1,118 / 1,646
二人の未知なる存在
しおりを挟む
しかし、全てのWoFユーザーが覚醒者になれる訳ではない。そもそもそんなことを知らないままモンスターに目をつけられ、殺されてしまうユーザーもいる。
シンもミアに助けてもらわなければそうなっていたかもしれない。それならば、ミアはいつどうやって覚醒者となったのだろう。シンが現実の世界でミアと出会った時には、既に彼女はキャラクターのデータを自身の身体に投影していた。
無論、自分自身で気づく者もいるが、それは稀なケースであり現実世界のことを嫌っている彼女が、その時現実世界にいたことも、疑問な点ではある。本当は下心など抜きにして、彼女のことをもっと聞いてみたいと思うシンだったが、きっと彼女に現実世界のことを聞くと、関係性にヒビが入るかもしれない。
それを何よりも恐れていたシンは、漸く信頼し合えるような仲間と呼べる存在に出会えた彼らとその居場所を壊したくなく、直接聞くことも白獅らに調査を求めることも出来なかった。それは自分の辛い過去を掘り返されたくないのと同じだった。
「覚醒者ねぇ・・・そんな呼び方してるのか」
「ミアはその覚醒者って奴なの?」
そこへ、何も知らないツクヨがシンの知りたかった事をミアに尋ねる。思わず目を丸くしてミアの返答に耳を傾けるシンだったが、ミアは意外にもあっさりと答えていた。
「そうだな、アタシもあっちでも戦える。だがこっちの世界と違って危険だから、アタシは好きじゃない」
「そっか・・・まぁそりゃそうだよね私も争いはちょっと・・・」
「言っておくけど、俺も好きで戦ってた訳じゃないからね?」
狙っていたのか偶然なのかは分からないが、ツクヨが上手く茶化してこの話題を畳んだ。
ミアも合流して、借りてきた資料に目を通す三人。その中で、今後の動きについても話し合った。このままアークシティに対策なしに向かって良いものかどうか。
こんな辺境の研究所にすら姿を見せた黒いコートの人物。アークシティなどという目立つ場所に向かえば、それこそ標的にされ兼ねない。何なら既に目を付けられており、今度こそ命を狙われてしまうかもしれない。
危険を顧みず立ち向かう事と、危険と分かっていながら立ち向かうのは違う。打てる手は全て打ち、対策を考えることも抜かってはならないのが、今の彼らの現状であると自覚する三人だった。
シン達がリナムルへ到着する少し前。地下研究所から姿を消した黒いコートの者達は、戦いの場を移して剣を交えていた。とはいうものの、二人の戦いは戦いと呼べるほどのものではなかった。
地下研究所内にてシン達を襲った小さい方の黒いコートの人物が、長身の男の攻撃を軽くあしらっている状況だった。キングの船でシンとデイヴィスを圧倒していた黒いコートの男の仲間が、意図も容易くいなされ相手になっていないという、シン達にしたら信じられない光景が広がっていた。
「くッ・・・これ程までに差があるのかッ!?」
「当然だよ。僕らはこの世界の調停者のようなものなんだ。だから君程度じゃ話にもならないよ」
「ならどうしてここまで移動してきた?あの場で消すことも出来ただろ!?」
「“彼ら“に聞かれたら面倒になるかもしれないからね・・・。念には念を。人間の好きそうな言葉だよ。自分達命令した機械が完璧に算出したデータを、もう一度自分達で確かめるなんて、間抜けだとは思わないかい?」
「・・・何を言っている?」
「簡単な話じゃないか。自分で走るように命令したのに、ちゃんと走ってるのを何度も確認するんだよ?AIは人間のみならず、どんな生命体よりも忠実で完璧に指令をこなすのにさ」
長身の男には、その者が言っていることが鮮明には分からなかった。どうやら長身の男は、シン達のようなWoFのユーザーが暮らす現実世界の事について詳しくないのだろうか。
AIという言葉に聞き覚えのない長身の男は、眉を潜ませ表情を歪める。同時に小さい方の黒いコートの人物が、長身の男を蹴り飛ばし大きく後方へと吹き飛ばした。
「君のような存在は珍しいけど、もう一つの世界についての知識は浅いのかな?」
「どうだかな・・・」
含みを持たせた言い方をして時間稼ぎを行う長身の男。彼はこうなるであろうことを覚悟してやって来ていた。このまま見逃されるとも思えない中で、少しでも可能性を見出そうと必死に足掻いている。
しかし、それすらも茶番だと言わんばかりに、立ち上がろうとする長身の男の側に一瞬にして移動してくると、頭にそっと手を置いて贈る言葉を掛ける。
「すぐには消さないよ。ただサンプルとして拘束させてもらうね。・・・君から辿れそうなデータもいくつか出てきた。何で邪魔するのかについてはおいおい知れるだろうしね・・・」
長身の男は床に膝をついたまま、瞬きをするよりも早い一瞬の間にその場から姿を消した。二人は互いに互いの存在について無知だった訳でもなかった。
少なくとも長身の男は、目の前の黒いコートの人物がどういった存在なのかは理解していたようだ。
シンもミアに助けてもらわなければそうなっていたかもしれない。それならば、ミアはいつどうやって覚醒者となったのだろう。シンが現実の世界でミアと出会った時には、既に彼女はキャラクターのデータを自身の身体に投影していた。
無論、自分自身で気づく者もいるが、それは稀なケースであり現実世界のことを嫌っている彼女が、その時現実世界にいたことも、疑問な点ではある。本当は下心など抜きにして、彼女のことをもっと聞いてみたいと思うシンだったが、きっと彼女に現実世界のことを聞くと、関係性にヒビが入るかもしれない。
それを何よりも恐れていたシンは、漸く信頼し合えるような仲間と呼べる存在に出会えた彼らとその居場所を壊したくなく、直接聞くことも白獅らに調査を求めることも出来なかった。それは自分の辛い過去を掘り返されたくないのと同じだった。
「覚醒者ねぇ・・・そんな呼び方してるのか」
「ミアはその覚醒者って奴なの?」
そこへ、何も知らないツクヨがシンの知りたかった事をミアに尋ねる。思わず目を丸くしてミアの返答に耳を傾けるシンだったが、ミアは意外にもあっさりと答えていた。
「そうだな、アタシもあっちでも戦える。だがこっちの世界と違って危険だから、アタシは好きじゃない」
「そっか・・・まぁそりゃそうだよね私も争いはちょっと・・・」
「言っておくけど、俺も好きで戦ってた訳じゃないからね?」
狙っていたのか偶然なのかは分からないが、ツクヨが上手く茶化してこの話題を畳んだ。
ミアも合流して、借りてきた資料に目を通す三人。その中で、今後の動きについても話し合った。このままアークシティに対策なしに向かって良いものかどうか。
こんな辺境の研究所にすら姿を見せた黒いコートの人物。アークシティなどという目立つ場所に向かえば、それこそ標的にされ兼ねない。何なら既に目を付けられており、今度こそ命を狙われてしまうかもしれない。
危険を顧みず立ち向かう事と、危険と分かっていながら立ち向かうのは違う。打てる手は全て打ち、対策を考えることも抜かってはならないのが、今の彼らの現状であると自覚する三人だった。
シン達がリナムルへ到着する少し前。地下研究所から姿を消した黒いコートの者達は、戦いの場を移して剣を交えていた。とはいうものの、二人の戦いは戦いと呼べるほどのものではなかった。
地下研究所内にてシン達を襲った小さい方の黒いコートの人物が、長身の男の攻撃を軽くあしらっている状況だった。キングの船でシンとデイヴィスを圧倒していた黒いコートの男の仲間が、意図も容易くいなされ相手になっていないという、シン達にしたら信じられない光景が広がっていた。
「くッ・・・これ程までに差があるのかッ!?」
「当然だよ。僕らはこの世界の調停者のようなものなんだ。だから君程度じゃ話にもならないよ」
「ならどうしてここまで移動してきた?あの場で消すことも出来ただろ!?」
「“彼ら“に聞かれたら面倒になるかもしれないからね・・・。念には念を。人間の好きそうな言葉だよ。自分達命令した機械が完璧に算出したデータを、もう一度自分達で確かめるなんて、間抜けだとは思わないかい?」
「・・・何を言っている?」
「簡単な話じゃないか。自分で走るように命令したのに、ちゃんと走ってるのを何度も確認するんだよ?AIは人間のみならず、どんな生命体よりも忠実で完璧に指令をこなすのにさ」
長身の男には、その者が言っていることが鮮明には分からなかった。どうやら長身の男は、シン達のようなWoFのユーザーが暮らす現実世界の事について詳しくないのだろうか。
AIという言葉に聞き覚えのない長身の男は、眉を潜ませ表情を歪める。同時に小さい方の黒いコートの人物が、長身の男を蹴り飛ばし大きく後方へと吹き飛ばした。
「君のような存在は珍しいけど、もう一つの世界についての知識は浅いのかな?」
「どうだかな・・・」
含みを持たせた言い方をして時間稼ぎを行う長身の男。彼はこうなるであろうことを覚悟してやって来ていた。このまま見逃されるとも思えない中で、少しでも可能性を見出そうと必死に足掻いている。
しかし、それすらも茶番だと言わんばかりに、立ち上がろうとする長身の男の側に一瞬にして移動してくると、頭にそっと手を置いて贈る言葉を掛ける。
「すぐには消さないよ。ただサンプルとして拘束させてもらうね。・・・君から辿れそうなデータもいくつか出てきた。何で邪魔するのかについてはおいおい知れるだろうしね・・・」
長身の男は床に膝をついたまま、瞬きをするよりも早い一瞬の間にその場から姿を消した。二人は互いに互いの存在について無知だった訳でもなかった。
少なくとも長身の男は、目の前の黒いコートの人物がどういった存在なのかは理解していたようだ。
0
あなたにおすすめの小説
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。
選んだ職業は“料理人”。
だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。
地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。
勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。
熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。
絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す!
そこから始まる、料理人の大逆転。
ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。
リアルでは無職、ゲームでは負け組。
そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる