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嘗ての忌まわしき記憶
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素早い身のこなしで周囲の獣達による猛攻を潜り抜けると、高く飛び上がったツクヨはガレウスまでの距離を一気に詰める。彼が着地するであろう場所を定めたミアは、彼が降りて来る前に足場を確保しようと、地上の獣達へ向けて威嚇も込めた無数の弾丸を撃ち放つ。
スナイパーライフルからアサルトライフルへと持ち替えたミアは、特に狙いを定めることもなく蜘蛛の子を散らすように弾をばら撒く。彼女の狙い通り、銃弾をばら撒いた場所から離れていく獣達。何発かは命中したようだが、僅かに怯ませた程度でこれといったダメージにはなっていないだろう。
そこへ布都御魂剣を携えたツクヨが降りてくる。彼の着地を見送った獣達は、そのただ成らぬ雰囲気に圧されるようにして後退りする。だが血に飢えた獣にその場から退くなどという選択肢はなかったようだ。
躊躇いはしたものも、再び魔獣のような目付きでツクヨを睨みつけると、土を巻き上げながら大地を蹴り上げ、鋭利な爪を剥き出しにして飛び掛かる。
ツクヨは依然として目を閉じたまま布都御魂剣を手に、抜刀術のような構えのまましゃがみ込んでいる。獣達が取り囲むように一斉に飛び掛かってくる刹那、彼の手によって鞘から引き抜かれたその宝剣は、周囲に向け一瞬の間に広がる波紋のような衝撃波を打ち放つ。
獣達は出血することもなく、飛び掛かる途中でピクリとも動かなくなる。自分達の身に何が起きたのかさえ分からないといった様子で、殺虫剤を浴びた羽虫のように地面へと落ちていく。
布都御魂剣によって斬られた獣達は、内側に宿る邪悪な意志や魔力を断ち切られたように大きく戦闘力を落とした。そして普通に斬りつけるよりも長い間、まるで自分が何をしていたのか忘れてしまったかのような忘却状態にしていた。
瞬く間にガレウスの周りに集る獣達を討ち払っていくツクヨだったが、依然としてガレウスは別の何かと会話するように言葉を発していた。
「ガレウス!どうしたんんだ!?早くコイツらを倒さないと他の味方がッ・・!」
「よせ!やはり人間は俺達の敵だ・・・!」
ブツブツと何かを呟いていたガレウスは、なんと救助に訪れたツクヨ目がけてその鋭爪を振るったのだ。ツクヨは彼を斬り捨てることも出来ず、その攻撃を受け止める。
「なッ!?ちょっと!どうしたっての!?」
ガレウスの攻撃に手加減などという様子は伺えない。力で押し負けるツクヨの身体がどんどんと地面に吸い寄せられるようにして沈んでいく。
「ガレウス!今はそいつぁ敵じゃねぇだろ!?」
「どうしちまったんだ!?しっかりしてくれよッ!」
一時的に協力関係を結んだ筈の人間を襲っていたガレウスを見て、側近の獣人達が彼の目を覚まさせようと声をかける。同じ種族の声は届いているのか、彼らの声を聞いたガレウスは、すぐにツクヨへの攻撃をやめて後退りする。
「なッ・・・馬鹿な!なんでお前がここに!?」
「はぁ・・・はぁ・・・何にが、見えてるんだい・・・?」
布都御魂剣の効果で、目を閉じている間、周囲の気配やオーラを可視化することのできるツクヨは、周りに隠れている邪悪な気配をも見つけることができる状態にある。
しかし、そんな彼の能力を持ってしてもガレウスの見ていいる何かを見つけることは出来なかった。それもその筈。いくら邪を払う力を持ってしても、幻覚症状に見舞われている者の見ている景色を把握することまでは出来ないのだ。
ガレウスの目を覚まさせる事ができない以上、原因を取り除く他ない。だが、彼がいつの間に幻覚を見るようになってしまったかなど、その場にいた誰にも分かることではなかった。
