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黒い靄の檻
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真っ暗な煙の中では、手を伸ばした先が全く見えないほど視界が悪く、近くに居たはずの仲間の声も聞こえない。
「シン君!天臣さん!?・・・聞こえないのかッ!?」
手を振り、靄を必死に振り払おうと試みるも、靄は近くを流れるだけで一行に晴れる気配はない。
「くっ・・・!やむを得ない。返事がないってことは、近くにはいない・・・よな?」
蒼空は右手に意識を集中させる。すると彼の手に、空間の歪みのような出来る。それをイルがさっきまでいた場所へ向けて放つ。
重力のフィールドが展開され、煙が勢いよく地面の方に降りてくると、広範囲に靄が飛散していく。だが、彼のスキルを用いても、その圧倒的な靄の量の前には無力だった。
蒼空とその仲間のシンを見失ってしまった天臣もまた、靄を振り払おうと刃を振るう。イルを囲むように立っていた彼らのことを考えると、斬撃を飛ばす遠距離攻撃を繰り出すのは危険だ。
天臣は危険を承知でイルのいた位置へと踏み込み、彼らが動いていないことを祈りながら、斬り上げの抜刀を喰らわせる。
しかし、やはり刀に何かを斬ったかのような感触はない。
「クソッ・・・!二人とも!何処へ行った?」
蒼空や天臣と同じく、二人の姿と敵である男の姿を見失ったシンもまた、二人に向けて必死に声を掛けていた。姿が確認できないのなら、音による位置の確認をする他ない。
だが、蒼空や天臣の時もそうだったように、二人からの返事はなかった。
シンはアサシンのクラスのパッシブスキルである暗視能力で、靄の中に目を光らせる。靄の先に終わりが見えない。どうやらある程度進むとループしてしまい、定められた一定の範囲内から抜け出すことの出来ない結界に閉じ込められているようだった。
「これは・・・。妖術や幻覚の類か?それなら、術を発動するトリガーがあるはずッ・・・!」
シンは暗視能力に加え、アサシンギルドの白獅から授かった眼球の代わりとなるオーブ、テュルプ・オーブで靄の映像と性質を白獅へと送る。彼がこのデータを受け取ってくれるかは分からない。
だが、相手の能力の秘密を分析するには、彼の手を借りるのが最も手っ取り早く、メッセージ機能を使うよりも安全だった。
返事が返ってくるか分からない以上、シンも自分なりにイルの能力について探る。
試しにシンは、自身の影の中へ潜り外への脱出を試みるも、影の移動可能範囲の限界へ達しても、靄の結界の中から抜け出すことは出来なかった。
「物理的な移動や攻撃で払うことは出来なさそうだな・・・」
次にシンが試みたのは、自身の影から周囲へ向けて、幾つもの影の鎖を放ち、何か魔力を帯びた物に触れるかどうかを試した。
するとその途中、姿は見当たらなかったがイルという彼らの敵である男から、シンへ向けてのコンタクトがあった。
「なるほど。アンタの能力は“影“か・・・。それであのマネージャーの男を助けていたのか」
「ッ・・・!?」
直接対話をするのが初めてだった二人。蒼空や天臣以上に接点のない二人だったが、その能力の性質上シンとイルは似たものを感じていた。自らの身体能力や物理的な能力ではなく、トリッキーなスキルにより相手を翻弄し、戦況の有利を引き寄せる。
今まさに三人を捉えている能力こそ、その能力の真骨頂とも言える。
「どうやらアンタは、これが別の空間であることを察しているようだな?」
「別の空間・・・?だがこれでは、時間稼ぎをするばかりで、無駄に魔力を消費するだけなんじゃないのか?」
「ふッ・・・そんな事はないさ。アンタのお仲間さん達も、必死にこの檻から出ようと暴れ回ってるみたいだ。何も時間を稼いでる訳じゃぁない。アンタ達の力を利用させてもらおうって訳さ」
「利用?どういう事だ?・・・・・おい、何か答えろ!」
イルとの会話はそこで途絶えてしまった。彼はシン達の力を“利用する“と言っていた。三人を分断し、それぞれの力を利用しようと考えた時、一体どのような能力を想像するか。
それはすぐにシン達の身に襲いかかる事となる。
暗闇の中、イルの言葉もないまま、そこが別の空間になっていることすら知らない蒼空は、何とかしてここを抜け出すか、靄を払おうと様々な行動を起こしていた。
自身の身体を軽くし飛んでみたり、上空から広範囲に渡り重力を掛けてみたり。他の二人に声も届かないことが分かった蒼空は、周りを顧みず色々な行動に出ていた。
「はぁ・・・はぁ・・・。会場はこんなに広くない筈。ということは、ユッキーの時みたいに何処かへ連れて行かれたのか・・・?」
色々と試す内に、魔力を大きく消費してしまった蒼空は、その中でシンと同じような結論に至っていた。
そんな彼に差し向けられたのは、対峙していた男の声でも攻撃でもなく、全く別の至極単純な“物の接近“だった。そこに殺意もなければ敵意もない。ただ何かが蒼空に向かってくるという事実だけだった。
不意に何かの接近に気がついた蒼空は、上体を逸らし間一髪のところで“ソレ“を避ける。
「なッ・・・!?」
一瞬の出来事で、それが何かを確認するまでには至らなかったが、僅かに靄の中から迫る物が見える。神経を集中させていれば、避けるのはそう難しいことではなかったが、周囲の気配に気を張っていなければ、たちまち命を刈り取られそうな緊張感が出始めた。
そして、それの次の接近に気づいた時、蒼空の目に映ったのは鈍く光る鉛の刃だった。
