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事件
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検査を終えたシンは、そのままブルースの部屋へ入る事なくオイゲンと護衛の横を通り過ぎ、通路の奥まで歩みを進めた。疑いの視線を感じながらも、シンはできるだけ平然を装い、奥にある別の階段から二階へと降りていった。
二階には先程のような厳重な警備や注意深い検査などはなく、他の警備を欺きながら着替えを取りに戻る。その途中で、どこに隠し持っていたのか、ケヴィンとの通信を行っていたデバイスを取り出し、そっと耳に装着する。
「・・・驚きました。一体どんなトリックを使ったのですか?」
「そんなことより、作戦とやらの方は順調なのか?もうこんな思いは御免だぞ・・・」
「えぇ、シンさんのお陰で無事カメラを仕掛けられました。やはり貴方に頼って正解でしたね」
「調子のいい奴だ・・・」
シンは三階のトイレへと戻ると、着替えを済ませ作業着を袋に戻すと、ケヴィンに指定された場所にそれを戻し、仲間達のいる一階の部屋へと向かった。その道中、ケヴィンは作戦を実行するシンの気配を追っている時に、オイゲンの気配と接触していたのを感じたと言う。
あのオイゲンとなにを話していたのかと問われたシンは、そのまま検査を受けていたと答える。だが、オイゲンほどの男がシンの持っているカメラを見逃す筈がないとケヴィンは語り、一体どうやって切り抜けたのかと問う。
そこでシンは彼に、渋々種明かしをした。
どうやらシンは、彼らに呼び止められた際にバランスを崩したふりをして、ケヴィンから預かっていたカメラを自身の影の中に落とし隠していたのだという。
だが、そのまま影の中に入れておくだけなら、護衛のスキル感知に掛かり気付かれてしまう。そこでシンは、目についた通気口の中の影を使いカメラを隠したのだ。
そしてオイゲン達が足元の検査を行っている間に、作業服の袖の影から通気口の影に指を通しカメラを起動。映像が映し出されたケヴィンは状況を把握し、そのまま通気口の中をカメラで移動しながら目的のベルヘルムの部屋へと向かったというトリックだったのだ。
「なるほど・・・抜け目のない人ですね。咄嗟にそんな事を思いついていたなんて。これはますます失踪事件の犯人像に近づいてきました」
「おい!アンタの疑いを晴らす為にこっちは危険を冒したんだぞ!?」
「そうでしたね、すみません・・・」
妙に素直に謝ったケヴィンに違和感を感じつつも、ベルヘルムの部屋に設置したカメラは順調に機能しているのかと話を逸らせるシン。パーティー会場とは違い、周りも静かなので少し離れている程度なら音声も拾えるようだ。
音声を聞いている限り、まだVIPルームで聞いた約束の時間にはなっていないらしい。このままケヴィンはベルヘルムの動向を伺うと言い、シン達の事を警備隊に報告するのは先送りにすると言い残し通信を終えた。
仲間の元へ戻ったシンは、ミアやツクヨから何処へ行っていたのかと問われるが、心配を掛けないためにケヴィンとの一件については話さなかった。既に皆シャワーを済ませていたようで、シンが最後に済ませると食事も十分パーティーで満喫した一行は、そのまま豪華なベッドの上で眠りへとついた。
これまでにない極上の眠り心地の中、旅の疲れを癒した彼らだったが、朝の日が登り目を覚ますと、とんでもない事件の容疑者の一人として宮殿内に閉じ込められる事となる。
目を覚ました一行は、就寝時の気持ちよさとは反対に、宮殿内の騒がしさで目を覚ます。扉の向こう側を慌ただしく駆け抜ける足音と、人を呼ぶ大きな声が飛び交っている。
「っ・・・?何だよ、うるせぇなぁ・・・。これが宮殿のもてなしってやつなのかぁ!?」
「そんな訳ありませんわ!貴方も寝てないですぐに起きてください!」
シン達大人組は既に目を覚まし、どんな状況かと宮殿内へ事情を聞きに向かっていた。部屋に残ってツバキとアカリの面倒を見ながら待機していたのはミアだった。
寝起きのツバキがミアに状況を尋ねるも、まだシンとツクヨが戻っていないから詳しいことは分からないが、外から聞こえてくる声を聞く限り宮殿内で何か事件が起きたようだ。
火災や襲撃といったものではないことから、現状宿泊している者達に差し迫る危険はないようだ。
すると、そんなミア達の元へ状況を掴んだシンとツクヨが戻ってきた。
「お待たせ!」
「それで?何なんだ、この騒ぎは?」
汗ばんで息を切らしたツクヨにミアが尋ねると、一息ついたシンが息を呑むようにして答えた。
「・・・ジークベルト大司教が、死体で発見されたらしい・・・」
「あ?・・・なんだそりゃ・・・」
「今、アルバの医者のカールさん達や警備の人達が現場検証や発見現場の調査とかをしてくれてるみたい。あと、昨夜から宮殿にいた人達は暫くの間、宮殿から出ないようにって」
宮殿の警備は、昨夜のシンが確認したように厳重だった。外の様子も人が入れるような場所には全て人員が配置されており、出入りする人間は必ずチェックされる。故にケヴィンも宮殿内には入ることが出来なかったのだ。