すると、ガレウスはツクヨを見ながら何かと勘違いしているかのような発言をしていた。それが聞こえたのは、側にいたツクヨだけ。だがそれを聞いてツクヨは、ガレウスが幻覚の類を見ているだろうということに気がつく。
「お前は・・・アズール達と森へ向かった筈だろ?何故お前一人が戻ってきたんだ、“ケツァル“!」
「・・・ケツァル?今度は私を何かと勘違いしているのか・・・?いや、これは幻覚を見させられているのか?」
すぐに異変を感じ取ったツクヨは、ガレウスの周辺の獣達を粗方斬り伏せるとその場を離れ、ミアに今起きた出来事を伝える。攻撃をされたり、違う者と間違えられたりと、その様子からもミアはツクヨと同じ結論に至った。
戦いの中でガレウスは、いつの間にか幻覚を見るようになってしまったのだと。人間である彼らでは、言葉や行動を起こしても裏目に出るだけかもしれない。事情を話し、ガレウスの側近の獣人達に声をかけてもらうことにした二人は、作戦を一時中断し今度は獣人の助けるために動く。
再び布都御魂剣の力で獣達を斬り捨てて行ったツクヨは、獣人達を救助しながら事情を話す。
「幻覚だぁ!?・・・確かに、そんな様子だな・・・ありゃぁ」
「あぁ、普段のアイツならこんなに押されることもねぇ筈だ・・・。分かった!アンタらのいう通りやってみるぜ!」
一部始終を目にしていたこともあり、彼らもガレウスの様子がおかしいことには気がついていた。このままでは囮を買って出るのはいいものの、いずれジリ貧になり囲まれてしまう。
ツクヨの言葉に辻褄が通っていると判断した獣人達は、獣を退けながらガレウスの元へと向かう。
「おい!ガレウス!遊んでる場合じゃねぇぞ!ここにケツァルの奴はいねぇ!お前の見てるのは幻覚だ!目ぇ覚ませッ!」
一人の獣人が大声を出してガレウスに呼びかける。彼が注目を集めている内に、もう一人の獣人がガレウスに接触し、彼の肩を掴んで身体を揺さぶる。
「ガレウス!しっかりしてくれ!」
「やめろ・・・俺は・・・お前達を置いて・・・」
何かに苛まれるように頭を抱えてしまうガレウス。いつにもなく弱気な姿に、側近の獣人も驚いた様子を見せる。
「・・・ガレウス?」
「すまない・・・俺は・・・臆病者だった・・・」
スナイパーライフルからアサルトライフルへと持ち替えたミアは、特に狙いを定めることもなく蜘蛛の子を散らすように弾をばら撒く。彼女の狙い通り、銃弾をばら撒いた場所から離れていく獣達。何発かは命中したようだが、僅かに怯ませた程度でこれといったダメージにはなっていないだろう。
そこへ布都御魂剣を携えたツクヨが降りてくる。彼の着地を見送った獣達は、そのただ成らぬ雰囲気に圧されるようにして後退りする。だが血に飢えた獣にその場から退くなどという選択肢はなかったようだ。
躊躇いはしたものも、再び魔獣のような目付きでツクヨを睨みつけると、土を巻き上げながら大地を蹴り上げ、鋭利な爪を剥き出しにして飛び掛かる。
ツクヨは依然として目を閉じたまま布都御魂剣を手に、抜刀術のような構えのまましゃがみ込んでいる。獣達が取り囲むように一斉に飛び掛かってくる刹那、彼の手によって鞘から引き抜かれたその宝剣は、周囲に向け一瞬の間に広がる波紋のような衝撃波を打ち放つ。
獣達は出血することもなく、飛び掛かる途中でピクリとも動かなくなる。自分達の身に何が起きたのかさえ分からないといった様子で、殺虫剤を浴びた羽虫のように地面へと落ちていく。
布都御魂剣によって斬られた獣達は、内側に宿る邪悪な意志や魔力を断ち切られたように大きく戦闘力を落とした。そして普通に斬りつけるよりも長い間、まるで自分が何をしていたのか忘れてしまったかのような忘却状態にしていた。
瞬く間にガレウスの周りに集る獣達を討ち払っていくツクヨだったが、依然としてガレウスは別の何かと会話するように言葉を発していた。
