World of Fantasia

神代 コウ

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装飾品と加工技術

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 街には複数の武器や防具の店が並んでいた。様々な大陸や地方の特徴を持った装備などが店によって変わり陳列される。ならばこの街だけで装備が一通り揃うのではないか、そう思うことだろう。

 だがそんな甘い話はなく、取引される武具の数々は取り扱いやすいものばかりで、手入れの必要もない消耗品が大半を占める。それに街から遠ければ遠いほど高額な値段設計になっているのだ。

 現地に赴き購入すれば半分以下の値段で買い揃える事ができる。そこは移動の手間や加工の工程を簡易化させたことによる手間賃とも取れる。それに熱い地域や寒い地域などで作られる様々な属性の効果を持つ武具は、一時的な消耗品と捉えれば安い物なのかもしれない。

 どうしても攻略できないダンジョンやボスなど、その局所的な場面でのみ必要な物を揃えるには、このエレジアの街は丁度いいのだろう。

 どんなものが必要なのか分からないツクヨは、店選びを全てツバキに任せていた。本人も迷っているのか、なかなかお目当ての店を選べずにいるようだった。

 「これだけ同じような店がいっぱいあると、迷っちゃうねぇ」

 「まぁ本当はある程度絞れてるんだ。後はどの店にするか何だが・・・」

 「そうなの?ちなみにどんな店がいいの?」

 「装飾品の店だな。アクセサリーとかが中心の。それに出来るだけ安価で丈夫な物がいい。俺もまだお試しの段階だからな、いきなり高価なもので本格的な発明はできねぇよ」

 彼が言うには、どうやら武器や防具に魔石を使った加工を施すには、彼自身の経験値とも言える試行回数が足りないのだという。それに魔石の数や大きさは限られている。

 加工に手間のかかる武器や防具では、失敗した際のリスクやコストパフォーマンスが悪い。そこでお手軽に加工ができ、消耗品としても使える指輪やピアス、腕輪などの装飾品やアクセサリーの類が、ツバキ的にはベストな代物なのだそうだ。

 探す店が決まっているのなら話が早いと、ツクヨは手当たり次第に装飾品の店やアクセサリー店に足を運ぶ。しかし、これまた店によって値段や特徴がバラバラで、なかなかツバキの求める安価で丈夫なものというのが見つからずにいた。

 「あっアクセサリーだけでも、色々あるんだね・・・」

 「武器や防具と違って数多く取引されてるからな。運ぶのも楽だし嵩張らないし・・・。特徴で言えば、熱帯地域の加工品を扱ってる店がいいな。地域の特性上、頑丈な物でないとすぐに痛んじまうからな。逆に寒冷地帯の代物は繊細な物が多い。それだけ強力な魔力も込められるんだが、耐久度に劣る」

 熱帯地域、特に火山や地底などに近い場所から取引されてる商品は、過酷な環境下でも耐えうる強度を持った物が多く、逆に寒冷地帯のような雪や氷に覆われた地域では、強力な魔力を蓄積できる加工技術が発展しており、耐久度の関係上回数は限られるが、より便利で強力な追加効果を付与できるものが多い。

 「そっか、ツバキは試行回数も重ねたいって言ってたよね?それなら耐久度が最優先か・・・」

 「特にドワーフや巨人族の加工技術はずば抜けてるからな。それだけ素人には加工が難しくて融通が気かねぇんだけどよぉ・・・」

 「了解!それならどのドワーフって人が作った物か、巨人族の作った物を扱ってる店を探せばいいって訳か!」

 ヒントを得たツクヨは足速に装飾品の店へと向かっていった。

 「あっ・・・ちょっと待ってって!まぁいいか、この際値段なんか少しくらい貼っても大丈夫だよな?」

 ツバキが危惧していたのは、熱帯地域で取れる鉱石などは加工の難しい強度をしており、値段も他の鉱物などに比べると遥かに高いのだ。珍しい鉱石ともなればそれこそ武器や防具よりも高い物だった存在する。

 とても最初にツバキのお提案した安価な物など期待できないのだが、あまり時間がかかっても仕方がないと思ったツバキは、値段に対してはある程度妥協するべきかと判断した。

 何件か回ったツクヨが店先などで情報を集め、強度がありなるべく安価な装飾品の店を見つける。

 「ねぇ、ここなんかどうだい?ドワーフが作った装飾品を仕入れて販売してるんだって!」

 「行動力の化身かよ・・・。でもまぁそこへ行ってみるか」

 店内に入ると、そこは火山のある地域から品物を仕入れている店らしく、装飾品だけではなく様々な武器や防具なども取り揃えている、装備全般が売っている店のようだった。

 その一角にある装飾品のコーナーには、腕輪やブレスレットといった少し大きめの物から、指輪などの小物まで多く取り揃えられていた。しかも値段の方もそれなりにリーズナブルで、ツバキの要望に沿ったベストな店と言えるだろう。

 「へぇ~、意外と安いんだな」

 「何も付いてない指輪とかもあるんだね」

 「それは加工用だな。冒険者の中にも、自分でアクセサリーを作る輩もいるから、そういった奴らの為の指輪だ。値段も使ってる鉱石の割には安い方だし、幾つか買っていくか」

 ツバキは何も効果を持たないただの指輪を数個買い物カゴに入れる。ツクヨの言うように何も付いていないただのシルバーリングのようだが、小さく加工した魔石を溶接の要領でリングに取り付け、魔石に込められた効果を必要に応じて発動させるのだという。

 効果がなくなれば、宝石のように取り付けられている魔石を取り外し、別の効果を持った魔石と取り替えたりなど、加工も楽で利便性が高いのだそうだ。

 「その魔石って言うのは売ってないのかい?」

 「売ってないこともないが、大抵のものは既に効果が決まっちまってる。それは加工した人間にしか設定できないもんで、一度設定しちまうと壊れるまでその効果はかわらねぇんだ」

 装飾品などに取り付ける魔石には、効果を付与できる数が限られているようで、基本的には一つしか付与できないのだという。その辺の加工技術も、加工する人間の腕次第なのだが、ツバキにはまだその知識やスキルはない。経験を積んで身につけていく他ないのだ。

 その為にも安価な物をいくつも買おうとしていたのだろう。

 「指輪ばっかり買うんだね」

 「そりゃぁ指は十本だもんよ。それに取り外しが一番簡単じゃねぇか?」

 「なるほど、確かにそうだね。まさかそんなに単純な理由だったとは・・・」

 「それに小さい物の方が加工もし易いんだ。造船技師なんてやってたから手先は器用だしよ。練習には丁度いいだろ」

 子供の割には色々と考えていたのだと、ツクヨは関心すると共にアクセサリーという装備品についての知識を身に付けていった。
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