これだけ厳重な警備体制の中、犯行が行われたということは内部の人間による犯行である可能性が高いとの事らしい。事件現場には探偵のケヴィンも呼ばれているようで、まさかこんな形で宮殿内に入ることになるとは思っていなかったようだ。
二階には先程のような厳重な警備や注意深い検査などはなく、他の警備を欺きながら着替えを取りに戻る。その途中で、どこに隠し持っていたのか、ケヴィンとの通信を行っていたデバイスを取り出し、そっと耳に装着する。
「・・・驚きました。一体どんなトリックを使ったのですか?」
「そんなことより、作戦とやらの方は順調なのか?もうこんな思いは御免だぞ・・・」
「えぇ、シンさんのお陰で無事カメラを仕掛けられました。やはり貴方に頼って正解でしたね」
「調子のいい奴だ・・・」
シンは三階のトイレへと戻ると、着替えを済ませ作業着を袋に戻すと、ケヴィンに指定された場所にそれを戻し、仲間達のいる一階の部屋へと向かった。その道中、ケヴィンは作戦を実行するシンの気配を追っている時に、オイゲンの気配と接触していたのを感じたと言う。
あのオイゲンとなにを話していたのかと問われたシンは、そのまま検査を受けていたと答える。だが、オイゲンほどの男がシンの持っているカメラを見逃す筈がないとケヴィンは語り、一体どうやって切り抜けたのかと問う。
そこでシンは彼に、渋々種明かしをした。
どうやらシンは、彼らに呼び止められた際にバランスを崩したふりをして、ケヴィンから預かっていたカメラを自身の影の中に落とし隠していたのだという。
だが、そのまま影の中に入れておくだけなら、護衛のスキル感知に掛かり気付かれてしまう。そこでシンは、目についた通気口の中の影を使いカメラを隠したのだ。
そしてオイゲン達が足元の検査を行っている間に、作業服の袖の影から通気口の影に指を通しカメラを起動。映像が映し出されたケヴィンは状況を把握し、そのまま通気口の中をカメラで移動しながら目的のベルヘルムの部屋へと向かったというトリックだったのだ。
「なるほど・・・抜け目のない人ですね。咄嗟にそんな事を思いついていたなんて。これはますます失踪事件の犯人像に近づいてきました」
「おい!アンタの疑いを晴らす為にこっちは危険を冒したんだぞ!?」
「そうでしたね、すみません・・・」
妙に素直に謝ったケヴィンに違和感を感じつつも、ベルヘルムの部屋に設置したカメラは順調に機能しているのかと話を逸らせるシン。パーティー会場とは違い、周りも静かなので少し離れている程度なら音声も拾えるようだ。
音声を聞いている限り、まだVIPルームで聞いた約束の時間にはなっていないらしい。このままケヴィンはベルヘルムの動向を伺うと言い、シン達の事を警備隊に報告するのは先送りにすると言い残し通信を終えた。
仲間の元へ戻ったシンは、ミアやツクヨから何処へ行っていたのかと問われるが、心配を掛けないためにケヴィンとの一件については話さなかった。既に皆シャワーを済ませていたようで、シンが最後に済ませると食事も十分パーティーで満喫した一行は、そのまま豪華なベッドの上で眠りへとついた。
これまでにない極上の眠り心地の中、旅の疲れを癒した彼らだったが、朝の日が登り目を覚ますと、とんでもない事件の容疑者の一人として宮殿内に閉じ込められる事となる。
目を覚ました一行は、就寝時の気持ちよさとは反対に、宮殿内の騒がしさで目を覚ます。扉の向こう側を慌ただしく駆け抜ける足音と、人を呼ぶ大きな声が飛び交っている。
「っ・・・?何だよ、うるせぇなぁ・・・。これが宮殿のもてなしってやつなのかぁ!?」
「そんな訳ありませんわ!貴方も寝てないですぐに起きてください!」
シン達大人組は既に目を覚まし、どんな状況かと宮殿内へ事情を聞きに向かっていた。部屋に残ってツバキとアカリの面倒を見ながら待機していたのはミアだった。
寝起きのツバキがミアに状況を尋ねるも、まだシンとツクヨが戻っていないから詳しいことは分からないが、外から聞こえてくる声を聞く限り宮殿内で何か事件が起きたようだ。
火災や襲撃といったものではないことから、現状宿泊している者達に差し迫る危険はないようだ。
すると、そんなミア達の元へ状況を掴んだシンとツクヨが戻ってきた。
「お待たせ!」
「それで?何なんだ、この騒ぎは?」
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「・・・ジークベルト大司教が、死体で発見されたらしい・・・」
「あ?・・・なんだそりゃ・・・」
「今、アルバの医者のカールさん達や警備の人達が現場検証や発見現場の調査とかをしてくれてるみたい。あと、昨夜から宮殿にいた人達は暫くの間、宮殿から出ないようにって」
宮殿の警備は、昨夜のシンが確認したように厳重だった。外の様子も人が入れるような場所には全て人員が配置されており、出入りする人間は必ずチェックされる。故にケヴィンも宮殿内には入ることが出来なかったのだ。
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