「ガレウス!どうしたんんだ!?早くコイツらを倒さないと他の味方がッ・・!」
「よせ!やはり人間は俺達の敵だ・・・!」
ブツブツと何かを呟いていたガレウスは、なんと救助に訪れたツクヨ目がけてその鋭爪を振るったのだ。ツクヨは彼を斬り捨てることも出来ず、その攻撃を受け止める。
「なッ!?ちょっと!どうしたっての!?」
ガレウスの攻撃に手加減などという様子は伺えない。力で押し負けるツクヨの身体がどんどんと地面に吸い寄せられるようにして沈んでいく。
「ガレウス!今はそいつぁ敵じゃねぇだろ!?」
「どうしちまったんだ!?しっかりしてくれよッ!」
一時的に協力関係を結んだ筈の人間を襲っていたガレウスを見て、側近の獣人達が彼の目を覚まさせようと声をかける。同じ種族の声は届いているのか、彼らの声を聞いたガレウスは、すぐにツクヨへの攻撃をやめて後退りする。
「なッ・・・馬鹿な!なんでお前がここに!?」
「はぁ・・・はぁ・・・何にが、見えてるんだい・・・?」
布都御魂剣の効果で、目を閉じている間、周囲の気配やオーラを可視化することのできるツクヨは、周りに隠れている邪悪な気配をも見つけることができる状態にある。
しかし、そんな彼の能力を持ってしてもガレウスの見ていいる何かを見つけることは出来なかった。それもその筈。いくら邪を払う力を持ってしても、幻覚症状に見舞われている者の見ている景色を把握することまでは出来ないのだ。
ガレウスの目を覚まさせる事ができない以上、原因を取り除く他ない。だが、彼がいつの間に幻覚を見るようになってしまったかなど、その場にいた誰にも分かることではなかった。
すると、ガレウスはツクヨを見ながら何かと勘違いしているかのような発言をしていた。それが聞こえたのは、側にいたツクヨだけ。だがそれを聞いてツクヨは、ガレウスが幻覚の類を見ているだろうということに気がつく。
「お前は・・・アズール達と森へ向かった筈だろ?何故お前一人が戻ってきたんだ、“ケツァル“!」
「・・・ケツァル?今度は私を何かと勘違いしているのか・・・?いや、これは幻覚を見させられているのか?」
すぐに異変を感じ取ったツクヨは、ガレウスの周辺の獣達を粗方斬り伏せるとその場を離れ、ミアに今起きた出来事を伝える。攻撃をされたり、違う者と間違えられたりと、その様子からもミアはツクヨと同じ結論に至った。
戦いの中でガレウスは、いつの間にか幻覚を見るようになってしまったのだと。人間である彼らでは、言葉や行動を起こしても裏目に出るだけかもしれない。事情を話し、ガレウスの側近の獣人達に声をかけてもらうことにした二人は、作戦を一時中断し今度は獣人の助けるために動く。
再び布都御魂剣の力で獣達を斬り捨てて行ったツクヨは、獣人達を救助しながら事情を話す。
「幻覚だぁ!?・・・確かに、そんな様子だな・・・ありゃぁ」
「あぁ、普段のアイツならこんなに押されることもねぇ筈だ・・・。分かった!アンタらのいう通りやってみるぜ!」
一部始終を目にしていたこともあり、彼らもガレウスの様子がおかしいことには気がついていた。このままでは囮を買って出るのはいいものの、いずれジリ貧になり囲まれてしまう。
ツクヨの言葉に辻褄が通っていると判断した獣人達は、獣を退けながらガレウスの元へと向かう。
「おい!ガレウス!遊んでる場合じゃねぇぞ!ここにケツァルの奴はいねぇ!お前の見てるのは幻覚だ!目ぇ覚ませッ!」
一人の獣人が大声を出してガレウスに呼びかける。彼が注目を集めている内に、もう一人の獣人がガレウスに接触し、彼の肩を掴んで身体を揺さぶる。
「ガレウス!しっかりしてくれ!」
「やめろ・・・俺は・・・お前達を置いて・・・」
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