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信用に値する者
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圧倒的な身体能力と力で、ガルムともう一人の獣人を相手にしても全くものともしなかった獣が、ミアの狙撃により頭部を撃ち抜かれ、糸の切れた人形のように地面に横たわる。
穴の空いた箇所からはドロリと赤黒い液体が流れだし、底の見えない沼のような血溜まりを作っていく。
「しっ・・・死んだのか・・・?」
「・・・・・」
動かなくなる巨体を、恐る恐る覗き込む獣人達。あれだけ大暴れしておいて、銃弾一発でこうも大人しくなるものかと、俄かには信じられないといった様子で近づいていく。
荒々しかった息遣いもなくなり、ピクリとも動かない巨体からは最早死んだものとしか思えない雰囲気がある。
獲物が動かなくなったのを確認し、ミアは銃声を鳴らした狙撃ポイントからの移動を開始した。如何に相手が知性を持たない怪物であっても、大きな音を立てればそちらへ向かって来ないとも限らない。
血生臭さが周囲に広がり、獣人の鼻を持っていないツクヨやツバキであっても、うっすらと嗅覚を突く感覚に陥る。
腕で鼻を覆いかくし、倒れる巨体を足で仰向けにしよと蹴る獣人。すると、近づいたその足を突然鷲掴みにし、まるでおもちゃのように獣人の身体を振り回しながら、様子を見ていたガルムの方へ投げつける。
獣はやはり死んではいなかった。巨大樹で倒した獣は、ミアの銃弾を何発も全身に浴びて漸く虫の息になった。
頭部という生物としての弱点とはいえ、一撃で落とせるのならこんなには苦戦していない。ガルムの予想は見事に的中していた。彼がこの獣から感じていた違和感。それは生物というものではなく、内側から何かが動かしているかのような不気味な気配だった。
ガルムは投げ飛ばされた仲間を受け止めるも、獣人を投げた獣は瞬時に起き上がりその受け止めたガルムを二人まとめて貫かんと、鋭い爪を槍のように撃ち放つ。
だが、獣の爪は寸前のところで何かによって両断され、二人に届くことはなかった。自身の身に起きた出来事に、嫌な予感を察知したのか咄嗟に飛び退く。
両断された自身の爪をまじまじと見る獣。その断面は鋭利なもので切断されており、恐ろしく綺麗な断面をしていた。それだけではなく、指元や手首にじわざわと赤い線が浮かび上がってくる。
妙な現象に困惑している様子の獣だったが、そのその赤い線が徐々に皮膚の真下まで浮かび上がり、風船のように膨らんで血飛沫を噴き出しながら皮膚に切れ込みが入る。
「グルぁぁぁあああ!!」
爪先から始まり、獣の腕に無数の切り傷が入り血飛沫を上げていく。それは獣の肩に至るまで続き、指や手首、肘や二の腕など時間差で細かく切断されていったのだ。
未知の現象に恐ろしくなったのか、獣は叫び声を上げながら逃げようとするも、別の狙撃ポジションについたミアによって、全身にいくつもの銃弾を浴びる。
「なッ何が起きたんだ・・・・!?」
仲間を抱えたまま、ガルムも目の前で起きた現象に唖然としていた。獣にトドメを刺した銃弾はミアのものだと分かったが、その直前に起きた獣の腕が刻まれていくのが何なのかは想像もつかなかった。
獣との戦闘に夢中になっており、その気配にすら気付かなかったが、ガルムがふと我に帰った時その背後にいたのはツクヨだった。
彼はその手に、不思議な雰囲気を纏う剣、布都御魂剣を握って目を瞑っていた。抜刀していることから、彼が何らかの攻撃を仕掛けたのは間違いないだろうが、獣と彼の間には仲間を抱き抱えるガルムがいる。
物理的に獣を斬りつけることなど、どう考えても不可能な状況にあったのは間違いない。
「アンタ・・・一体何を・・・」
「大した事じゃないさ。それより彼は大丈夫?他にも仲間が襲われているなら、早く助けに行こう!」
「すっすまねぇガルム・・・。って、何だこりゃぁ・・・アイツらがやったのか?」
ガルム以上に何があったのか状況の整理がつかない仲間の獣人。彼もまた、ツクヨ達人間の助けがなければ命を落としていたかもしれない。それは化け物となった獣と直接対峙していた彼が、一番肌身に感じていた事だろう。
「アイツらの目的は何だ?手を組んで大丈夫なのか?あの力・・・アズールやガレウスにも・・・」
「すまない、俺にはこれが正しい事なのかは分からない・・・。だが、この難局を乗り越えるには俺一人の力では、どうしようもないのは確かだった」
「なら、今は同胞達の為、奴らを利用しよう。見定めるのはその後でも遅くはない・・・筈だ」
「あぁ・・・」
卑劣な人間のやり方を知っている仲間は、如何に協力してくれる関係性になったからとはいえ、完全に心を許すのは危険だとガルムに諭す。今までも同じようなことがあったのだろう。
ガルムがたまたま、捕らえられた者以外の人間に会ったことがないだけで、他の獣人族の中には当然、森の外の人間に出会ったことのある者もいただろう。
信用しかけてるところを狙われる裏切りを知っているからこそ、ガルム以上に人間への警戒心が強いように思える。
穴の空いた箇所からはドロリと赤黒い液体が流れだし、底の見えない沼のような血溜まりを作っていく。
「しっ・・・死んだのか・・・?」
「・・・・・」
動かなくなる巨体を、恐る恐る覗き込む獣人達。あれだけ大暴れしておいて、銃弾一発でこうも大人しくなるものかと、俄かには信じられないといった様子で近づいていく。
荒々しかった息遣いもなくなり、ピクリとも動かない巨体からは最早死んだものとしか思えない雰囲気がある。
獲物が動かなくなったのを確認し、ミアは銃声を鳴らした狙撃ポイントからの移動を開始した。如何に相手が知性を持たない怪物であっても、大きな音を立てればそちらへ向かって来ないとも限らない。
血生臭さが周囲に広がり、獣人の鼻を持っていないツクヨやツバキであっても、うっすらと嗅覚を突く感覚に陥る。
腕で鼻を覆いかくし、倒れる巨体を足で仰向けにしよと蹴る獣人。すると、近づいたその足を突然鷲掴みにし、まるでおもちゃのように獣人の身体を振り回しながら、様子を見ていたガルムの方へ投げつける。
獣はやはり死んではいなかった。巨大樹で倒した獣は、ミアの銃弾を何発も全身に浴びて漸く虫の息になった。
頭部という生物としての弱点とはいえ、一撃で落とせるのならこんなには苦戦していない。ガルムの予想は見事に的中していた。彼がこの獣から感じていた違和感。それは生物というものではなく、内側から何かが動かしているかのような不気味な気配だった。
ガルムは投げ飛ばされた仲間を受け止めるも、獣人を投げた獣は瞬時に起き上がりその受け止めたガルムを二人まとめて貫かんと、鋭い爪を槍のように撃ち放つ。
だが、獣の爪は寸前のところで何かによって両断され、二人に届くことはなかった。自身の身に起きた出来事に、嫌な予感を察知したのか咄嗟に飛び退く。
両断された自身の爪をまじまじと見る獣。その断面は鋭利なもので切断されており、恐ろしく綺麗な断面をしていた。それだけではなく、指元や手首にじわざわと赤い線が浮かび上がってくる。
妙な現象に困惑している様子の獣だったが、そのその赤い線が徐々に皮膚の真下まで浮かび上がり、風船のように膨らんで血飛沫を噴き出しながら皮膚に切れ込みが入る。
「グルぁぁぁあああ!!」
爪先から始まり、獣の腕に無数の切り傷が入り血飛沫を上げていく。それは獣の肩に至るまで続き、指や手首、肘や二の腕など時間差で細かく切断されていったのだ。
未知の現象に恐ろしくなったのか、獣は叫び声を上げながら逃げようとするも、別の狙撃ポジションについたミアによって、全身にいくつもの銃弾を浴びる。
「なッ何が起きたんだ・・・・!?」
仲間を抱えたまま、ガルムも目の前で起きた現象に唖然としていた。獣にトドメを刺した銃弾はミアのものだと分かったが、その直前に起きた獣の腕が刻まれていくのが何なのかは想像もつかなかった。
獣との戦闘に夢中になっており、その気配にすら気付かなかったが、ガルムがふと我に帰った時その背後にいたのはツクヨだった。
彼はその手に、不思議な雰囲気を纏う剣、布都御魂剣を握って目を瞑っていた。抜刀していることから、彼が何らかの攻撃を仕掛けたのは間違いないだろうが、獣と彼の間には仲間を抱き抱えるガルムがいる。
物理的に獣を斬りつけることなど、どう考えても不可能な状況にあったのは間違いない。
「アンタ・・・一体何を・・・」
「大した事じゃないさ。それより彼は大丈夫?他にも仲間が襲われているなら、早く助けに行こう!」
「すっすまねぇガルム・・・。って、何だこりゃぁ・・・アイツらがやったのか?」
ガルム以上に何があったのか状況の整理がつかない仲間の獣人。彼もまた、ツクヨ達人間の助けがなければ命を落としていたかもしれない。それは化け物となった獣と直接対峙していた彼が、一番肌身に感じていた事だろう。
「アイツらの目的は何だ?手を組んで大丈夫なのか?あの力・・・アズールやガレウスにも・・・」
「すまない、俺にはこれが正しい事なのかは分からない・・・。だが、この難局を乗り越えるには俺一人の力では、どうしようもないのは確かだった」
「なら、今は同胞達の為、奴らを利用しよう。見定めるのはその後でも遅くはない・・・筈だ」
「あぁ・・・」
卑劣な人間のやり方を知っている仲間は、如何に協力してくれる関係性になったからとはいえ、完全に心を許すのは危険だとガルムに諭す。今までも同じようなことがあったのだろう。
ガルムがたまたま、捕らえられた者以外の人間に会ったことがないだけで、他の獣人族の中には当然、森の外の人間に出会ったことのある者もいただろう。
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