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降り注ぐは鉄の雨
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脱出した筈の建物の中へ戻ってきてしまったツクヨ。身体の疲労が癒えてきた頃、戻ってきた道の奥で大きな物音がし始める。
瓦礫が飛び散る音と先程まで彼らに恐怖を与えていた、悍ましい雄叫びが聞こえて来る。戦っていた獣人が投げ飛ばした獣が戻ってきたのだろう。
「奴だッ!戻って来たぞ」
「しぃッ!静かに・・・。探してるみてぇだ。こちらの姿は確認できてないみたいだな・・・」
勢いよく飛び込んできた獣は、建物の中央広場で足を止める。物色するように辺りを見渡し、仕切りに鼻をヒクつかせている。アレが獣と同じ鼻を持っているのだとしたら、ここに隠れているのも時間の問題。すぐに見つかってしまうことだろう。
それならばいっその事こと、まだ隙を伺える内に不意打ちで深手を負わせることに賭けるべきだろうか。様々な葛藤を抱えながら獣の動向を窺っていると、突然その獣が彼らの方へ首をぐるりと回し次の瞬間、その悍ましい姿は目前まで迫って来ていた。
「なッ・・・!」
「バレてやがったのか!?」
二人は個室に開いた大きな穴から、左右に分かれて獣の様子を伺っていた。姿は晒していないはず。目も合わないように気をつけていた。やはりただのモンスターや獣というには、獲物を感知する能力に長けているとしか思えない。
そして何故か真っ先に狙われたのは、人間のツクヨの方だった。瞬く間に急接近してきた獣に、剣を抜くのが精一杯で、その獣の振るう鋭い爪に受け止めた剣が弾き飛ばされてしまう。
「しまッ・・・!」
獣はすかさず反対の手についた鋭い爪を振るい、ツクヨの命を刈り取ろうと風をも切り裂く素早い一撃を見舞う。だがそうはさせまいと動き出したのは、ツクヨを救った獣人だった。
彼は二人の間に割って入るように飛び込み、獣を突き放そうと勢いよく自身の身体をぶつける。獣人の尋常ならざる脚力で体当たりされ、流石の獣も大きく後方へと吹き飛ばされていく。
「無事か!?」
「あっ・・・危なかった・・・。ありがとう」
「次が来るぞ!気を引き締めろ!」
獣は吹き飛ばされる勢いを、その両の手についた鋭い爪を床に突き立てて止める。そして獣人の彼らとよく似た姿とはかけ離れた、獣のような動きで飛び掛かってくる。
二度に渡る攻撃を受け、ツクヨはこれまで以上に身を引き締める。少しでも気を抜けば、次の瞬間には首が宙を舞っていた、などと成りかねない。
だがそこへ、意外な助けが入る。直進的に攻めてきたこれまでとは違い、獣は遮蔽物や投擲を利用しながら攻め立ててきた。
飛んで来る瓦礫をツクヨが両断し、素早く移動する獣に狙いを定める獣人。すると、素早い身のこなしで翻弄してくる獣が、突如その足を止める。
同時に建物内に響いたのは銃声だった。
鳴り響いた一発の銃声は、見事に獲物の足を挫く一撃となった。不意の一撃を受け、何が起きたのか理解できていない様子の獣は、辺りを見渡し遮蔽物に身を隠そうとするも、次々に降り注ぐ銃弾の雨がまるで流星のように獲物を逃すことはなかった。
足を撃ち抜かれ爪を砕かれ、鋼のように隆起した筋肉を撃ち抜かれ、それまで恐怖の対象だったものが彼らの前で虫の息になる。
「何事だ?一体誰が・・・!」
「そうか、ここはあそこだったね!」
血溜まりの中でもがく獣の姿は、一方的にねじ伏せられ憐れみすら覚えるほどだった。だが、頭上から降り注ぐ神の鉄槌は、そんな慈悲も感じさせないほど冷徹な一撃を、獣の生命活動を支える心臓に向けて撃ち放つ。
「すっ・・・すげぇ・・・」
「容赦ないなぁ、“ミア“」
力なく動いていた獣の腕は、自らの肉体から流れ出た血の池に沈み、その息を引き取った。しかし、すぐにその肉体が消えないことから、その獣がモンスターではないことを証明していた。
「騒がしいと思って見に来てみれば・・・。どうやら出口も見つかったようだな」
上の階層から顔を覗かせたのは、ツバキやアカリを安全なところへ避難させていたミアだった。
ツクヨと彼を助けた獣人が飛び込んだのは、彼らが脱出を試みた巨大な大樹の建物の中だったのだ。
偶然とはいえ、化け物のように変わり果てた獣人がこじ開けた大穴により、これで全員脱出することが可能になった。
ツクヨの合流に、ミアはすぐに下に降りるとツバキ達の元へと戻っていった。気を張り詰めていた獣人は、ほっとしたように身体の力を抜く。何が起きたのか分からなかったのは彼も同じだった。
そんな彼に、彼らを助けた今の銃撃を行った者達のことを説明するツクヨ。
「そうか、また人間に助けられちまったのか・・・。これはもう、無下には出来ねぇな・・・。分かった、ガレウスには俺から何とか説得してみよう。名乗るのが遅れたな。俺は“ガルム“ってんだ。アンタは?」
「私はツクヨという。誤解が解けたようでよかった・・・」
瓦礫が飛び散る音と先程まで彼らに恐怖を与えていた、悍ましい雄叫びが聞こえて来る。戦っていた獣人が投げ飛ばした獣が戻ってきたのだろう。
「奴だッ!戻って来たぞ」
「しぃッ!静かに・・・。探してるみてぇだ。こちらの姿は確認できてないみたいだな・・・」
勢いよく飛び込んできた獣は、建物の中央広場で足を止める。物色するように辺りを見渡し、仕切りに鼻をヒクつかせている。アレが獣と同じ鼻を持っているのだとしたら、ここに隠れているのも時間の問題。すぐに見つかってしまうことだろう。
それならばいっその事こと、まだ隙を伺える内に不意打ちで深手を負わせることに賭けるべきだろうか。様々な葛藤を抱えながら獣の動向を窺っていると、突然その獣が彼らの方へ首をぐるりと回し次の瞬間、その悍ましい姿は目前まで迫って来ていた。
「なッ・・・!」
「バレてやがったのか!?」
二人は個室に開いた大きな穴から、左右に分かれて獣の様子を伺っていた。姿は晒していないはず。目も合わないように気をつけていた。やはりただのモンスターや獣というには、獲物を感知する能力に長けているとしか思えない。
そして何故か真っ先に狙われたのは、人間のツクヨの方だった。瞬く間に急接近してきた獣に、剣を抜くのが精一杯で、その獣の振るう鋭い爪に受け止めた剣が弾き飛ばされてしまう。
「しまッ・・・!」
獣はすかさず反対の手についた鋭い爪を振るい、ツクヨの命を刈り取ろうと風をも切り裂く素早い一撃を見舞う。だがそうはさせまいと動き出したのは、ツクヨを救った獣人だった。
彼は二人の間に割って入るように飛び込み、獣を突き放そうと勢いよく自身の身体をぶつける。獣人の尋常ならざる脚力で体当たりされ、流石の獣も大きく後方へと吹き飛ばされていく。
「無事か!?」
「あっ・・・危なかった・・・。ありがとう」
「次が来るぞ!気を引き締めろ!」
獣は吹き飛ばされる勢いを、その両の手についた鋭い爪を床に突き立てて止める。そして獣人の彼らとよく似た姿とはかけ離れた、獣のような動きで飛び掛かってくる。
二度に渡る攻撃を受け、ツクヨはこれまで以上に身を引き締める。少しでも気を抜けば、次の瞬間には首が宙を舞っていた、などと成りかねない。
だがそこへ、意外な助けが入る。直進的に攻めてきたこれまでとは違い、獣は遮蔽物や投擲を利用しながら攻め立ててきた。
飛んで来る瓦礫をツクヨが両断し、素早く移動する獣に狙いを定める獣人。すると、素早い身のこなしで翻弄してくる獣が、突如その足を止める。
同時に建物内に響いたのは銃声だった。
鳴り響いた一発の銃声は、見事に獲物の足を挫く一撃となった。不意の一撃を受け、何が起きたのか理解できていない様子の獣は、辺りを見渡し遮蔽物に身を隠そうとするも、次々に降り注ぐ銃弾の雨がまるで流星のように獲物を逃すことはなかった。
足を撃ち抜かれ爪を砕かれ、鋼のように隆起した筋肉を撃ち抜かれ、それまで恐怖の対象だったものが彼らの前で虫の息になる。
「何事だ?一体誰が・・・!」
「そうか、ここはあそこだったね!」
血溜まりの中でもがく獣の姿は、一方的にねじ伏せられ憐れみすら覚えるほどだった。だが、頭上から降り注ぐ神の鉄槌は、そんな慈悲も感じさせないほど冷徹な一撃を、獣の生命活動を支える心臓に向けて撃ち放つ。
「すっ・・・すげぇ・・・」
「容赦ないなぁ、“ミア“」
力なく動いていた獣の腕は、自らの肉体から流れ出た血の池に沈み、その息を引き取った。しかし、すぐにその肉体が消えないことから、その獣がモンスターではないことを証明していた。
「騒がしいと思って見に来てみれば・・・。どうやら出口も見つかったようだな」
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ツクヨと彼を助けた獣人が飛び込んだのは、彼らが脱出を試みた巨大な大樹の建物の中だったのだ。
偶然とはいえ、化け物のように変わり果てた獣人がこじ開けた大穴により、これで全員脱出することが可能になった。
ツクヨの合流に、ミアはすぐに下に降りるとツバキ達の元へと戻っていった。気を張り詰めていた獣人は、ほっとしたように身体の力を抜く。何が起きたのか分からなかったのは彼も同じだった。
そんな彼に、彼らを助けた今の銃撃を行った者達のことを説明するツクヨ。
「そうか、また人間に助けられちまったのか・・・。これはもう、無下には出来ねぇな・・・。分かった、ガレウスには俺から何とか説得してみよう。名乗るのが遅れたな。俺は“ガルム“ってんだ。アンタは?」
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