1,199 / 1,646
ルーカス・マイヤーの思惑
しおりを挟む
理由の分からない調べ物と条件に、ツバキが我慢の限界だと言わんばかり食って罹ろうとするが、それをミアは静止するとそれ以上何も言わずにルーカスの条件を承諾した。
「分かった。誰にも聞かずに大司教の護衛隊隊長の名前を調べてくればいいんだな?」
「そうです。内容としてはシンプルではありませんか?」
「あぁ、そうだな・・・その通りだ。約束は守ってくれよ?」
「勿論“神“に誓って。それと時間制限を設けさせて貰いますよ。式典は夕刻、それよりも前に私のところへ来なかったら、推薦状はお渡し出来ません。式典への提出も間に合いませんので・・・」
話を終えると、一行は部屋を後にし教会へと戻っていく。式典へ参加するには有権者達の推薦状が必要となるらしい。その有権者という人物であればdれでもいいのだろうが、シン達にはニクラス教会のルーカス司祭の他に候補者がいない。
仕方がなく彼の言う通り、条件に沿って依頼をこなすしか無いだろう。シンプルだが理由や思惑といったものが全く理解できない依頼内容に、一行は各々考えを巡らせ沈黙していた。
「さぁ、私からは以上です。依頼内容についてはまだお答えできませんが、街のことやオススメの料理なんかでしたら、何でも聞いて下さい。これでもアルバは長いので。」
「ご親切にどうも」
あくまで他の者達の目があるところでは、教会の司祭としての顔でいるつもりの様子を見せるルーカス。一行は彼に見送られながら教会を後にすると、外に出た途端緊張から解き放たれたかのように喋り出す。
「何だよあれ!?俺達に何をさせようってんだぁ!?」
「でも依頼さえこなせれば、式典ってやつにも参加できるんだ。今は彼の言う通りにするしか無いんじゃない?」
ツクヨの言う通り、式典へ参加するにはルーカスの依頼をこなすしか方法はない。幸いなことにツバキやアカリを危険に晒すような、危ない依頼じゃない上にシン達にとっても特段デメリットになり得る要素もない。
つまり挑戦するだけならタダで出来、失敗しても別の有権者を探すという道もある。やれるだけのことはやってみようと促すツクヨに、シンとミアはルーカスの依頼の裏に隠された彼の思惑について、自身の考えを述べる。
「それに依頼自体には大した理由は無いだろうし・・・」
「どういうことですか?」
「要するにアタシらは試されてるんだよ。誰かに頼ることなく人物を特定し、情報を入手する能力を・・・」
「どうしてそんな事をする必要が?彼が街でも顔の利く人物で、教会の関係者ならほとんど手に入らない情報はないんじゃない?」
「“顔が利く“から・・・なんだろうな」
「ん?」
ルーカスが最後に言っていたように、彼が本当にこのアルバの街に長く住んでいるのなら、司祭という事もありその顔は地元の人間はおろか、何度か来ているような観光客にまで知れ渡っている事だろう。
それに教会の関係者なら様々なところに居るであろう信徒達とも繋がっているはず。他所の情報が欲しければ、それらの繋がりを使い情報を集める事もできる。
しかし、そんな彼だからこそ出来ないことがある。表立って調べられないこと。誰かに頼ることが出来ない調べもの。それは今まさに、シンとミアが口にしようとしている事だろう。
「誰もが奴の事を知り、多くの者が慕っていることだろう。だからこそ今の奴の立場がある。そんな奴が表立って調べられないこと。知り合いや関係者を使って情報や様子を伺うことが出来ないこと。それは“内部の者“についてだ」
「内部の?・・・それってまさかっ」
「教会関係者のことだろう。自身や周りの者を使って調べれば、何故そんな事をするのかと疑われる。そんな事をすれば、今の奴の立場も危うくなるだろうな・・・」
「つまり、私達を使って何かを調べたいってことかい?」
「正確なことは分からないが、奴の依頼をこなした者に式典で誰かのことを調査させる、或いは様子を見て欲しいんだろう」
ミアの推測では、式典には大司教やアルバの有識者、それに様々なところからやって来る教会関係者など多くの人物が出席する。ルーカスはその中の誰かについて、外部の者を使って調べてもらいたいのではと考えていた。
「確かに、それなら依頼内容にも納得いくかもな」
「でも推薦状からルーカスさんが怪しまれるという事もありませんか?」
「依頼を突破した奴らがヘマをしたら・・・な。そこは奴の人選次第だろうけど、恐らくカモフラージュのために他にも何人か“推薦状“を出してるかもな。或いは他の有権者にも、布教の為に外部の者を誘わせてるとか・・・」
「私達の他にも・・・かぁ。タイムリミットもある事だし、あんまりのんびりもしていられないね!まずは何から始めようか。何か心当たりがある人、いる?」
夕刻までにルーカスから推薦状を貰わなければならない。早速調査に乗り出そうとする一行だったが、当然のことながらアルバや教会とは無関係な外部の者であるシン達に、心当たりなどあろう筈もなかった。
「分かった。誰にも聞かずに大司教の護衛隊隊長の名前を調べてくればいいんだな?」
「そうです。内容としてはシンプルではありませんか?」
「あぁ、そうだな・・・その通りだ。約束は守ってくれよ?」
「勿論“神“に誓って。それと時間制限を設けさせて貰いますよ。式典は夕刻、それよりも前に私のところへ来なかったら、推薦状はお渡し出来ません。式典への提出も間に合いませんので・・・」
話を終えると、一行は部屋を後にし教会へと戻っていく。式典へ参加するには有権者達の推薦状が必要となるらしい。その有権者という人物であればdれでもいいのだろうが、シン達にはニクラス教会のルーカス司祭の他に候補者がいない。
仕方がなく彼の言う通り、条件に沿って依頼をこなすしか無いだろう。シンプルだが理由や思惑といったものが全く理解できない依頼内容に、一行は各々考えを巡らせ沈黙していた。
「さぁ、私からは以上です。依頼内容についてはまだお答えできませんが、街のことやオススメの料理なんかでしたら、何でも聞いて下さい。これでもアルバは長いので。」
「ご親切にどうも」
あくまで他の者達の目があるところでは、教会の司祭としての顔でいるつもりの様子を見せるルーカス。一行は彼に見送られながら教会を後にすると、外に出た途端緊張から解き放たれたかのように喋り出す。
「何だよあれ!?俺達に何をさせようってんだぁ!?」
「でも依頼さえこなせれば、式典ってやつにも参加できるんだ。今は彼の言う通りにするしか無いんじゃない?」
ツクヨの言う通り、式典へ参加するにはルーカスの依頼をこなすしか方法はない。幸いなことにツバキやアカリを危険に晒すような、危ない依頼じゃない上にシン達にとっても特段デメリットになり得る要素もない。
つまり挑戦するだけならタダで出来、失敗しても別の有権者を探すという道もある。やれるだけのことはやってみようと促すツクヨに、シンとミアはルーカスの依頼の裏に隠された彼の思惑について、自身の考えを述べる。
「それに依頼自体には大した理由は無いだろうし・・・」
「どういうことですか?」
「要するにアタシらは試されてるんだよ。誰かに頼ることなく人物を特定し、情報を入手する能力を・・・」
「どうしてそんな事をする必要が?彼が街でも顔の利く人物で、教会の関係者ならほとんど手に入らない情報はないんじゃない?」
「“顔が利く“から・・・なんだろうな」
「ん?」
ルーカスが最後に言っていたように、彼が本当にこのアルバの街に長く住んでいるのなら、司祭という事もありその顔は地元の人間はおろか、何度か来ているような観光客にまで知れ渡っている事だろう。
それに教会の関係者なら様々なところに居るであろう信徒達とも繋がっているはず。他所の情報が欲しければ、それらの繋がりを使い情報を集める事もできる。
しかし、そんな彼だからこそ出来ないことがある。表立って調べられないこと。誰かに頼ることが出来ない調べもの。それは今まさに、シンとミアが口にしようとしている事だろう。
「誰もが奴の事を知り、多くの者が慕っていることだろう。だからこそ今の奴の立場がある。そんな奴が表立って調べられないこと。知り合いや関係者を使って情報や様子を伺うことが出来ないこと。それは“内部の者“についてだ」
「内部の?・・・それってまさかっ」
「教会関係者のことだろう。自身や周りの者を使って調べれば、何故そんな事をするのかと疑われる。そんな事をすれば、今の奴の立場も危うくなるだろうな・・・」
「つまり、私達を使って何かを調べたいってことかい?」
「正確なことは分からないが、奴の依頼をこなした者に式典で誰かのことを調査させる、或いは様子を見て欲しいんだろう」
ミアの推測では、式典には大司教やアルバの有識者、それに様々なところからやって来る教会関係者など多くの人物が出席する。ルーカスはその中の誰かについて、外部の者を使って調べてもらいたいのではと考えていた。
「確かに、それなら依頼内容にも納得いくかもな」
「でも推薦状からルーカスさんが怪しまれるという事もありませんか?」
「依頼を突破した奴らがヘマをしたら・・・な。そこは奴の人選次第だろうけど、恐らくカモフラージュのために他にも何人か“推薦状“を出してるかもな。或いは他の有権者にも、布教の為に外部の者を誘わせてるとか・・・」
「私達の他にも・・・かぁ。タイムリミットもある事だし、あんまりのんびりもしていられないね!まずは何から始めようか。何か心当たりがある人、いる?」
夕刻までにルーカスから推薦状を貰わなければならない。早速調査に乗り出そうとする一行だったが、当然のことながらアルバや教会とは無関係な外部の者であるシン達に、心当たりなどあろう筈もなかった。
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる