断をする。共に歩んでいた二人だったが、遂にその距離は物理的にも遠くなってしまうことに。
それでも二人は、道の先で再び再開することを誓い、それぞれの道でアイドルを目指すという約束をする。
事務所の専属となった友人だったが、すぐにその頭角を表すということはなく、中々表舞台へ出るという進展は得られなかった。
ボイストレーニングやダンスレッスン。これまで以上に過酷な毎日が彼女を待っていた。休む暇もなく巡る毎日。度重なるオーディションで、思い通りの結果を残せず、辛い思いをすることも多々あった。
何度も挫けそうになる中で彼女を支えたのは、道を違えた友人との約束だった。必ずアイドルになって、夢の舞台で共演する姿を思い浮かべる度に、彼女の足に力が漲る。何度も背中を押してくれる。
離れていても、共に苦楽を共有した友人の存在が彼女を支えた。
そして、アイドルの卵として芽が出ないまま、後から入った後輩達にも先を越されながらも、惨めさなどに一切目も暮れず、いつか立つ夢の舞台の為に万全の準備と、最高のパフォーマンスを届ける為の身体を作り上げていった。
いつしか彼女は、事務所の中でも落ちぶれた存在となっていた。担当マネージャーはコロコロと変わり、新人が仕事を覚える為のマニュアルアイドルなどと揶揄されながら、自主退社を促すような流れが事務所の中にあった。
だがそんな中、一人の新人マネージャーとの出会いが、彼女の落ち込んだアイドルへの道を照らす事となる。
口数の多い方ではなかったそのマネージャーは、とっつきにくくはあったが、これまでの誰よりも彼女の努力に目を向けてくれる人間だった。
ふと事務所の廊下で、彼女は自分の事について話すマネージャー達の会話を耳にする。ある程度の想像はしていた。自分でも分かっていた事だ。それでも、直接他人の口からその言葉を聞くと、まるでナイフで突き刺されるかのように、彼女の心は傷つけられた。
「あのお局アイドルはまぁ、研修みたいなもんだからさぁ。アイツで仕事とか大体の流れ掴んで、新しくて若い子が来たら、きっとお前にも回ってくるだろうよ。それまでの我慢な?」
「あぁ、アレですか?懐かしいなぁ~、俺も入社してすぐ担当させられたっけ・・・。何処に営業行っても断られてさ、こっちも疲れるのなんの。マジでキツかったわ」
「でもその分、当たりの子を引いた時の感動はすげぇから!なんか、これが俺の目指してたものって思えるんだよなぁ。まぁ、下積みみたいなもんだと思ってさ!もうちょい辛抱してくれよな?」
先輩マネージャーに肩を叩かれ励まされる彼女の担当マネージャー。彼がどのように先輩達に答えたのかは、記憶に残らなかった。というよりも、途中から会話の内容が頭に入ってこなかった。
気にしないようにしていた。考えないようにしていた。だが、どんなに彼女が立ち直ろうとも、塞ぎ込もうとも。何度も心に突き刺さるナイフが、悔しさと惨めさと、そして情けなさで彼女の涙を枯らしていき、生気を奪っていった。
こんなに身を削って頑張っているのは何の為?
何処を目指して歩いていたのかも忘れそうになりながらも、ただ人形のように同じようなレッスンの日々を繰り返していた。
しかし、いつになっても担当のマネージャーが変わらない事に、彼女は疑問に思い、今更何を言われても如何でもいいと思いながらも、担当のマネージャーに聞いてみる事にした。
貴方はいつ、私のお守りから解放されるのか、と・・・。
すると彼は答えた。
貴方は私の最初の担当アイドル。何の成果も上げられないまま、代わる気はありません、と・・・。
彼は硬い表情と言葉で、何故そのようなことを聞くのかと、不思議そうに彼女に返した。たったそれだけのことが、彼女は嬉しかった。
突然、彼女を支えていた糸が切れたかのように泣き崩れるのを見て、彼は珍しく動揺した様子で慌てていた。
それから彼も彼女と同じく、事務所内では浮いた存在になってしまった。だが二人は、周りの声や視線など意にも止めず、アイドルとして大きな舞台へ飛び立つために歩み始めた。
彼は凡ゆる伝を使って営業を行い、どんなにちょっとした仕事でも、どんなに地方の仕事でも彼女へと持ってきた。そして彼女も、どんな内容の仕事だろうと、道に沿わぬもの以外は何でも受け入れ全力を尽くし、そこで会った人々に全力で接していく。
小さな事が、やがて大きな舞台への礎となっていき、遂に彼女は初めて、横浜の大舞台へのチャンスを得る。
それが“岡垣友紀“というアイドルの始まりだった。
それでも諦めずに挑み続けられたのは、単に共に同じ道を目指すライバルであり友人の存在が大きかった。その友人もまた、彼女と同じ壁にぶつかり苦難を体験した同志であるが故、理解し合い高め合うことのできる良き存在となった。
先に転機を迎えたのは友人の方だった。互いに応募したオーディション内にて、二人とも残念ながら落とされてしまうのだが、会場に来ていた各事務所のスカウトの目に留まり、個人の活動から事務所での活動へと入っていく。
そこで二人の人生は大きく変わっていく事となる。
学生であった友人は、事務所でのオーディションへ向けた取り組みを経ていくことで、夢の為学校を辞める決断をする。共に歩んでいた二人だったが、遂にその距離は物理的にも遠くなってしまうことに。
それでも二人は、道の先で再び再開することを誓い、それぞれの道でアイドルを目指すという約束をする。
事務所の専属となった友人だったが、すぐにその頭角を表すということはなく、中々表舞台へ出るという進展は得られなかった。
ボイストレーニングやダンスレッスン。これまで以上に過酷な毎日が彼女を待っていた。休む暇もなく巡る毎日。度重なるオーディションで、思い通りの結果を残せず、辛い思いをすることも多々あった。
何度も挫けそうになる中で彼女を支えたのは、道を違えた友人との約束だった。必ずアイドルになって、夢の舞台で共演する姿を思い浮かべる度に、彼女の足に力が漲る。何度も背中を押してくれる。
離れていても、共に苦楽を共有した友人の存在が彼女を支えた。
そして、アイドルの卵として芽が出ないまま、後から入った後輩達にも先を越されながらも、惨めさなどに一切目も暮れず、いつか立つ夢の舞台の為に万全の準備と、最高のパフォーマンスを届ける為の身体を作り上げていった。
いつしか彼女は、事務所の中でも落ちぶれた存在となっていた。担当マネージャーはコロコロと変わり、新人が仕事を覚える為のマニュアルアイドルなどと揶揄されながら、自主退社を促すような流れが事務所の中にあった。
だがそんな中、一人の新人マネージャーとの出会いが、彼女の落ち込んだアイドルへの道を照らす事となる。
口数の多い方ではなかったそのマネージャーは、とっつきにくくはあったが、これまでの誰よりも彼女の努力に目を向けてくれる人間だった。
ふと事務所の廊下で、彼女は自分の事について話すマネージャー達の会話を耳にする。ある程度の想像はしていた。自分でも分かっていた事だ。それでも、直接他人の口からその言葉を聞くと、まるでナイフで突き刺されるかのように、彼女の心は傷つけられた。
「あのお局アイドルはまぁ、研修みたいなもんだからさぁ。アイツで仕事とか大体の流れ掴んで、新しくて若い子が来たら、きっとお前にも回ってくるだろうよ。それまでの我慢な?」
「あぁ、アレですか?懐かしいなぁ~、俺も入社してすぐ担当させられたっけ・・・。何処に営業行っても断られてさ、こっちも疲れるのなんの。マジでキツかったわ」
「でもその分、当たりの子を引いた時の感動はすげぇから!なんか、これが俺の目指してたものって思えるんだよなぁ。まぁ、下積みみたいなもんだと思ってさ!もうちょい辛抱してくれよな?」
先輩マネージャーに肩を叩かれ励まされる彼女の担当マネージャー。彼がどのように先輩達に答えたのかは、記憶に残らなかった。というよりも、途中から会話の内容が頭に入ってこなかった。
気にしないようにしていた。考えないようにしていた。だが、どんなに彼女が立ち直ろうとも、塞ぎ込もうとも。何度も心に突き刺さるナイフが、悔しさと惨めさと、そして情けなさで彼女の涙を枯らしていき、生気を奪っていった。
こんなに身を削って頑張っているのは何の為?
何処を目指して歩いていたのかも忘れそうになりながらも、ただ人形のように同じようなレッスンの日々を繰り返していた。
しかし、いつになっても担当のマネージャーが変わらない事に、彼女は疑問に思い、今更何を言われても如何でもいいと思いながらも、担当のマネージャーに聞いてみる事にした。
貴方はいつ、私のお守りから解放されるのか、と・・・。
すると彼は答えた。
貴方は私の最初の担当アイドル。何の成果も上げられないまま、代わる気はありません、と・・・。
彼は硬い表情と言葉で、何故そのようなことを聞くのかと、不思議そうに彼女に返した。たったそれだけのことが、彼女は嬉しかった。
突然、彼女を支えていた糸が切れたかのように泣き崩れるのを見て、彼は珍しく動揺した様子で慌てていた。
それから彼も彼女と同じく、事務所内では浮いた存在になってしまった。だが二人は、周りの声や視線など意にも止めず、アイドルとして大きな舞台へ飛び立つために歩み始めた。
彼は凡ゆる伝を使って営業を行い、どんなにちょっとした仕事でも、どんなに地方の仕事でも彼女へと持ってきた。そして彼女も、どんな内容の仕事だろうと、道に沿わぬもの以外は何でも受け入れ全力を尽くし、そこで会った人々に全力で接していく。
小さな事が、やがて大きな舞台への礎となっていき、遂に彼女は初めて、横浜の大舞台へのチャンスを得る。
それが“岡垣友紀“というアイドルの始まりだった。
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