「シン君!天臣さん!?・・・聞こえないのかッ!?」
手を振り、靄を必死に振り払おうと試みるも、靄は近くを流れるだけで一行に晴れる気配はない。
「くっ・・・!やむを得ない。返事がないってことは、近くにはいない・・・よな?」
蒼空は右手に意識を集中させる。すると彼の手に、空間の歪みのような出来る。それをイルがさっきまでいた場所へ向けて放つ。
重力のフィールドが展開され、煙が勢いよく地面の方に降りてくると、広範囲に靄が飛散していく。だが、彼のスキルを用いても、その圧倒的な靄の量の前には無力だった。
蒼空とその仲間のシンを見失ってしまった天臣もまた、靄を振り払おうと刃を振るう。イルを囲むように立っていた彼らのことを考えると、斬撃を飛ばす遠距離攻撃を繰り出すのは危険だ。
天臣は危険を承知でイルのいた位置へと踏み込み、彼らが動いていないことを祈りながら、斬り上げの抜刀を喰らわせる。
しかし、やはり刀に何かを斬ったかのような感触はない。
「クソッ・・・!二人とも!何処へ行った?」
蒼空や天臣と同じく、二人の姿と敵である男の姿を見失ったシンもまた、二人に向けて必死に声を掛けていた。姿が確認できないのなら、音による位置の確認をする他ない。
だが、蒼空や天臣の時もそうだったように、二人からの返事はなかった。
シンはアサシンのクラスのパッシブスキルである暗視能力で、靄の中に目を光らせる。靄の先に終わりが見えない。どうやらある程度進むとループしてしまい、定められた一定の範囲内から抜け出すことの出来ない結界に閉じ込められているようだった。
「これは・・・。妖術や幻覚の類か?それなら、術を発動するトリガーがあるはずッ・・・!」
シンは暗視能力に加え、アサシンギルドの白獅から授かった眼球の代わりとなるオーブ、テュルプ・オーブで靄の映像と性質を白獅へと送る。彼がこのデータを受け取ってくれるかは分からない。
だが、相手の能力の秘密を分析するには、彼の手を借りるのが最も手っ取り早く、メッセージ機能を使うよりも安全だった。
返事が返ってくるか分からない以上、シンも自分なりにイルの能力について探る。
試しにシンは、自身の影の中へ潜り外への脱出を試みるも、影の移動可能範囲の限界へ達しても、靄の結界の中から抜け出すことは出来なかった。
「物理的な移動や攻撃で払うことは出来なさそうだな・・・」
次にシンが試みたのは、自身の影から周囲へ向けて、幾つもの影の鎖を放ち、何か魔力を帯びた物に触れるかどうかを試した。
するとその途中、姿は見当たらなかったがイルという彼らの敵である男から、シンへ向けてのコンタクトがあった。
「なるほど。アンタの能力は“影“か・・・。それであのマネージャーの男を助けていたのか」
「ッ・・・!?」
直接対話をするのが初めてだった二人。蒼空や天臣以上に接点のない二人だったが、その能力の性質上シンとイルは似たものを感じていた。自らの身体能力や物理的な能力ではなく、トリッキーなスキルにより相手を翻弄し、戦況の有利を引き寄せる。
今まさに三人を捉えている能力こそ、その能力の真骨頂とも言える。
「どうやらアンタは、これが別の空間であることを察しているようだな?」
「別の空間・・・?だがこれでは、時間稼ぎをするばかりで、無駄に魔力を消費するだけなんじゃないのか?」
「ふッ・・・そんな事はないさ。アンタのお仲間さん達も、必死にこの檻から出ようと暴れ回ってるみたいだ。何も時間を稼いでる訳じゃぁない。アンタ達の力を利用させてもらおうって訳さ」
「利用?どういう事だ?・・・・・おい、何か答えろ!」
イルとの会話はそこで途絶えてしまった。彼はシン達の力を“利用する“と言っていた。三人を分断し、それぞれの力を利用しようと考えた時、一体どのような能力を想像するか。
それはすぐにシン達の身に襲いかかる事となる。
暗闇の中、イルの言葉もないまま、そこが別の空間になっていることすら知らない蒼空は、何とかしてここを抜け出すか、靄を払おうと様々な行動を起こしていた。
自身の身体を軽くし飛んでみたり、上空から広範囲に渡り重力を掛けてみたり。他の二人に声も届かないことが分かった蒼空は、周りを顧みず色々な行動に出ていた。
「はぁ・・・はぁ・・・。会場はこんなに広くない筈。ということは、ユッキーの時みたいに何処かへ連れて行かれたのか・・・?」
色々と試す内に、魔力を大きく消費してしまった蒼空は、その中でシンと同じような結論に至っていた。
そんな彼に差し向けられたのは、対峙していた男の声でも攻撃でもなく、全く別の至極単純な“物の接近“だった。そこに殺意もなければ敵意もない。ただ何かが蒼空に向かってくるという事実だけだった。
不意に何かの接近に気がついた蒼空は、上体を逸らし間一髪のところで“ソレ“を避ける。
「なッ・・・!?」
一瞬の出来事で、それが何かを確認するまでには至らなかったが、僅かに靄の中から迫る物が見える。神経を集中させていれば、避けるのはそう難しいことではなかったが、周囲の気配に気を張っていなければ、たちまち命を刈り取られそうな緊張感が出始めた。
そして、それの次の接近に気づいた時、蒼空の目に映ったのは鈍く光る鉛の刃だった。
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(本作品はAIを活用して構成・執筆しています)
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